『衝撃のマル秘映像!』
『星野アクア・ルビー兄妹の恥ずかしい姿が流出!』
「「……は?」」
珍しく兄妹揃って『深堀れ☆ワンチャン!!』のスタジオ収録に呼ばれたかと思えば、いきなりそんなテロップがモニターに映し出されたことで『星野アクア』こと星野
「……いやマジでなんですかコレ。この
「あー!? ひっどーい! バカじゃないですー! バカって言う方がバカなんですー!」
「その言動が既にバカなんだよバカ」
いつものように『毒舌クール』と『おバカアイドル』のキャラクターを押し出す会話をするが、困惑していることは本当である。二人は何も聞かされていなかった。
「いやぁ、我々探しましたよ……そして奥さぁん……ついに見つけましたよぉ……」
「寧ろ貴方の奥さんを見付けましょう。いくら芸能人という免罪符があったとしてもその年齢で独り身はそろそろ親御さんが泣きますよ」
「その言動にまずは俺が泣くわぁ!」
MCとのやり取りにスタッフから笑いが起こる。しかしMCの芸人と同様に四十代半ばで独身の男性スタッフは心の中で血を吐いた。
「そんな大口叩けるのも今のうちやで! これホンマにホンマやからな! 泣いて謝っても知らんからな!」
「小物感が凄い」
「それではVTRどうぞ!」
このとき兄アクアは『どうせ昔出演した映画の映像だろうな』と油断していた。かつて俳優としてまだまだ未熟だった時代の映像は、今見ても酷いものだった。つい最近女優である(仕事上の)恋人からも酷評されたばかりであったため、おそらくそれだろうと高を括っていたのだ。
そして妹ルビーも『初めて一番最初に歌唱レッスンしたときの映像かなぁ』と油断していた。今でこそマシになったとはいえ、昔のルビーは音痴であった。何百回何千回と聞いて鼓膜から一生離れることはないだろうという自信があるほどに聞きまくったB小町の曲を歌ったとしても、カラオケで43点しか出せないレベルの音痴だったのだ。
確かに恥ずかしいと言われれば恥ずかしいが、本音を言えば((衝撃映像は流石に盛りすぎだよなぁ))なんてことを考えていた。しかし番組のことを考えてしっかりと大げさなリアクションを取ろうと心の中でひっそりと準備をしつつ、モニターに映し出されたVTRに視線を向けた。
バブッ! バブッ! バブッ!
「「………………」」
そしてそこに映し出された『キレの良いヲタ芸を打つ双子と思われる赤ん坊』の姿に絶句した。これはダメな奴だと両手で顔を覆った。
「アッハハハハハッ! わー懐かしいねコレ! そうそうあったあった!」
そんな双子の姿を観て、アクアとルビーの母親である星野アイはお腹を抱えて笑った。笑いすぎて涙も出ていた。
「も~笑いごとじゃないよ~! コレ本当に恥ずかしかったんだからね~!」
居間で一緒に番組のOAを観ていたルビーが抗議の声を上げるが、そんなことでアイの笑いは収まらない。寧ろ『この子が今画面でヲタ芸打ってる赤ん坊なんだよな』という事実に更に笑えてきてしまった。アイの名誉のために付け加えるのであれば、『あの子がこんな大きく育って』という感激は一応一割ほど含まれている。
「鏑木さんに聞いたけどこの動画の提供者、壱護社長らしい」
「社長め~……!」
ルビーは激怒した。トップアイドルの事務所社長でありながら未だに胡散臭いあの金髪サングラスの親父を、どうにかしてやろうと心に誓った。具体的には無理矢理番組に引きずり出す。
「でも本当に懐かしいなぁ……このときのことがきっかけで、ママはアイドルとして人気が出るようになったんだよ?」
「は? 最初からママは人気しかなかったが?」
「いくら本人とは言えど言っちゃいけないことがあるんだぞ」
「うーん、我が子ながらオタクとしての火力が強い……」
でもそんな二人が大好き~とアイは腕を伸ばして二人をまとめて抱きしめた。ルビーは昔から甘えん坊で、遠慮なく抱きしめ返した。アクアは昔から恥ずかしがり屋で、しかし遠慮がちに抱きしめ返した。
かつて伝説的トップアイドルと称された『B小町』のセンター『アイ』。十数年前のとある事件がきっかけでアイドルを引退することになった。愛を求め、愛のためにアイドルとなり、そして嘘を吐き続けた彼女は――。
――今は『最高の愛』を両腕に抱きしめながら、幸せに暮らしている。
『それじゃあ、二人には今から当時みたいにヲタ芸を打ってもらおうかな』
『は? 絶対に嫌ですけど?』
『アイドルなんで無理で~す』
『え~? お二人のアイへの愛はそんなものなんか~?』
『『……やってやろうじゃねぇかこの野郎!』』
その後、こちらの動画もSNSでバズった。
動画を見た妹のユニットメンバーKちゃん「ギャハハハハwwwwちょwwwこの頃からアンタら有名人じゃんwww私より先輩よ先輩www先輩ちーっすwww」
動画を見た兄の(仕事上の)彼女Aちゃん「は?(威圧)私の彼氏可愛すぎるんだが???(ガチギレ)」