俺は見た。
俺を突き飛ばしたレオンがそのまま半歩回転して振り下ろす斧を相手の手首を払って防いだのを。
ガチンと地面に叩きつけられ火花を散らす斧と、今度は自分が体制を崩した敵に向かって足で押し出す。
壁側は火で覆われていたためかあっという間に身体中に燃え広がった。
入り口から更に敵が入ってくる。その右手にはセンチネルが握られていた。
とっさに俺はレオンにセンチネルを放り投げる。躊躇することなく自分のハンドガンを捨てると横目で受け取る。蹴り終わると結果を見ることなく入り口へ狙いを向ける。手前の頭に二発、うずくまって奥が見えると更に二発。いずれも頭部へ命中。
「外へ出るぞ!」
言うや否や外へ敵ごと体当たりして出ていった。
俺は後を追おうとしてレオンがハンドガンを捨てたのを思い出す。辺りを見るとすぐそこに有ったのを拾い上げてマガジンを装填・・・しようとしたが規格が合わなかったので断念。直ぐに後を追って外に出た。
そして後悔した。
勿論小屋の中に居れば燃え死ぬだろう。だから外に出る他はない。
だが外は外で辺り一面にクロスボウを持った村人。火矢が装填されたそれは小屋を燃やした原因だった。
それをレオンは最前線で避け、払い、一人ずつ処理していった。しかし、
「くっ、しまった。」
レオンも弾切れ。勿論あちらもマガジンが合わない。
「れっ、レオン!」
とっさに叫ぶとハンドガンを再び放り投げた。
振り向いたレオンがその勢いでこちらにセンチネルを放り投げると同時に華麗にキャッチ!そして
「直ぐに隠れろ!」
言われた俺はハンドガンを額で受けていた。
頭を押さえてうずくまる。だが銃を探す手だけは前に出していた。
再び銃声。レオンが再び奮闘し始めたのだが、今度は火矢が此方にも向けられた。
「あちっ!あちゃあちちあちゃわた」
転がるように壁づたいへ。幸か不幸か狙われにくいところに落ち着けた。ついでに此方からも敵が見えない。
そう、『敵が、見えない』
「ど、どこから」
顔と視線であちこち探すが見えるはずもなく。呼吸と心臓だけが早くなる。
壁づたいに、ゆっくりと、背中を壁に預けたまま移動する。途切れた所で顔だけを半分出して確認する。
ドサッ
後ろに何かが。いや、十中八九敵である。が落ちて来たのを振り向いて確認する。ついでに銃も構えた。
目の前の倒れた敵が動かないのを確認しながら後ろに下がる。その後ろから更に肩を叩かれ思いっきり悲鳴を上げて銃で狙いを定めた。
「俺だ。ローグ、落ち着け。」
ゆっくりと。小さい子を宥めるように語りかけてくるレオンに安堵のため息をもらす。
「レ、レオン。敵は?」
今だ興奮が収まらない俺と対照的に落ち着き払ったレオン。何故なら、
「もう終わったぞ。銃を下ろせ。いつまでそうしているつもりだ?」
指を指されて初めて、今だリロードすらしてないことに気が付く。
慌ててサイドバックからマガジンを取り出すが。銃から取り出したマガジンは落とすわ取り出したマガジンは上手く入らないわ。最早素人のそれであった。
悪戦苦闘しているとレオンがそっと手を出してきた。初めてしてくれた時のようにマガジンを入れ、スライドして、拾ったマガジンと一緒に渡してくれる。
「あ、ありがとう。」
情けなさで最早顔も上げられなかった俺にしかしレオンは。
「良い判断だった。助かったよ」
と、優しく肩を叩いてくれた。
それでも尚、俺は顔を上げられなかった。
レオンが地下で見せてくれたような優しい笑顔と同じ顔をしているとはどうしても思えなかった。
沼地を越えガソリンをいれてから教会への道。俺たちは無言だった。レオンは時たま顔だけ振り返り、ついてきてると解ると速度を変えず歩き続ける。俺はそれを知りながらも何も言わずついていった。村人や犬がいてくれれば少しは気も紛れたのに、こんなときに限って此処は異常なほど静かだった。
「此処で待っててくれ」
行くときよりも遥かに短時間で教会の横に有る小部屋に到着。レオンに促され開けて貰った扉に入る。
「悪いがこれは貰っていく。弾はどれぐらい有る?」
そう言われてショットガンと弾を渡した。弾は案外残っていた。ハンドガンの方はいざというときのために持っておけとの事だった。
「必ず戻る。此処を動くなよ?」
最後に釘を刺してレオンは扉を閉めた。暗い部屋が静寂を更に引き立たせる。
出入り口は二ヶ所。そこに気を付けながら俺は物を動かし、隠れるようにして座り込んだ。
一息ついたらまた泣けてきた。情けなさで涙が止まらない。今の自分が「ローグ」なのか「斉木」なのか。恐らく後者なのだろうが自分が自分で解らなくなっていた。
そのうち泣き疲れて、気が付くとそのままの体制で眠ってしまった。
それが、最悪の選択だと。
まだ俺は知らなかった。
次回
本当の恐怖
暗闇の徘徊
出会ってはいけないもの