SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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#8
第30回 悶・着


 

聖なる光によって破壊された街が元に戻っていく。

 

「…第二実験…完了」

 

そんな光に包まれる都市部の架道橋で、ファージは怪獣の敗北を見届けた。

 

「…ッフ…」

 

自身が作り出した状況が失敗に終わったというのに、彼の表情は穏やかそのものだった。

 

「…能力持ちにも適応可…擬似的情動による能力向上…進化…か……ッアハハハハハハッ!」

 

両手で自身の身体を抱きしめ、幸福に満ちた声を漏らす。

 

「…コピーの状態も安定の兆しを見せている…ッハハハハッ!」

 

すると、踵を返して架道橋の出入り口へと向かっていく。

 

「…グリッドナイトに関しても多少の誤算はあったが…全て想定内だ」

 

誰にいうこともなくただポツリポツリと言葉を発する。

 

そんな彼の一言一言はどれも自信に満ちていた。

 

まるで全ての事象を見透かしているかのように。

 

「…実験を全て終えたとき…お前は後悔するだろう…」

 

ファージの前の空間が歪み暗い闇が彼を包んでいく。

 

「待っていろ…"グリッドマン"…」

 

 


 

戦いが終わり、一同は屋上へと集まっていた。

 

「ったく…酷い目に遭ったぜ…」

 

合体時にボラーのキャタピラユニットに当たってしまいダイナダイバーが何処かへ吹っ飛んでしまったことについてレックスが愚痴を溢していた。

 

「…なんか気づいたら隣町まで吹っ飛んでてよぉ…大変だったんだかんな!」

 

「…それは…お疲れ様です…」

 

「あぁ…マジでヤバかったわ、あれは」

 

「ソウダソウダ、ナンテヒドイコトスルンダ樹コノヤロー」

 

徐にレックスからの視線を逸らすようにボラーが口を出す。

 

「え!?俺じゃない俺じゃない!あのときボラーさんのキャタピラのところが当たって落ちちゃったんでしょ?俺関係ないじゃないですか!」

 

「ちょっ…な、何言ってんだよ、そ、そんなことするわけねーじゃん」

 

「いや、あのとき明らか当たった反応してましたよね?!」

 

「…って言うかあの時俺が当たらなくてもダイナダイバーどこ合体すんだよ!アァ?!言ってみろよ!」

 

「開き直っちゃったよ!この人!」

 

ふんっと鼻を鳴らすボラーとは反対に、レックスは何処か暗そうな表情を見せる。

 

「まぁ…実際…俺あんま役に立ててなかったしな…」

 

「いやいやめっちゃ助けられましたってほんと、自信もってくださいよ。ね?」

 

ただでさえ弱体化しているというのにここまで戦ってくれるなんて寧ろこちらが申し訳ないとさえ思ってしまう。

 

そんなレックスを励まそうと精一杯のフォローをした。

 

「そうか…まっ、終わりよければなんとやらって言うもんな…よし」

 

下に落ちかけていたサングラスを親指と人差し指で立て直すと、レックスは身体のコリをほぐすように伸びる。

 

「さあって解散解散!今日はもう帰ってさっさと寝る!…ソファは俺のだからな」

 

そう言ってニヤリとレックスは微笑む。

 

「はぁ?ソファは俺の定位置だ、地面で寝ろ地面で」

 

「なっ…いつから定位置になったんだよ!」

 

揶揄うようにボラーは口端を釣り上げてくくっと笑う。

 

「いやいやいや、もっと先輩を敬え、先輩を」

 

「なぁにぃ〜!」

 

2人の会話に先程までのレックスの表情がなんだったのかというほどにいつもの彼らに戻っている。

 

「あ、じゃあアタシがもらっていい?あれだよあれ、キョウコが言ってた…れでぃふぁーすと?ってやつで」

 

そこにライラも参加し、ソファの取り合いが熱を帯びていく。

 

と、ここで樹も考えていたことを決断し、それを伝えるべく声をかける。

 

「あ、あのぉ…」

 

「ライラはまだいいとして…ボラーはさっき俺にキャタピラ当てただろ!そのことチャラにしてやるから今日は譲れ!」

 

「ハァン?だからわざとじゃないって言ってんだろ!」

 

「ねぇねぇ話変わるけど今日の夜なんにするの?明日の朝は?」

 

完全に樹の勘が今ではないと言っているが、ここで引くわけにはいかない。

 

…何故ならもうじきに昼放課が終了して5限の授業が始まってしまうからだ。

 

ならば授業後に伝えれば良いだけなのだが…なんやかんやでこのメンバーは集まりが悪いため、ここでケリをつけたいのだ。

 

「…ふぅ…」

 

意を決し、3人に話しかける。

 

あのぉ!

 

3人の声が止み、一斉に樹の元へと視線を交錯させる。

 

「えと…そのことで提案なんですけど…俺ん家…来ませんか、みんなで。部屋余ってるんで」

 

樹の急な提案に3人は立ち尽くしたまま、驚いたように目を白黒させている。

 

「いや…それは…悪りぃだろ、急に3人で押しかけて迷惑だと思うし…」

 

「いえいえ全然大丈夫ですって、部屋は腐るほどあるんで。ほんと」

 

「いや…でも…」

 

「最近流行りのシェアハウスみたいなやつですよ…知らんけど」

 

「…いやだとしても…」

 

「レックスさんたちにちゃんと睡眠とって欲しいし、一緒に生活すれば情報共有もしやすいですし…それに…」

 

「……」

 

「もっとみんなのこと…知りたいって思ったんです」

 

前の樹ならこんなこと言わなかった。

 

あまり人に関心を持っていなかったはずなのに、グリッドナイトとなったあの日から徐々に変わっていった。

 

「樹…お前……」

 

樹の両肩に手をかけ、真っ直ぐ見つめる。

 

…顔近ぇよぉ…と一歩引きそうになるが、それを堪えてこちらもレックスの目を臨む。

 

「良いやつだな」

 

「あ、ハイ。どうもです」  

 

いつも通りのレックスの反応を軽く受け流すと、こちらに向かって拳を突き出してきた。

 

「じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ…改めて…これからよろしくな、樹」

 

「うぃっす」

 

こちらも拳を握り、レックスとのグータッチを果たす。

 

「あ〜これでやっとあのせめぇ部屋ともおさらばできるな」

 

「まぁ…おもしろそうだし…良いかもね…ありがとう"イツキ"」

 

…何気に兄チャン呼びから名前呼びへも昇進を果たしたことに樹は感動した。

 

「じゃあ…みなさん…これからよろしくお願いしますっ!」

 

こうしてレックス、ボラー、そしてライラとの奇妙な生活が始まったのだった。

 

 

 

その日の夜。

 

「…眠れないアル()」

 

樹はなかなか眠れずにいた。

 

自分の家に、知り合いが何人もいるという合宿のような雰囲気に何処か興奮していたから…もちろんそのこともあるかもしれない。

 

だが今回はそんな素敵な理由ではなく、樹は虚脱したようにひたすら天井を見つめている。

 

その理由は————-

 

「グガァァアッ…グッグガァア…」

 

怪獣の咆哮声の方がまだマシとも思えるほどのイビキが波動となり、壁を伝わって樹の部屋まで届いていたためだ。

 

その破壊的な音響に樹の睡魔は完全に退治されてしまっていた。

 

「…壁貫通してくるってどんなイビキだよぅ……」

 

…今からでも入れる保険ってありますかね?ハハハハハハ

 

「……ハァ…」

 

早くも心が折れそうになる樹であった。

 

 


 

あれから数日。

 

時は流れ、とうとう本日は一学期が終わる終業式だ。

 

明日から夏休みが始まるためか、どこのクラスもテンションが高い。

 

今日も終わったらクラス会をやるだの、カラオケで100点取るまで帰れま10をやるだの、各教室で夏休みに歓喜する声が飛び交っていた。

 

「はぁ…マジでアイツ…」

 

そんな教室の雰囲気とは真逆に、朝からコンピュータ室の椅子に腰掛ける樹のテンションは下がっていた。

 

理由としては、珍しく太陽と喧嘩をしたことにあった。

 

事の発端は朝の登校時———-

 

「何で嘘つくんだよ、俺プリント渡したよな、ちゃんと!」

 

「もらってないよ」

 

「いやもらっただろ!」

 

「もらってないって!」

 

「何でそう言い切れるんだよ!お前が熱で寝込んでたから、「机の上に置いとくぞー」って言ったの覚えてないだけだろ!」

 

「絶対もらってない!」

 

腹が立った樹は思わず太陽の頭を軽くチョップした—-はずだったのだが、自分が思っていたよりも力が強かったらしく叩かれた太陽は声を上げる。

 

「何するんだよ!」

 

「お前いい加減にしろよ!俺がせっかく休んでる間の授業内容まとめてやったのに…それを失くした癖に威張ってんじゃぁねぇよ!」

 

「樹の置く場所が悪いからだろ!だからゴミ箱に落ちでもして捨てられちまったかもしれねぇじゃんかよ!」

 

「なっ…お前人の親切心を…何だその態度!」

 

「ちょっとちょっと樹くん落ち着けって!」

 

「太陽もいい加減にしとけよ!」

 

喧嘩中の2人に割って入るように登校中だったクラスメイトに止められる。

 

「ふざけんな、この髪型ヤナカーギー野郎!」

 

「うるせぇマリモッコリ!」

 

「…?ちょっ…新条くん、太陽くん?!やめてって!」

 

そこで登校してきた響子たちにも静止され、その場は納まった。

 

だが、教室に着き着席してもしばらく落ち着かず、お互い睨み合うハメとなった。

 

そこで響子に言われて、コンピュータ室に来たわけだ。

 

「…マジでアイツ有り得なくないですか?」

 

「…お前ら…JKかよ」

 

「歴としたDKです!」

 

「あそ、くだんねーな」

 

樹を軽くあしらうと、ボラーは椅子から立ち上がる。

 

「…どっか行くんすか?」

 

「あー…まぁ、俺の部屋にテレビとかねーからさ、家電でも見に行こうかと思ってよ」

 

「……」

 

頭の後ろに手を組み、扉の前まで歩いていくボラーをジト目で見つめる。

 

…この人一応購買のバイト以外もしてるとか言ってたけど本当にやっているのだろうか…と不意に怖くなってくる。

 

ど平日のこの時間帯に働かなくても大丈夫なのか…?夜やっているならまだしもここ数日でボラーが夜に外へ出るところは見ていない。

 

「どしたよ」

 

視線に気づいたボラーはジーッと見返す。

 

「や、別に」

 

「…じゃ行ってくるわ、…あ、俺が電話したらライラ連れて来いよ?ダイナストライカーで買ったやつ運んでもらうから」

 

「あーはいはい。もう行ってください、もうすぐ終業式なんで」

 

朝から起こってしまった出来事が、樹の心にモヤをかけていた。

 

 

 

 

「——では、これで一学期終業式を終わります。一同…礼」

 

体育館での全校集会が終わり、とうとう終業式が終わろうとしていた。

 

各学年ごとに体育館から退出していく。

 

そのとき、不意に太陽と目が合った。

 

「………」「………」

 

同時に視線を外し、またなんとなしに視線を交錯させ、また離す。

 

本当は今すぐにでも謝りたい。

 

しかし「俺は悪くない」と無駄なプライドが邪魔をして、自身の想いが正直に伝えられない。

 

「…あっ……」

 

そんなことを考えているうちに2人の距離は遠く離れていく。

 

「……ハァ」

 

ため息を吐きながら渡り廊下を歩いていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。

 

誰だ…?と顔を振り向かせたところでほっぺに指を指される。

 

「新条くん…顔暗いよ?」

 

「ふぉるしゃわしゃん…」

 

突かれたまま名前を呼んだためか、変な声が出た。

 

自身ではいつも通りにしていたつもりだったのだが、どうやら顔に出てしまっていたらしい。

 

「その、古澤さん…えと…朝はありがとう、俺たちの喧嘩…?止めてくれて」

 

古澤さん以外にもクラスメイトに迷惑をかけてしまった。

 

そのせいか、なんとなくクラスの雰囲気はいつもより抑えめだった気がする。

 

「新条くん…言葉に出さなきゃ伝わらないよ、話したいことは話せるうちにしとかないと…後で手遅れになっちゃう」

 

例えただの痴話喧嘩だったとしても、それがきっかけとなり不仲のまま終わってしまう…そんなところを響子は見たくないのだ。

 

 

《お姉ちゃんに私の何がわかるの!》

 

 

刺激される過去の記憶。

 

妹の奏とは喧嘩別れのようになってしまった。

 

話せるうちに話しておけば、今は違っていたのかもしれない。

 

…自身と同じ思いを、彼にはしてほしくない…ただそんな思いを胸に語る。

 

「私も…私もね、新条くんたちに伝えなきゃいけないことがあるんだ」

 

自身の家族に起こった奇妙なこと、それを樹たちに伝えなければいけないのだ。

 

でも信じてもらえなかったら怖い…そう思う気持ちが強く出てしまう。

 

だが、樹の前では不思議とその恐怖心も少し和らぐ。

 

だからまずは樹に伝えるのだ、そう決心をつけて声を出す。

 

「あのね…実は———-」

 

と、その時樹の左腕に着くプライマルアクセプターからGコールが鳴り響く。

 

「ごめん、行かないと」

 

「うん…そう…だね」

 

「じゃあ…先行ってるから」

 

「うん…私たちもすぐ行くから…気をつけてね」

 

コンピュータ室へと走り出していく樹を見ながら響子は髪を撫でる。

 

…伝えるのは、怪獣を倒した後で良いか…そう響子は思い、ダイナウイングを取り出しながら駆けていく。

 

 

◾️

 

 

[———/:———-:;:——————-!!!!!!]

 

テレビの映像を逆再生したかのような鳴き声を発し、怪獣がセンター街を巨大な4足歩行で進んでいく。

 

『…?あの怪獣…動物園で見たことあるよね…?』

 

その姿は正月の夜の守り神とも呼ばれる生物・獏を連想させる。

 

ただ、響子の言う獏の姿と少し異なっており、どちらかと言うと絵巻物に描かれる姿の方に似ている。

 

歪な形をした鞭のような長き鼻、身体には白き鎧と複雑な幾何学模様にネオンカラーが浮かび、断続的に発光している。

 

『なんだコイツ…何もしてこねぇぞ…』

 

怪獣は現れてから今に至るまでただ街を進み続けるだけで、これといった破壊行動をとっていない。

 

だがその姿がかえって樹たちに不気味さを植え付けた。

 

〈動かないなら好都合だよ…ナイトいくよ!〉

 

『あぁ…いくぞ!』

 

颯爽と跳躍したグリッドナイトは両足を揃え怪獣へとドロップキックを繰り出す。

 

しかし…

 

『何ッ?!』

 

怪獣は自身の身体を凹ませ、その攻撃を避けて見せた。

 

『ダイナランチャー…バーストッ!ミサイルッ!!』

 

『ペネトレーターガン!』

 

グリッドナイトに続けてダイナウイングとダイナダイバーも弾幕を浴びせるが、怪獣はまるでその巨大からは想像もできないような柔軟な動きで攻撃を避けた。

 

『ハァッ!』『たあっ!』

 

ダイナソルジャー、ダイナストライカーも攻撃するが、怪獣にはまるで効果がないかのように歩みを進めていく。

 

『こっちの攻撃がまるで効いてない…』

 

ダイナソルジャーが拳を握り締めて踏み出そうとしたところを樹に静止される。

 

〈太陽!そのまま戦ってもダメだ、下がってろ!〉

 

『…足で纏いだってか…?そっちだって効いてなかった癖に!』

 

〈そんなこと言ってない!〉

 

『言ってんだろ!』

 

朝の出来事もあってか、どこか棘のある言葉を口に出してしまい険悪なムードがさらに加速してしまう。

 

『お前たち、こんな時に何を言い争っている!戦闘に集中しろ!』

 

そんな2人の会話をグリッドナイトは諌めるように叫ぶ。

 

そんな中、怪獣は病院のある方へと突き進んで行く。

 

『あの病院は……ダメ…やめて………ヤメテェッ!』

 

奏の入院している病院に進んで行くのを食い止めるために、ペネトレーターガンを撃ち続ける。

 

だがその姿はいつもの冷静な響子とは異なっていた。

 

周りが見えていないのか、息を荒くし、ただひたすらに撃ち続けている。

 

『…みんなの心の音が…バラバラになってる…』

 

目の前で起こっている状況にライラは震えた声を漏らす。

 

『あーもうお前ら集中しろシューチュー!…とにかく、全員で合体してみんぞ!いくぞ!』

 

レックスの号令に気づいた太陽たちは、4つの銀色の機体を集結させ、一つにしようと試みた。

 

ダイナソルジャーを中心としてフォーメーションを築いていく。

 

 

『ダイナソルジャーウイングストライカーダイバーコンバ———-…』

 

 

レックスが名乗りをあげようとしたその時。

 

各機体の連携ユニットが激しく電撃を帯び、反発するように弾かれた。

 

『ッワアァァッ!』『キャッ!』『ッ……』

 

空中で機体が分散し、それぞれが地面へと叩きつけらる。

 

『なんでっ…だよ…?なんで合体できないんだよ…』

 

打ち付けられた衝撃に耐えながらレックスは低く唸る。

 

突然の合体失敗—それはまるで各機体が合体を拒んでいるかのようだった。

 

今のレックスたちには何かが足りていない—そう訴えるかのように。

 

『レックス、貴様も何をしている!』

 

グリッドナイトが吠えた次の瞬間。

 

[—————:;:///—:———!!!!!!!]

 

今まで破壊行動を起こさなかった怪獣が空気にヒビが入るほどの大きな咆哮をするとともに、身体中から映画のフィルムのようなものが螺旋状に怪獣を中心として広がっていく。

 

〈今いったい何が起————-〉

 

 

刹那、突如としてキヨシ台からグリッドナイトたちの姿が消えた。

 

グリッドナイトたちだけではない。

 

周囲にいた人も、鳥も、怪獣の周りにいたありとあらゆる生物の反応が消えたのだ。

 

まるで写真を編集する時に、対象を切り取るかの如く。

 

そして、誰もいなくなった街に深い霧が立ち込めた————-





〔じゃあ…アンチ?私の命令は''絶対"だからね〕

そうだ…俺は…あの時も……

次回【心・覚】。
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