SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish 作:ゴリニティ75
嫌な風が顔を撫でるのを感じ、響子は目を覚ました。
「いったい何が…」
状況を確認するべく、はっきりとしない意識を引きずりながら立ち上がり周囲を見渡す。
「…えっ……」
響子は周りの状況に思わず言葉を失う。
街がない。
建物は薙ぎ払われ、そこら中に木材が散らばっており、もはや見る影もない。
災害の映画をそのまま抜き取ったような光景が目の前に広がる。
それとともに、錆のような匂いが鼻を刺激する。
いや違うこの匂いは…
響子が足を動かすと嫌な音がする。
ビチャア
足元を見るとそこには赤い鮮血が広がっていた。
「……ハァ…ハァ…ハァ………!」
自然と呼吸が荒くなる。
思わず後退りする響子に追い討ちをかけるように、足に何かが当たる。
当たった物が何かを確認するべく後ろを振り向く。
「………!」
響子は息を呑む。
そこにあったのは、ちぎれた腕だった。
その腕は見覚えのある時計を着けていた。
いとこであるコウガのものだ。
それだけではない。
先程まで話していた、いとこたち、親族ら、そして母と父が崩れた建物の下敷きとなっていた。
ある者は四肢が捥げ、ある者は柱に串刺しになっており、それは見るも悲惨なものだった。
「…ウッ…」
そんな光景を目にし、眩暈が襲う。
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!ハァ…!ハァ……!…ゲホガハッ!」
眼下の光景を受け止めることができず、過呼吸になり、咳き込む。
なにこれなにこれなにこれなにこれなにこれ
頭が痛い。
なんだこれ、なんだこれ夢、いや夢じゃない、じゃあ現実…?
頭に手を当て、なんとか意識を保つ。
〔ーー!ーー!ー!!ー!〕
怪獣が上空で雄叫びを上げ竜巻を起こしている。
『ぐわぁぁっ!!』
その竜巻を間近で受け、ダイナソルジャーは倒れる。
すぐ近くにいた為、振動が直に響く。
ここにいたら、巻き込まれる…!
震える身体を抑えながら、響子はその場を離れようとする。
その時、ガラッと何かが落ちる物音が聞こえた。
辺りを見渡す。
「ー…!奏…!」
瓦礫の間に挟まる妹の姿を見つけ、痛む身体に鞭を打ちながら妹の元へと急ぐ。
「奏っ…!ねぇ…奏っ!」
瓦礫をなんとかどかしながら、妹を呼びかける。
だが、奏の返事はない。
出血が酷い。
身体中に傷痕があり、顔にも何箇所か内出血していることが見て取れる。
響子は奏の胸元へと耳を傾ける。
小さいが、ドクンドクン…と心臓の音が聞こえる。
「まだ…生きてる…!」
助けを呼ぶべく、スマホを取り出し救急車を呼ぼうとする。
しかし、怪獣:ゴウレボアースの起こした嵐により、電話線がやられたため、電話が繋がらない。
「…そんな……奏っ!…奏っ…!」
どんどんと顔が青ざめていく奏の手を握りながら祈る。
…お願い…お願いだから…奏を…奏を救ってください…
神様でもなんでもいい…お願いだから…
「…そうやってまた、現実から目を背けるの?」
ふと聞こえた幼い声に反応し、顔を上げる。
先程まではいなかった幼い少女がそこに立っていた。
青と白のふさふさとした柔らかそうなの防寒着に、白の長細い帽子をすっぽりと被っている。
帽子の下からは栗色の髪がところどころ見え、胸元にはト音記号を模ったようなワッペン。
一見するとただの子供だが、響子を見る瞳からは鮮烈なまでに「生命」を感じさせ、どことなく人間ではない雰囲気を纏っていた。
「……えっ……?」
突如としてあったことも見たこともない、完全なる初対面の子供に声をかけられ響子は戸惑う。
「お前…また間違えた…姉チャンは…自分で自分を縛ってる…そういうふうにみえる」
「…自分で自分を…縛ってる…?」
少女の言葉に疑問符を浮かべる。
…自分で自分を縛ってる…いや私は逆に縛られてる側なんじゃ…
と内心で考えていると少女は続けて話す。
「…姉チャンの境遇はよく知ってるよ。…というかこの世界の出来事は嫌でも耳に入るんダケド…っと話がずれたね」
「……」
なぜ自分のことを知っているのかと響子は思ったが、彼女の気迫に圧倒されて黙っていることしかできない。
「「どうせ私が努力をしたって誰も認めてくれない」って諦めて、自分の力はこんなものなんだって…自分は落ちこぼれだって…現実から目を背けてる」
「…違う…私は…」
「違わない……自分でもわかってるから自分を偽る。違う?」
「違う…違う…!私は……私はただ……!」
そこで響子は吹っ切れたように初めて自分の想いを、自分の言葉で叫ぶ。
「自由に…なりたかった!!」
「わたしは…もうずっと前からお母さんたちの声が聞こえない…向かい合って話しているつもりだった…けど違った、心の声が…聞こえない…私の言葉が伝わらない…そうやって私は…逃げてたんだ…」
「……うん…」
「古澤家の責任から…親からの信頼から…ずっと籠ってた…」
「…そうだね…」
「どこに行っても…古澤家の落ちこぼれって烙印を押されて…友達と話しているときも、本当は私のことそうやって思ってるのかなって…」
「自分でも駄目だってわかってた…だけど…私は飛び立てない…飛び立つ翼が…ない…」
自然と涙が頬を伝っていく。
「…やっと本心を言ってくれたね」
響子の涙をハンカチを出しながら少女は拭う。
「…君にはもう…あるよ、自由に飛べる…翼が」
そう言うと少女は響子の手を優しく握り微笑む。
「…覚えはない?姉チャンは…もう…羽ばたこうとしてたんだよ」
「…え…?」
「…姉チャンは怪獣を見てもその事実を受け止めて、それに本気で向き合ったんだよ?…普通の人なら夢だって思ってなにも考えないよ」
「…そう…かな」
「もっと自信を持って良いんだよ。ちょっとしたきっかけさえあれば…人は変われる、どこまでも…自由に飛んでいけるんだよ」
…ちょっとしたきっかけ…
新条くん…ナイトさんと関わって…私…少しだけど前に進めてる
…前の私だったら諦めてた…だけど…今は…
「…姉チャンの想いを…教えて?」
響子は覚悟を決め、まっすぐな目で少女を見る。
「私は…自由に飛びたい…いや…飛ぶんだ…!私は自由に!!」
自身の想いを伝えると、響子の目の前に光が浮かび上がる。
「…光…?」
響子は驚きながらもその光に導かれるようにその光に手を伸ばす。
すると光は響子に呼応するように形を変えていき、飛行機のようなものを形作っていく。
「…翼…」
響子はそれを掴むと、その中に蓄積された数多の記憶が流れてくる。
私は、どうかしてるんだよ
やれることはできるだけやっときたいと思うよ。手遅れになる前に
蓬くん…ありがと
茶髪の髪を揺らす緑色の目をした少女の想いが断片的だが響子へと伝わっていく。
そんなに他人のことで かさやまやらやるせなたゆさ
と突如謎のノイズが入る。
蓬…
同棲したい
女子がいるグループで遊びに行く時はちゃんと言ってってゆってたじゃんずっとッ!!
……ん?なんかさっきまでと雰囲気が…
冷静だったらそれはもう恋愛じゃあない!!
キースッ!キースッ!キースッ!
「ちょ、ちょっと…?姉チャン大丈夫?ねぇねぇ…?」
響子の表情に異変を感じ少女は響子の肩を懸命に揺らす。
蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬蓬
「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
そう言って響子は思わず光から手を放してしまう。
「…大丈夫…?」
「う、うん大丈夫……愛重たくない?あの娘…」
情報の多さに混乱しつつも、頭の中で整理する。
「…それじゃあ…この娘のことは任せて、姉チャンは…頑張ってね」
奏の元に寄り添い、優しく微笑んでくる。
「うん…奏のこと…よろしくね」
響子は再び光に手を伸ばし、光を包むように空へと掲げ叫ぶ。
「アクセスモードッ、ダイナウイング…!」
ダイナウイングが巨大化していくのを見守りながら少女は呟く。
「…竜の翼が目覚めた……残るは……」
〔ーー!ーー!!〕
怪獣:ゴウ・レボアースが吠え、辺りには暴風が吹き荒れ、振動がインナースペースにも響きわたる。
それとともに無数の羽が二機を襲う。
『くっそ…これじゃまずいぞ…』
太陽の頬を一筋の汗が伝う。
そもそもダイナソルジャーには武器という武器が両掌にある爪ぐらいしかなく、肉弾戦に特化しているため、ゴウ・レボアースとは相性が悪い。
一方のダイナダイバーには、対空式のレーザー,そしてバーストミサイルと割とどんな怪獣にも対応が可能だが、今回のゴウ・レボアースにはそうはいかない。
その巨大な羽から生み出される暴風がミサイルごと絡めとり、逆にこちら側に返してくる。
さらには羽が独立して動き、攻撃に防御にと縦横無尽な動きをしてくる。
…どうする、どうすれば…と太陽が考えていると、視界の端から何かがこちらへと向かってくるのが見える。
『あばばばっ!あれこれどーすれば良いの〜!!』
と上に下にとホバリングしながら回転して突っ込んできてそのままダイナソルジャーへとぶつかる。
『ほぇ?』
当然の出来事に理解が追いつかないながらも、ダイナソルジャーを起き上がらせる。
『あぁ!ごめんなさいごめんなさいわざとじゃないんです〜!』
何度も腰を曲げて謝ってくる水色の髪の少女の姿がインナースペースの壁に設置された牙型のサブモニターに映し出される。
『…誰だ…?アンタ』
青年は映っている少女を怪しげに凝視していた。
『…んン…?誰かと思ったら…委員長じゃん!』
太陽はその少女に見覚えがあった。
それは太陽のクラス1年E組の頼れる学級委員長:古澤 響子だった。
『え、…?エェェ!太陽くん?!なんで?というかこれ乗ってたの太陽だったの?!』
お互いに驚きを隠せず何度もサブモニターを見上げる。
『…なんだぁ…?太陽の…知り合い…でいいのか…』
いまいち2人の反応についていけず青年は腕を組みながら唸る。
『あぁ…はい、えっとうちのクラスの学級委員長で…』
と響子について話そうとしたところでゴウ・レボアースが再び咆哮し、羽を飛ばして攻撃をしてくる。
『ッ…話は、後だ…!…アンタも戦ってくれるってことでいいんだな!』
バーストミサイルで羽を打ち返しながら響子に聞く。
『…はい…!私も…自由を手にするために…戦います…!』
青年の問いに、響子は真っ直ぐな目を向けて答える。
『…そうか…!…見たところアンタ初めて操縦してるな…なら…太陽!お前のダイナソルジャーと合体して対応するぞ!』
『え…できるんですか?合体?…でも合体方法わかんないし…』
戸惑いの表情を太陽は浮かべる。
『んなもん…気合いだ!気合い!ダイナダイバーと合体するときの要領でいける!』
無茶ぶりすぎだろ…と思うが今はこれしかない…!
そう自分に喝を入れ合体を試みる。
『委員長!そのままじっとしてて!』
ダイナウイングの下にダイナソルジャーの身体を潜らせ、背中の部分で合体させる。
…即興でもなんとかなるもんだな…よしっ!!
『えっと…ダイナダイバーと合体したときは…ダイバーコンバインだったから…えっと…これなんて名前だっけ…』
1人でぶつぶつと独り言を溢していると、青年の哀しい悲鳴が聞こえてくる。
『ぬおぉぉっー!ダイナウイングだそれは!集中しろ!集中ゥー!』
太陽が名乗りにもたついている間に、ダイナダイバーは無数の羽の餌食となっていた。
『す、すんません…気を取り直して…』
『ダイナソルジャー…!ウイングコンバイン!』
ダイナソルジャーの膝部分のノズルから炎を吹かしながら名乗りを上げる。
『おぉ…!そ、そういうの名乗るんだ…覚えとこ…』
響子の反応を見て、なんだか名乗ってる自分が途端に恥ずかしく感じる。
『い、いくよ!委員長!…えっと…スティックかなんか倒してみて…!』
『えっと…こう?…かなぁ!』
響子が操作をすると同時に、勢いよく空へと飛翔を遂げる。
〔ー?!ーーー!!ー!〕
突如として、自身のテリトリーに現れたダイナソルジャーウイングコンバインに驚きながらもゴウ・レボアースは羽攻撃を繰り出す。
『…えいっ!』
響子はコントローラーのスティックをぐるぐると回転させる。
その動きに合わせてダイナソルジャーウイングコンバインはぐるぐると回転し、羽を薙ぎ払っていく。
『うおぉぉ…スッゲェ…』
初めて操縦するのに、初回の自分よりも上手く扱っているのを見て「これが優等生ってやつか…」と素直に感心する。
そしてゴウ・レボアースの目の前まで飛翔し、すぐさま空中戦が始まる。
『さぁって…ラウンド2といきましょうか!!』
…どっかのいかれポンチさんの愛の力すごくね…?