首が飛び、腸が抉られ、血肉が飛び散る。
血塗れの牛頭が振るう大槌は敵味方関係なく猛威を振るった。
身軽に避ける二人は過ぎ去った先々で人が潰されるのを見せつけられる。
「握手したいならお先にどうぞ」
「嬉しいねぇ、涙が出るよ!」
今度はレオンの軽口に軽快に答えるルイス。こんな時でも余裕とかどんな心臓してるんだが?
だが目の前の光景はそんなに生易しくはなかった。
大槌を一振する度に家具も壁も壊れていくから敵は入り放題な癖に、その大槌のおかげで次々吹っ飛んでいく。
問題は、
「頭吹き飛ばされると寄生虫が出てくるぞ!」
そう、わらわら出てくる寄生虫の触手が鬱陶しい。
ゲームでは同士討ちしなかったが此方ではしっかりと突き刺さるのか触手は振り回すよりも突き刺してくる方が多い気もする。
だがそんなことはお構いなしなのか、牛頭は近付くために触手もろとも一歩を踏む。
そして、
「まてまてまてまて!」
待てと言って聴く相手でもない事は重々承知だがそれでも言わずにはいられない。
触手を躱し、投げられる手斧や鉈を振り払いながら防御不可の一撃に気を付ける。
正直頭がおかしくなりそうだ。
それでも尚敵が減らない理由は、
「2階!どうなってるんだ?」
レオンが叫ぶ。
そう、俺が降りてきたから2階の梯子を落とす人がいない。中の様子を知らないせいかそんなことお構いなしか、続々侵入してくる。
良く見れば煙突らしき所からも落ちてきているがどうやって登ったんだか?
「どうこうもご覧の通りだろうさ?!パーティーに混ざりたいってのがわんさかだ!」
「チケット配っておいてよ!」
自分の事は棚にあげてルイスに文句を言うが、
「マナーがなってないのさ!」
軽くあしらわれる。正直俺ではこれが精一杯だが。
「一列に並ばせろ!そうすれば楽になる。」
そういってレオンが取り出したのがスタングレネード。まだあったのか?!
「スタンだ!伏せろ!」
伏せろと言われてとっさに飛び退く。二人はどうしたのか解らないが乾いた音の後に爆発音。キーンという頭に響く音の後に飛び起きるとほぼ全ての触手が息絶えていた。
牛頭というと、
「嘘だろ?」
何事もなかったかのように構えていた。
そして何事もなかったかのように雄叫びをあげて狙いをつける。
俺に。
「マジかよ・・・。」
勢い良く振り下ろされる大槌を横転回避。後に至近距離からのショットガンの射撃。
一発、二発、三発目でやっと倒れる。
「やったか?」
構えながら聞くルイスにレオンが構えを解くことなく答える。
「いや、なかなかしぶといぞ?」
ムクリと起き上がる牛頭。いや、もう牛頭ではない。何故なら、
「こんな事って、」
その頭から一本の触手が延びていた。
特殊個体。
今まで何度か遭遇した強個体だ。それを象徴するかのように触手が一際太く、長く、デカイ。
それがこの狭い空間で振り下ろされる。
「避けろ!」
全力の回避。
モンハンなら緊急回避すればどんな攻撃も無敵時間があるだろうがこちとらそうも行かない。
デカイ図体に似合わず素早い振りをしてくる触手を避けながらその体は大槌を振りかざしてくる。
「そんなのありかよ!」
転がりながら回避、体があった場所の床がぶち抜かれる。
振り下ろされたそれを一目。すぐに目線を戻し狙いを定め引き金を引く。
カチリ
「弾切れ!?」
撃ち続けたそれは期待を裏切って軽い音を立てる。だが向こうの期待はそれを遥かに上回る。
デカイ触手がギラリと光り、俺の真上で狙いを定める。
「ローグ!」
レオンが此方に来ながら触手に向かって発砲。ルイスも援護に回るが触手も体もびくともしていない。
「ひっ!うわっ!」
突き降ろされる触手を体を捻って躱す。二度の攻撃で床が破壊されもう後がなくなった俺はとっさの行動に出る。
「ぬおぉぉぉぉぉ!!!!」
渾身の足払い。近付いてきたのが仇になったな!と心の中でガッツポーズ。
狙いどおり巨体といえど払えば転ぶ。デカイ音を立てて盛大に転んだ元牛頭。混乱しているのか触手も体の上でウネウネしている。
「スタンは?!」
「品切だ!」
「なら!」
ルイスの返答に即座に切り替えハンドガンの一斉掃射。触手が振り回されたおかげで敵も一瞬だがいなくなった。
ほどなく血飛沫をあげながら奇声なのか断末魔なのか解らない声をあげて力無く倒れた。
「よし!」
「何言ってる!まだだ!」
一息つくまもなくレオンからの叱責。その直後四方から敵が降りてくる。めざとく見つけた牛頭が落とした宝石を拾い上げ、ハンドガンを構える。
「後どれぐらいいると思う?」
「ファンサービスに疲れたか?」
「そろそろ御開きにしたい所だ。」
俺の質問にルイスが答えレオンが締める。
三人とも手持ちが底をつき始めていた。
レオンに至ってはキッチンナイフを数本、投げナイフとして構えていた。
時間経過で終わったはずのイベントに一向に終わりが見えずにいた時だった。
「レオン!ローグ!こっち!急いで!」
ギリギリの所で2階からアシュリーの声が響く。顔を見合わせ階段へ向かう。道中の敵は蹴りでどかした。
「こっち!速く!」
2階でアシュリーがドアを開けて待っていた。下の洞穴からい一体何処に繋がっていたのやら?疑問もあるがまずはこの状況からの脱出が先だ。
ドアを抜けて曲がりくねった狭い通路を走り抜け、見えてきたのは吊り上げ型の門。
そこを通り抜け、背後をみると奴らはすぐそこまで迫っていた。
全員通ったのを確認してレオンが門を開ける歯車の鎖を銃で撃ち抜く。歯車が勢い良く回り敵の一人が門の下敷きとなりつぶれた。
そして。
「終わったぁ」
俺たちは初めて一息ついた。
そんな中だった。
「ごほっ!ごほっ!けほっ!」
「アシュリー?」
咳き込むアシュリーを心配してレオンが近付く。
「はぁ、はぁ、何なのこれ?」
口元を押さえた手には真っ赤な血がついていた。
「アシュリー・・・。」
ルイスがその手を取る。
「こんな風に血を吐くのは初めてか?」
ルイスの問いにこくこくとうなずくアシュリー。
「なにを知ってる?」
静かにルイスに問うレオン。
それにゆっくりと説明を始めた。
「咳に、吐血。これらはあるものが引き起こしてる。」
一呼吸おいてルイスはさらっと答えた。
「・・・プラーガだ。」
顔を見合わせたルイス以外の三人。すぐにルイスに視線を戻す。
「そう、見ただろ?あの・・・村人達を。同じものが君の中にいる。」
門の向こう、村を指差し。
「奴らをあんな風に・・・変えたものが。」
歩き回りながらさらに続ける。
「咳や吐血はほんの始まりに過ぎない。いずれ君もああなる。」
「あんなのになりたくない。」
不安を目一杯感情に表しアシュリーが否定する。
その背中で表情は見えないが
「なら君は・・・ラッキーだ。」
「どう言うことだ?」
ルイスの良く解らない返答に俺は疑問を投げ掛けた。
だがここまでの事を考えるとなにかが変わっていてもおかしくはない。彼を、ルイスを俺は鋭く見つめる。
「プラーガと呼ばれるその寄生体は初期なら外科手術で完全に取り除けるはずだ。」
ルイスがその胸元をさらす。そこには手術跡と思われる傷跡があった。
「ちょっとしたノウハウと、ちゃんとした設備があれば。」
「まさかお前も?」
驚きのレオン。アシュリーも言葉もないようだ。
「心配すんな。俺に考えがある。お前らが俺を信じるなら。」
後ずさりしながらそういうが、俺たちには他になす術はない。
しばらくの後、レオンがゆっくりとうなずく。
「よーし、俺たちは仲間だ!」
「おい、どういう」
「さぁ、ここからは時間との戦いだ。」
ルイスがレオンを言葉を遮る。これ以上は何もしゃべる気はないようだ。
「何故俺たちを助ける?」
レオンの疑問も当然だ。なにも知らなければ彼が俺たちを助ける通りがない。だが彼はしれっと、
「俺にも関わりがある、良心の呵責さ。」
そういって歩きだした。
「また連絡する。」
後ろ姿のまま手を振って、彼は暗闇の中へ消えていった。
俺たちはまだ知らない。
彼の覚悟も、彼に待ち受けている何かも。
違うものを思い付きで書いていたため、少々遅い更新となりました。決して「ルビコン」なるものを求め続けてたわけではありません(笑)
まだまだ序盤、色々楽しんで書いていけたら良いなと思います。
ではまた。
次回
道
待ち伏せ
姉妹