妹の子   作:脳破壊された人

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第一話:ある意味地獄

 

 この世界では誰もが嘘をつく。

 誰かを悲しませる嘘、誰かを楽しませる嘘、誰かを守るため――そして、誰かを愛し愛すための嘘。だけど嘘は結局嘘であり、誰かを……他人を騙すモノに他ならない。

 バレれば嘘をついた方、そしてつかなかった方両者が傷付き挙げ句の果てには信用を失う。一時は凌げるがバレたときが大変な百害あって一利しかないそれが()

 え、そんな事を語る俺は嘘が嫌いかって?

 いやそんな事はない、むしろ肯定するし自分が嘘つきだからこそそう言えるのだ。

 俺は断言しよう、嘘は矛であり盾である。

 ――使い方を間違えれば痛い目を見る必要悪と言っていい代物だ。

 

瑠璃(ラピス)ーご飯の時間だよー」

 

 ……そうだから俺は今日も嘘を――というか何が何でも逃げ延びる。

 迫り来る黒髪の美少女、そんな彼女から隠れて愛用している哺乳瓶を探すのだが、訳あってハイハイしか出来ない赤ん坊の体力で逃げ切れるわけがなく……。

 

「やっと見つけた。ダメだよラピス、そろそろお腹減ったでしょ?」

 

 首を全力で横に振る。

 お腹は減っているが、全力で哺乳瓶を使うから止めて欲しい。

 始まるのはしばらくの攻防戦、いつも通り俺の諦めの悪さに負けたのか哺乳瓶を持ってきてくれた。

 

「……なんでアクアもだけど哺乳瓶が好きなんだろう?」

 

 そんなの決まっている。

 こっちの中身は二十代の男性なのだ。

 しかも前世の妹からなんて地獄過ぎる――いや本当に考えてくれ、何が悲しくて妹の授乳を受け入れなければいけないのだ? そんなの拷問というか、もう尊厳破壊とかのレベルじゃない。

 語り忘れていたが俺には秘密がある。

 それは前世がある事、そしてもう一つは今世が前世の妹の子供ということ。

 訳が分からないかも知れないが、どれだけ疑ってもこれは事実であり――受け入れるしかない現実なのだ。最初生まれた時は疑った。え? なんで生きてるの? から始まり、わぁ母親が妹だぁで絶望し……。

 

「兄貴気持ちは分かるが、そこまで全力で拒否しなくていいだろ」

「気持ち分かるなら察してくれよ、俺は二重でつらいんだよ」

 

 前世の妹であり今世の母であるアイが仕事に出かけたことで生まれる赤ん坊だけの時間。そこで話しかけてきた弟に同情されながらもそう言われたのでとりあえず言葉を返した。

 話しかけてきたのは金髪の弟、こいつも俺と同じで前世持ちらしく……前世も男だったことから気持ちは分かってくれる。

 

「ルビーは?」

「おむつ交換して貰ってる」

「はーなんで私がこんな仕事してるんだろう」

 

 聞こえるのはそんな不満、何かと思えば妹のおむつを替えようとしていた社長夫人がゴミ箱に何かを投げつけてる場面だった。

 

「……逃げてくんなよルビー」

「いやだって怖いじゃん、それよりこの人頭おかしいんじゃないの? ママに尽くせるのは幸福以外の何物でも無いでしょ」

「いや正当性はあっちにあるぞ」

 

 怖いこという妹と冷静な弟、相変わらずな二人を見ながら俺は社長夫人を観察する。

 暫く見ていると彼女は文春に俺等の事を売ろうとか提案してきた。

 

「どうする、二人とも殺す!?」

「無理だ体格差がありすぎる……」

「武器もないぞ――いや、アクア机を押せ転ばせる」

「……あれ冗談のつもりなんだけど、もしかして二人は本気?」

 

 とりあえずどうするか、俺の目的は今世もアイの幸せ。

 ……それを邪魔するなら何でも出来るが、正直この人は利用できる気がするのだ。

 今まで見てきた情報的と信じやすさと頭の緩さを考え――。

 

「ちょっと一芝居打つ、手伝えお前等」

 

 机の上に乗った俺は、雰囲気を変える。

 転生という状況は異常なのだ――喋れる利点歩ける力、その全てを利用して騙しきってやる。

 

「斉藤ミヤコよ、貴女の渇きはシャンパン如きでは癒やせぬぞ?」

 

 子供の声だから低くは出来ないが、とりあえずそれっぽいことを言う。

 

「……おい、何するんだよ」

「まぁお兄ちゃんに任せとけ、合わせてれば良い」

 

 小声そう言い、困惑するミヤコさんに言葉を投げかける。

 

「我らは神の使い、今貴様はドッキリかと思っているな?」

「いやドッキリでしょどう考えても、赤ちゃんが話すなんて……嘘だぁ」

「……貴様の常識では赤子は喋るのか?」

 

 アクアも乗ってきたのか、俺に合わせるようにそう言ってくれる。

 ぎこちないが、それを言ってくれて安心した。とりあえず、信じる土台を作りあとは嘘を重ねるだけだ。あとはルビーがなんか言ってくれればいいが……。

 

「慎め下郎、我はアマテラスの化身。貴様等がいう神の使いぞ」

 

 うわぁ、雰囲気ある。

 俺から見てもやばいオーラ出てるし、完全に空いても恐縮した。

 ならばここから畳み掛けるしかない、人間というのは情報を――それも有り得ないモノばかりを与えれば混乱するし、それが多ければ信じやすくもなる。

 だからこそ、この状況を使わない訳にはいかない。

 

「貴女は目先の利益に踊らされ、与えられた天命を投げ出すつもりか?」

「……天命?」

「私のママの星野アイは芸能の神に選ばれた娘、そしてその子ら出る我らもまた大いなる使命を持つ三つ子、それを守護し育て守るのが汝の天命であるだっしぃそしてそのままいけば神に背いたと判断され、汝には天罰が下るだろう」 

 

 凄いなルビー、俺が求めたものよりも良い物を演じてくれる。

 ならば俺もそれに答えて、アクアの助け船に更なる補足をしようじゃないか。

 

「しかも死ぬだけでは足りないだろう、輪廻を巡っても貴様は苦しみ続け未来永劫イケメンと出会えず生を終え続ける」

「具体的所か最悪!? 私どすればいいんですか!」

「簡単な事よ、ママと我々の秘密を守りそして子等の言うことを全部聞くのだ」

「さすればイケメンと再婚でき、推しの人気も上がるであろう」

「マジですか!? やります!」

 

 そこまで言った所でノリノリで家事を始める斉藤ミヤコさんの姿を見て、俺達は兄妹でハイタッチをした。

 

「それにしても凄いな二人とも、演劇でもやってたのか?」

「いや俺は一切やってない」

「私も初めて、ちょっと変わったとこで育ったから出来たと思う」

「へぇ、二人ともそれなら才能だ。将来演劇でもやってみればどうだ?」

 

 そこまで言って今日の活動限界が来た俺は、ベッドに戻り寝ることにした。

 久しぶりにやった演技っぽいこと、ちょっと疲れたしゆっくり休もう。

 

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