中々戻ってこない相棒に痺れを切らし、探しに行くよう頼まれた俺達は暗くうっそうとした森の中へ。
歩きづらい、と言うことはないが所々妙な看板みたいなおかしな形の十字架や針金がある。十字架、と表現したのはその上に馬の蹄のような形の輪が飾るようにかかっているからだ。この地方独特の物なのだろうか?
更に、この辺は人の手で整理されているのだろうか?それとも整理されなくなって久しいのか?道は開けているように見えるが荒れ放題である。本当にこの先に村があるのかどうかも怪しい。
「どこまで行ったんだ?」
レオンの疑問はもっともだ。まだ昼辺りだと言うのに光もあまり指さないような場所で、言うほど遠くに行くとはとても思えない。
「うぇわぁ」
ふと横を見て情けない声を出す。レオンが振り返りどうしたと寄ってくるが、そこに合ったのは。時間がたち、ハエがたかる鹿の死骸であった。
「こんなものでいちいち驚くな。」
呆れながらも行くぞ、っと声をかけてくれる。一言謝りながら小走りでレオンの隣へ。
「本当にこんな奥まで来たんですか?」
まだ胸焼けがする胸を押さえながら聞いてみた。
「解らない。だが見当たらない以上探してみるしかない。・・・大丈夫か?」
答えの返答と同時に本日何度目の大丈夫か?だ。任務に悪影響を及ぼすかもしれない。そう考えるのは至極当たり前の考え方だろう。
「すいません。大丈夫です。」
ダメだと行ったら一人で車まで帰れ。と言われそうなので空元気を見せる。っとそこでレオンが足を見ているのに気がついた。良く見ると自分でも気がつかないうちに震えていた。レオンを見ると、顔を振ってやれやれと言った態度で先に進んでしまった。今まで合わせていてくれたのだろう?先ほどとは速度がけた違いに思えた。
震える足を無理矢理動かし、顔や肩にぶつかる枝に嫌気を覚えながら、板と針金で封鎖されてるような場所を潜る。
そうして見えてきたのは一件の家であった。
農家なのか?鍬などが置かれた庭に寂れた外壁。窓を見ると明かりがあった。
「誰かいそうですね?」
と言う問いに、ああ、と静かに答えるレオンを追い抜き。ここぞとばかりにドアに向かい。ドアを叩く。
「すいませぇ・・・」
ドアを叩くと内開きのドアはあっさりと空いた。レオンと顔を見合わせてゆっくりと中に入る。
「誰かいないか?」
結構大きな声だ。しかし反応がない。人の気配らしき物がないと言うべきか?だが、明かりの漏れた部屋のドアを恐る恐る空けるレオン。
中は、荒れていた。
入って回りを見渡すがこれと言って人がいた形跡がない。暮らす環境は人それぞれだがどうにもここで生活していたと言う気配がないのだ。
廊下に戻ると更に奥へ。突き当たりのドアは鍵がかかっていた。レオン、と呼び掛け右を見ると別のドアがあった。恐る恐る近づくとゆっくりとドアを開けた。入ってみると突然声をかけられた。
「ヒッ!」
びっくりした!心臓が止まるかと思った。やっと人がいた。緊張が溶けた俺は部屋の奥へ向かう住民を追って行く。
「勝手に入ってすいません」
と声をかけるが反応がない。
レオンが流暢な外国語で話しかけるが反応がない。困っていると、
「おい」
と呼ばれる。振り返るとなにかをてにもって見せてきた。薄暗いがそれがなにかはっきり解った。
血のついた、探していた人の警察手帳だ。
「後ろだ!」
へっ?と振り返るがもう遅かった。殴られた左ほほに鈍い痛みが走る。そのまま机に頭を打った俺に突然何かが浮かんできた。
流れるような激痛が頭を刺激する。ぶつけただけではないその痛みと共に今までの人生がフラッシュバックした。ハイスクール、警察学校卒業に国から任務を言い渡されレオンを紹介された経緯まで。しっかりと・・・。
気がつくとレオンが襲いかかってきた村人を倒したところだった。ゆっくりと起き上がると手を差しのべてくれた。
「起きれるか?」
首を軽く傾げて立てと促してくる。その手をとって立ち上がる。いつも通り、自信たっぷりに。
「ああ、もう大丈夫だ」
立ち上がった俺、ローグ・アルビナスは言った。
「そうか」
そう言って死体の元へと向かいなにかを拾い上げる。
「まったく、どうなっているんだ。」
拾い上げた鍵を見せながら呟く。見れば首が折れていた。どう考えても即死だ。
「すまない、油断した」
いつもならこうはならなかったはずだ。任務に集中していない証拠である。
「構わないさ。いくぞ」
そう言って部屋を出ていくレオン。向かう先は先ほどの鍵のかかったドアだろう。レオンに追い付くまでにあの記憶を思い出す。さっきまで見ていた記憶。「斉木」と言ったか?その事を考えたとき、また頭に痛みが走る。
「つっ!」
思わずその場にしゃがみこむ。駆け寄ろうとするレオンを手で制して立ち上がる。
「大丈夫、大丈夫だから!」
怪訝な顔をしていたレオンだったが気を取り直して扉を開ける。中は階段になっていた。先の見えない闇の中をゆっくりと降りていく二人。照らす懐中電灯だけが命綱だ。
「おい!」
突き当たりで探し人を見つけた。倒れているが照らされたその顔は苦痛に満ちていた。不意に胸のトランシーバーから通話が走る。
「どうした?おい!返事をしろ!」
レオンがつかんで応答するがなにかにせき立てられてるように一方的にしゃべっている。そしてすぐに聞こえなくなった。
「どうなっているんだ」
戻ろう、と言う提案にレオンがうなずくより先に俺は歩きだした。
自信たっぷりに歩く俺は、しかし頭の中にある斉木という違和感が一向に拭えなかった。
村まで行きませんでした。
次回
死なない人間
違和感の正体
狂気と恐怖
ここまで出来るかなぁ?
頑張ろう。