SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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ヒロインアーカイブスと別冊宇宙船はいいぞぉ…(布教活動)


第19回 感・謝

 

7月上旬 火曜日

 

一学期 期末テスト 2日目

 

 

「やぁぁぁっと終わった…」

 

二時間目の数学のテストが終わり、教室には喧騒が広がる。

 

樹は椅子の上でググッと身体を伸ばしていた。

 

「よっ!お疲れサマンサ!」

 

テスト終わりだというのに誰よりもハイテンションで太陽は樹の元へと来た。

 

「…なんでそんなに元気なんだよぉ…ところで…お前…テストできたの?」

 

「それは…まぁ…うん……大丈夫…俺…天才だから⭐︎

 

黒のハンカチで目元を隠し、人差し指と中指をクロスさせるような掌印を太陽は結ぶ。

 

「無駄なイケボやめろよ…あと多方面から怒られそうなのやめろ」

 

太陽のイケイケオラオラオーラに樹は呆れながら帰りの支度をしていく。

 

ちなみに、今のところ樹は先週から響子に勉強を教えてもらっていたため、普段のテストよりかは自信はある…という感じだ。

 

自身はあると言っても、なるべく空欄をなくして、取り敢えず書いただけなためそれが合っているかは話が別なのだが…

 

「じゃあ、帰るか」

 

明日のテスト科目の教科書をリュックに入れ終え、樹と太陽は帰路へと着いた。

 

 

◾️

 

少し疲れた足取りだが、どこか楽しげに二人は道を歩いていく。

 

歩み入った高架下のトンネルが、先程まで二人を包んでいた七月の溶けた水銀のように輝く日差しを曇らせる。

 

「"あぢぃぃ……"」

 

まだ7月上旬だというのにこんなにも暑いとは…とインドア派の樹は恨めしく灼熱の日差しを睨みつける。

 

「樹もまだまだだなぁ…こんな程度の暑さで…この現代っ子め」

 

「…お前も現代っ子だろ」

 

そんなやりとりをしながら、二人は肩を並べてトンネルを出る。

 

トンネルを出た直後、太陽は何かを見つけたように足を止める。

 

「どした?」

 

「…あの子は……!」

 

太陽の目線の先を見るとそこには、もう初夏に入っているという季節なのに分厚い防寒着を身につけた少女がいた。

 

小学校低学年ぐらいの見た目であり、太陽の妹だろうか…と樹は一瞬思うが太陽には妹ではなく姉しかいないことを思い出す。

 

しばらく見つめているうちに少女は曲がり角を曲がっていってしまう。

 

すると太陽はその少女の後を追うように走り出していく。

 

「…?!ちょいちょい太陽どこ行くんだよ!」

 

とうとうロリコンの癖に目覚めてしまったのか…立派な犯罪だぞ…と太陽を心底心配しながらも樹はその後を追った。

 

 

 

 

「はぁっ…はぁ…待って!」

 

二人はしばらく少女を追いかける。

 

何度も見失いかけたが、なんとか根性で追いついた。

 

レックスの根性論もたまには悪くないと太陽は感じる。

 

「あっれ…いつのまに…」

 

と気づけば二人は鶴傘公園へと来ていた。

 

鶴傘公園は、樹たちが学校帰りなどによく立ち寄る場所だ。

 

公園内は木陰の小路、彫像、水景物があり、見晴らしの良い景色が楽しめる。

 

他にも屋根付きの休憩スペースなどがあり、なかなかオシャンティな感じだ。

 

 

追いかけていた少女は足を止め、一度小さくため息を吐くと太陽たちの方へ振り返る。

 

「……何…?」

 

少女は怪訝な目をしながらこちらを見てくる。

 

「…誰?」

 

「…ほら前に言ってた…不思議な子だよ」

 

ヒソヒソと太陽と話しているとより一層少女は顔を顰める。

 

…側から見たら完全に怪しい二人組である。

 

下手したらいつ通報されてもおかしくないのでは?

 

「いや…その…君にさ、色々とお礼がしたくって」

 

「いやいやそれ完全にアッチ系のやつのセリフなんですけど」

 

「うるさい」と肘で樹の脇腹を突き立てながら太陽は話しかける。

 

「…委員長からも聞いたよ、君の言葉のおかげで前に踏み出せたって…だから…お礼を…」

 

「…お礼はいいよ」

 

太陽の言葉を遮るように少女は口を開いた。

 

「?」頭の中にハテナマークが渦巻く。

 

「あれは……あれがアタシの役目だったからやっただけ」

 

「……役目?」

 

少女の役目とは何ぞや?と思い樹は疑問を口にする。

 

いきなり話しかけてきた樹に一瞥をくれるとともに、樹の左腕のプライマルアクセプターを見つけ、少女は驚いた様子を見せる。

 

「……そこの兄チャンは…そっか」

 

意味深に少女はアクセプターを見た後、一人で納得したかのように頷く。

 

太陽と顔を見合わせ、再び頭の中に?の文字が浮かぶ。

 

「…はい…もういいでしょ。この話はこれでお終い、バイバイ」

 

と樹と太陽の背中に小さな手を回して公園から追い出すように押してくる。

 

…なんか少女の手が氷のように冷たく感じたのは流石に気持ち悪いので口にしないでおく。

 

「あと……アタシとは…もうあんまり関わらない方がいいよ」

 

 

そう言い残すと少女は公園の奥へと行ってしまった。

 

「…なんか不思議な子…だったな」

 

「…あぁ…」

 

去っていく少女の後ろ姿を太陽は見つめる。

 

太陽曰く、少女からは何か悲しげな感じのオーラ(めちゃくそ曖昧)が感じられた…とのこと。

 

まぁ…少女のことも気になるが、今はテスト週間だ。

 

彼女のことを考えるのはほどほどにして、今は明日のテストに向けて勉強に勤しむ二人であった。

 


 

 

「…また来たの…?」

 

と少女は呆れたように樹と太陽を見る。

 

期末テスト3日目。

 

明日でようやくテストから解放されるため、生徒の大多数は今日だけは勉強を頑張る!という生徒が多い…がしかし、樹と太陽は昨日と同じように鶴傘公園に来た。

 

別にテストが余裕…というわけでは決してないのだが、少女のことが気になり、つい来てしまったのだ。

 

…これ文字面だけみてると普通に怪文書みたいで怖くなってきた…

 

…余談はここまでにしておいて、太陽は本題へと入る。

 

「やっぱり…さ、色々と考えて…俺…君に感謝を伝えないとな〜って思って」

 

「……だから…お礼は…」

 

「これは…お礼じゃあない」

 

少女がいらないと言う前に、樹は口を開く。

 

「これは感謝だ」

 

樹の言葉に続けて、太陽も口を開く。

 

「お礼ってのは、ありがとうの気持ちを言葉とか贈り物とか、何かしらの行動で表すってことで、感謝って言うのは相手に、ありがた〜いって感じて「御礼」を自分の口から相手に直接伝える…ってことらしいよ」

 

同じ言葉のようで、少しだけ違う。

 

昨日、少女の「これが役目だから…」という言葉に対して引っかかっていた太陽は、少女が自身の役目、責務というものに縛られているのではないか…?と思ったとのことだ。

 

…こいつマジで主人公すぎだろ…もうこいつが主人公でいいよ…

 

…はい次回からSSSS.DYNASOLDIERスタート(ヤケクソ

 

…冗談はこのへんにしといて…太陽の言ったことは割と的を得ていたようだ。

 

テスト週間なのに、ここまで少女のことを心配して色々考えるとは…素直に賞賛してもいいだろう。

 

ただ…ただね…一つだけ気になるとすればそれは…

 

「…最後の「らしい」ってとこ減点だな」

 

「おーいっ!」

 

「……!」

 

そんな二人のやりとりを少女は目を丸くしてしばらく見つめる。

 

 

 

 

「っふ……」

 

すると少女は静かに笑い出す。

 

 

「……ほんとっ…変な兄チャンたち」

 

少女は会ってから初めての笑顔を見せた。

 

 


 

期末テスト最終日 木曜日

 

昨日、少しだけだが少女は心を開いてくれた。

 

テストが終わったということで響子も誘い、改めて少女に感謝を伝えようということになった。

 

…結局それ御礼じゃね?と内心思ったことは黙っておこう。

 

その感謝を伝える会(仮)は、まぁ…学生のお財布状況なども考えてファミレスで行うということにした。

 

校門で待ち合わせると他の生徒たちに見られて要らぬ噂をたてられかねないので、高架下のトンネルで待ち合わせることにした。

 

「おーっしこれで全員だな。それじゃあレッツゴー!」

 

高架下に全員が集まったところで、ファミレスに向かう。

 

最初の日こそ、近寄るなオーラを出していた少女だったが、今ではなんだかんだつきあってくれるあたり少しは信頼してくれたのだろう。

 

ファミレスへと向かう途中、歩道の端に置かれたパイプ椅子に猫背で腰掛けているレックスの姿を見つけた。

 

「レックスさん!」

 

「ん…?おぉ、お前ら」

 

先程まで,眠気と戦っていたような顔つきで、樹たちを見る。

 

「…誰だその子?」

 

レックスは響子の後ろに隠れていた少女に気づくと、思いっきり顔を近づけ、訝しげに少女を見る。

 

「………こんにちは」

 

普通このぐらいの年齢だったら泣いていてもおかしくないはずだが、少女はレックスの顔をしばらく見た後小さな声で挨拶をした。

 

「あ、あぁ…これは丁寧に…コン、ニチハ…」

 

まさか挨拶してくれるとは思わず、レックスは言葉に詰まらせながらもなんとか挨拶を返す。

 

「この子は…前に言ってた…」

 

「あー…んなこと言ってたな」

 

以前、情報共有のときに太陽が言っていたことを思いだす。

 

「レックスさんは…何してるんです?」

 

響子から声をかけられると、レックスは顔を道路に向けたまま、握っている数取器を掲げて見せてくる。

 

「何って…テスト?かなんかで購買が休みだからな…代わりの仕事として交通量調査?をやってんだよ」

 

右から左から絶え間なく車が行き交う道路で、車が何台通ったのかを数える…といった仕事のようだ。

 

一見、楽そうな仕事にも見えるがレックス曰く、意外と奥が深いそうだ。

 

よかったらレックスも誘おうとも思ったが、仕事の邪魔になっては悪いと思い、樹たちはその場を離れる。

 

「それじゃあレックスさん、頑張ってくださいね」

 

「おぉ……気をつけてな…って、うおぉっ!めっちゃ車来たぁ!?」

 

樹たちを見送った後、大量の車が道路を交互に行き交い、レックスは椅子から腰を浮かせて道路へとかじりついた。

 

 

◾️

 

樹と太陽が隣合って座り、その対面では響子と少女が和気藹々とメニュー表を広げている。

 

ファミレスへと向かう道中でかなり打ち解けたようだ。

 

「はわわわぁ…!すごいすごい…!」

 

「どれにする?あ!この特製コーヒーゼリーめっちゃおいしそ〜!」

 

メニュー表を見て目を輝かせる二人に、樹はついていけない。

 

友人とファミレスへ行くということ自体があまりないので、こういうときどういうふうに話していいのかわからないのだ。

 

「ふ〜むむむ…どれにすっかな……樹は決まったか?」

 

隣では、太陽がどれにするか迷っているようだ。

 

現在の時刻は14時30分

 

昼食を食べていないためガッツリいくか、今食べると夜に響きそうなため軽めに取るかで悩んでいるようだ。

 

響子と少女に関してはもう昼食は決め終え、デザートで迷っている。

 

とはいう樹も豊富にありすぎるメニューに悩んでいるのだが…。

 

「うーん……」

 

樹は1人で住んでおり、家のことはすべて自分でやらなければいけない

ため、お金の管理にはうるさいのだ。

 

そのためファミレスのメニューをみても「この値段でこれだけ?自分ならもっと…」などという考えが邪魔してなかなか決断できない。

 

「…よっし…決めた…このスタミナ定食にしよう!」

 

と太陽はメニューを決めたようだ。

 

樹はメニュー表をみながら太陽の選んだスタミナ定食の隣にあった天ぷら定食を頼むことにした。

 

「よし、決めた」

 

これを選んだ理由としては、家では油の処理がめんどくさくてあまりやらないという主婦目線の理由だ。

 

「2人ももういい?」

 

「うん大丈夫」

 

「ん」

 

2人の承諾を得て太陽は店員を呼ぶべく声を張る。

 

「すんませーん」

 

学生などがよくする、店員誰が呼ぶ問題は太陽が解決した。

 

「ご注文は?」

 

順に、各々自身の食べたい物を注文していく。

 

 

 

 

 

「…かしこまりました、無料のドリンクバーは如何しましょう?」

 

と、ここでもう1つの問題が発生する。

 

「あー…俺は…じゃあメロンソーダで」

 

「…おれんじ…じゅーす?を…」

 

「うーんと…アイスティーで」

 

なんでみんなそんな即座に対応すんの?と内心叫びながら樹は頭をフル回転させてドリンクバーを選ぶ。

 

「あ、えっと…ト、トマトジュースで」

 

「好きだねーお前」

 

「いいだろ別に」

 

太陽につっこまれながら注文し終え、店員は去っていく。

 

 

「てか、まだ君の名前聞いてなかったよね」

 

「あーそえば」

 

と今さらすぎることに気づき少女へと名前を問う。

 

「えーっと…ライラムー…長いかな……えっと…アタシの名前は…ライラ」

 

何やら端折ったようだが、まぁ教えてくれたのでよしとする。

 

「ライラ…ちゃん…かぁ……かわいい!!」

 

と響子がライラの名前を聞くやいなやライラの両手を握って興奮気味にブンブンと振る。

 

「いい名前だな!」

 

とサムズアップをライラへと樹は向ける。

 

「それレックスさんのマネだろ」

 

すぐさま隣の太陽にツッコまれる。

 

「バレた?」

 

阿吽の呼吸の樹たちを見て、あはは、と笑う響子。

 

そんな様子にライラも思わず笑みをこぼす。

 

こうして完全に打ち解けた一向は、楽しんでいった。

 

 

◾️

 

「ごちそうさまでしたっと」

 

ファミレスを出ると、もう夕日が沈み出す時間であった。

 

なんだかんだで、真面目な話は一切せずに、ただ楽しい時間が過ぎていった。

 

最初は口数が少なかったライラも、話していくうちに自然と自分から話してくれるようになり、とても楽しかった。

 

つい喋りすぎてしまうマダムたちの気持ちがわかった気がした。

 

「ちょっと食べすぎた…」

 

「けふっ」とお腹をさすりながら、ライラは笑う。

 

ここだけの話、ライラはめっちゃ食べた。

 

しかも冷たい物ばかりだ。

 

ここまで冷たい物ばかり食べていると腹痛になりそうで心配になるが、当の本人は全くそんな様子はないのでまぁ大丈夫だろう。

 

こうしてみると、初対面ではミステリアスな謎の多い少女という印象だったが、笑っている姿を見ていると年相応の可憐な少女…という印象を受ける。

 

そう思っていると、ライラが話しかけてきた。

 

「兄チャンたち…今日は…ありがとう…それじゃあ…アタシはこれで…」

 

どうやら帰る時間らしく、各々にお礼を言ってくれた。

 

ライラはお礼を言い終えるとそのまま樹たちとは逆方向へと歩いて行く。

 

そんなライラへと太陽は声をかける。

 

 

「あぁ、それじゃあ…また"明日"!」

 

「…え?」

 

太陽の言葉に思わずキョトンとし、振り返る。

 

「だって…俺たち…もう"友達"…でしょ?」

 

さも当然かと言うように太陽はニッと笑いかける。

 

「それじゃ!」

 

「………」

 

手を大きく振りながら去っていく3人の後ろ姿を静かに見つめる。

 

 

 

 

…不思議な人間だ。

 

知り合ってまだ数日しか経っていない、しかも得体も知れない自分を「友達」と呼ぶなんて。

 

「……トモダチ…か」

 

胸につけているト音記号のワッペンを握りながらライラは呟く。

 

「これ以上は干渉しない方がいいの…かな…」

 

沈んでいく夕日が眩しいのか、ライラは帽子を深く目元まで被る。

 

「母チャン…父チャン…アタシは…どうすれば…?」

 

返ってこない言葉に表情を暗くしながらも、自身に与えられた役目を自分に言い聞かせるように口にする。

 

「……あくまでも観測者じゃなきゃ…いけない…そうだよね」

 

 

そう言ってライラは顔を隠したまま歩き出す。

 

自身の役目を全うするために。




今回長かったんでライラの詳細はまた今度!adieu!
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