SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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第25回 氷・霧

 

「…スランプ…です」

 

彼女のその一言が始まりだった。

 

何度コピーが試行錯誤してもグリッドナイトに倒されていく怪獣。

 

それに加え、ダイナソルジャー、ウイング、ストライカー、ダイバー、さらにはバスターボラーまでもが悉く怪獣を葬り去っていく。

 

それは一種の恐怖であった。

 

どんな怪獣を創ろうともまた倒されてしまうのではないかと考えるうちに、怪獣を創ることが怖くなりアイデアが浮かばなくなっていた。

 

それに彼女はこの部屋から外へ出たことは一度もない。

 

怪獣創作においてそれは致命的だった。

 

外へ出ない=情動はパターン化してしまう。

 

それではアイデアが底に尽きるのは時間の問題であった。

 

「おい」

 

ファージはそんなコピーに苛立ち胸ぐらを掴むが、コピーの表情はまるで虚空を見るかのような淀んだものだった。

 

「チッ…」

 

「う〜ん…困りましたね〜♪私もファージさんも、怪獣創りに関してはもっぱら無理ですからね〜♪」

 

「…笑ってる場合か」

 

コピーが怪獣を創り、望美がそれを実体化させる。ファージはそれの力を更に強めるための研究をし、時に怪獣を操る。

 

それぞれ特化しているものが違う。

 

だからこそコピーがスランプ状態になるのは致命的だった。

 

「あ★」

 

とここで望美が何かを思いついたかのように口元に微笑を浮かべた。

 

「な〜ら〜♪この世界にもともといる怪獣さんを使っちゃいましょう♪」

 

◾️

 

 

歪んだ情動が漂う薄暗い部屋でライラは目を覚ました。

 

「んんっ……ここは…」

 

自分は何故こんなところへいるのか疑問を覚え、落ち着いて記憶を辿る。

 

太陽たちと別れたあと公園に行き、そこで無音の少女に出会したところで記憶は終わっている。

 

部屋の至るところから聞こえてくる嫌な音が彼女の不安を加速させる。

 

すると。

 

「あ★目覚めましたか〜♪」

 

どこからともなく3つの影がライラの目の前に出現した。

 

「…キミたちは…」  

 

ニコニコとしているがその心からは何も聞こえてこない虚無の少女。

 

圧倒的な威圧感の中に恐怖と残忍さを感じさせる男。

 

そして、その3人の中でも特に異質な音を奏でるフードを深く被る少女。

 

そんな3人の出現にライラは自分でも気づかないうちに後退りしていた。

 

「キミたち…ただの人間…って感じじゃないよね」

 

冷や汗が頬を伝うのを感じ、その気迫に負けまいと歯噛みしてファージへと向き合う。

 

「そういうお前は…コンポイド…か」

 

「……」

 

コンポイド…その言葉をライラは久しぶりに耳にした。

 

普通の人間なら知り得ないその言葉を、彼はさも知っていて当然かというように言ってのけた。

 

それが彼らが普通の人間では無いと証明するには充分すぎることだった。

 

ファージの言葉の後に続けて望美が口を楽しげに開く。

 

「ちっちっち〜♪ただのコンポイドじゃないんですよね〜♪こ・れ・が♪」

 

「ほう……なるほどな」

 

望美の一言によりファージは何かに気づいたように、唇の微笑に謎めいた彩りを添える。

 

「お前は…コンポイドと怪獣の末裔…といったようなものか」

 

「…怪獣…の…末裔…?」

 

ファージの言葉にライラは理解が出来ず、固い声で聞き返す。

 

「…知らなかったのか。まぁだいぶ血は薄いようだから無理はないか」

 

自分が怪獣の末裔…血を引いている…?

 

そんなこと父も母も言っていなかった—-いや知らなかったのか…?

 

「アタシが…怪獣……?」

 

そのことを受け入れられずフラフラと足取りが不安定になり、その場に立っていられなくなる。

 

「もしも〜し♪驚いてるとこ悪いんですけどぉ〜…アナタの力…私たちに貸してくれませんかね〜♪」

 

「…チカラ…?」

 

「そう…あなたの…怪獣の力を…♪アハッ★」

 

望美は満足そうな含み笑いを漏らす。

 

笑う望美の隣からファージはライラの目の前へと近づき手の平を突き出す。

 

「悪いが…お前に拒否権はない」

 

そして照準を定め、人差し指と中指、薬指を合わせたままVの字に開き、その奥から右目を覗かせる。

 

「インスタンス…ドミネーション……!」

 

言葉とともにファージの目が妖しい紅いの輝きを放ち、ライラを"掴んだ"。

 

「ァァアアアあぁアア!!」

 

「アハハハーすごいすご〜い♪」

 

ライラの苦しげな呻き声に望美はまるでペットが芸をしたときの飼い主のように笑い続ける。

 

「…………」

 

その光景にも何の関心も抱かないのかコピーは黙ってその光景を見ていた。

 

…身体の奥が熱い。自分の中の何かが'掴まれる"感覚に襲われる。

 

…このままじゃ…役…目が…

 

「…アタ…シ…は…!」

 

「…抵抗するのは勝手だが…その血に刻まれた闘争本能から逃れられると思うなよ」

 

ファージの力に抵抗をするがそれに対してファージも"掴む"力を更に強め、目が更に紅く染まっていく。

 

「あ★これつけるの忘れてました♪」

 

最後の仕上げと言わんばかりに望美はスカートのポケットから手の平サイズの白い鎧のようなパーツを取り出してライラの胸元へと捩じ込んだ。

 

「ほいっ♪じゃあおやすみなさ〜い♪」

 

白い鎧のパーツからライラの体を拘束するかのように触手のようなものが飛び出し、刺さっていく。

 

「グウガガアア…!アアァァァアアアアア!!」

 

「…恨むんなら自身の血筋を恨むんだな」

 

頭が割れるような感覚に襲われた後、ライラの意識は深い深い闇へと消えていった。

 


 

埠頭に設置されたガントリークレーンの上でファージたちはゴウ・ライラナクスの暴れる様子を見ていた。

 

「わぁぁぁぁっ!!すごい…すごい…!」

 

辺り一面が氷の世界かのように凍っており、彼らの立っている高所も凍っているがファージたちはそれを気にする様子はない。

 

「どうですか〜?コピーちゃん、こーんな間近で怪獣を見れて♪」

 

「どんどん創作意欲が湧いてくる…!!」

 

間近で暴れ廻る怪獣の姿を見て、コピーの詰まっていたインスピレーションが刺激されていく。

 

「ファージさん大丈夫ですかー?」

 

ファージは紅く発光させた目を細め忌々しげにゴウライラナクスを操っていた。

 

「問題はない」

 

…最初の方は普通の怪獣と勝手が違うから掴みにくかったが…ここ1週間やり続けたことでようやく勝手がわかってきた。

 

…こいつもだいぶ意識が薄れてきたのかもう抵抗することはほぼなくなってきている。

 

「俺に掴めない怪獣は…いない…!」

 

不敵に微笑み、怪しげな眼光を強めていく。

 

▪️

 

[イィィィ…ィィヤァァアアアアア!!]

 

悲鳴ともとれる雄叫びを上げ、音精氷華怪獣─ゴウ・ライラナクスは無数の氷の結晶を自身の行手を阻む者に浴びせる。

 

〈バスターナイトミサイル!!〉

 

即座にドリルアタックモードからバスターモードへと戻し、ミサイルポッドとキャタビラ下部に装備されているガトリング砲を展開して氷の結晶を相殺する。

 

相殺した際の土煙に紛れ、ゴウ・ライラナクスは獲物へと襲いかかる獅子の如くバスターグリッドナイトへと猛攻撃を繰り出す。

 

〈っ…!コイツ格闘戦まで出来んのかよ!〉

 

ただ爪で引っ掻いてくるだけでなく氷を纏わせて攻撃してくるため、攻撃の際に触れた部分が凍っていき苦戦を強いられる。

 

それに加え、時たま氷の華から発せられる冷気の波動によって街の気温がどんどん下がっていく。

 

〈あの氷の華を媒介にして凍らせているようだな〉

 

街の至るところに生える氷の華を媒介にし、数倍に膨らませて氷を生み出しているようだ。

 

〈無限の火力で一気に……!〉

 

〈ダメだ…このまま攻撃したら…ライラが…〉

 

〈はぁ?!んなこと言ってる場合かよ!このままだと俺ら全員凍らされてゲームオーバーだぞ!〉

 

ボラーは樹がミサイルを相殺するだけで一切攻撃ができないでいる。

 

『どうすれば…どうすれば…』

 

太陽たちに至ってはどうすればいいかわからず、身動きをとることができなくなってしまっている。

 

『あ……雪…』

 

とうとう雪まで降り出し、バスターグリッドナイト、ダイナソルジャーたちの身体に付着していた薄氷がその厚さを増す。

 

『どんどん気温が下がり続けてる…!』

 

今や温度はマイナス何十度ほどの域まで達していき、ダイナソルジャー類のコックピットの中にいる太陽たちも限界に達していた。

 

思うように戦えない彼らをよそにゴウ・ライラナクスは攻撃に込める力を更に強めていき、追い込まれていく。

 

『おいおい…まずいぞ…ありゃあ…』

 

レックスの言葉に宙を仰ぐと、そこには空を覆い尽くすほどの氷の結晶をゴウライラナクスは出現させていた。

 

ただの氷の塊ではない。凝縮された氷が、氷の華によってその密度をさらに増加させている。

 

あんなものが落ちれば一巻の終わりだ。

 

〈おい!てめぇらいい加減にしろ!このままじゃマジで…〉

 

攻撃を躊躇う樹、どうすればいいかわからず立ち尽くす太陽たちにボラーは声を荒げる。

 

[イィィィ…ィィヤァァァアアア………アアアア!!!]

 

獲物を捕らえ、遂にトドメを刺そうとゴウライラナクスが咆哮して氷の結晶を振り下ろした。

 

だが。

 

次の瞬間、予想だにしなかったことが、立て続けに起きた。

 

[アアアアァ……!?ァアアァアァアッ!!]

 

『どうしたんだ…急に…』

 

突如として、ゴウ・ライラナクスは自身の頭を抱え出し挙動不審な動きを見せる。

 

『苦…しんでる…』

 

自身の身体の白い鎧の装甲を必死に剥がそうとしている姿が目に入った。

 

やがてゴウ・ライラナクスは上空の氷の塊の軌道をバスターグリッドナイトたちから自身へと向けるそぶりを見せた。

 

[ヤァァアアアメメェェエェ………ロロロロロオオオ!!!]

 

振り絞ったかのような咆哮とともに、ブルーホワイトの閃光を自身へと迸らせ、氷の結晶を自身へとぶつけさせる。

 

氷の華により増強された氷の波音がゴウ・ライラナクスの体を封じこめるように覆い尽くす。

 

それと同時に、ゴウ・ライラナクスを中心に広がった絶対的な冷気がキヨシ台全体を一瞬にして氷に閉ざした。

 

〈これ…は……〉

 

その光景に樹たちはただ立っていることしか出来なかった。

 

ゴウ・ライラナクスは自身の生み出した氷の結晶により、自身を氷の中へと封じ込めるという行動に、ただただ眺めていることしか。

 

『…ライ…ラ…』

 

不意に凍りついたゴウ・ライラナクスから今にも消えてしまいそうな儚く小さな声が太陽へと響いた。

 

 

…ごめんね

 

 

『っ……ライラ—————!!』

 

太陽の喉から反射的に出た叫びが、凍りついた街に虚しい音を奏でた。

 

 

 

 

無理矢理自身を氷へ封じたことにより、ファージのドミネーションは解除されてしまった。

 

「まだ…抵抗するか」

 

忌々しそうに目を細め、ファージは腕を下ろした。

 

「あれ…?止まっちゃった…」

 

ゴウ・ライラナクスが暴れ回る光景に胸躍らせていたコピーは残念そうに肩を落とす。

 

「まぁまぁ〜♪どうせ…時間の問題ですよ〜♪」

 

望美は凍りついたゴウ・ライラナクスを紫瞳で見つめ、余裕の笑みを浮かべた。

 


 

樹がグリッドナイトとの合体を解除し、パソコンから飛び出す頃には全員がコンピュータ室へと集まっていた。

 

「何が…どうなってるんだよ…」

 

「どうして…ライラちゃんが…」 

 

この場の各々が消沈した面持ちでそう呟く。

 

「…聞こえた。ライラの声が…」

 

どうやら他の面々には聞こえていなかったらしく、太陽からそのことを聞いてまた表情を曇らせる。

 

自分で自分の体を氷漬けにして今は止まっている。

 

だがそれは一時的な休戦にすぎない。

 

またいつゴウ・ライラナクスを覆う氷が砕け、暴れ出してもおかしくない状況だ。

 

「…ライラが…怪獣に…」

 

人が怪獣へと変貌する。ウルトラシリーズでもたまに出てくる話だ。

 

その出自故にウルトラヒーロー達はまともに戦う事ができず苦戦を強いられる難敵であり、また、言うまで無く視聴者に大きなトラウマを植え付ける存在だ。

 

ヒーロー作品らしく元の姿に戻って救われるハッピーエンドが理想的なのだが、完全に怪獣化している場合は生還は不可能とされ、倒されることでその生き地獄から解放されるバッドエンドの展開も多い。

 

最近のシリーズでは主人公と同じアイテムを使用して怪獣に変身するパターンもあり、その場合は倒されてもヒーローと同じように変身解除されるだけで終わる事がほとんどだが今回は———

 

「お前らさー…」

 

不意に、今まで黙っていたボラーが口を開いた。

 

「結局さ、どーしてぇんだよ?」

 

今まで見せてきたボラーの表情とはどれとも違う、初めてみる表情で。

 

「どうって……」

 

言葉に詰まる響子の後に、太陽が答えた。

 

「救い…たい…です…」

 

「どうやって?」

 

自身のなさそうな声の太陽にすぐさま言葉を返すボラー。

 

「だから…それを…みんなで…」

 

「相手はまたいつ暴れるかわからない…この世界を脅かす怪獣だぞ」

 

今回はたまたまああなったが、次はどうなるかわからない。

 

現にゴウ・ライラナクスは街全体を凍らせている。

 

次、倒さなければそこにいる人々のみならず他の街の人々にも危険が及ぶかもしれないのだ。

 

「…でも…!あの怪獣は…ライラで…俺たちの…友達で…」

 

「はぁ…」とボラーはため息を吐く。

 

「お前らさ…甘ぇんだよ」

 

沈んでいた空気がボラーのその一言によって更に重みを増す。

 

「前の怪獣ときもそうだったらしいじゃねぇか」

 

太陽がゴウ・リタガドールに飲み込まれたとき、樹たちは仲間を失ったという事実を受け入れられず放心状態になってしまっていた。

 

「これは…フィクションでもなんでもねぇ…現実の、今実際に起こってることなんだよ」

 

「……」

 

ボラーの言葉に何もいい返すことができず下を向くことしか出来ない。

 

「お前らが迷ってる間に街が…この世界が終わるぞ」

 

「倒してでも止める…そんな覚悟も出来ねぇやつが…救えるわけねぇだろ」

 

「っ……」

 

太陽は自身の無念さを堪えるように体を震わせるとコンピュータ室を出て行ってしまう。

 

「太陽っ!…」

 

そんな太陽を追いかけるように樹と響子も教室を出て行った。

 

 

「…まだあいつらは高校生だぞ…それ忘れてねぇだろうな」

 

レックスはサングラスを外しボラーへと目線を移動させる。

 

「…あぁ…だからこそ…ダメなんだよ、"今の"アイツらじゃ…な」

 

ボラーの目にはどこか憂いに満ちたような感じがした。

 

その言葉を聞いて、しばらく考えるように俯いた後レックスは教室のドアへと手をかけた。

 

「…さき…店戻ってるわ…」

 

ボラーの表情を見て、レックスはコンピュータ室を後にした。

 

コンピュータ室はとうとうナイトとボラーの二人だけとなってしまった。

 

「ナイト…オメェもオメェだよ…なんであのとき攻撃を辞めた?樹といて甘くなっちまったのか?」

 

少なくともボラーの知るナイトならば即座に状況を理解した上で迷わず倒していたはずだ。

 

「……感じたからだ」

 

「…何を?」

 

「二代目に似た何かを…あの怪獣から」

 

二代目…彼女は怪獣とコンポイドの血を引くという特殊な生まれだ。

 

そんな彼女と同じ雰囲気をナイトは感じていた。

 

「…なんだそれ、キャリバーみてぇなこと言ってんじゃねぇよ」

 

何とも言えない感情をどう表現していいかわからず、ダラーっと背もたれにもたれ掛かり天井を仰ぐ。

 

「…あア…どーしたもんかねぇ…」

 





今回のゴウ・ライラナクス戦は、アンチ,ザイオーンが出てくる回みたいなもんです。

怪獣の命について、戦う意味について、高校生ながらそれに向き合わなければいけない…そんな話です。(作者そういうの大好き✌︎('ω')✌︎)

…ということで次回投稿まで…adieu!
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