宝物   作:水野渚

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作曲ってどうやるんですか


第⑤話

同好会の部室

「愛せんぱーい、エマせんぱーい。次のライブの衣装どっちがいいと思いますか〜?」

「愛さんは、水色の衣装かな、ロリータ系ってやつだよねコレ。リボンのとこにぬいぐるみが着いてるのも可愛い。かすみんにぴったりだよ!」

「うーん、私はこっちの赤いチェック柄の衣装も好きだなー、ちょっとメイドさんっぽくて可愛いよね。普段のかすみちゃんとは違う魅力が出せるんじゃないかな?」

「え〜、どっちも可愛いかすみんにぴったり過ぎて困っちゃうなぁ〜♪」

「うーん、この部分の台詞は、もっと感情を込めた方がいいかな…。ここはもっと声を抑えないと…。」

「次のオンラインライブは、新しい事をしてみたいな。…よし。もっと演出面を強化できるようにアプリをアップデートしよう。」

「次のライブで使う枕、どれにしようかな〜、こっちも可愛し〜、こっちはふわふわで気持ちいいし〜、あ〜悩むなぁ〜。」

「98、99.…100!、はぁ…はぁ、あら?果林、もうギブアップかしら…。」

「そ、そういうランジュこそ…、はぁ、いきが、あがってる、わよ…!」

「amazed. いつまでやってるのさ2人とも…。全く、どっちも負けず嫌いなんだから…。」

「1.2.3.4.1.2.3.4!…どうかな、せつ菜ちゃん。」

「とても綺麗ですよ歩夢さん!あえていうなら、この部分のステップはもっと大胆に動いてもいいかもしれませんね。」

 

……今日も同好会の皆はそれぞれに活動している。

私は皆の活動を見ながら、新しい曲の制作に取り掛かっている。

…「宝物」をテーマにした曲。ふとしたことから思いついたのだけど、なかなか完成には至らない。

今、同好会の皆にも、それぞれ皆の宝物は何かを聞いていっている。それは、

ずっと大切にしてるペンダントや、友達、友達と過ごす時間、ファンの皆だったり。

みんなそれぞれに色々な宝物を持っている。

どれも素敵なものだけど…。

でもただ、それらをまとめるだけじゃあダメな気がする。

なんだろう、なにか大事なことが抜けてるような、足りないような気がするの。

…と、悩んでいるとミアちゃんが声をかけてきた

 

「ベイビーちゃん、曲作りは順調?」

「ミアちゃん。うーんそれがちょっと行き詰まっちゃって…。」

「ボクが送ったのじゃダメだったのかな…」

「ううん、そんな事ないよ。ミアちゃんの送ってくれた曲も詩も凄く素敵で参考になったよ。…でもね、まだ、何か…、何かが足りない気がするんだよね…。」

「ふぅん。ま、頑張ってね。何かあったら呼んでよ、力になるからさ。」

「うん。ありがとう、ミアちゃん!」

 

そして、日も暮れてきて、今日の活動が終わった。

皆それぞれ帰路につく中、私は書類を出しに生徒会室へ向かった。

 

生徒会室に入ると栞子ちゃんが窓から外の様子を眺めていた。

栞子ちゃんも私に気づいたみたいだ。

「あぁ、あなたでしたか。今日は生徒会が忙しく同好会に参加出来ずすみません。」

「気にしなくていいよ。生徒会と同好会を掛け持ちしてるだけでも凄いんだから。いつもお疲れ様です。」

「ふふっ。有難いお言葉です。」

栞子ちゃんはそう言うと、また外の様子を眺め始めた。

「…いつも、こうやって外を見てるの?」

「はい。こうして楽しそうにに活動している生徒の皆さんを見ていると、生徒会のお仕事をもっと頑張ろうと思えます。…この学園の生徒の皆さんは、私にとって、宝物なんです。何時だって皆さんには笑顔で、幸せが溢れる世界であってほしい。 そう願います。」

「…栞子ちゃんの願いは、きっと叶ってるよ。だって、みんなあんなに楽しそうな笑顔だもん。私だって、この学園で過ごせて毎日が楽しい。すっごく幸せだよ!」

「ふふっ。ありがとうございます。…ところで、あなたは何をしに生徒会室へきたのでしょうか?」

「あっ、そうそうこの書類出さなきゃと思って…。」

「……、この書類、提出期限が今日までですね…。」

「あはは、すっかり忘れちゃってたみたいで…、まだセーフ、だよね!?」

「ええ、大丈夫ですよ。全くあなたという人は… 。ふふふっ。」

あかね色に染まる生徒会室に、私たちの小さな笑い声が響き渡っていた。

 

翌日

「みんな〜、今日はありがと〜!」

今日は璃奈ちゃんのオンラインライブの日だった。

ライブが終わった後、璃奈ちゃんは、ファンクラブサイトに寄せられたメッセージを見ていた。

「あなた、見て、これ。」

璃奈ちゃんがそう言って見せてくれたのは、女の子2人が写った写真。

その2人は璃奈ちゃんと同じように表情が書かれたボードを使っていた。

そして写真の次にこんなメッセージが添えられていた。

「私、引っ込み思案で、友達も出来ず学校に馴染めなかったんです。でも、璃奈ちゃんのように、思い切って私も璃奈ちゃんボードを使ってみたら、それがきっかけで友達が出来ました。今ではその子は大切な親友です。私毎日が楽しくて…。そんな楽しいをたくさんくれるこの学校のことも、凄く大好きだなって思うようになりました。そう思えるようになったのも璃奈ちゃんのおかげです。本当にありがとう。これからも応援してるね。」

 

「…良かったね、璃奈ちゃん。」

「うん。とても嬉しい。…璃奈ちゃんボードは、私とみんなを繋げてくれる大切な宝物。私がみんなと繋がって、みんながもっと他のみんなと繋がって、そんな繋がりが、どこまでも広がっていったらいいな。」

「うん、いつか学校中に広がるくらいの気持ちで、これからも、頑張ろうね。」

「うん。璃奈ちゃんボード「めらめら〜!」」

スクールアイドルとファンの生み出す世界は、何時だって優しさと暖かさに満ちている。そう思う1日だった。

 

そして数日後

今日は同好会のメンバー12人皆で行うライブの日だった。

この1年間の活動の集大成のようなステージ。

ライブはいつも以上の大盛り上がりを見せた。

そして今はライブの終盤。

歩夢ちゃんによる最後のMCの時間だった。

 

「本日は本当にありがとうございました。

いつも楽しい時間はあっという間だなって思います。

私がスクールアイドルを始めたのはほんの些細なことがきっかけでした。

私の幼なじみの子が誘ってくれて、最初は軽い気持ちで始めて、右も左も分からなかったけど。でも、同好会の皆と、そして、ファンの皆とたくさんの時間を過ごして、私は気づきました。

私の世界はいつの間にか、こんなにもたくさんの宝物でいっぱいだったんだって…。

スクールアイドルとして、みんなと一緒に過ごしてきたこの1年間は、私にとってはかけがえのない宝物です。…そして、そんなみんなと出会えた、この学校が、私は大好きです!本当にありがとう! …、皆も同じ気持ちだったら、嬉しいな。」

ぺこり。と歩夢ちゃんが礼をすると、会場から歓声が湧き上がった。

わ〜わ〜わ〜わ〜!!

その歓声は、今までに聞いたどんなものよりも大きなものだったように思う。

それはきっと、皆も歩夢ちゃんと同じように、同好会の皆が、この学校が、大好きなんだっていう気持ちの現れなんだろうな。

その光景を見ている歩夢ちゃんも、そして皆も、凄く幸せそうな笑顔だった。

 

私はその光景を見ながら、さっきの歩夢ちゃんの言葉と一緒に、栞子ちゃんとの生徒会室での会話や、璃奈ちゃんのファンのメッセージを思い出していた…。

『この学園の生徒の皆さんには、何時だって幸せが溢れる世界であってほしい…。』

『栞子ちゃんの願いは、きっと叶ってるよ。だって、みんなあんなに楽しそうな笑顔だもん。私だって、この学園で過ごせてすっごく幸せだよ!』

『今ではその子は大切な親友です。私毎日が楽しくて…。そんな楽しいをたくさんくれる、この学校のことも、凄く大好きだなって思うようになりました。』

『…そして、そんなみんなと出会えた、この学校が私は大好きです!』

 

…学校を思う気持ち、この学校が大好きな気持ち。

それを繋げているのは、同好会の皆と、ファンのみんな…。

 

そっか。やっとわかった。

あまりにも大きくて、当たり前すぎて、気づけなかった。

それは、同好会の皆も、ファンの皆も。そして私も。

みんなを繋ぐ、誰にとっても大切な、一番の宝物…。

この曲に足りていなかった、最後の欠片。

 

それは、いつだってずっと傍で、私たちを見守ってくれていたんだ。

 

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