インフィニット・ストラトス 〜チョウゾの新たな歩み〜   作:すくりゅうあたっく

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第1章 融合(フュージョン)
プロローグ:運命の決着と偶然の重なり


「愚かなものだ……───我が娘よ」

 

孤独な玉座に、決裂を告げる零度の風が漂う。

パワードスーツのアームキャノンを此方へ向ける娘を、()は冷たい仮面越しに見ており、ゆっくりと玉座から立つ。

 

戦士と戦士の、互いに譲れぬ戦が始まった。

 

 

 

 

 

戦いは苛烈を極めながらも、彼が徐々に押されていた。

彼女に手も足も出させなかった鎧は砕かれ、嘗ては誇りとしていた翼を撃ち抜かれ、遂には膝をつかされた。

それを見た女は、左手に全てを喰らう力を込め、飛びかかる。

その瞬間、彼は一瞬にして彼女に接近し、首を掴んだ。

 

「この私を倒せると思っていたのか、思い上がるな…」

 

女は赤色を纏う左腕を伸ばして彼の顔を掴もうとするが、あともう少しを届かせられなかった。

男は締め付ける力を強め、娘に告げる。

 

「もはや貴様は用済みだ。今やメトロイドDNAすら必要ない。なぜなら…」

 

女はアームキャノンで彼の腕を叩き、その勢いで首から引き剥がそうとするが、細いながらも怪力を齎す腕はビクともしない。

 

「私は、最強のメトロイド(戦士)であるサムス・アランのクローンを手中にできるのだから」

 

女は朦朧とする意識の中、それでも戦う意思を途絶えさせていなかった。だが、意識は少しずつ薄れていく。

 

「私に歯向かう者の存在は許さない。それが誰であれだ……──愚かな我が娘よ、銀河の未来は私に託し、安らかに眠るがよい……」

 

遂に限界を迎えた女の意識は、纏っていたパワードスーツと共に消えた。

それを見た男は呟いた。

 

─────HADAR…SEN…OLMEN(力こそ全てだ)

 

 

 

 

 

────刹那、意識が無いはずの女の左手が緑色に変色……いや変化した。

 

「────ァァァァァァァァァァァァァーーー!!!!!!!!」

 

獣と紛うほどの叫び声を出しながら、彼の老いた顔を仮面ごと貫く。

彼は顔を貫かれているのにも関わらず、すぐさま力の差で振りほどこうとするが、先程とは比べ物にもならない膂力を……否、彼の持っているエネルギーが吸い取られるようにして落ちているのだ。

それだけではない。女は戦いの場である空中要塞、イトラシュからもエネルギーを吸い込んでいる。

 

床が傾き、落下時特有の浮遊感と共にエネルギーを吸い取られ……やがて訪れた強烈すぎる衝撃と爆音が惑星ZDRの地表に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

衝撃でバラバラになり燃え盛るイトラシュの残骸から、2人の戦士が瓦礫から出てくる。

片方は命を吸い込み、力強く立っており、片方は残された力すら僅か、もはや風前の灯火となっていた。

彼は最後の力を振り絞り、戦士に近づいていく。だがその動きは死に損ないと変わりないほどゆっくりで、息を吹きかけるだけで死んでしまいそうだった。

彼は傷だらけの身体に無理をきかせて歩みながら、らしくもない事を思う。

 

(最早、私は戦えないか…………私は、どこで道を踏み外した? 私は、何処で選択を間違えた……? ああ、分かっていたではないか。それをありえないと自分で押し込めて、盲目的にしていたのは私だった……)

 

目の前の愚かだと見下していた娘が、何処か哀れんでいる様にも感じる視線をこちらに向けていた。

 

「ハァ…ハァ……グ─イ──わた──は───で、間違えて───」

 

隻眼による奥行きを感じられない視界がぼやけ、朦朧とした意識の中、彼が最後に見たのは……銃口を己では無い何か(・・・・・・・)に向けているものであった。

 

 

 


 

私はもう1人の父親だったものを消し去り、恩人だったものによって惑星ZDRに仕込まれていた自爆装置のタイムリミットまでに脱出できた。

だが、何故だろうか……彼はまだ、死んでいない気がするのだ。

 

『レディー、何か気になる事でもあるのか?』

 

いつも無愛想ながらも私を導いてくれた上司(アダム)の頭脳には、私が悩んでいる事などお見通しのようだ。

 

「アダム……………いや、少し考え事をしていた。奴が死んでいない……そんな気がするんだ」

 

 

『……サムス。レイヴンビークとそれに擬態したXは、間違いなく君の放ったハイパービームによって消し去られた。バイザーにはその決定的な記録が残っている。何より、君がその目で見たのだろう? 彼が生存し、惑星ZDRを脱出するのは不可能だ。────銀河連邦本部にコースを設定、コールドスリープ期間の調整を開始する。異論は無いな? レディー』

 

「あぁ……」

 

アダムがそう断言したのに、それでも何かが引っかかるような感覚を無理矢理振り払い、私はパワードスーツを解除してコールドスリープの準備に取り掛かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

黒煙が吹き上がる夜の街中で、パトカーと救急車の鳴らすサイレンが響く。

世の中はとある大事件による混乱の最中にあり、今回の事件は混乱によって起こるべくして起きてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

何者かが各国の軍事施設をハッキングして日本に向けておよそ2341発のミサイルを発射され、日本は火の海になると思われていた。

だが、何処かから現れた人型の白騎士が空を飛び、単独でミサイルを全て日本へ到達する前に破壊。

対応に向かった海軍すらも蹴散らして姿をくらました”白騎士事件“は、様々な疑惑を生んだ。

世界中が混乱の渦に巻き込まれている中、篠ノ之 束という人物が謎に包まれていた白騎士の正体を、自らが開発したマルチフォームスーツ、IS(インフィニット・ストラトス)の試作機だと明かした。

 

その後様々な思惑が絡み合った結果、ISの情報開示と共有、研究のための超国家機関設立、軍事利用の禁止などが定められた条約、アラスカ条約が各国の間に結ばれた。

その際、彼女はISの心臓部分であるISコアを世界各国に467個、配布した。

各国の交渉も虚しく、これ以降篠ノ之 束は467個以上のISコアを各国に渡すことを拒んでいる。

 

 

間違いなくこの時を境に、世界はISを中心に回り始めただろう。

だが、提供された情報のうちの1つが、各国を大いに悩ませてしまう。

 

なんとISはコアの影響で極端に適正者を偏らせていた。

その内容は、男性は誰1人適正が無く起動すら出来ないが、女性には反応し、ほぼ全ての女性が適正を持つというIS最大にして最悪な、致命的すぎる欠点を抱えていた。

1部の科学者からの提案により、ISコアが男性にも反応するように改良が試みられたが、ISコア自体が全ての解析を拒み、誰1人表層で解析が止まってしまった為に頓挫した。

これを重く見た各国は法律を改める事になり、女性がIS分野等に進出しやすい環境を作っていく。

スムーズに進んでいく対処により、予想よりも早く各国の混乱は収束するかに思われた。

だが、いつの世も過激な考えは少なからず存在する。

 

 

 

今回の“爆破事件”は日本の女性の社会進出を目指していた幾つかのグループの過激派達が起こしたものであり、とある法案に反対していた派閥のリーダーである議員を狙ったものだった。

どこから仕入れたのか、爆弾は非常に小さく強力であり、選挙カーだけではなく周囲の市民も巻き込まれた。

だが、更に不幸は続く。偶然選挙カーが止まっていた近くの撤去予定だった廃ビルが爆破の影響で崩壊。これにより被害が広がり、議員を含めた50名が死亡、76人が重症を負い、少なくとも36名以上がビルの下敷きになったと報じられた。

警備にあたっていた警察官による実行犯の現行犯逮捕により事件そのものは収束していったが、この出来事はまるで狙われたかのように世界の流れを変えていた。

 


 

「ケホッゴホッ…だれ、か………たす、けて……!」

 

火が回ってきた空洞に、大量の黒煙が漂っている。

ビルの瓦礫に下敷きにされた少女は涙で顔をぐちゃぐちゃにし、助けを求める。

 

「みんな……しんじゃって…わたしも、もう………うぅぅ……!!」

 

だが、現実は残酷すぎた

爆発の際、周りにいた人は彼女に目もくれず逃げ出し、彼女は彼らの生み出した人波によってもみくちゃにされた。

それでも倒れるビルからは逃げきれず、ビルの瓦礫によって潰された。

だが、彼らの身体がクッションとなり、奇跡的に彼女は一命を取り留めた。

皮肉にも、少女を助けようともしなかった人達がその肉体で彼女を助けたのだ。

 

(もうすこしで、そとに……パパたちに……あえるんだ……!)

 

先程までとても息苦しかった呼吸が、少しずつ楽になっている気がした。煙が流れ、火元から離れているということは、瓦礫の外が近いのだろう。

それに希望を見出した少女は瓦礫の隙間を這いずって必死に外へ出ようとする。

もう少しだ。そう思って最後の力を振り絞ろうとするが……

 

(あ、れ……ちからが、はいらな…………………………………………)

 

そこで、少女の意識はプツリと途絶えてしまった。

 

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