採石所
石切場とも呼ばれるここは、石、岩、宝石等を採掘するための場所らしい。詳しくは知らないがここもそんな類いなのだろう。
入り口は木製の柵で作られ、中は綺麗に切り崩された整頓されたような岩肌が見えた。
その入り口から見た中は一面の烏だった。
気を付けろ、と言った手前何かしらの警戒が必要だと思われたが。
不穏な空気どころか明るく照らされた場所はとても静かであった。
「なにか感じるのか?」
先ほどの表情からなにもないことはないとレオンが聞き返してくるが、巨人どころか人の気配すらない。
最もあいつらに気配があるかどうかも別なのだが。
「気のせいだといいんだが・・・」
そう言いながら中に入る。少し歩くと烏の一羽が飛び立った。と、同時に一斉に飛び立つ烏の群れ。
思わず腕でガードして視界を遮ってしまう。腕を下ろして最初に見たのは何時から居たのか?犬が一匹立ち上がる所だった。
「まぁ、警戒するに越したことはないな。」
言いつつレオンがライフルを向ける。スコープ付きのそれは商人が「おまけしとくぜ?!へっへっへっ。」と気前良くくれたものだ。遠距離から発砲、着弾。
威力が高いライフルの弾は頭を吹き飛ばし尚奥の壁まで飛んでいったようで、奥で弾ける音が聞こえた。
見渡せば作業小屋のようなものが見える。中にはここで使う道具などが入っているのだろうそこから音につられてもう一匹出てきた。
「今回はこれだけか?」
こちらを見つけて一気に距離を積めてくる。狙いはレオン、だが。
「ふっ!」
飛びかかってきたのを手刀で叩き落とし、倒れた所にナイフを投げる。喉元辺りに突き刺さったそれは致命傷だったのかピクリとも動かなかった。
「片付いたか。・・・どうした?」
あまりに鮮やかな手技に呆然としていた俺を見て聞いてくる。
「い、いやぁ。さっきまで苦戦してたのが嘘みたいだと思って。」
実際、数が少ないとは言えあの機動力などは驚異である。それを何事もなくやってのけたあの技量は一介の兵士でも不可能だろう。相手が人間でないならなおさらである。
「難しいことじゃない。動きは単純で狙いはこちらの喉辺り。邪魔が入らないなら飛びかかってくる瞬間を見極めればできる芸当だ。」
まぁ、経験者だしな。とも付け加えて刺さったナイフを拾いに行く。さらりと言うが同じこと出来るかと言われたらやる自信はない。どれだけ強くなったと思っても遥か先に居る。これが、
「これがラクーンの英雄か。」
ボソッと言ったその言葉は、しかしレオンには
「止めてくれ。」
「へっ?」
「嫌いなんだ。その二つ名」
顔だけ振り向いてそう言って奥へ進んでいった。なにか思う所が有るのかそれとも違う知らない何かか。
戸惑いながらも先を行くレオンに追い付くために駆け出した。
石切場の奥は整えられており、途中祠のようなものがあったが鍵穴に合う鍵はなかったため一旦保留へ。階段を降りて観音開きの扉を開ける。
「やっぱり居たな?」
入り口前に青い炎の燭台。そいつの傍らには何時もあったそれは彼の隣でも煌々と燃え上がっていた。
「よぉ!良い商品揃ってるぜ?」
今回は店構えだ。大棚の奥で商人は何時もどおりコートを広げて商品を見せてきた。
「あんたがたならやってくれると思ったぜ」
そう言って広げたコートから紙をとり出した。いったい何時どこから見てるのか双子の墓の報酬、スピネル二つが用意されていた。
一体何時見てたんだ?と言う問いには何時もの情報料を求められた。貧乏って悲しい。
「弾の補充がしたい」
とレオンがいって見せて貰ったライフルとショットガンの補充を終わらせ、今回は安くすんだ。
「その武器、整備はしてるか?安くしておくぜ?」
「いや、自分で出来る。」
と言ってのけるレオンと違って俺はショットガンなどの専門的な知識は持ってなかった。
「少しいじったぐらいで強くはならない。」
と言われたが試しに、と言うことで見て貰った。
「任せな。かんっぺきにしあげてやるぜぇ!」
こいつこんな喋り方だったのか?
ゲームだと全編英語だったのだが何とか鈍り?とかだとこんな感じなのか?それとも個性か?
不安げなレオンと共に軽食を平らげていく。曰く、食えるときに食っておくのも兵士の嗜み。だそうだ。
「そら、出来たぜ?」
「早いな。」
十分位だろうか?整備と言うには物足りない時間で出されたそれは、何故か手に馴染む仕上がりだった。
「威力と精度、あと持ち手を少し削った。後半は、まぁサービスだ。死なれたら商売できないしなぁ」
不吉なことを言って笑う商人。悪気はないのだろうがこの状況だ。取り敢えずスルーする。
「有り難う。出来映えは実践で試すよ。」
「いや、ちょうど良いから一発試しておけ。」
レオンの警告は最もだ。試しとは言え知らない誰かに武器を預けたのだ。
頷くと階段を降りた。下は川なのか桟橋があってそこで試してみることにした。
弾を込め、コッキング、射撃。
音が反響し水面に弾の後と水柱が立つ。排莢した空薬莢が床に音を響かせた。
上に戻って報告。
「問題ないようで良かった。」
心底ほっとしたレオンを見てどれだけ無神経だったかを思い知らせれる。命を守る武器を他人に預けると言うことは信頼の証そのものなのだ。金で動くとは言え身知らずの商人に預けると言うことがどう言うことか。
「すまんレオン。心配掛けた」
「良いってことさ。行こうか」
「もう行くのか?又来いよ。生きてな!」
商人に礼を言い店の向かいに有った扉へ進む。扉を開けると広い場所に出た。ここにはたしか岩を落とされる道があったはずだが?道どころか見渡せる場所から見える景色は地図に有った湖だった。
「レオン!あそこ!」
二人で双眼鏡を覗く。
船の上には人が二人。なにか布袋を放り投げるとどこかへ行ってしまった。
「なにか捨てた?」
その場所から轟音と共になにかが飛び出した。恐らく布袋を飲み込んだのだろうが遠すぎて良く見えない。
「湖を渡るならあれを相手にしないといけないのか?」
「どうやらそうらしい」
嫌がる俺をレオンがなだめる。この光景も馴染みになってきたようだ。ため息をつきながら探索を開始する。
敵は居ないが小屋の中からいくつかの弾と金、宝石の類いが見つかったが。一番大きかったのは船があったことだ。ただ問題は、
「燃料が無いな。」
そう、動かないことだ。近くの張り紙には燃料は奥の養殖所加工室に有るらしい。
「仕方ない。取りに行こう」
レオンの提案に賛同して背後の洞穴へ。奥に行くと池なのか沼なのか、そこに組み立てられた橋を軸に道が作られていた。
「ここが養殖所?」
「らしいな。ここのどこかに燃料があるはず。」
「セオリーどおりなら一番奥に見える小屋かな?」
指を指した先には少し大きめの作業小屋が見えた。
「下に降りるしかないのか。戻ってこれるのか?」
言いつつも二人で降りられる場所へ。
「うああぁぁ!」
「んごぬぷ」
進んだ橋が崩れてレオンにくらべてひどく間抜けな声で落ちる。しかも顔面から。
「うぇぇ、少し飲んだ・・・。」
「クソッ、最悪だ。」
濡れた服が重く感じる。早く上がりたい所だがそうも行かなかった。
遠くから今の音を聞き付けたのか声が聞こえた。言葉はわからないが恐らく気づかれている。
二人顔を見合わせて上がれる場所を探すため出来るだけ静かに歩き出す。
嵐の前の静けさのように、二人の足音以外はもうなにも聞こえてこなかった。
意外と皆さんとあることに気づいてらっしゃるようで。いや、ちゃんと伏線解りやすく貼ってると言えば貼っているのですが。
次回
攻城戦再び
牛頭突撃
燃料