インフィニット・ストラトス 〜チョウゾの新たな歩み〜   作:すくりゅうあたっく

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第5話 バイオ金属と仲間

スターランドインダストリーの事務室にて、現状ただ1人の社員である水木(ミズキ) 瞳子(トウコ)は大好物の炭酸飲料を飲んでいた。

 

(雪美先輩、随分と遅いなぁ……まぁ、たまには先輩がいない職場も悪くな「水木くん水木くん!」!? ングググ……ゲホッゲホォッ!!」

 

不意にドアが蹴り開けられたせいで水木は盛大にむせた。

ここまでむせたのは彼女の人生で5指で数えられるレベルだ。

 

「って、なんでそんなむせてんのよ。ほら、とんとんとん〜」

 

「先輩のせいです……けふっ。あと、私は赤ん坊じゃないのでそれはやめてください。あまりの羞恥心で自殺してしまいそうです」

 

「そこまで言う? まぁそれはそれとして……」

 

いつも彼女にする冗談から一変、雪美は仕事の顔になっていた。

獰猛な笑みを浮かべているという事は、多分余程の案件なのだろうか。

 

「仕事を1件勝ち取ってきたわ。……でも、今回は倉持技研からの依頼じゃない。完全に個人からのもの」

 

水木は実質的な親企業である倉持技研からではなく、完全な個人の依頼とは随分と珍しいものだと思いながらも、少しして納得する。

 

「まぁ倉持技研が開発してるISもだいぶ基礎が固まってきましたからね。現状装甲材を専門に扱ってるうちの仕事はしばらくないでしょうし。それで、依頼主から依頼料とかその他諸々の書類は貰いましたか?」

 

「え? 貰ってないけど」

 

「……タダ、ですか? え? ……どういうことですか先輩。そんな案件、断りたいならちゃんと断らないと!」

 

雪美の発言に、水木は己の耳を疑った。

タダ。無償。ノーリターン。収益0円。いつから自分の働いているスターランドインダストリーは個人の口約束を引き受ける慈善団体になっていたのだろうか。

水木はすぐさま抗議するが、雪美はそれを宥める。

 

「まぁまぁ水木くん、ちゃんと話は最後まで聞きなさいな。これは私の方からお願いしてもらったものなの」

 

「……むぅ、それが依頼料ナシとどう繋がるんですか」

 

「実物を見た方が早いかしら。依頼主にはこれを提供してもらったの」

 

そう言って雪美はレジ袋から大きな金属の何かを取り出す。

 

「これが依頼主の…って、なんてもので運んでるんですか! これはスーパーやコンビニの商品じゃないんですよ!? まだネット通販の商品の方が丁寧な梱包ですよ! 梱包の()の字もないじゃないですか! 雑にも限度ってモノがあります!!!」

 

「包めるものがこれしか無かったの。それに、めっちゃ頑丈らしいから大丈夫よ…たぶん

 

水木は気でも狂ったのかと思うほど雑な運搬方法に今度は雪美の正気を疑うが、どうやら正気のもとでの行為のようだ。

 

「はぁ…………幸い傷はついていないようですね。…あれ、思ったよりもずっと軽い……」

 

手袋をつけて傷の有無を確認した水木は、手に持った金属の軽さに驚く。

 

「あ、気がついた? それはそうと、依頼内容はこの構造の解析と再現よ。そして成功した場合の報酬は更なるサンプルの提供」

 

「…私達の技術を試してるって事ですかね? ですが手がかり無しにこれを再現するとなると……」

 

「そういうことでしょうね……まぁ、手がかりがあるにはあるから100%無理ってわけじゃないけど」

 

そう言って雪美は依頼主(レイヴンビーク)から借りたノートを水木の机に置く。

 

「今どきアナログで、しかも鉛筆を使って書いているなんて珍しいですね。どれどれ…うわ、何この文字……これはイラスト以外は期待できそうにないですね……」

 

「使えそうな情報は…ここと……あとここね。早速取り掛かりましょ」

 

器具を取りに倉庫へ向かった雪美のギラついた目を見た水木は、徹夜が確定した事に特大のため息をついた。

 

「はぁ……こんなことならエナドリかコーヒー買ってくればよかった……」

 

 


 

 

レイヴンビークがパワードスーツの一部を提供して1週間が経った日の昼、雪美が真央の部屋に入ってきた。

 

「こんにちは真央ちゃん……」

 

「はいはい雪美さん……って、すごく酷い顔じゃないですか! 何があったんです!?」

 

真央が少し面倒そうに振り返ると、ひどくやつれて目元に大きな隈をつくった雪美が目の前にいた。

今にも倒れてしまいそうな雪美の体を支えようとする真央だが、雪美はそれを手で制して床に座り込む。

 

「心配しないで…ちょっと…三徹しただけだから……」

 

「3日も寝てない!? ちゃんと休まないとダメですよ!! 」

 

「興奮しすぎて眠れなかったのよ。それで、せっかくなら進めちゃおうかな〜って……は、はは……」

 

「あ、おじさまが話したいそうです。かわりますね?」

 

レイヴンビークに切り替わった真央の目付きが鋭くなる。

 

「……して、わざわざ来たのなら成果はあったのだろう? 見せてみろ」

 

「勿論。コストの問題でこんな大きさしか作れなかったけど、再現は完璧のはずよ」

 

雪美は目元を擦りながら、ポケットから掌に乗せられる位の大きさの金属片を取り出し、真央(レイヴンビーク)に渡す。

すると、金属片を持った真央(レイヴンビーク)の掌からXとしての一部が染み出してくる。

 

「………………ほう。……いいだろう、合格だ」

 

しばらくしてXが掌に引っ込んで、真央(レイヴンビーク)は合格を告げた。

 

「いよっしゃ!」

 

雪美はガッツポーズをして喜びで舞い上がっているが、ここでレイヴンビークからひとつの提案をされる。

 

「さて、貴様の持つ技術は概ねこれで判断できた。ここからは私の正式な依頼だ」

 

「え、今すぐ!? 流石の私でも三徹目はキツかったし、ちょっと寝させてほしいかも……」

 

雪美は休息を要求するが、真央(レイヴンビーク)は話を続ける。

 

「今すぐやれとは言っていない。それに、これから依頼する計画は非常に長期的に行うつもりのものだ。今回の様にすぐには終わらん」

 

「……内容にもよるわ。話を続けて」

 

「私の作るパワードスーツの開発に協力してもらいたい。勿論、対価は技術そのものだ」

 

「へぇ……そのパワードスーツって、あのノートにあったやつ?」

 

「そうだ。協力するかはよく考えて決めろ。私にも貴様にも時間はまだたっぷりとあるからな」

 

「……いえ、その必要はないわ。それ、乗った。あんな凄い技術を見せられたら乗らない方が損に決まってるじゃない! えぇ! スターランドインダストリーの全てをかけて貴方のパワードスーツ開発に協力するわ!」

 

雪美の啖呵に真央(レイヴンビーク)は目を見開き、僅かに笑った。

 

「くくく……その答え、確かに受け取ったぞ。これにて契約成立、だな。では後日ノートとデータの内容を翻訳し、そちらに届ける。それと、仮初とはいえ肉体も完成したのでな……そちらの準備が出来次第本社に向かう」

 

「仮初の肉体……?」

 

「それも後で伝える。真央とも予め相談は済ませているから問題ない」

 

「ん〜……まぁ今は聞かないでおくわ。ふわぁ〜……そろそろ限界だし、リビングで寝させてもらうわ……おやすみなさい……」

 

「あ、おやすみなさい、雪美さん……」

 

雪美が大きな欠伸をしておやすみを告げると、いつの間にか入れ替わっていた真央から返事が来た。

その日の夜、帰ってきた(ハジメ)に叩き起されたのは、また別の話……




ここにIS側の要素が未だにチョロっとしか出ていない作品があるそうですよ
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