インフィニット・ストラトス 〜チョウゾの新たな歩み〜   作:すくりゅうあたっく

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第10話 継承(フュージョン)

学会での発表後の世間では、αスーツへの反応は上々。様々な企業や投資家からの出資により、十分すぎるほどに開発資金を得られた。

 

「やはり倉持が乗って来たか。……まぁ生産ラインは小規模なものでいいだろう」

 

蝉がやかましく鳴いている中、マオがプリントアウトされた書類を見ながら麦茶を飲む。今日は随分と暑い。

スーツの素体や量産化等のマニュアルは発表前から完成させていたので、残すは生産ラインを組むのみ。……ただ、これに関しては大企業である倉持技研に外部委託をしなければならなかった。

致命的なまでに人員が足りないのだ。マオは助っ人に近い立ち位置なので正社員ではない。そんな実質2人の超零細企業が生産ラインを作ろうものなら、一日中そこに張り付かなければならない。そもそもマオが正社員だとしても2が3になるだけだ。

 

(……そろそろあれに手をつけるか)

 

資金源は確保し、篠ノ之 束からタイムクリスタルの提供もしてもらっている。そして、大軍神さまから賜った己のスーツという最高の素体が手元にある。

なら、いよいよあのスーツの開発に手を出すべきだろう。

 

最強の戦士サムス・アランが纏っていた、伝説のパワードスーツをこの手で作り出すのだ。

 

 


 

時は進んで3年後。移転して新たなビルに居を構えたスターランドインダストリー本社にて、中学二年生となった真央は社長室に呼ばれた。

 

(雪美さんに呼ばれて来たけど……いったいなんの用なんだろう……)

 

緊張と不安で落ち着けない真央は、キョロキョロと周りを見渡す。真央が想像していたよりもずっと質素な感じのインテリアが置かれている。彼女が想像する社長室というものは高そうな椅子やテーブルに、いかにも偉そうな場所にある社長専用の机があるのだが…ここにはそういったものが一切ない。

どちらかと言えば事務室の一角を想起させるような部屋だった。

 

「待たせてごめんね! ちょっと会議が長引いちゃって……」

 

「あ、いえ……全然大丈夫です」

 

「「「…………」」」

 

社長室のドアが開き、雪美とマオが出てくる。しばし沈黙が流れ、いつものぶっきらぼうな感じでマオが口を開く。

 

「貴様にしかできん仕事がある」

 

「私にしか、出来ない仕事……?」

 

「うん。さっきの会議もその内容について時間がかかっちゃったの」

 

マオの発言に真央はそんなものがあるのかと首を傾げ、雪美の説明を聞いて事ゆ重大さを感じ始める。そういえば、いつになくマオの表情が険しい。マオがあの表情をしている時は、必ず大事な話をする。

 

「……貴様は今から、我々スターランドインダストリー開発のとあるスーツのテスターになる。これは決定事項であり、一切の異論は認められない」

 

「え……」

 

提案ではなく、命令。マオがこの仮初の姿をとってから、今までこんな事は1度も無かった。助言こそすれど、どんな時も必ず決定権は真央にあり、意思が尊重されていた。

今までにないそれが真央の緊張を強め、彼女はゴクリと唾を飲む。マオは右の手袋からホログラムを出し、人型の何かを映し出す。チョウゾ特有の細い腕や脚に合わせたものとは異なり、むしろ地球人が使うものだと思わせるシルエットだった。

 

「……これ、おじさまのスーツそっくりだね?」

 

「形は違えど源流は同じものだ。チョウゾの遺伝子を持つ生物でなければ装着できん」

 

「……どうやってもチョウゾの遺伝子無しには設計出来ないんだって。それで、おじさんがテストする訳にはいかないから貴女に白羽の矢が立ったワケ」

 

どうやらチョウゾの遺伝子が無ければ装着すら出来ないようで、真央にしか出来ないのは比喩でもなんでもないらしい。

するとマオの輪郭がブレて、本来の姿に戻る。彼は3年の月日で傷一つ無くなったパワードスーツを纏い、真央の眼前にアームキャノンを突きつける。

 

「今ここに問う。その身一つで銀河に平和をもたらす最強の戦士(メトロイド)となる覚悟───この世の平和に全てを捧げられるか?」

 

レイヴンは真央に平和の為に全てを捨てるだけの覚悟が有るかを問う。

しばしの沈黙の後、真央は─────

 

「……私は、まだ全てを捨てる覚悟はできていないと思う。でも、私はおじさまに助けてもらった! だから、やらないなんて選択肢は取りたくない」

 

「……それは是としているのだな?」

 

レイヴンの再度の意思確認に真央は強く頷き、彼はしばらく瞑目してアームキャノンを降ろす。

 

「……いいだろう」

 

レイヴンはそれだけ言って、淡い緑の光を掌から出す。光が真央を包むと、ホログラムは戦士の鎧を象った。

親鳥の暗い青と銀を纏う鎧とは対称的な薄い黄と赤の鎧を見回している真央の肩を掴み、ついてくるように促す。

 

「ついてこい。未熟者」

 

レイヴンは深紅のマントを翻しながらそう言って社長室の隠し扉を開いて先へ進む。

冷たく突き放すようなその言い方には、確かに微かな優しさが漏れ出ていた。




これにて第1章は終了ッ!!
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