時間は少し遡る… 数日前
ボクは今、エマ、果林、彼方の3人と学年末考査に向けて勉強会をしている。
…ボクにはそんなの必要ないって言ったんだけど、エマがどうしてもって言うから付き合ってるんだ。
「ふう…。明日からテストが始まるね。今日はこの辺で切り上げて、明日に備えてゆっくり休もっか。」
「はぁ〜彼方ちゃんもうくたくた〜、おやすみなさい〜。」
「おやすみ〜、はい毛布。」
「うふふ、彼方は相変わらずね。はいエマ、紅茶とお菓子買っておいたから、ゆっくりしましょ。」
「わぁありがとう果林ちゃん。」
…、いつ見てもこの3人は息ぴったりだ、ボクには入り込めないくらいの関係性が完成されてるようにも見える。
「それじゃ皆で食べよっか。はい、ミアちゃんも、どうぞ。」
「…、あ、ありがとう…。」
「…?ミアちゃん、何かあった?」
「No worries、なんでもないよ。ホラ、食べよう。」
ボクは少し、みんなと距離を感じていた。
最近この学園に来たボクは、他の皆より過ごした時間も少ない。飛び級で3年になり皆と歳も離れてる。そして、スクールアイドルとしてもヒヨっ子だ。
ボクは、皆と対等な関係になれているのだろうか。
数日後 (しずくとかすみが仲直りした日の)放課後
部室
「Hi. ベイビーちゃん、おはよう。」
「ミアちゃん、おはよう。テストお疲れ様。どうだった?」
「ヨユーだったよ、まぁボクなら当然だね。」
「他のみんなは?」
「ボクだけ1日早く終わったんだ。」
「そっか、あ、そうだ、ミアちゃんにちょっと話があるんだけど、いいかな?」
ベイビーちゃんはそう言うと1枚の紙を取り出した。
「これ、やってみない?」
「…作曲コンクール?」
「いや、たまにはこういうのもいいかなーって思って。私も応募するんだけど、一緒にやってみない?」
「…いいけど、きっとボクが勝っちゃうよ?」
「それは、どうかなー、もしかしたら私が超覚醒して、大賞とっちゃうかもよ…?」
「…ふっ、いいね、それなら勝負だよ。ベイビーちゃんには負けないよ!」
「うん! あ、あともう1つお願いが…。」
「なに?」
「実はね、同好会の皆に新しい曲を作ろうと思ってるんだけど、その曲作り手伝って欲しいの」
「…なんで、ボクに?」
「その曲のテーマは「宝物」。とにかくね、大切な思いがたくさん詰まった曲にしたいんだ。だからね、ミアちゃんにも力を貸して欲しいの。ミアちゃんにとっての宝物、それをイメージした曲や詞を見てみたいんだ。」
「ボクの…宝物…」
ボクの、宝物って、なんだろう…
考えたこともなかった。
今まで作って来た曲たち?毎日食べている大好きなハンバーガー?
うーん…。
その日の夜も
ずっと考えていたけど、ハッキリとした答えは出なかった。
翌日
ボクはまだ何も知らなすぎる、みんなの事も、この学園の事も、スクールアイドルの事も。
ボクはこの学園の事をもっと知りたい。
そしてもっと皆にボクの事を知ってほしい。
そして、ボクの宝物を見つけたい。
そう思ったボクは、ライブを行うことにした。
学園の広々した目立つスペースを使い、ボクは歌を歌い始める。
「ラララ〜〜〜〜」
次第に周りには人が集まりだして、色々な人達の声が聞こえてくる。
わーなになにー?かっこいい歌ー!綺麗な歌声…、 可愛いねあの子!あの子ミアちゃんじゃない?
「Thankyou for listening to my song! ボクはミア・テイラー 、この虹ヶ咲学園のスクールアイドルさ!スクールアイドルは初めたばかりでまだヒヨっ子だけど、皆にもっとボクの歌を聞いて欲しい、だから遠慮はしない、全力で歌うからついてきてっ!!」
ワーワーわァ~…
いつの間にか辺りにはかなりの人が集まっていた。
「ほら、見て〜」
「うわぁ〜凄い人だかり…」
あそこから走ってくるのはエマとベイビーちゃんだ。
勝手にライブやっちゃったから怒られちゃうかな。
「皆、ボクの歌を聴いてくれてありがとう!今日はこれで終わり…」
「おや〜?なにやら楽しそうな事をやっておりますな〜?」
「ミアさん、張り切ってますね!」
「ランジュ達も混ぜなさい、ミア!」
「愛、せつ菜、ランジュ!」
いつの間にか3人がボクのステージに立っていた
「…そうだね、このまま終わるなんて勿体ないよ。3人ともちゃんとボクに着いてきてよね。 are you ready?… here we go!!」
わー〜!
…結局その後もは同好会の他の皆が次々乱入して、皆で歌いあうライブになった。
「…Sorry、勝手にライブやっちゃってのゴメン…」
「まぁ、校則的にも特に問題はないので良いのですが…。」
「そうなの?栞子ちゃん?」
「ええ、周り迷惑をかけない範囲であればですが。」
「そうなんだ…、でもミアちゃん、急にどうしたの?」
「……。ベイビーちゃん、ボク、もっとライブしたい!これからしばらく毎日ライブがしたいんだ。」
「ま、毎日?!…それはまた急だね。でも、ミアちゃんがやりたいなら、全力でサポートするよ!」
それからボクは、毎日ライブを行うことになった。
学園内の色々な場所で歌を歌った。
毎日歌っていると、分かってくることがある。 いつも色々な人がボクを見に来てくれている事、様々な学科、学年の人たち。中には毎日ボクを見てくれる子もいた。お互いに顔も名前も知らなかった人達がボクのステージを見て笑いあってる。ボク達は1つになっていた。これがスクールアイドル…!
連続ライブ最終日 ライブ後
「ミアちゃん、お疲れさま」
「熱い刺激を貰える良いライブだったわ」
「彼方ちゃん久しぶりに超ハッスルしちゃったぜ〜」
「THANKS 皆…。」
今日は3年生の皆も一緒にライブをした。
皆はやっぱり凄かったな。
「たくさん歌えて良かった、楽しかった、な…」
少し力が抜けて、ボクはその場に座り込んだ。
「ミアちゃん大丈夫?私がおんぶしてあげよっか?」
「…、大丈夫だよ、ちょっと気が抜けただけさ。さ、帰ろう。……………………、こんな程度でへこたれてちゃ、みんなに並べない…。」
「………。」
ミアの部屋
「ミアちゃん、最近、私たちに遠慮してるでしょ?」
「い、いきなりなんだよエマ、そんなこと…」
「わかるよ。最近のミアちゃんを見ていれば。何か思ってる事があるなら話してみて?」
「うぅ、…エマには敵わないな。分かったよ、話すよ。」
ボクはみんなに、話した。皆と少し距離を感じてること。スクールアイドルとしてもヒヨっ子で皆と並べているのかってこと。
「なんだ、そんな事だったのね。」
「そんな事って、果林…」
「いい、ミア。同好会の一員になった時点で、そこには年齢も立場も関係ない、皆が対等な関係なのよ。ミア、アナタの今日のステージを見て、私は凄いと思ったわ。そして、アナタにも負けたくないって思ってる。 それに、普段の生意気ちゃんなアナタも大好きよ、ミア。 」
「果林…」
「ミアちゃんは彼方ちゃんに持ってないものたくさん持ってる、凄いな〜って思うよ。それに、彼方ちゃん、ミアちゃんの膝枕でもすやぴしたいな〜って思ってるよ。」
「彼方…」
「少しだけ、皆より同好会に入るのは遅かったかも知れないけど、それでも、ミアちゃんが、私たちと一緒に過ごした時間は変わらない。ミアちゃんは大切な同好会の仲間で、ミアちゃんのこと大切な友達だと思ってる。だから、ミアちゃんも遠慮しないで、もっと私達に甘えて良いんだよ?…ほら!」
エマは両腕を広げる。
「エマ…、」
ボクは自然とエマの元へ歩み寄っていた。
ギュッ。エマの腕が身体がボクを包み込む
「暖かい…。」
「あ〜、彼方ちゃんも入れて〜」
「はい、どうぞ♪」
「えへへ〜」
「ほら果林ちゃんも、」
「えっ!?…わ、私も…? …もう、仕方ないわね。」
ギュッ…
「みんな、ありがとう…。」
「すなおなミアちゃんも〜かわいい〜」
「うふふ、そうね。」
「うん、これからもよろしくね。ミアちゃん。」
ボクの悩みなんて、簡単に解消してしまう。みんなはやっぱりすごいや…。みんなにはかなわないな…。
ボクはこの時間がずっと続けばいいのに、と思った。
数日後
今日はボクの定期ライブの日だ。
準備は万全。今日も皆と最高のステージを作り上げるよ。
と考えていると、ふと、部室に貼られているポスターが目に入る。
「…、そういえば、今日は作曲コンクールの結果発表の日だったな…。」
ライブ会場
「みんなー、今日はボクのステージを見に来てくれてありがとー!」
シーーーーーーン
「…?」
ボクがステージに入ればいつも歓声が沸く、でも今日は静かだ…。
「what?みんな、どうしたの…?」
そう言うと、皆の方から思わぬ声が返ってきた。
ミアちゃん、作曲コンクール大賞おめでとうー!!!!
「え…?」
なんで皆その事を…。皆には言ってないはず。ステージの後ろを見ると横断幕まで掛かっていた。
ふと舞台袖を見ると、ベイビーちゃんがニヤニヤしていた。ボクは全てを理解した。
「みんな…、」
ボクの曲は、いつもヒットチャートに載っているのが当たり前だった、そうでなきゃいけなかった。だから今回のコンクールだって、この結果は当たり前のはずなのに、どうして、どうして…
「どうしよう…、ボク、すっごく、嬉しいよ…」
みんなの おめでとう がこんなにも暖かくて優しい。それは今までにどったどんな記録よりも輝いて見えた。
この暖かくて優しく、他の何物にも代えがたい、この大切な皆との時間。
そうか、これが、これこそが、そうだったんだ…。
「…みんな、ありがとう。ボクのこの嬉しい気持ちを、大切な皆への感謝を伝えたい。だから今日は特別に、コンクールに送った曲を、今ここで、みんなの為に歌います。聴いてください 。」
コンクールに送った曲には、もともと歌詞はない。でもそんなの即興で作ってしまえばいい。…そう、ボクの内から湧き上がるこのキモチ、みんなへの想いこそが歌になる。
そしてボクは、歌い始めた。銀の光の海が、ボクを優しく包み込む中で、大切な想いを抱きしめながら…。
見つけたよ、ボクの 宝物 。