インフィニット・ストラトス 〜チョウゾの新たな歩み〜   作:すくりゅうあたっく

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第2話 独りにはさせない

◇◇5日後◇◇

真央の退院の目処が立ち始めた時、担当の医師が暗い面持ちで病室に入ってくる。

 

「真央ちゃん……君に伝えなければいけない事がある。─────君の両親は死んだ。……選挙カーの爆発に巻き込まれ、即死だったそうだ……」

 

真央は5歳にして、どうしようもない現実を告げられる事になった。

少女の希望という色のあった世界はその瞬間、崩れ落ちて無くなる。

 

「…パパも、ママも、しんじゃった……? うそ、だよね…? ねぇ!!!! おじさん!! うそっていってよ!!!! ねぇ……!!!」

 

少女の悲痛な叫びが病室に響く。ぼろぼろと涙を零し、縋るように医師の裾を掴みながら嗚咽する。

 

「……残念だが、これは現実なんだ。……君は生き延びた以上、これから生き続けなければいけない」

 

《………………》

 

医師からは辛くとも現実に向き合えと言われ、自分を助けたと言う“声“は無言を貫いていた。

子供である真央の心は、ほんの少しの切っ掛けで折れてしまいそうなほどズタズタになっていた。

 

「……パパもママも、もういないのに……どうすればいいのぉ…………!!!」

 

“声”は嘗て兵士を育てていた。だが、子は育てた事が無かった。

しかし、今の状況をカメラ越しではあるが……見た事があった。

自然と言葉が紡がれていく。

 

《……泣くな》

 

低めの声が、抑揚なく真央に涙を止めろと言う。

だが、それはあの時(・・・)向けた疑念や嫌悪といったものが混じってはいなかった。

 

「うっぐ、そんなの、むりだよぉ……」

 

《お前はたった1人の生存者だ。死んだ者達はお前まで死ぬのは許さないだろうな。…確かにお前の親は死んだが、お前が死ぬ事までは望んでいないはずだ……寧ろ、生き延びていて欲しい、生きていてよかった……そうあの世で考えているだろうな》

 

「!」

 

真央が目を見開いている中、”声“は昔を思い出していた。

少し遠いようで近い、後悔もあった記憶を……。

 

 

 

 

 

 

あの時は酸性雨が降り注ぐ惑星ゼーベスとしては珍しく、雲ひとつ無い綺麗な夜であった。

星明かりの僅かな光が降り注ぐ中、友は夜空を見上げこう呟いた。

 

────なぁ、レイヴン。

 

────なんだ、グレイ。

 

友の呼びかけに、私はぶっきらぼうに反応する。

 

────お前はサムスを見てどう思ったんだ?

 

────フン。私の遺伝子を使ってはいるが、未熟ここに極まれりだな。身体能力にかまけていてはいつまで経っても雛のままだ。あのままでは私の軍で最も弱い兵士だとしても、武器を使わずとも無力化できる程度には弱い。とてもではないが、あれに銀河の守り手が務まるとは思えん。

 

私の棘のある物言いに友は苦笑するが、すぐに だがな?レイヴン。と付け加える。

 

────私達チョウゾは……いや、私を含めたソウハの者達はサムスの持つ優しさが、これからの未来をより良く導くと思ったんだ。……お前にとって優しさは不要なものなのかもしれないが……私はそれに希望を見いだした。

 

仮面越しであるにもかかわらず、私の不機嫌な顔を見抜いた友はあの時、確信に近いものを抱いていた。

しかし、友の顔はひどく暗くなっていく。

 

────……本音を言えば、私はサムスに死んで欲しくはないんだ。銀河の守り手だとか、K-2L襲撃の原因であるチョウゾとしての責任とかではなく、1人の親として子に死んでほしくない。平和な惑星でひっそりと暮らしていて欲しいとも思っている。本来ならただの我儘の筈なんだが……K-2Lの人達も同じような事を思っている気がするんだ。……そんな顔をするなレイヴン。お前も子を持てば分かる感情さ。

 

────……そうか。お前が言うなら、そうなのかも、しれないな……。

 

 

 

 

 

それが、グレイヴォイスと私の、友としての最後の会話だった事を私はよく覚えている。

 

「……そう、だよね。うん。死んじゃったパパとママのぶんも、わたしがいきていかなきゃ。それに、おじさんもいる。わたしはひとりぼっちじゃないからね!!」

 

顔は分からない。だが、声は間違いなく覚悟を決めて立ち直った事を確かに証明していた。

 

《……そうだ。私がいる。お前は独りではないし、独りにはさせん。……そういえば、私の名前を教えていなかったな》

 

「おじさんの、名前……!」

 

《私の名は────》

 

 

 

 

レイヴンビーク

 

 

 

 

 


 

爆破事件から1週間と少しが経った頃、大鷹夫妻の葬儀が行われた。

喪主は島星 一という人物で、真央の父親と親友だったそうだ。

あれから真央は完全に立ち直り、辛い過去を引き摺るような真似はしなかった。

 

《……もう、大丈夫なのだな?》

 

(うん。パパとママのためにも、しあわせに生きたい)

 

念の為真央に両親の事を聞いたが、杞憂に終わった。

 

 

 

葬儀はスムーズに進行されたが、相続がそうはいかなかった。

大鷹家は既に親族を含めて大鷹夫妻と真央以外は他界しており、大鷹家自体が政界でも有力な一族だったのもあり、様々な政治家が遺産をめぐり、水面下での睨み合いを始めてしまったのだ。中には真央を引き取ると主張し、その遺産を狙う者までいた。

流石にこればかりは意見はできても、私が決める事は出来ない。

最終決定権は私ではなく真央にある。

 

《……どうする? こいつらの殆どは間違いなく両親の遺産が狙いだ。この中にお前を善意で引き取ろうとしてる者はほぼいないと見た方がいい》

 

(……うん、決めた。わたし、パパとママの遺産はいらない。パパとママが貯めたお金だけど……なんだか、この人たちとはいたくないの)

 

《……そうか。ならば私は何も言うまい》

 

「……わたし、遺産はいらない。だから、おじさんたちが決めてぜんぶもっていっていいよ」

 

「ッ! しかしねぇ真央ちゃん。相続を放棄してしまったら、君は生きていけないよ? 引き取り手も決まっていないのに、相続しないと言うのは気が早いと思うがね……?」

 

先程まで立っていた真央が立ち上がり、相続の放棄を告げる。

1人の老人がそれを止めようとするが、意外な所から声が上がった。

 

「では、私が引き取りましょう」

 

先程まで沈黙を貫いていた喪主の島星が、真央を引き取ろうとする。

 

「私は大鷹夫妻の遺産の相続権を持っていませんし、この子が遺産の相続を放棄する以上、そういったしがらみが無い者が引き取った方が良いでしょう。何か異論はありますか?」

 

「……異論は、ないで、す……はい」

 

島星は有無を言わせぬ程の威圧感で周囲を黙らせ、やや強引ではあるが真央の引き取り手になる事が決まった。

 

 




遺産関係の描写、合ってるかなぁ……矛盾とかないといいんですけど……大丈夫……だよね?
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