SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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第15回 玉・風

 

土曜日

 

薄暗い不思議な雰囲気を漂わせる室内でコピーは机の上の石粉粘土(ファンド)のような素材をひたすらに削っていた。

 

「…そう…これだよこれ…いいねぇ…!」

 

自身で造形をした物に満足しているのか楽しげに足をバタつかせる。

 

「おっはよーございまーす★…ってあれ〜?…怪獣できたんですね〜♪…うんうんと〜ってもいい感じ★です♪」

 

望美は部屋に入ってきて早々、机の上の物に近づきよく観察する。

 

「…ありがとう…ございます…!」

 

褒められて嬉しいのかパーカのフードで頭を覆うように隠す。

 

「…あんなわけのわからない…あしすとうぇぽん?なんか使わなくたって…私の怪獣は強いんだ…あんなのに…負けない…!」

 

1人でボソボソと呟くコピーを横目に望美は石粉粘土(ファンド)に手を触れ白い鎧を取り付ける。

 

「はいはーい♪それじゃあ…今回も世界を綺麗にするために頑張ってくださいね〜♪」

 

 

「インスタンス〜・アブリアクション★」

 

 


 

 

古澤家は戦国の時代から代々続く由緒正しい家系だ。

 

古澤家の本家は、何年も前からキヨシ台で商人を営み、各地の維新や戦争らの動乱にも生き残り、現在では東京でいくつもの支店を持つ銀行を経営している。

 

親戚を見渡せば社長や官僚は当たり前のようにごろごろと転がるエリート一族であり、プライドも高い。

 

そのためいとこたちは皆、いわゆるSランの学校の優等生で、宴席では子供達が行儀よくニコニコと並んで座る隣で親たちは我が子の自慢話をし続ける。

 

「うちの子はなんの大会で表彰された」だの、「全国模試で常に1番をキープしている」だのという話を表上は穏やかに、だが延々と応酬している。

 

そんな子供に序列を付ける作業のようなことに嫌気がさしたのは響子が小学生のときだった。

 

 

「…はぁ…」

 

膨大な数の親戚類に繰り返し挨拶をして回り、やっとの想いで部屋を抜け出した。

 

「……何やってんだろ…」

 

母にきつく結ばれた着物の帯を少し緩めながら本家の広い木造の廊下をとぼとぼと歩く。

 

本来なら今頃、友人達とショッピングモールへ買い物へ行く予定だったが昨日突然、本家へ行くと言われその約束を急遽断念することになったのだ。

 

…こんなことなら、無理にでも行けばよかったな…

 

ため息を出しながら奥の部屋へと向かう。

 

奥の部屋の襖を開けた途端、響子は息を呑んだ。

 

「でよぉ!……あん?」

 

そこの部屋はいとこたちが集まる部屋だったのだ。

 

よりにもよって本家で一番嫌な人たちの部屋に来てしまったと響子は後退る。

 

「…これはこれは…古澤家の面汚し…響子さんじゃないですかぁ」

 

「…フン…はしたないですよコウガ」

 

「あ〜!響子はん…ご機嫌麗しゅう」

 

とそれぞれ響子を見て口を開く。

 

声を出した3人以外にも部屋にはいたが各々黙っていた。

 

だが彼ら彼女らの瞳は一様に響子を嘲笑うかのように憐んでいた。

 

生まれたときから突出した能力、才能もなく早々に見下されていた響子を"可哀想なヤツ"といとこたちは判断していた。

 

響子はそんな部屋に入ることを躊躇い、無言でペコッと一礼だけすると早々に去ろうとする。

 

「あれぇ…?どこ行くんすかぁ?お話しましょうよぉ。お・ち・こ・ぼ・れ…さーん」

 

「ハァ…ほんとに…はしたない」

 

「まぁまぁ…響子はんの気持ちもお察ししますけど、ひとまずお話しましょうや。…"一応"いとこ…なんやし?」

 

響子はひたすらに笑顔で笑ってみせるしかなかった。

 

「…いえ…お気持ちは嬉しいのですが、今日はこれで失礼させていただきます…」

 

表面上では笑って接したが内心はもうボロボロだった。

 

そんな空気に耐えかね響子は足に込める力を強める。

 

「…あぁ?なんだその態度…てめぇ…落ちこぼれが調子こいてんじゃ…」

 

コウガが響子の着物を掴み掛かろうとしたその時、あたり一体が激しく揺れる。

 

「…な、なんだよ…!」

 

「今のは…まさか…」

 

響子は急いで近くの窓を開けて外を見る。

 

恐怖に戦慄く親族らの中、響子が険しい面持ちで空の向こうを睨む。

 

燃えさかる炎と黒煙に覆われた街の中に、大きな翼を羽ばたかせる巨大な影を認める。

 

「…怪…獣!?」

 

震える声を漏らす響子を嘲笑うかのように怪獣は雄叫びを上げた。

 

直後、響子の視界が黒へと染まった。

 

 


 

 

「いやぁ…おもしろかったな…まさか釣竿みたいに使うとは…」

 

ウルトラシリーズを視聴し終え一人でぶつぶつと感想を口にする。

 

「しかも…アッチィって喋ってたし…でもむやみに喋ると神秘性が薄まるというか…なんというか…」

 

そうして一通り感想を言い終わると二周目を視聴するべく、録画画面を開く。

 

すると左手首に着けていたプライマルアクセプターが急ぎ立てるように光り、鳴り響く。

 

「…うっそだろ!?…」

 

まさか休日に怪獣が出現するとは思わず、思いっきりくつろいでいたため、驚く。

 

…学校まで行くにしても最低でも30分は掛かる…

 

…あれ、これ結構やばくね?

 

{速報です。先程東京都杉並区に巨大な翼を持つ…怪獣が出現し、政府は…}

 

「…は、ははは…」

 

ニュース速報が樹の不安をさらに加速させた。

 

 


 

『…ハァッ!ほっ!あぁー!よっと!』

 

ダイナダイバーから放たれた対空レーザー砲から光弾をダイナソルジャーは機敏に動き回り避ける。

 

「やった…!俺…やれた…!やれましたよ!お兄さん!!」

 

一弾も被弾せず避けることができ、おもわずインナースペースから出て歓喜する太陽。

 

「あぁ…!すげぇよ…!すげぇぞ!太陽!やっぱやればできるじゃねぇか!!」

 

青年の方もインナースペースから出てダイナダイバーを縮小させると、太陽の元へと向かい背中を叩きながら笑う。

 

「痛い痛いっすよ〜!」

 

そう笑いながらダイナソルジャーを縮小させる。

 

「あぁ、悪ぃ悪ぃ…でもまさか1日でここまでやりきるとはな!!」

 

ガハハハと二人で笑っていると青年は急に静まり返り、辺りを見回す。

 

「……?」

 

「…お兄さん…?どうかしました?」

 

突然静かになった青年を心配しているとスマホが振動していることに気づく。

 

こんなときになんだよ…?と思い画面をみて太陽は愕然とした。

 

「…これ…お兄さん…これ!!」

 

スマホの画面を見せ、青年は目を見開く。

 

「…やっぱり怪獣か…!」

 

二人は表情を引き締める。

 

さっき小さくするんじゃなかった…まぁいいや…行きましょう、お兄さん!」

 

「…あぁ…行くぞ!!」

 

二人はダイナソルジャーとダイナダイバーを握り締め、高々と掲げながら叫ぶ。

 

 

「アクセスモード…!ダイナソルジャー!!」

 

 

「アクセスモード!ダイナダイバーッ!!」

 

その後、ダイナソルジャーの伸ばした両腕にダイナダイバーをドッキングさせる。

 

 

『『ダイナソルジャー・ダイバーコンバイン!!!』』

 

川を下り怪獣が現れた場所へと向かう。

 

 

◾️

 

巨大な翼により引き起こした暴風雨により辺り一面の建物を次々と薙ぎ払っていく。

 

鳥のような特徴を持ちながらも頭部は竜を彷彿とさせ、いつも通り白い鎧の装甲を身に纏う黒風猛禽怪獣:ゴウ・レボアース。

 

自身の存在を主張するかのように雄叫びを上げながら空中へと飛び上がり、再び暴風雨を作り出し、放つ。

 

次々と被害を拡大させていき、自身の強さを誇示するかのように頭を小刻みに震わせる。

 

『お兄さん…ちょっと一旦落ち着きしょ…って無理無理!!ここからなんて無茶無茶ァ!?』

 

『うるせぇ!やるったらやるんだよ!!いくぞ……ジャンピング…ダイナランチャー、バーストミサイルッ!!

 

その声とともに、上空のゴウレボアースに無数のミサイルが撃ち放たれた。

 

自身らにも一弾打ち込んでおり、その一弾の爆発力により、川から怪獣の元へと吹っ飛び、間近でバーストミサイルを打ち込んだのだ。

 

『どうだ!うまくいっただろ!』

 

『まぁ…そうですけどぉ…』

 

青年の行動に愚痴を言いながらも油断はせず怪獣を睨みつける。

 

[ーーー!ー!ーーー!!]

 

耳をつんざくような声を叫ぶとゴウ・レボアースは腕を身体の前でクロスしだす。

 

『…何やってんだ…?アイツ……降参のポーズか?』

 

『いや…違うでしょ……ってあれ?あの怪獣の羽ってあんな小さかったっけ?』

 

軽くツッコミを言い終えると太陽は怪獣の異変に気づく。

 

刹那、無数の小さな物体が2機を襲う。

 

『ぐわぁぁ!!』

 

『くっ…くそっ…!なんなんだ、今の!?』

 

無数の物体が2機の体をどんどんと攻撃して振動がインナースペースまで伝わる。

 

『い、いったん解散するぞ!!』

 

『え、ちょ待っ…』

 

と太陽が言い終える前にダイナダイバーとダイナソルジャーは分離する。

 

『っ…よいしょぉー!!』

 

即座に太陽はコントローラーを操作し、なんとか着地に成功する。

 

着地と同時に巻き起こった砂埃により、謎の物体の動きが鈍くなり、何が攻撃を繰り出しているかをようやく確認できた。

 

『これは…羽?』

 

そう、先程から2機を苦めていた物体の正体はゴウレボアースから抜け出た羽だったわけだ。

 

無数の羽が縦横無尽に襲い掛かる。

 

『くっそ…これでも喰らいやがれぇっ!』

 

対空式レーザーを放ちなんとか対処するが、無数の羽は怯むどころか攻撃の手を強める。

 

一方の太陽もダイナソルジャーの爪などで攻撃を繰り出すがなかなか数が減らない。

 

[ー!ーー!!ー!]

 

するとゴウ・レボアースは再び雄叫びを上げると羽がみるみるとゴウレボアースの元へと戻っていき、巨大な翼を羽ばたかせる。

 

翼の羽ばたきにより暴風雨や竜巻を引き起こしながら近くにいたダイナソルジャーへと翼を広げて突っ込んでくる。

 

『…!太陽!!』

 

『くっ……力強すぎ…!』

 

突っ込んできたゴウレボアースの嘴部分をなんとか掴み耐えようと試みる。

 

『う、うわぁぁぁ!!』

 

だが、ゴウ・レボアースの起こした嵐がダイナソルジャーへと向かい、ダイナソルジャーは吹き飛ばされてしまう。

 

その後ゴウ・レボアースは上空へと飛び、幾つもの竜巻を引き起こしていく。

 

『くそっ…あの翼をどうにかできれば…』

 

『…せめて空を飛べたらなぁ…っていうか…』

 

上空に佇むゴウ・レボアースを見上げながら、怪獣を分析する。

 

『あの紫の巨人さんまだぁ?!!!』

 

太陽の悲痛な叫びが木霊した。

 

 


 

 

「…へっ…へっ…へくちっ!!

 

バスに揺られながら、乙女チックなくしゃみをする樹。

 

「…誰か俺の噂をしてる…わけないか…ハァ」

 

そう言い、樹はスマホで怪獣の映像を観る。

 

「見た感じ…マガバッサーとかそんな感じの怪獣か…?しかも…羽を無数に飛ばして攻撃…さらに竜巻らを生成可能…」

 

と一人でブツブツと怪獣の分析しながらニュースを見守る。

 

するとバス内にアナウンスが入る。

 

〔えー…誠に申し訳ございませんが…急遽発生した竜巻により…この先へ行くことができません…恐れ入りますが…しばらく、車内でお待ちください〕

 

…あれ?詰んだ、これ?

 

窓の外を見ると木々が揺れ、道路に葉やゴミなどがすごい勢いで飛んで行くのがわかる。

 

「"ママァ〜"怖いよ〜!!」

 

「大丈夫、大丈夫だからね…」

 

同じバスに乗っていた親子の会話が耳に入る。

 

他にもバスに乗っている人々の顔はどれも不安で押し潰されそうなものだった。

 

…そうだよ、みんな怖がってる…俺が…俺が行かないとなぁ!!

 

「君?!何をするんだね!?」

 

バスの運転手が言い終わるのを待たず、樹はバスの運転席にあるドアの開閉ボタンを押して外へと駆け出していく。

 

…待ってろよ…ナイト!!今からダッシュでそっちに向かうから!!

 

 


 

マガバッサー: ウルトラマンオーブにて登場した風の魔王獣。巨大な翼でマガ衝撃波やマガ嵐で攻撃する。

 





(余談 ゴウ・レボアースの羽操る能力は完全に、どっかの鳥の翼を持つヒーローを意識しましたね…←私の趣味だ、いいだろう

…ということで次回投稿までadieu!
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