SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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※今作はボイスドラマの内容を多々挟みますのでご覚悟ください(´・ω・`)


第32回 悠・遠

 

…わからん…なんだこの状況…

 

とにかく…一旦状況を整理しよう。

 

…と、言っても…今俺記憶喪失中だから思い出すもくそもないが…まぁやってみるかぁ…

 

俺は新世紀中学生のレックス…って名前らしい。

 

…でも今いるここじゃガウマって呼ばれてる…結局どっちなんだよ。

 

話は戻して、俺たちは世界を脅かす怪獣と戦ってる…戦うことが使命だとも言ってたな。

 

銀色の潜水艦:ダイナダイバーを操縦して戦ってると。

 

あとは…俺には共に戦う仲間がいる。

 

グリッドナイト、樹、太陽、響子、ライラ、そしてボラー…うん、最近の記憶はちゃんとしっかりしてる。

 

でだ、俺たちは今日、キヨシ台の終業式の日に現れた獏みたいな怪獣と戦ってて…

 

怪獣の身体からこう…映画のフィルムみたいなのがピカーっと光ってそれをくらって…気づいたら…ここに…。

 

で今は、知らねぇ4人と席を囲んでるわけだ。

 

…うん、わけわからん(n回目

 

変な白い軍服を身に纏った集団で飲み会…?コスプレ大会の打ち上げ…ってわけじゃなさそうだ…

 

赤いハーフモヒカン男、マッシュヘアー野郎、やけにスタイルの良い女、褐色肌のガキ…要素詰め合わせすぎだろ…情報量多すぎるわぁっ!!

 

「起きたか、ジュウガ」

 

「すいません、ちょっと寝てしまったみたいで…」

 

俺が精一杯状況整理をしていると、さっきまで俺の膝に頭を預けて寝てた…ジュウガ…だったか?が起きたみてぇだ。

 

「まぁ、今日は浮かれたくなるのもわかるけどなっ」  

 

赤モヒカン野郎ことオニジャが一日のことを思い出すように笑い、それに頷くようにジュウガが口を開く。

 

「えぇ、姫に直接"怪獣"を見ていただけましたからね」

 

「…怪…獣…?」

 

「すごい食いつき良かったよね、意外」

 

頬杖をつきながら、ムジナもそのことを思い出して嬉しいのか口許に笑みが見える。

 

ん?…今こいつら『怪獣』つったよな…

 

ここにもいるのか…?

 

でも怪獣のことって確か…俺たちしか知らないんじゃなかったか?

 

普通の人たちは怪獣が出たことも、俺たちが戦ってたことも全部忘れちまうって話だったはずだ。

 

ということは…こいつらは…怪獣と何か関係があるやつらってことなのか…?

 

「…怪獣は国家繁栄の繁栄の礎だし、お姫様も感動したんじゃない?

怪獣で栄えた国は他にはないし」

 

補足するかのようにさっき俺に水を渡してくれた褐色肌の…えっとシズム…だっけか…が薄笑みを浮かべ語る。

 

「聞いた話じゃ、俺たち怪獣使いは他所の国から『竜を操る一族』として恐れられてるんだとよ」

 

「一族って…」

 

オニジャの話にムジナは苦笑いを浮かべる。

 

「…竜を…操る…?」

 

竜……怪獣ってことか…?

 

つまりこいつらは…怪獣を操れる奴ら…ってことか!?

 

…そんな奴らと一緒の服着て、一緒に席囲んでるってことは…

 

実は俺にもそういうことができるってことか…?

 

そんなこと出来るのか…?実際…

 

でも…なんだか妙に自分の中で納得できちまう気がするぜ。

 

そういうことが当たり前だったみたいなそんな感じが。

 

「国に使える…人に使える…立派な仕事ですよ」

 

…でも…こいつらは怪獣の力を使って『世界征服してやるぜ!』みたいなことはしないんだな…

 

怪獣の力を使って、国を、人をより良くしようとしているって感じがする。

 

でも…なんでだ…この気持ちは…

 

まるでこの後のことを知ってるみてぇに胸が…心の奥がチクリと刺されたみたいに痛みやがる。

 

この想いは——————

 

「ガウマさんは……特に」

 

…へ?

 

「「「…………」」」

 

ジュウガの言葉に一同の間に変な空気が支配していく。

 

「…へ?なんですか…?」

 

「ほーら」

 

…ん、なんかムジナとオニジャから妙な視線が注がれてる気がする…

 

なんだその目は…やめろやめろぉっ!?

 

 

「え…お、俺なんか変なこと言ってましたか?」

 

「…」

 

なんか言おうかと思ったが、何も思いつかず黙りこくってしまう。

 

それと…ジュウガからは…なんかこう…憧れの目…つーのか?が送られてきてる気がするからな…

 

だから…その…あんま強い言葉言いたくねぇんだよなぁ……

 

「おう、ガウマ言ったれ。「お前はいつも変だ」ってよ」

 

なっ…こいつ言いやがったぞ!

 

「な、なななんでですか!たまに外れたこと言ったりしますけど…」

 

「………」

 

ダメだ…全然会話についてけねぇ…

 

そろそろそろ頭もまわんなくなってきちまったな…

 

「…おーい、ガウマァ…お前今日変だぞ?」

 

まずい…ずっと黙り込んだままの俺に違和感を覚えたのかオニジャは奇異の目を向けてくる。

 

「やっぱオニジャがあのお酒無理矢理飲ませたからじゃない?」

 

「えぇ…そんな度数強くねぇはずなんだけどなぁ…あれ、これ俺がおかしいの?」

 

まずいな…このままじゃ遅かれ早かれボロが出ちまう…

 

ここは…可もなく不可もなく、ごくごく自然にこの場を離れるとしよう…うん、そうしよう。

 

そう判断して席を立ち上がる。

 

「悪りぃ…ちょっと外出てくるわ…」

 

「…ションベンか?」

 

「オニジャ、汚い」

 

「じゃあ俺も一緒に——」

 

「いやいや流石にトイレまで着いて行くな!」

 

…トイレとは言ってねぇよ…じゃなくて…着いてくんなよ誰も…

 

取り敢えず今は外の空気吸って、状況の再確認だ。

 

ここは多分怪獣の創り出した世界…な気がする。

 

怪獣が出したあの光線を浴びた後からどうも記憶がねぇからまぁそういうことなんだろうな…

 

あのフィルム光線に当たったらどうのこうの〜みたいな感じの能力だ多分。

 

どうやったら出れるか確認しねぇと。

 

「ほんと大丈夫だ…ただ…ちょっとだけ1人になりてぇんだ…悪い…」

 

そう言って足早にその場を後にする。

 

「…ガウマ、そこ段差あるから気をつけて」

 

「あぁ…わかっ——イッッッダァ!?!

 

シズムの忠告も虚しく、レックスは派手に段差へと躓き転んだ。

 

 

「「「「……………」」」」

 

 

店中に響き渡るほどの音が聞こえ、4人は思わず顔を見合わせる。

 

「…俺、やっぱ様子を見て——」

 

「待て、ジュウガ」

 

オニジャはジュウガの肩を掴み、止める。

 

「1人にさせてやれ…。いいかジュウガ、人にはな…1人で自分の胃と向き合わなきゃいけない時があるんだよ」

 

飲み過ぎて吐きそうになることを自身の経験談として熱弁する。

 

「…それはオニジャだけでしょ」

 

それを呆れた様子で、ムジナは毒吐いた。

 

「………」 

 

その中でシズムだけはただ一人、腰を抑えながら外へと出ていくガウマをじっと見つめていた。

 


 

「よっしゃ、どんどんボール回してくぞ!」

 

「「おう!」」

 

華麗なドリブルをしていく。

 

「お前ら太陽を囲め囲め!」

 

「うっし!!」

 

…くっそ…パスを警戒されてる…どこか…どこかないか…

 

チームメイトもパスコースを阻まれ、自身のドリブルも拮抗している。

 

この状況下をひっくり返す一手は……

 

頭をフル回転させて、打てる最善策を考える。

 

すると、後ろからガラ空きとなったゴール前へと駆け出してくる音が聞こえる。

 

ボールを取ることに必死となっている彼らを出し抜くための最高のビジョンが浮かぶ。

 

「…そこだっ…!」

 

「なっ…」

 

予想外の場所へのパス出し。

 

敵チーム、そしてチームメイト、誰もが驚愕の表情を見せる。

 

「いっけぇぇっ!!」

 

しかし、ボールはポスンと情けのない音を奏でると、草むらへ跳ねていく。

 

「「「「「…………」」」」」

 

「おーいどこパスしてんだよ!」

 

「…あっれ…?」

 

ボールを出したところへと振り返る。

 

「……おっかしいな…」

 

地面には綺麗な円形のボール跡が残るのみで、そこには誰もいない。

 

「んー?どしたー太陽ー」

 

「…?いや…悪りぃ何でもない!」

 

…さっき…なんであんなところにパスを渡したんだ?

 

誰もいないのに。

 

いや、いつもなら誰かが居たはずなんだ。

 

誰かが…足りない。

 

大切な…誰かが。

 

「………誰…だ…?」

 

そんな気がしたのは気のせいだろうか。

 

 


 

[本当の戦いは……]

 

[本当の戦いは……!]

 

[本当の戦いはぁー…!]

 

[[[本当の戦いはここからだ!!!]]]

 

奇跡の巨人:ウルトラマンサーガの登場によって館内は最高潮の盛り上がりを見せる。

 

映画館の大スクリーンで投写されるヒーローたち。

 

絶対的な窮地でさえも決して諦めず、何度も立ち上がっていく。

 

そんな姿に、少年少女、大人でさえも魅せられた。

 

「……、っ……」

 

樹は嗚咽を噛み殺し、目許の涙を拭う。

 

「……、っ……うぅ…」

 

その隣では樹の父も顔をグシャグシャになりながら泣いていた。

 

「……こういうとこほんとお父さんにそっくり」

 

そんな夫と子を見ながら、母は少し引いていた。

 

 

 

過去の幸せな記憶。

 

いつも一緒に、側にいてくれる父と母。

 

あぁ、いつまでも。

 

いつまでもこんな時間が続けば良いのに———

 


 

「はぁ…さっぱり全然わからん…」

 

外へ出たはいいものの、この空間からの出方がわかんねぇ。

 

っていうかやっぱここ本当に夢の中なのかぁ…?

 

いろんなとこ見て回ったが、どこも本物にしか見えなかった。

 

取り敢えずわかったことは、ここはキヨシ台じゃねぇってことだ。

 

それと…なんか時代も随分古クセェ気がする。

 

街の雰囲気とか、住んでるやつの格好とかな。

 

遠くの方にはなんかデカいやつもいるし…

 

ほんとここどこなんだよ————-

 

「ガウマ」

 

不意に声をかけられ、背筋を伸ばし振り返る。

 

「えっと……シズ、ム…」

 

どうやって俺を見つけたか知らないが、いつの間かシズムが後ろに立っていた。

 

薄笑みを浮かべながら隣へと並んでくる。

 

「………」

 

「………」

 

隣に立ったまま、特にお互い何も喋らぬまま静かな空間が流れる。

 

おいおい…俺を追いかけてきたんじゃねぇのか…?

 

なんか話があるから隣に居るんじゃねぇのかよ!

 

そう目線でシズムへと訴えかけるが、シズムはただ夜景を静かに眺めるのみだ。

 

「……」

 

なんかこの間がやけに気味悪りぃな…

 

こいつだけは…その…俺たちとは違うところを見てる…そんな感じがする。

 

そこがまた他の3人とは違う異質感を出してるんだよな…

 

と、俺が色々と考えているうちに何分ぐらい経ったんだろうな。

 

しばらくの閑静の後。

 

「…ガウマ。」

 

意外にも、この静寂を破ったのはシズムの方だった。

 

「…ガウマはさ、怪獣のことどう思ってる?」

 

「…怪獣…の、こと…?」

 

「そう、怪獣について…ガウマはどう思ってる?」

 

…どうって言われても…

 

怪獣は…街を…みんなを…めちゃくちゃにする…存在…。

 

大切なものを…奪う…。

 

それを食い止めるために…俺は…戦って…る…。

 

今までも、これからも戦う力を持っているのだから戦う。

 

それは変わらない想いなのだが…レックスには…それ以上の想いは特にはなかった。

 

正直いえば…なんとなく…戦っていた。

 

怪獣が現れたとき…ダイナダイバーを握ったあのとき…怪獣に何度も負けそうになったときも…

 

俺は…自分の中の何かに突き動かされて…気づいたら怪獣と戦ってただけなんだ。

 

もちろん手を抜いたことは一度もねぇ。

 

いつも全力で、必死に戦ってた。

 

だけど…そんな半端な想いのままで戦っていて、この先本当に大丈夫なのだろうか。

 

前回のゴウ・ライラナクスとの戦いのとき、そのことを強く痛感した。

 

初めは迷いがあって、戦う理由がわからなかったアイツらも…

 

何があったかしらねぇが、帰ってきたアイツらの顔にはもう迷いなんてものはなかった。

 

戦う理由…それをアイツらなりに出せたんだろう。

 

…でも俺は…

 

…俺は……俺の…

 

戦う理由ってなんだ…?

 

思えば…俺は…怪獣のことをいつしか…都合の良い道具みてぇに思ってたのかもしれねぇ…

 

記憶がなくて…右も左もわかんねぇ自分と、アイツらを繋ぎとめるだけのものだと心のどこかで思っちまってたんだ。

 

「…俺は…」

 

…最低だな。

 

怖かったんだ…俺は…この関係がなくなるのが…

 

多分…記憶をなくす前の俺が今の俺を見たらぶん殴られる自信がある。

 

ほんと…何してんだ俺は…

 

そう俯く俺にシズムは先程と変わらないゆったりとした口調で淡々と喋る。

 

「俺は…怪獣も人も、もっと自由であるべきだと思うんだ」

 

「……自由…?」

 

「彼らは常に理の外にある。怪獣は何かに縛られたりしない。無上の自由を得れるはずなんだ。けれど…人間は違う」

 

「あ…?」

 

「だってそうでしょ。人間は無自覚に自由を失い、やがて自分自身を縛る。

…怪獣はそうじゃない。人が理解できないもの…だからこそ俺たちは、怪獣があればどこまでも…自由になれるはずなんだ。そうは思わない?」

 

「それは……!………ッ」

 

シズムの言葉に何故だか声が出なかった。

 

「…冗談だよ」

 

「………」

 

再び訪れた静寂。

 

「シズム…俺は——」

 

…どう答えていいか黙っていると

 

「ガウマ」

 

再びシズムが口を開いた。

 

短く、それでいて彼の底知れなさが垣間見える赤眼がレックスを見据える。

 

その瞳はレックスの瞳の奥を臨んだ。

 

彼の本心を真髄を見透かすかの如く。

 

「ガウマ…、そろそろ起きた方がいいんじゃない?」

 

「は…?それはどういう——-」

 

瞬間。

 

足下の地面が抜け落ちたかのような落下感に襲われ、視界が闇へと包まれていく。

 

「なッ…!」

 

懸命に手を伸ばすが、その手には何も掴めない。

 

「…………」

 

酷薄に細めた眼でレックスを一瞥した後、シズムは踵を返し去っていく。

 

「待ってくれ…俺はまだ…!」

 

彼の叫びも乏しく、視界は完全に漆黒へと染まる。

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

       

 

  

 

       

 

 

 

        

 

途切れた画面を繋がる感覚が、脳を刺激する。

 

…俺は………俺は…

 

やがて、記憶のフィルムは次のシーンへと切り替わるかのように眩くスパークした。

 

…んン…なんだ…また…さっきとは違う空気の匂いだ…

 

…それと…話し声が…聞こえる…?

 

 

「ちょちょちょっと、隊長倒れて動かなくなっちゃったすよ!」

 

「え、…うっわまじのやつだこれ…」

 

「…取り敢えず蓬くん、人工呼吸、お願い」

 

「え」

 

「よもさん、おねしゃーすっ」

 

「じゃあ…よろしく」

 

「えぇっ!?ちょ、ちょっと待ってよ。なんで俺がやる雰囲気になってるわけよ…

こういうときはほら、えっと…まずは救急車呼んで、その間に心臓マッサージとかじゃない?いきなり人工呼吸は…」

 

「それだと間に合わないかもしれないじゃん。大宇宙根源調和呼吸法によるとまずは心臓マッサージよりも先に魂の浄化を————」

 

「だいうちゅ…って、え?み、南さん?」

 

「そうっすよ、よもさん!急がばなんやらってやつっす!」

 

「前にアマプラで観た映画でもこういうシーンあったな…蓬くん、後悔だけはしないようにね」

 

「え、ちょっ、え?俺やるの確定なの?え?」

 

「…私、一応JKだし…そういうのは…」

 

「あっ!、私、1番歳下!なんでパスで!」

 

「俺は……あ、ほら、無職だし。うん」

 

「ちょっ、ちょっとぉ…」

 

……なんだ…やけに…さわが…しいな………





[俺、ガウマさんと出会ったこと、後悔なんてしてませんよ]

[…お前…]

次回【律・動】
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