競馬界のレジェンドになったら…   作:展開郎

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第十四話 ちいさい秋見つけた?

「勝利ジョッキーインタビュー、勝利ジョッキーインタビュー、GⅢ函館三歳Sを勝利した竹豊君にお聞きします。えっと、まずは重賞初勝利をした今のお気持ちはどうでしょうか?」

 

「最高ですね、今まで重賞3回とも挑んで二着で運が無いのかなぁと思いましたがなんとか掴み取れましたね。」

 

函館三歳Sハナ差で無事、サッカーボーイが勝利した。

本当にあの瞬間に、ゴールドシップの皐月賞が見えたおかげで勝てたけど本当に危うかった。

そしてようやくの重賞勝利、そのときの歓声は来るものがあった。あれより歓声が凄いG1を勝利した時は…考えるだけで興奮してしまう。

 

「出遅れた中でインをついて勝利しましたが、レース中には何を考えていたのでしょうか?」

 

「こんな荒れた馬場ですし、インを突いて先頭に立てるかなぁと思ってました。そう思えたのもサッカーボーイにそれが出来る高い能力があったからですし、サッカーボーイは強い馬ですよ。」

 

実際、サッカーボーイの実力があるからこそ出来たレース運びだ。

ゴールドシップの父であるステイゴールドの母はサッカーボーイの全妹だ。ある種の共通点があるのかもそれない。

あのような荒々しいレースを出来るとは流石サッカーボーイ、名馬ディクタスの息子だ。まぁ、しかしスプリントはもう走らせないで欲しいな。どこまでサッカーボーイが持つか、分からないし。

そうしてサッカーボーイの函館三歳Sで僕の夏競馬は終わり、そして秋競馬が来る。

 

 

 

 

 

 

もう秋だというのに栗東トレセンは蒸し暑い。

人もそうだし、やはり馬が沢山いるせいか暑く感じる。涼しい風も本来なら体感温度を数度ぐらい下げてくれるはずなのに、下げるどころか余計暑く感じる嫌な風である。

そんなこんなで久方ぶりの厩舎につくと扇風機が首をガコンガコンと今にも壊れそうな音を上げながら首を動かして僕に風を当ててくれる。

どうやら竹田先生も、川内先輩も調教か何か用事があるのかいないようである。

誰もいない厩舎で椅子に座り天井を見ながらふと、考えてみることにした。

前回のレースで見たあれはなんだったのか。

あの瞬間、確かに視界は完全に真っ暗になっていた。そしたら勝利へと繋がる映像が見えた。あぁ言うのは、スポーツ漫画とかでよくある…よくある………なんだっけ?ジーンだったか、ズーンだったか…

似たようなのとして新世紀GPXサイバーフォーミュラで言うところのゼロの領域みたいなもんだろうか。身体的疲労感はなかったが精神的疲労がレース後にどっと来てたし、そんな感じなのかもしれない。

考えても暇だし、ちょっと一人で厩舎巡りでもしようか。

 

 

 

「親父、バンブーの調教に乗るわ。」

 

「おぉ、豊か。重賞勝利おめでとう。見てたけど良いレースしとったわ。」

 

親父に挨拶をすると、前のレースを褒められてしまった。騎手になってから親父にあまり褒められたことが少なかったからか、頬が見なくても分かるほど赤くなってることが分かってしまう。

初勝利の時も、当たり前かのように褒めることも何もしなかった素っ気ない親父が褒めてくれた。べつに親父は気難しい人ではないし、ユーモアがある人である。

いつもは褒めてくれるというのに騎手になってからは褒めてくれなかった親父が褒めてくれる。その行為に小っ恥ずかしい感じがしてしまった。

久々に褒めてくれたことに対しての僕なりの反発かもしれない。

 

「いや、サッカーボーイが強かっただけや。僕が強ならんと。」

 

「ほぉん、なら頑張りやバンブーの調教。」

 

そうやって親父は僕の視界から去っていった。すぐにバンブーメモリーの調教をするために馬房へと向かっていた。

馬房に行くと、色んな馬がいた。鹿毛の馬、青鹿毛の馬、芦毛の馬、栗毛の馬、色々いる。流星が綺麗な子もいれば、ぶつぶつみたいな感じになっている子もいた。牡馬もいれば、牝馬も、そして騸馬さえいた。

馬房の横のネームプレートなどや血統表を見ながら歩いていると突如として謎の物体による激突を喰らった。

 

「いっ、いってぇっ〜!!」

 

横腹をかなりのスピードで突っつかれた痛みでぎゅっと目蓋を力強く閉じた。

少しずつ、少しずつ痛みが引くとともに目も少し開けれるようになった。最初はボヤけていた視界が、段々と鮮明になると犯人の姿が分かるとともにやらかしたなと思った。

 

「ひ〜ん、ひひ〜ん。」

 

犯人の正体は至って簡単で馬、即ちバンブーメモリーであった。

親父が「馬房に近づくな。」って言っていたことをすっかり忘れて馬房の近くを歩いてしまい、人間大好きなバンブーが興奮により馬房から勢いよく出した頭が僕の脇腹を抉ったというわけだ。

痛みが腹に染みつつも、バンブーって別に気性難って訳ではないんだよなぁと思いつつ立ち上がって馬房の鍵を開けてやる。

そうすると調教と分かったのが大喜びをしていた。バンブーメモリーは調教に真面目だったというが、恐らく真面目というよりは人間に沢山触れ合いたいから真面目に走っているというのもあるかもしれない。

接すれば、接するほどこの馬が少し馬鹿に思える。

トレセンのダートコースへ向かう最中にバンプメモリーの馬体とかを見て思うのは本当にG1馬になるのか?ということだ。

前回、初めて見たときに勝利のビジョンが浮かばなかったことで偽物かなと疑ったりしたが…

晩成だから勝利のビジョンが見えないだけなのか?それとも一体なんなんだ?親父が一人前のジョッキーになっても分からんって言ってるってことは、恐らく晩成みたく分かるようようなもんじゃないってことなのか。

だとして一体何なんだろうか。

 

 

 

親父の厩舎にバンブーメモリーを戻して、そのついでに佐藤修司厩舎を寄ることにした。

スーパークリークの様子を見に行こうと思って、着いたら厩務員の松宗さんがいた。挨拶をすると、こちらに気づいてすぐにまた挨拶してくれた。

 

「こんにちは。どしたんです?」

 

「スーパークリークの様子を見よう思って。」

 

「クリーク…ですかぁ、ちょっと見せれない感じですよ。」

 

「ん、スーパークリークどうしたんです?もしかして熱発とか?」

 

「いや遠征から帰ってきて最初は体調も問題なかったんですけど最近になって急に下痢をし出して、今調教出来てない状況で獣医さんからは年内はゆっくりさせときなさいって言ってて。」

 

スーパークリークが、そんな状況になっていたことに驚いてしまった。スーパークリーク自身体が強いかといえばそうではないのだが、まさか出だしで転けるとは思ってもいなかった。

史実では出だしでこけていたが、新馬戦も出走できてそんな不運は乗り越えれただろうとたかを括っていたが競馬の神様は非情だった。

それも年末までは病気のせいで恐らくは軽めの調教しか出来ないと来たか…来年のクラシックまでに間に合わないといけないというのに。こんなのだと体を作る時間が足りない、そう言わざるを得ない。

 

「そう…ですか、クラシック間に合いそうですか?」

 

「うーん、間に合うと思うんやけどなぁ。ほんまにクリークの体次第って所かな。体調良くなったりしたら厩舎に連絡するから安心し。」

 

そう言われたら僕は肯定の言葉しか言えず、そのまま厩舎へ帰ろうとした。

よくよく考えれば、強いと思っている僕のお手馬たちは完璧に強いという訳ではない。

サッカーボーイは蹄が、スーパークリークは体全体が、バンブーメモリーは足が、シヨノロマンは勝つための決定力に欠ける。

どの馬も強いのは強いが、欠けているところも大きかった。そう考え出すと、自分が立っている立場が急に脆い砂のように感じて恐怖さえ感じてしまう。

そうこうして、厩舎に戻ると先生と先輩は帰ってきていたようでおにぎりを食いながら椅子に座っていた。

机の上に置いてあるおにぎりを一つとって、椅子に座った。

 

「これ、頂きます。」

 

「あぁ、食え食え。うちの女房が作ったやつだ、あいつも美味しく食ってくれたら喜ぶさ。」

 

おにぎりを一口頬張ると、中からはシャケが見えた。どうやらシャケおにぎりのようで調教で疲れたのもあってバグバグ食ってると、川内先輩が右手に持ってたおにぎり一つを口にそのまま入れてまるでハムスターのような顔で喋り出した。

 

「せふぇんせふぇい、いふぁからちょふきふぉういっへきふぁしゅ。」

 

「何言ってんだ、馬鹿野郎。ちゃんと噛んで飲み込んでから行きやがれ。」

 

そんなボケとツッコミのような現場に少し笑ってしまった。

タケクニの息子という地位から脱却するためにも色々頑張っていたけど自分にはこんなに暖かい人たちがいるのだと思って心が少し暖かくなるようなむず痒いような感じがする。

心が痒いせいで、痒いはずなのにかいてもかいても痒みは治らない。

 

「んんん…ごっきゅん…先生、今から調教また行ってきます。」

 

「おう、行ってこい。」

 

そうして川内先輩は厩舎を出ていった。その頃には僕の手にはおにぎりはもう無く、全部口の中に入ってあった。

しかし本当に美味しい。調教の後だから美味しいとかでは無くて本当に美味しい。良いコメを使ってるのだろうか、美味しすぎてついついテーブルにまだあるおにぎりに手を掛けてしまう。

そんな僕の姿に先生は笑っていた。

 

「慌てず食いや、喉に詰まったら大変なんやから。」

 

「分かってますって先生、でも本当にこのおにぎり美味しいですよ。」

 

「そうかい、そうかい、それとな豊。」

 

さっきまで笑ってた顔から、一変して真剣な顔になった先生が現れた。

そんな先生の前だから飯を食う口は止まり、すぐさま口の中に入ってるおにぎりを飲み込んで先生の顔をじっと見た。

 

「どしたんですか、先生。」

 

「いや、お前に騎乗依頼の件が3つあってだな。」

 

「は、はい、」

 

「まず一つは馬主のトウカイさんがトウカイローマンで京都大賞典に出て欲しいとのことや。今度こそ挽回のチャンスやで。」

 

トウカイローマンの騎乗か…これは頑張らなければいけないな。

ローマンの小倉記念、ハマナスの小倉三歳Sそこで負けた分を返さなければいつ返すというのだ。気を引き締めておかなければ。

 

「ほんで、二つ目はレオテンザンに騎乗して京都新聞杯に出走して欲しいとのことや。レオテンザンは結構良い感じの馬でラジオたんぱ賞勝ってるし、NZT4歳Sとセントライト記念五着でまぁまぁ良い馬や。」

 

レオテンザンか…知らない名前だ。だけど恐らく“レオ”が頭についているということはトウカイテイオーと同期の菊花賞馬“レオダーバン”と同じ馬主かもしれない。

ここできちんとしたら、今後他の馬の騎乗依頼があるかもしれないしこれも頑張ろう。

 

 

「ほんで最後の騎乗依頼ってのは…まぁ知り合いの調教師が一人おるんやけど、そいつと仲良くしとる馬主さんがな是非ともG1を勝たせたいという馬がおってやな。」

 

「そんな馬に僕が乗るんですか?一応僕、親父が竹邦彦ですけどまだ若手の騎手ですよ。」

 

「サッカーボーイの函館三歳S見てお前を屋根にしたいと馬主さんの親族が言ったらしくて、その馬の屋根にならへんか。」

 

「いや、先生僕サッカーボーイにスーパークリークにバンブーメモリー、シヨノロマンとお手馬四頭もいるんですよ、これ以上増やせって言われたら大変に………」

 

「そうかぁ、いや何()()()だから言ってんのになぁ。」

 

良い馬…そりゃ、ちょっと気になる。いや気になるどころじゃない。

気になってしょうがない、しかしどんな馬だろうか。めちゃくちゃ教えて欲しい。

先生が()()()というほどなんだからどんな馬なのだろうか。ステイヤーなのか、クラシックディスタンスホースなのか、マイラーなのか、もしくはスプリンターなのか()()()と聞けば、気になってしょうがない。

 

「どんな馬なんですか先生。」

 

「おぉ、気になるか。ええ馬や、あれは。冗談とかやなくてG1ぐらい一つぐらいは取れると思うで。」

 

「へぇ、そこまで言うんですか先生。僕、乗ってみたいです。」

 

「そうか乗りたいと言ったか、よしちょっとその調教師に連絡して来るわ。」

 

「ちなみに先生、馬の名前ってなんですか?」

 

そこまで強い馬、どんな名前か気になる。名前を是非とも知りたい。

好きな女の子のタイプとかより気になる。

 

「あぁ、名前は確か“ヤエノムテキ”って言ってたな。」

 

 

 

ん?え?

Oh…ムテキの舞いじゃないか。

あれ、マジで言ってる?ヤエノムテキって本当に言ってるんか!?

すーっ、、、マジでお手馬のレベルが高すぎるだろうがよぉ!!サッカーボーイのおかげでヤエノムテキが釣れたって。運どんだけ良いんだよ。

 




というわけで竹豊の新たなお手馬“ヤエノムテキ”です。
えっと、竹豊のチート無双のためにいるんじゃなくてサッカーボーイ共々意味があってお手馬になってます。

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