SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish 作:ゴリニティ75
時代の流れは早いですなぁ…
〔アタシにはもう関わらないで〕
その言葉と共にライラは太陽たちの目の前から去っていった。
どこかもの悲しげなその背中は何故か心が締め付けられたという。
そのことを樹が聞いたのは彼女が去ってすぐ後のことだった。
ゴウ・リタガドールとの戦闘時、彼女がいなければあの場で親友を失っていたであろうし、街もどうなっていたかわからない。
樹としても一言お礼を言いたかったのだが、あの時以降ライラの姿はどこにも見当たらなかった。
モヤモヤとした心境の中でも、時間は誰しもに平等に流れていく。
今日も今日とて、たまには購買で適当に買ってレックスと談笑でもしようかと廊下を闊歩していた。
「お、おいあれ……」
「おん?……んんっ?ナニアレ?」
樹と太陽は顔を見合わせる。
珍しく購買が混んでいるのだ。
大事なことなのでもう一度言おう。
昼時なのにも関わらず客が誰一人いないあの"購買"が混んでいるのだ。
レックスがバイトになってからというもの、全くもって繁盛していなかった購買に学生たちが並んでいる。
それでもレックスの前任者のおじさん店長がやっていた頃の半分にしか満たないのだが、今のレックスには充分すぎるだろう。
「あ、ありがとう…ござい…ゼェ…ハァ…ました!」
あまり体力がないのか、肩で息を吸っており今にも倒れそうだ。
忙しそうだなぁ…とレックスを見ていると、後ろから強気な声が聞こえてきた。
「よう」
「あ…ボラーさん。何してんすかこんなところで」
「何してるって…見りゃわかんだろ見りゃ。バイトだよバイト」
ボラーは肩にプラカードを担いで購買の列を整理していた。
「ま、怪獣が出るまで俺暇だし。それにレックスの治療にもなるかと思ってな」
「意外と真面目なんすね」
「意外とは余計だ意外とは」
案外しっかりとした理由でバイトをしているようだ。
とここで太陽はボラーのことを知らないのではないか?と気づくが、今さっき普通に会話しているところを見てその懸念は晴れる。
…後から聞いた話だが、俺が帰った後にレックスさんのところへボラーさんは向かい、そこで見知ったらしい。
スーツの上からそのままエプロンをつけている姿を見て太陽と顔を見合わせる。
なんというか…こういうのを馬子にも衣装──という喩えを使うのだろう。
「「っふw」」
二人の思考は完全に一致し、吹き出す。
奇異の視線に晒されたことに気づき、無言で二人の脛へと渾身の蹴りを入れる。
「「"いっだぁっ"!!」」
「なに人の顔見てニヤニヤしてんだ、気持ち悪りぃ」
二人まとめてその場で悶絶する。
フンっと鼻を鳴らすと、樹と太陽を列に並ぶように指で促す。
「おらおめーら、俺が店員やってんだからなんか買ってけ。一人最低でも3品買えよ」
強気な営業で学生の財政事情を圧迫してくるボラーに太陽はうげっと顔をしかめた。
「えぇ…ボッタクリ購買じゃん」
と言いつつもちゃっかり3品何を頼むか太陽は決めているようだった。
そうこう話していると、購買の方からバタリと音が鳴り、数名が悲鳴をあげていた。
「ちょっとこれやばくない」
「これはウケ…ないわ…」
「え、なんかコワモテのお兄さん泡吹いて倒れてるんですけど」
「あん?なんの騒ぎだ…ってまじか!?おいおい!」
どうやら体力が持たなかったようで倒れてしまったそうだ。
ボラーと交代でやればいいのにと心底思う。
「おーい、レックス大丈夫かー!おーい」
「あぁ…人には…守らなきゃいけない…ものが…3つある…はず…」
「なに記憶喪失が偉そうなこと言ってんだ」
額にデコピンを食らわし、レックスを起き上がらせる。
「店番変わってやっから…オメェはもう休んどけ!」
持っていたプラカードを太陽に押し付けると、ボラーは購買の中に入っていき、営業を続けた。
ちゃんとボラーにも優しい一面があるようだ。
ちなみに…ボラーの持っていたプラカードには[新世紀中学生が売る!ナウでヤングな購買!]となんとも胡散臭いことが書かれていた。
予想に反してボラーの宣伝は生徒たちには好評だったらしく、今の状況に至るらしい。
この世界に来てまだ数日しか経っていないが、ボラーはすでにこの世界に順応していっているのだった。
◾️
ライラが姿を消してから1週間が経過した。
この1週間、毎日手分けして探していたものの、それらしい成果は得られなかった。
"自分に関わるな"その言葉の通り彼女はこの街から消えてしまったかのように。
ライラ捜索以外にもここ数日でやっていたことがある。
それはレックス主催の操縦訓練への参加だ。
「樹、お前は怪獣が出たとき学校に行かないとグリッドナイトになれない。そのためにダイナウイングを毎回使うだろ?」
「まぁ…そうっすね」
前回のゴウリタガドールが出現したときのように樹たちが学校にいない状況も少なくはない。
そうした場合、毎回響子に学校まで送ってもらうしかない…という問題があるとレックスは言いたいのだろう。
確かにそうだ。
学校に運ぶ道と怪獣へ向かうための道を往復しなければならないため、怪獣と戦うのにも太陽たちとは時間がズレてしまう。
今のダイナソルジャーたちはただでさえパワーダウンしているためそれを補うためになるべく合体をしなければならない。
「そこで俺は考えついた……お前が自分で操縦して学校へ迎えばいいってことをな」
樹が自分でダイナウイングで学校まで向かいナイトとアクセスフラッシュ。
その後、怪獣出現場所へと到着して響子にグリッドナイト状態でダイナウイングを渡す…ということを言いたいのだろう。
確かにそうすればわざわざ響子が学校への道のりを往復する必要はなく、格段に時間を短縮できる。
それにだ、樹は密かにレックスたちの乗るロボットに乗ってみたいと思っていたのだ。
ウルトラシリーズの防衛隊のマシンも当然大好きな樹としてはこの機会を棒に振るという選択肢はない。
「案外いいかもしれないですね」
「だろ?よーしっ…じゃあ今日から樹も訓練だな。まず慣れるために…俺のダイナダイバーで練習だ」
「は、はい」
ダイナダイバーとダイナウイングでは勝手が違くないか…?と思うが、今上空では古澤さんも操縦訓練をしている。
前回の戦いを見た限りだいぶん動かせるようになっていると思っていたが、彼女は更なる技術向上のために日々訓練しているんだとか。
…生真面目過ぎてほんとそういうところ尊敬してます。
熱心に訓練する彼女を邪魔するのは良くないと判断し、しばらくダイナダイバーで訓練すること決めた…のだが…
『あ、あれ?これどうやって…って!オイ止まってぇぇっ!!』
ダイナダイバーが舵を失ったかのように右へ左へ移動し、ついには岩に激突してしまう。
いざアクセスモードへと巨大化したまでは良かったのだが、いざ操縦しようとしたところ…こんな状態になってしまった。
なんとか止まったと思った直後に、ふとボタンを押してしまい標準を定めていないバーストミサイルが渓谷の至る所へと放たれる。
「いつきぃぃぃっっっ!!!」
死にものぐるいでバーストミサイルを避けるレックス。
『すいませんすいません!!もう降ります!えっと降りるには……あ』
再びボタンを押してしまい、ダイナダイバーの前部分の4門の引き込み式対空レーザー砲から光弾が不規則な軌道で放たれる。
「"いぃ〜つぅ〜きぃぃぃっっっ"!!!」
その後、レックスに死ぬほど叱られた。
◾️
「いやぁ…あのときは本当…… ずびばぜんでじだぁ!!」」
最敬礼斜め45度の見事なまでの謝罪を樹は繰り出す。
「あ、あぁ…あんときは死ぬかと思ったぜ…」
訓練時のことを思い出し、思わず身震いするレックス。
「アハハ」
「笑い事じゃねぇわ!」
正直、樹本人もあそこまでできないものとは思っていなかった。
普通に凹んだ。
そんな会話をした後、レックスは少し気まずそうな様子で樹に告げた。
「それでな樹、お前…怪獣使いの才能ねぇわ」
「…ハイ」
怪獣使いがなんなのかよくわからないが、ようするに樹にはダイナソルジャー類を操縦する才能がミリ程ないということがわかった。
こうして樹の移動方法問題は引き続き響子に任せることとなったのだった。
…ごめんね、古澤さん。
◾️
「今日…なんか寒くない?」
誰が言ったかわからないがそんな声が教室から聞こえてきた。
言われてみれば確かにそうだ。
今日はもう7月の半ばに差し掛かろうとしている時期なのにも関わらず、やけに寒い。
このぐらいの時期なら教室のエアコンが効き過ぎて寒いということもしばしあるのだが、今の寒さはそれどころの騒ぎじゃない。
明らかに真冬の気温だ。
生徒の過半数は半袖の夏服を着用しているため、皆自身の腕をさすっている。
「はぁー……えぇぇっ!」
とうとう白い息まで出始め、窓にも氷の膜が張り出ているのが見える。
「ひぃぃ…っ寒っ」
「新条くん…これ…」
異変を察知した太陽と響子が樹のもとへと集う。
響子は自身のスマホの画面を二人に見せる。
ニュースには街が一面真っ白に染まり、氷山のようなものが幾つも信号機やビルを丸ごと凍らせている様子が見受けられる。
「街が…凍ってる…」
さらに画面には時々、氷でできた華のようなものが映る。
「それに…これは…氷の…華…?」
ニュースを見ていた途中で、怪獣の出現を知らせるGコールが教室内鳴り響く。
…思った通りこの事態は怪獣によるものだった。
3人は無言で顔を見合わせて、各々教室を出る…と思っていたのだが太陽と響子は教室の窓を開け、そこから各マシンを巨大化させた。
「アクセスモード…!ダイナソルジャー!!」
「アクセスモードッ、ダイナウイング…!」
えぇ…(困惑)窓から出てったよこの人たち…豪快すぎだろ。
窓から出て行った2機は即座に合体し、ウイングコンバインを形成。
直ちに怪獣の出現場所へと向かうのを見届け、樹もコンピュータ室へと急いだ。
全速力で階段を駆け上がり、コンピュータ室のドアを勢いよく開ける。
「おっせーぞ!」
「す、すいません…」
室内にはすでにボラーがパソコンの前に鎮座し、ぶっきらぼうに樹へと話かける。
「樹、いけるな」
「あぁ…行こう!」
お互いの覇気を高め合い、勇ましい表情を見せる。
「さみぃからさっさとケリつけてきてくれよー」
「…ボラーさんは来てくんないんすか?」
「えー…だって…寒いじゃん…」
軽口を叩くボラーにナイトは鋭い眼光を放ち、無言の圧をかける。
「…」
「んだそのすました顔」
「樹…さっさと行くぞ」
「無視かよ!」
ナイトの「やる気ないなら帰れよ」的な感じで煽られ、ボラーは躍起になる。
「あーもー!わかったわかった!俺も行ってやる!」
ボラーの性格上こういう状況になると乗せられやすいのだろうか…?などと内心思いながら樹は左腕を構え、パソコンの前へと一歩踏み出す。
「アクセス…フラッ…ヘックチ!!」
「アクセスコード!バスターボラーッ!!」
「…しまんねーなオイ!…ックシッ!うぅ…さみぃ…」
キレのいいツッコミを受けながら、二人の身体は光と化してパソコンへと吸い込まれていく。
グリッドナイトと共に空から幾何学模様のような転送ゲートからバスターボラーが勢いよく飛び出す。
ナイトのいるパソコンからアクセスした影響か、ボラーの体の色はすでにグリッドナイトとの適応反応後の鮮やかな紫色へと変化している。
同時に着地を果たし、目の前の怪獣を見据える。
〈あれがこの現象を引き起こしてる怪獣か〉
虎やライオンなどの獣類を彷彿とさせる獰猛な青い頭部。
雪原に溶け込む白銀の体躯と、口外にまで伸びるほど巨大に発達した一対の琥珀色の牙。
その上からさらに白い鎧のような装甲をまるで拘束着のようにつけられている二足歩行の怪獣がそこにはいた。
数秒遅れて太陽たちも合流し一同が揃う。
ダイナソルジャーたちに至ってはすでに移動する過程でウイングダイバーコンバインへと合体している。
〈こっちも合体すんぞ!〉
ボラーの号令により、合体フォーメーションをつくる。
ボディを展開させ、タンクのキャタピラユニットをグリッドナイトの足元に差し向ける。
シャフトを伸ばしてドリルを肩側へ、ボディを胸部装甲として装着。
無限の火力を誇る重武装形態に合体を果たす。
『『武装合体騎士!バスターグリッドナイト!!』』
合体完了したバスターグリッドナイトは即座に前面にキャタピラユニットを展開し、左右の六連装ミサイルポッドから一気にミサイルを発射。
それに続くようにダイナソルジャーウイングダイバーコンバインからもバーストミサイルが放たれる。
二つの強力なミサイルが当たる瞬間
[ーーーーー!イィヤァァアアアアア!!]
耳を劈く雷鳴に似た怒号が辺りを震撼させる。
すると怪獣の鳴き声に呼応するかのように、どこからともなく発生した氷塊が二つのミサイルごと飲み込み氷づけにした。
『なにぃ…!』
氷づけにされたミサイルはやがて内部で爆発し氷塊が砕けた。
どんな手を使ったか知らないが、このまま闇雲にミサイルを撃ち続けても意味がないことを悟る。
〈なら…無双の螺旋で貫くまでだ!〉
即座に作戦を変え、ミサイルカバーを閉じてキャタピラユニットを地面に設置させそのまま猛然と走行。
怪獣めがけて両腕を突き出し、それに合わせてドリルを高速回転させて突っ込んでいく。
そんなバスターグリッドナイトに対抗するため、怪獣は再び吠え氷の壁を形成し身を守る。
『このまま押し通す!!』
乾坤一擲の突撃形態──ドリルアタックモードで氷の壁を次々と砕いていく。
怪獣が迎撃を試みるより先に、ドリルが命中する。
錐揉みしながら吹き飛ばし、地面へと叩きつける。
「このままいけば倒せる」そう確信していた矢先、ナイトは怪獣からなんとも言えぬ違和感を感じとった。
〈……?こいつは…〉
すると突然バスターグリッドナイトは跳躍し怪獣から距離をとる。
〈おい!なに勝手に後ろ下がってんだよ!あのままいけば倒せただろ!〉
グリッドナイトの行動にボラーが不満をこぼす。
〈…ナイト?〉
一心同体のナイトの行動に樹は戸惑いをみせる。
バスターグリッドナイトが離れたことで、怪獣は態勢を整え再び臨戦態勢をとる。
それと同時刻、レックスたちは機体内の画面の情報に瞠目していた。
『なん…で…なんであの怪獣から…ダイナストライカーの反応が…?』
もともとダイナソルジャー、ダイナウイング、ダイナストライカー、ダイナダイバーは1つのものだ。
そのため各機のそれぞれの居場所を特定することができる。
その機能を使ってライラも探したのだが…どういう訳か全く反応しなかったのだ。
しかし今、ライラ捜索のときには一切反応しなかったそれが、目の前の怪獣に反応してみせたのだ。
これは…アタシが責任を持って新しい適合者を見つける…
と言ってダイナストライカーはライラが持っていたはずだ。
そこから導き出されるのは─────
『ライ…ラ…なのか…?』
『そんな…だって…』
太陽の言葉に声を震えながら反論しようとするが、響子は声を出すことは出来なかった。
反論する前に見えてしまったのだ。
怪獣の胸部の中心に、見覚えのあるト音記号が。
ほかにも、よく見ると怪獣のカラーに見覚えがあった。
それはライラの着用していた白と青の民族衣装のカラーリングと同じだ。
[イィィィ…ィィヤァァアアアアア!!]
悲鳴のような鳴き声を咆哮し、辺りを震撼させ、街を冷気で包んでいく。
音精氷華怪獣───ゴウ・ライラナクス
それが彼女─ライラの新しい姿だった。
ゴウライラナクスの見た目は…シェパードンとかガギュラ(第一形態)のイメージで…
こいつの能力に関しましては…"氷の華"が大切になってくるので覚えておくと良いかも…?
それではadieu!