競馬界のレジェンドになったら…   作:展開郎

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本当にお久しぶりです。
もしかしたら皆さんの中には、もしかして投稿できなくなったのかと思われている方もいるかもしれませんが全然そういう訳ではございません。
単純に私事で忙しくて執筆作業ができていなかっただけです。
今日から再び毎日投稿を頑張っていこうと思いますので再び暖かな目で応援していただけると幸いです。



第十五話 そうだ京都行こうかな?

「七歳だというのに衰えが見えないですね、トウカイローマン。」

 

「まだ衰えはしてないのが幸いだよ、それで次回の京都大賞典いけそうか?」

 

「大村先生、僕の感覚としては勝てると思います。衰えどころか、多分今良い調子の波がローマンに来てますし勝てる可能性は十分にあります。」

 

今度の京都大賞典で僕が騎乗する、トウカイローマンの厩舎に向かってみるとやはりすごい馬体である。七歳でこの馬体というのは充分に凄い。

成長傾向が晩成というわけではないというのに馬体を触れるだけでもサッカーボーイやスーパークリークみたく、たくさんの勝利のビジョンは見えないが、ビジョンは思い浮かんでくる。充分に勝機はある、あとは僕がどう乗るかだけだろう。トウカイローマン自身に良い波が来ているのは勿論のことだが、メンバーもメンバーである。

予想一番人気のタケノコマヨシは、はっきり言って過大評価であろう。クラシック時には菊花賞トライアルの神戸新聞杯と京都新聞杯を連戦連勝したが菊花賞では凡走、今年に入ってからは更にその能力は落ちている。三番人気のフミノアプローズも同じくクラシックでは活躍したが古馬になってからは成績が低迷している。

そんな一番人気と三番人気より気をつけるべきが二番人気のプレジデントシチーだろう。前走の朝日チャレンジCで一番人気タケノコマヨシと三番人気のフミノアプローズを下して勝利しており鞍上は南伊克己である。

父は“ダービーは金では買えない”を体現した菊花賞馬のダイコーターで母父のマタドアは安田記念馬を二頭も輩出しているマイラー血統だ。ダイコーターが長距離寄りなのか、中距離寄りかとなると恐らく予想ではあるが中距離寄りだろう。産駒には今年のサンケイ大阪杯の勝ち馬であるニシノライデンが挙げられる。天皇賞(春)では一着入線も斜行による失格になってしまった。これだけだと長距離寄りにも思えるが、こちらは母父の方が中距離血統であったからだろう。ニシノライデイン以外の産駒については、2000m重賞勝ち馬がやはり多い。

そこから考えるとプレジデントシチーの適正距離は恐らく1800〜2200だろう。そうなると馬の絶対能力としてはトウカイローマンに軍配が上がる。懸念点は鞍上の南伊さんだけだ。脚質は今までのレースからして前目につけての先行だろうし、トウカイローマンに競りかけられたら大変なはず。

あとは京都大賞典と同じ施工距離である900万下のみなみ北海道Sや松前特別を勝ったペルシアンパーソが警戒すべき相手だ。産駒からして早熟で、適正はマイルから中距離と見れる。脚質もトウカイローマンやプレジデントシチーと同じ先行だろう。

 

「さすが天才、そこまで分かるとは。勝ち負けなんか気にせず走ってくれよ、頼むから怪我だけはするなよ。」

 

「天才ってなんなんですか!!まだ僕は半人前のジョッキーですよ…帰ってくるときは、今度こそ優勝レイを持ち帰ってきます。」

 

さて来週僕が挑む京都大賞典というレースはどんなレースかというと、芝2400のGⅡであり最近だとマカヒキの復活などで知られていたりしていて主な勝ち馬としてはツルマルツヨシやテイエムオペラオー、ナリタトップロードなどだろうか。

クラシック三冠である菊花賞や古馬G1の天皇賞(秋)やジャパンC、エリザベス女王杯などの前哨戦としても使われる。

そして各馬の実力を確かめるためのレースとしても使われていて、テイエムオペラオーは三歳のときに神戸新聞杯を使わず京都大賞典に挑み、99年有馬記念の四着となったツルマルツヨシと98年天皇賞(春)勝ち馬のメジロブライト、そして98年のダービー馬であるスペシャルウィークなどがいる中三着と粘ったりしているところから、出走馬の実力がどんなものかが分かるレースである。

今回のレースの結果次第で次走がどうなるかも決まるわけだ。この前聞いた限りでは恐らくジャパンCに行くと馬主である中村さんが仰っていたが…

 

「先生、もう少し調教に乗っても構いませんよね。」

 

「いや…そろそろ時間的にも調教は終わる予定だから、また明日にでもきてくれ。」

 

「そうですか…分かりました。また明日来ます。」

 

 

 

 

トウカイローマンの調教が終わってすぐに、走ること5分の場所にある親父の厩舎へと向かった。今日も今日とてバンブーメモリーの調教をするのだ。

ただ、毎回ありがたいことにしっかり走ってくれるのだ。暴走するわけでもなく、走りたくなくて暴れることもなく走ってくれる。寡黙な子というよりは一生懸命頑張ってくれる子だ。

それに親父の馬なのもあってか、バンブーに愛着が湧いている。こんな勝負の世界に入って大丈夫だろうかと思ってしまう馬だというのにだ…しかしこの馬がGⅠ馬、そしてオグリキャップと互角に戦える馬だというのだからやっぱり不思議なものである。

 

「良い馬だろ、豊。」

 

「良い馬だよ…走りはあんまりだけどね。」

 

「そうか、そう思えたらいいことや。」

 

すると少し満足したような顔をしながら、横から見たのではっきりと分かったわけではないが笑っていた。なぜ笑っているか、不思議だった。僕が騎手になると言ったら一番にあんなにも怒ってた親父が、騎手になってからは笑みが多い。というか僕が子供の時より心配性になっている。レースが終わったら大抵は親父から騎乗がダメだとか散々言われる。鬱陶しくも感じてしまうが、あの“ターフの魔術師”が言っているのだから素直に聞いている。

しかし、まぁ、素直に聞いてその通り走っても電話では怒られっぱなしである。幾ら勝利を積もうが、今はまだ新人騎手であるということだ。

……本当に過保護な親である。

 

『ジリジリじりっ!』

 

「なんや、こんな時に電話って何かあったかなぁ?豊、ちょいと待っとけ。」

 

「ええけど、話が長くなりそうなら先に調教コースに向かうで。」

 

確認の声かけをしたが、親父は厩舎に急いでいるようで僕の言葉をちゃんと聞いたかは分からない。

もう半年がいつのまにか経ったのか…デビューしてから。きっと本当に大昔の僕じゃ想像もできないことが起きてしまった。本当にいい馬を乗せてもらっている。

多分、親父の影響もあるんだろうな。いやぁ、数々の名馬に乗せてもらえるのはファンとして冥利に尽きる。『ブモッ』

ん?なんか今変な音が聞こえたような。『ブモッ、ブモッ』

 

「もしかしてバンブーお前か?」

 

「ブモッ」

 

どうやら、バンブーメモリーの鳴き声だったようだ。親父は厩舎に行ってしまい、そもそもの僕はバンブーに跨っているせいか視界から見えなくなっており寂しがっている。

そんな様子なわけだからバンブーから降りて顔を近づけると顔を舐め出した。

………舐め出した。唐突なことにびっくりした僕を気にもせず、舐める。舐める。さらに舐める。具体的に言うと、顎の部分の汗が滴りそうな部分を集中的に舐めてくる。右、左、右、左のステップは音楽の授業のメトロノームより規則的かつ速く感じる。というかバンブーがずっと舐めているせいでこう考えている間に少しずつ顎の触覚が失われていく感覚がする。

馬が舐めるという行為に塩分補給というのがあるのは知っているが、これはいかんせん舐めすぎではないだろうか。馬自身、そんなに舐めるという行為が少ない。

それがこんなに舐めるものなのか。どこぞの“秋華賞カメラ被害者の会の会長”じゃあるまいし。

いやぁ、本当舐めるねバンブーは。もう汗ないよ、それどころか鼻を舌で溶かす勢いで舐めてくる。構ってちゃんなのは分かってるけど流石にずっと舐められるのはいやかなぁ。

 

「よし豊、調教に行………すごい懐かれとんな。」

 

「そ、そうか、な?」

 

「そない舐めるって相当好きなんかもしれへんなぁ、豊のこと。」

 

「そうなんかもなぁ。てか親父は舐められへんのか?」

 

「舐めてくれるだけでも感謝しろよ、俺なんか突撃やわ。」

 

とっ、突撃…前回バンブーがぶつかったお腹の場所が痛くなってきてしまう。あれは本当に強烈だった…その突撃を毎回喰らう親父……南無南無。

 

「電話は何やったん?」

 

「ああ、もうそろそろで入厩する馬の馬体検査の結果報告や。ほな調教行くか。」

 

調教コースに向かう道中に思ってしまう。レースの日じゃない今日が少し愛しいと。こうやって調教で馬と戯れながら、父と駄弁ることに少し心揺さぶられる。

騎手に…騎手としての“竹豊”になったというのに未だ普通の生活を何処かで望んでいるようだ。しかし僕はそんな気持ちを振り払わなければいけない。

もうそろそろで始まるのか。京都重賞三連戦が…京都大賞典にはトウカイローマン、京都新聞杯にはレオテンザン、ローズSにはハッピーサンライズ。

どれも楽勝とは言えないが、勝たなければいけない。なんたって僕は竹豊だ。

未来のレジェンドに出来ないことはないさ。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、京都大賞典。

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