SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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#7
第27回 慧・剣


 

怪獣ゴウ・ライラナクスとグリッドナイト一行が戦っていた場所から少し離れたガントリークレーンの上に、ファージたち3人の姿があった。

 

「……負けたか」

 

構えていた腕を下げ、潔く身を引く。

 

「あちゃ〜…なかなかいい線言ってたと思ったんですけどね〜♪」

 

望美は興味がなくなったのかスマホを弄りながらそう呟く。

 

「はやくっ…はやく次の怪獣を創りたい!」

 

コピーは前までの消極的な態度はどこへ行ったのかというほどに今は怪獣創作に飢えていた。

 

「まぁ…いいか」

 

そう今回の目的はあくまでもスランプだったコピーを持ち直すために行なったことだ。

 

グリッドナイトを倒せなくてもまだ焦る時ではないのだ。それに…

 

「次の手も打ってある」

 

不敵な笑みでそう呟くと胸ポケットからデジタルムーバを取り出し通話をし出した。

 

「…次はお前の出番だ。期待している」

 

[───…了解した]

 

短く要件を言い終えデジタルムーバをしまう。

 

「さて…第二実験を始めるか」

 

酷薄に細めた眼で聖なる光によって再生していく街を一瞥すると、ファージたちは夜の闇に溶けていった。

 

 

 

元に戻っていく街の中心に1人の白いスーツ姿の男性が1人佇む。

 

その姿はさながら格闘家のような体躯の大男。

 

片手には先程まで電話をしていたのかスマホを握っている。

 

「……グリッドナイト…か」

 

彼は誰に言うわけでもなく淡々と呟く。

 

夜のネオンに口許を覆う金属マスクを照らしながら彼はその場を離れた。

 


 

ゴウ・ライラナクスとの戦いからしばらく日が経った日の放課後。

 

樹たちはコンピュータ室でUNOをして楽しんでいた。

 

「タイヨウ、マスクなんかしてどうしたの?」

 

「いや…なんか調子悪くってさ、…これでUNOっと」

 

「おめぇそれ風邪じゃねぇか…?無理して学校来んじゃねぇよ…っしこれでUNOだ」

 

「ぐぬぬぬ…これは…違うし…こっちも違うか…っくそ…またドローするしかねぇじゃねぇか…」

 

悔しげに歯噛みをしながらレックスは山札から渋々カードを引く。

 

各々順調に手札を減らしていくなか、未だレックスだけは手札をなかなか減らせずにいた。

 

「レックスさん…弱いっすね」

 

「るっせぇっ。こっからだこっから!逆転してやらぁ!」

 

太陽に軽く弄られ、レックスは照れくさそうに舌打ちをする。

 

「いひひひひひひ」

 

そんな太陽たちのやりとりにライラはどこか愛嬌のある笑い声をこぼす。

 

「君…キャラ違くない?」

 

「そう?」

 

明らかに前よりも明るくなったというか…もはやこれキャラ変のレベルでは…と思うほどにライラは変わった。

 

よくよく思えば前のときから自身の役目を果たそうと必死でずっと本当の自分を見失っていたのだろう。

 

あの戦いで彼女の中の何かが吹っ切れたようで、見た目相応の物腰だ。

 

以前までは近寄り難いような不思議なオーラを纏っていたというのに。

 

だが…今の彼女の方が合っていると樹は感じた。

 

「次、"兄チャン"の番だよ」

 

ただ…一つだけ気になることとすれば、未だに樹だけ「兄チャン」呼びなのが多少引っかかる。

 

太陽や響子たちに比べて樹はあまりライラと2人で話す機会はあまりない。

 

話したとしてもそこにはいつも太陽たちが一緒にいたのだ。

 

それ故にあたり親しいといった間柄とは言えないのかもしれない。

 

そんなことをぼーっとしながら考えているとナイトの声が聞こえてきた。

 

「樹、向かって右のカードを早く捨てろ」

 

樹は動けないナイトとペアを組んでプレイをしている。

 

最初こそ「くだらん」と言い捨てていたナイトだったが、なんだかんだ勝負となるとナイトは躍起になるようでぼーっとしている樹に厳しい視線を向ける。

 

「…?"兄チャン"どうかしたの?」

 

ぼーっとしていた樹の心の声をまるで見透かしたかのようにライラはこちらに目線を向けてくる。

 

「い、いや何も…」

 

 

これは…先が長そうだ…。

 

 

「樹、早くしろ」

 

「わかってる、わかってるから」

 

 

…ちなみに響子は早々に上がりしばらくは談笑していたのだが、途中で用事があると言って帰ってしまった。

 

用事が何かを聞くのも野暮だと思い聞かなかったが…今思えば心なしか教室を出て行くときの彼女の顔はどこか暗かった気がした。

 


 

 

綺麗に磨かれたガラス製の自動ドアをくぐり、たっぷりと採光されたエントランスに踏み込むと、どこか懐かしい消毒液の匂いが微かに漂った。

 

小さな子供を抱いた母親、車椅子のお年寄り、松葉杖をつく少年がゆっくりと行き交う空間を横切り、響子は面会受付へと足を進める。

 

窓口横に備えられた用紙に住所氏名を書き込み、面会を希望する相手の名前を書き、窓口へと向かう。

 

カウンターの向こうで端末を操作していた女性看護師は響子が近く気配に顔を上げる。

 

「…面会ですね?少々お待ちください」

 

和かな笑顔をこちらに向けると看護師は自身のタブレット端末に指を滑らせいく。

 

「お待たせしました。正面のエレベーターで6階に上がってから左手の突き当たりのお部屋になります」

 

「…ありがとうございます」

 

ぺこりと頭を下げ、足早に6階の病室へと向かう。

 

薄いグリーン塗装の扉の前に立ち、響子は深呼吸をする。

 

扉横の壁面の鈍く光るネームプレートの名前を何度も確認した後、響子は部屋へと踏み込んだ。

 

涼やかな花の香りが部屋を包んでいる。

 

広い病室を仕切るカーテンへと近づき、そっとカーテンを引く。

 

「…奏…」

 

白い、清潔な上掛けが低い陽光を反射して淡く輝くその中央に眠る妹の姿を定めた。

 

その姿はさながら御伽話の眠り姫のようだ。

 

暴風を操る怪獣 ゴウレボアースに襲われてからもう数週間が経つが、未だに妹の古澤 奏は目覚めていない。

 

聖なる光によって全てが元に戻ったこの世界で、彼女だけは目覚めていなかった。

 

眠る妹の姿を見ていると、不思議と涙が出てきた。この病室に来るのはこれが初めてというわけではないのに。

 

最近では全然話せていなかったというのに、いざ逢えないとなるとどうしてこうも胸が苦しくなるのか。

 

それはたった1人の血を分けた姉妹だからなのか、自分でも理由はわからなかった。

 

ベッド横に備えつけられているパイプ椅子に腰掛け、響子は眠る奏に自分でも気づかないうちに話しかけていた。

 

「…奏が眠ってる間にね、色んなことがあったんだよ」

 

「……」

 

「信じてもらえないかもだけど、今私怪獣と戦ってるんだよ。この戦闘機みたいのでさ…。同級生2人と不思議な女の子…パソコンの画面の中にいる人とヤクザみたいな人とか、見た目小学生の人なんかと一緒にさ」

 

この病室には奏しかいない病室のため何も気にすることはない。

 

響子ははじめの方こそ暗い表情だったが、話していくうちにだんだんと強張っていた表情筋が緩んで笑みを浮かべていた。

 

「…お母さんとお父さんはなんか人が変わったみたいに優しいし…お爺ちゃんたちなんて前は無口だったのにしょっちゅうハガキが送られてくるんだよ」

 

自身の身の回りに起こった異変の話をする時も、奏に心配をかけまいとなるべく軽い口調で話した。

 

このことはまだ樹たちには言えていない。

 

言ったところで信じてもらえるのだろうか。

 

死んだ人間が"蘇る"なんて。

 

しかも見た目は同じで性格まで変わっているときた。

 

こんな都合の良い話があるのだろうか。

 

「それってただ改心しただけでは?」と言われてしまうのが怖かったのかもしれない。

 

自分がおかしいのか、世界がおかしいのか。

 

それを確定させてしまうのが怖く話せなかった。

 

それがどうだろうか、こうして奏に喋りかけていると今まで口に出来なかった言葉が不思議と出てくる。

 

まるで昔の何でも話せていた仲が良かったあの頃のように。

 

「………」

 

響子の言葉に奏の声は返ってこない。

 

しかし響子は言葉を続けた。

 

以前の自分だったら恐らく言葉は続けなかっただろう。

 

でも今は違う。

 

奏に伝えたいのだ。今の自分を。

 

ここ最近で自分でも変わったと思う。

 

怪獣との戦闘も最初はただ成り行きで戦っていたが、今は違う。

 

樹からもらった言葉を胸に戦い、いつの日か自分たちなりの答えを見つける。

 

そのために前に進むのだ。

 

響子はいつの間にか彼らといる時間が好きになっていた。

 

学校の友達と話しているときとはまた違った温かい時間が。

 

そんな絆が少しずつだが確かに響子の胸の内に芽生えつつあった。

 

♫〜♩〜♪〜♫〜

 

病院のスピーカーから面会時間終了を知らせるメロディが聞こえてきた。

 

話を終え最後に奏の手をそっと撫で、響子は立ち上がる。

 

「そろそろ行くね…また…来るから」

 

憂いを帯びた瞳で奏を見つめた後、病室から出ていくのだった。

 

 

 

響子が退出してしばらくした後、捻り出すかのような小さな息吹が病室に響いた。

 

「…お…姉…ちゃ…ん……」

 

 


 

放課後を満喫し終えた樹は1人で帰路を歩いていた。

 

本来ならば太陽と共に帰るつもりだったのだが、どうやら今日は夜バスケだったらしくこうして1人なわけだ。

 

体調が悪そうだったので休めばいいのに…とも思ったが本人がいいと言っていたので無理に止めなかった。

 

ふと時計を見る。

 

時刻はすでに19時を回っているがまだまだ明るい。

 

本格的な夏が始まったように感じる。

 

「暑い…」

 

教室内よりはまだマシな方だがそれでもまだ暑い。

 

足取りが重くなるのを感じながら歩いていると道の先に明かりが灯っているのに気づいた。

 

「あ、7–21(セブン)…」

 

樹は暑さを紛らわせるためにコンビニへと足取りを早めた。

 

「うん…?」

 

コンビニの自動ドアにさしかかったところで怪しげな男の姿を見定めた。

 

目の下には大きな隈、仏頂面に無精髭、猫背で白いスーツ姿の不審な男がラムネの瓶から中のビー玉を取ろうとしていた。

 

「……・・・・・。」

 

…見なかったことにしよう。

 

今はそれどころではないのだ。

 

コンビニに入るや樹は真っ直ぐアイスの什器へと向かった。

 

 

「ありがとうございましたー」

 

会計を終えすぐに買ったアイスを取り出して自動ドアをくぐる。

 

…そうえばさっき誰かが横にいたような…

 

そう思い首を横に向けるとそこには先程と全く同じくビー玉を取り出そうとする男がいた。

 

「……」

 

無言で何度も瓶を上下に振ってビー玉を取り出そうとしているが飲み口部分が狭くなっているため取り出すことができずにいた。

 

いつもの樹なら素通りするのだが、どうにも男のことが頭から離れず男へと近づく。

 

そして樹には珍しく、自分から声をかけた。

 

「あの…ちょっと貸してくれませんか?」

 

「……」

 

しばらく沈黙した後、男は樹へとラムネの瓶を渡す。

 

ギョッとした目に驚くがその目には何の殺気も感じず、思わずホッとする。

 

最近は取れないタイプがほとんどだが、彼が持っていた瓶は取れるタイプの物だった。

 

「これを…こうして……はい取れました」

 

「…!」

 

「どうぞ…」

 

先程まで悪戦苦闘していたものをこんなにも早く開けたことに男は思わず驚いた様子だった。

 

「ちょ、ちょっと待っていろ…」

 

そう言うや否や男はコンビニの中へと入っていく。

 

しばらくした後、カーンと背後で乾いた音が響く。

 

それは男の腰に提げた刀が自動ドアにぶつかった音だった。

 

「…こ、これを…」

 

男はそう言って、今さっき買ってきたばかりの缶コーヒーを樹へと差し出してきた。

 

「いやいや悪いですよ、初対面の人から物をもらうなんて」

 

「え、遠慮はするな…れ、礼は必ず返さなければいけない…」

 

……俺コーヒー苦手なんだけどなぁ…と思うもせっかくのご厚意なのでありがたくもらっておくことにした。

 

缶コーヒーを渡した後、樹に握り拳を差し出してくる。

 

「へ?」

 

男は立ち上がり樹の手に先程取り出したばかりのビー玉を手渡した。

 

「…ビー玉…?」

 

「そ、それはお前にやる…」

 

「は、はぁ…」

 

…こんなのもらっても…なぁ…

 

何の変哲もないビー玉は樹の手の平の上で虹彩をゆらす。

 

 

「み、見えている世界だけが…正しいわけじゃない」

 

そう無表情で呟くと彼は夜空を仰ぐ。

 

相も変わらず唇は真一文字に引き結んでいるが男の表情は暗く、いっとき瞑目をし始めた。

 

 

「いただきます」は?侍さんなら礼儀正しくしなきゃ

 

 

アクセスコード…キャリバー……バリアギア!

 

 

キャリバー!私コーヒー飲めないってば!!

 

 

闇の中に浮かぶノイズ交じりの光景。

 

自身の刀・トレイルカタナソードの一本を託し、装甲をまとい戦う少女の姿。

 

他にも戦国時代で戦う兄妹の姿、個性豊かな面々とともに執事カフェを営む自身の姿—-。

 

再び目を開くと、そんな幻影はあっけなく雲散霧消する。

 

…自身の記憶なのに知らない数々の世界の記憶が自身を錯乱させる。

 

「……この世界は歪んでいる」

 

そう吐き捨て、立ち上がる。

 

彼の今の使命はグリッドナイトを倒す、それだけだから。

 

こんな記憶は必要ない。今の俺はそれでいい。

 

「じゃ、じゃあな…」

 

そう言って樹のプライマルアクセプターを一瞥した後、男は去っていった。

 

 

「…変な人だったな…」

 

もらったビー玉を覗きながら呟く。

 

…というか最近ここいらで出没するという不審者とは彼のことなのでは…

 

そんな心配をしながら樹は帰路へと着くのだった。

 





個人的には[姫とサムライ]は割と面白くて好きだった
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