転生バイオハザード レオンと俺と生き抜く世界   作:黒世界

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第十七話 襲い来る過去 交わらない心

昔不良に殴られたことがある。

顔を殴られ、鼻血を出して尻餅をつく。胸ぐらを捕まれ脅しをかけられながらさらに三発。

彼らは笑いながら財布から金を抜き取り、文句を言いながら去っていった。

口が切れて血の味がした。

人が来ない裏路地、助けは来ず、泣きながら帰ったのを良く覚えている。

道すがらすれ違う人たちの視線が自分を更にみっともなくさせた気がした。

あれから何かが変わっただろうか?

陰キャとして成長し、ろくに就職も出来ず、アルバイトで生計を立てる日々。

周りは出世し、結婚して子供に恵まれる中。実家で悠々自適に困る事無く生きていく。

ろくに喧嘩もしてこなかった。

カッコつけてナイフを握ったことなら有った。

銃などモデルガンぐらいだ。

口喧嘩だって強くない。

そんな俺が?よりにもよって?バイオハザード?しかも相棒がレオン?

どうせなら他の小説みたいにチート能力でもくれれば良いのに。

結局どこに言ってもみっともないまま。

今だってほら、隅っこでガクガク震えて縮こまってる。

たいした怪我でもないのに大層に手首を握って。

涙を流して子供のように。

 

「いっ、痛い。痛いよぉ。」

 

映画みたいにカッコ良く出来れば良かったのに。

せめて夢の中でぐらい自分の好きにさせてくれれば良いのに。

そうすればきっと。

レオンだってあんな目で俺を見たりしなかった。

 

「ローグ!?」

 

ひぃ!と振り返った俺を見て、レオンはどう思うだろうか?

一目で見てとれる落胆の色、でも本気で心配しているのも解った。

この状況でも見捨て無いのが良い証拠だ。

正義感が強く面倒見が良い。

それでも、

 

「レ、レオン・・・。」

 

目の前の現状に嫌気を指さないほどお人好しじゃない。

 

「おれ、もう無理だよ。これ以上出来ないよ」

 

レオンの表情が驚きに変わる。

先程までとうって変わった目の前の人物に困惑すらしていた。

 

「何で、こんな・・・。」

 

レオンの呟きが俺に拍車をかけた。

 

「待って、見捨てないで!」

 

今度は痛みを忘れて追いすがる。流石に一歩引くレオン。

だがそれが俺には拒否に見えた。

お互いの最後の希望が途絶える。

レオンの助けを、相棒の無力化を。

 

「解った」

 

レオンが言う。

 

「教会まで戻ろう。さっきの部屋なら待つことぐらいは出来るはずだ。」

 

だがもはや立つことすら叶わない。

泣いてすがるばかりの俺の肩に手を置いて、

 

「俺にはやることがある。お前もエージェントなら最低限自分の・・・。」

 

言葉は続かなかった。俺は自分の不甲斐なさと申し訳なさに下を向いてただ泣いていた。

 

「はぁ、いい加減にしてくれ!」

 

等々レオンがキレた。怒りの声にからだがビクッと震える。

 

「新兵のお守りならともかくこんな!どうしろって言うんだ!」

 

ゲームではクールに、それでいて優しく紳士なレオン。

だがあくまでそれは一般人への話。

「ローグ」は「兵士」だった。

 

「怒鳴って悪かった。」

 

一通り叫んで気が済んだのか突然謝ってくる。彼が謝る事など一つも無いのに。

 

「だが聞いてくれ。俺たちにはもう逃げ場はない。やるしかないんだ。」

 

そう言って投げ出したハンドガンを差し出す。

 

「お前がこれ以上任務をこなせないならそれでも良い。だが護衛の対象がいる以上俺はいつまでもお前を守ってやれない。」

 

ここまでになった俺に尚優しく接しようとする。

 

「ついてこれないなら何処かで隠れて貰うしかない。」

 

俺にとってそれは、(見殺し)に近かった。

だがレオンは待ってはくれなかった。

 

「動けないなら此処でも良い。必ず迎えに来る。出来るか?」

 

頷きたくない。だが頷くしかなかった。差し出されたハンドガンを受けとる。いつも片手で持てたそれが、ものすごく重く感じた。

 

「すまない」

 

再び謝り燃料をもって背中を向けるレオン。もはや言葉すら出なくなった俺は、なにかを言い返す事も、手を伸ばす事も、謝る事すら出来なかった。

項垂れるように銃を見つめるだけになった相棒を置いてレオンが去っていく。

此処にいれば安全なのだろうか?そんなわけない。彼は帰ってこない。この先のストーリでそんな分岐点はない。

そもそもイレギュラーな存在なのだ。

俺は、

俺は、

「斉木」は

「ローグ」は

(此処で死ぬんだ)

体の力が一気に抜ける。

所詮自分なんてそんなもんだと、今更ながらに気がつく。

自分がモブだと思い知ったら涙すら出てこない。

主人公になれると勘違いしてたと解ると何だか少し笑えてきた。

レオンが居なくなった部屋で嘲るように自笑する。

不思議と視界もモヤがかかったように見えた。

外で銃声が聞こえる。

レオンが戦っている。

それが解ると体が暖かくなっていく。

きっと帰ってくる。そう信じよう。

ぱちぱちとはぜる音が聞こえ、次第に視界が真っ白になっていく。

 

「えっ?」

 

顔を上げて現状を確認。

モヤがかかっているのは目が染みるから。

視界が白いのは煙が上がっているから。

音の正体は、

 

「嘘だろ?」

 

小屋が燃えていた。

 

「ローグ!」

 

レオンが走り込んでくる。

 

「あいつ等小屋に火を!」

 

レオンが外で戦っていたのは進むためではない。

小屋を守っていたからだ。

 

「このままじゃ焼け死ぬぞ、立て!」

 

こちらに来て無理やり立たせてくる。

俺はと言うと此処まで来ても申し訳なさで下を向いてばかりだ。

 

「レオン、俺は・・・。」

 

無駄な言い訳をしようとするも言葉が出てこない。だが、

 

「良いんだ。今は生き残ることだけ考えろ。」

 

そう言って腕を肩に回して外に出そうとする。

バンッ!と扉が乱暴に開いた。なにかを叫びながら入った来たのは村人達。

 

「くそっ!」

 

すかさずハンドガンで応戦するも状況は不利である。おまけにお荷物まで抱えている。

ガチンッ!

ハンドガンのスライドが戻らない。弾切れだ。

入ってきた敵が斧を振りかざす。俺を抱えているせいで反撃の体制になれない。

 

(レオンが、死ぬ?)

 

そう考えた時、不意に体が突き飛ばされた。レオンが俺を安全な方に突き飛ばしたのだ。

 

(嘘だろ?)

 

そのせいで反応が遅れている。例え死ななくても任務続行不可能な怪我をするだろうことは容易に予測できた。

 

(そんな、レオン!)

 

無意識の中、俺の体は反射的に動いた。




次回。
たどりつけない背中。
小さな勇気
「斉木」と「ローグ」
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