SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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エキゾチックな服装の女性のCVは…内田真礼さんで…読み進めてください[大声]


第35回 失くした記憶って、なに?

 

「ようこそ…竜の(えにし)に導かれし……お客様♪」

 

「…ぁ……」

 

レックスは息を詰まらせて双眸を見開き、怖々と身体を起こす。

 

目の前にいる女性を一目見て、不思議と胸が熱くなった。

 

「記憶の泉に迷えし者よ…(わたくし)に何を求めますか?」

 

歌声のように透き通ったその声は、レックスの身体の中へと深く反響する。

 

高貴な身分を表すかのようなエキゾチックな赤い装い、前垂れが垂れ下がる大きな笠帽子。

 

笠帽子の前垂れのせいで顔は見えないが、時々見える頬や髪から、端整で、美人な雰囲気を感じさせる。

 

会ったことも、見たことがないはずなのに、何故こんなにも、感情がぐしゃぐしゃになりそうなのか。

 

今までに感じたこともないその感情に、自分さえも戸惑う。

 

そんな様子のレックスを見かねたのか、彼女は突然声を上げた。

 

「あー…この口調しんどいしんどい!やめやめぇ!」

 

「…へ…?」

 

先程までの凛とした,澄んだ声とは異なり、気さくで,話しやすいフレンドリーな声でグイグイと彼女は近づいてきた。

 

「ねぇちょっとぉ…!ノリ悪いぞー!」

 

「あ、あぁ…?」

 

コミカルに拗ねる女性とは対照的に、レックスはどう受け答えするのが正解かわからず困惑する。

 

「んー?なんかいつもと違うよ?どうした?なんか変な物でも食べた——…か……あ、そっか。記憶ないんだったっけ、納得納得〜」

 

彼女は吐息を感じるほど間近に顔を寄せ、レックスの顔を不思議そうに見つめた後、くるくると回りながら離れた。

 

おどけるような態度の彼女にレックスは翻弄されながらも、勇気を振り絞り声を出した。

 

「あ、アンタ一体…何者なんだ…?」

 

「あ、え?私は…えっとぉ…まぁ…んー…あなたの記憶の案内人…ってところ、かな」

 

「記憶の…案内人…?」

 

明らかにそんな装いには見えない、というより胡散臭さにレックスは顔を顰める。

 

「おいおーい、なにその如何にも「うさんくせぇなコイツ」みたいな顔は?

…コレでも一応"高貴な"身の上なんだぜ?」

 

「そ、そうなのか…アハハハ…あ、えっと…俺の名前は——」

 

「あー知ってる知ってる、『ガウマ』でしょ?……あれ?今は…新世紀なんとかの…『レックス』だっけ?」

 

「………!…」

 

自分の名前も知っている彼女にレックスはますますは困惑する。

 

もはやこちらの全てを知られているかのような気さえもしてくる。

 

「…ねぇ?ガウマかレックスかどっちで呼んで欲しい?」

 

「…どっち、でも…」

 

「ん〜じゃ、『ガウマ』で」

 

ガウマと呼ばれた時、妙にしっくりとくるような気がした。

 

まるで彼女にずっとそう呼ばれていたかのように。

 

「…アンタと…俺は…どういう関係…なんだ?」

 

「私とあなたの関係は………」

 

急に声のトーンを落とし、眼の奥を覗き込んでくる。

 

「ッ……!」

 

その揶揄うような仕草に、目線に、妙な緊張感が走る。

 

「関係は———」

 

ドクンドクンとレックスの鼓動が聴こえているのか、彼女は答えをたまに溜めて焦らす。

 

そして遂に彼女は言葉の先を声に出した。

 

「…ご想像にお任せします♪」

 

笑いを堪えられなくなったのか、花が咲いたように屈託なく彼女は笑う。

 

「なっ……」

 

焦らしに焦らした言葉の先は、意外にもありきたりなものだった。

 

真剣な顔して聴き臨んでいた自分がだんだん恥ずかしくなってくる。

 

だが、そのなんてことのない彼女の答えにレックスは不思議と安心した。

 

彼女の一つ一つの行動が、胸に沁みる。

 

 

「…さてとっ…それじゃそろそろ本題に入ろっか」

 

パンパンッと和やかな空気を締めるように手を叩き、記憶の案内人は話を切り出した。

 

「ガウマはここが《怪獣の中》っていう認識はある…ってことでいいんだよね?」

 

「…まぁ…なんとなくは…」

 

「よろしい、じゃあ次は今いるこの空間が何なのか説明するとしよう。

…この怪獣は本来、対象者の記憶を元にその人にとって幸せな世界を作り出して永遠に繰り返させるって能力があるんだけどね…あなたは少し違うの」

 

「少し…違う…?」

 

「そう。だって今のガウマは他の人たちと違って…記憶が"ない"んだから」

 

「さっき説明したとおり怪獣は対象者の大事な『記憶』を起点として幸せ世界—すなわち『幸福空間』を作り出す訳だけど…あなたの場合ここで問題が起きるの。

『記憶がない』っていうね。

でもそれだと怪獣は使命を果たすことができないから、無理矢理ガウマの心の奥深くに眠る『記憶』を引き出そうとする。

そうすると何が起きるか———」

 

「…相反する力によって…バグが起きる…ってことか」

 

記憶がないのに記憶を引き出す。それを何度も繰り返されることによる矛盾。

 

その矛盾により、本来想定されていない事情が発生し、一種のイレギュラーがここでも発生していたということだ。

 

「そう、相反する力と因果が複雑に絡み合って…その異端の末に、奇跡が起こって…あなたがさっき見た記憶の断片が出現したってこと」

 

本来なら成し得なかった事象がこの空間を作り出していたのだ。

 

「私の存在もそう。今の私はね、あなたの記憶から創り出された不確かな存在。

だからガウマが「消えろ〜」っと思えば私は消えるし、私じゃない人に「代わって欲しい〜」と思えば違う人が来る…そんな空間なんだよ。ここはさ」

 

「………」

 

不確かで壮大なその説明に驚愕すると同時に、その言葉を発した彼女の存在が妙に寂しく感じて見えた。

 

「さて…ここでガウマには選択せねばならないことがあります」

 

「選…択…?」

 

「そ、まず…選択肢①怪獣の能力を力づくで解いて現実に戻る…

選択肢②…この世界に残って、全ての記憶を取り戻すか…どっちにする?」

 

「そりゃあ力づくでもって……ん?ちょと待て…今アンタ…『全ての記憶を取り戻すか』って言ったよな…そんなこと———」

 

「うん、できるよ。言ったでしょ?今起きているこの状況は、怪獣の能力(偶然)記憶喪失(偶然)が複雑に絡まり合ってできた奇跡なの。

あなたが先程まで見ていた二つの景色もその一部。だからこのままここにいれば…あなたが失くした記憶を全部取り戻せるかもしれない」

 

「………!」

 

夢にまで見た、失くした記憶を取り戻せると聞きレックスは目を見開く。

 

だが…それでは…。

 

「…ッ…だと、しても…このままずっと怪獣の中にいたら…俺は…アイツらは———」

 

このまま怪獣の中にいれば誰が怪獣を止めるのか。

 

怪獣はこうしている間にも世界の人々を次々と飲み込んでいるというのに、自分がこんなことをしていて良いのかという想いが込み上げてくる。

 

「…この機を逃せば…もう二度と…あなたの記憶が戻らないとしても…?」

 

「…な……?」

 

「…記憶っていうのはね、人の(えにし)(えにし)が紡いでいくもの。それが失くなるということは…今まで紡いできた絆が途切れてしまうことを意味するの。あなたが今まで出会った数々の仲間との絆が———」

 

「………。」

 

「だから…よく考えて。あなたのその選択が本当に後悔がないか」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

「俺…は……」

 

しばし時間が過ぎ。

 

「俺は…怖い…」

 

レックスは1人ぽつりと言葉を漏らした。

 

「正直…自分の記憶がないのが…ずっと怖かった」

 

太陽たちの前では見せなかった。見せれなかった。

 

「自分にはなんで記憶がないのか、俺自身は…何者なのか…この力は何の為にあるのかって…考えてた…」

 

こんなにも弱い自分を。見せるのが怖かった。

 

「だけど…アイツらと過ごしていくうちに…思ったんだ。記憶喪失…それよりももっと怖いのは…」

 

太陽たちと接していくうちに、芽生えた想い。

 

 

「俺たちの今が…なくなっちまうことだ」

 

過去ばかり見ていたレックスが、今この瞬間、未来を見ることを選んだ。

 

「かけがえのない…今を…俺は進みたい」

 

「記憶は…良いの?ここにいれば全部思い出せるんだよ…?」

 

「…確かに…ずっと記憶喪失ってのは…気持ちが悪りぃし…できれば全部思い出したいとは思う」

 

「なら————」

 

「でもそれは……今じゃなくて良い」

 

「……」

 

「それによぉ…そんな簡単に思い出しちまったら多分…あいつら(蓬たち)や、記憶を失くす前の俺自身に怒られちまう」

 

 

——俺…信じてます。ガウマさんならきっと———

 

…ありがとな…蓬。

 

…やっぱお前は俺の命の恩人だよ。お前の言葉で思い出せたわ…

 

…俺たちが紡いできた絆は…こんな記憶喪失なんかで消えるもんじゃねぇってことに。

 

「だから…俺はいつの日か…必ず、今度は奇跡なんかじゃなく…自分自身の力で…記憶を取り戻したいんだ」

 

手の中で光り輝くダイナダイバーを握り締める。

 

「俺が何者なのか、この力は何の為のモノか、守るべきものは何か。記憶も、想いも…それと…」

 

先程とは逆に、今度はレックスから吐息を感じるほど間近に顔を寄せニッと口角を上げ彼女に優しく笑いかける。

 

「アンタのことも…思い出さなきゃな」

 

「……!」

 

記憶の案内人を名乗る女性は、レックスの言葉を聞くとプイッと後ろを向いてしまった。

 

「………なんだよ、それ…カッコつけちゃってさ

 

「ん……なんか言ったか?」

 

「…なんでもないですよーっだ」

 

そう言葉を吐く彼女だったが、その顔はどこか満足げに見えた。

 

 

 

「ほんじゃあ…俺…行くわ、またな」

 

「…また会えるかなんてわかんないよ〜?今度は私じゃないかもしれないし…第一、またここに来れるかもわかんないよ?」

 

「…んーまぁ…確かにな…えっと、あ、それじゃあ…」

 

そう言ってレックスは少し乱暴に彼女の指と自身の小指をからみ合わせると、彼女を穏やかな眼差しで縫い止めた。

 

 

「…また俺とあんたが逢えるように…約束、な?」

 

 

最後に会心の笑みを添え、天を仰ぐ。

 

そして、光るダイナダイバーをフィルムに叩き割るように掲げる。

 

「アクセスモード…ダイナダイバー!!」

 

レックスを中心として光の柱が立ち上っていく———

 

 

 

 

「…記憶ない癖にちゃんと覚えてんじゃん」

 

消えゆく記憶空間の中で、記憶の案内人は和やかな声で呟いた。

 

いつの間にかレックスが口にしていたその言葉。

 

世の中にある、人として守らなければならない3つのこと。

 

その一つ目は—————約束

 

 

 

 

 


 

 

 

ドシン、ドシンと、この世界を丸ごと揺さぶるような巨大な振動が街を飲み込んでいく。

 

身体に白き鎧を身に纏い、複雑な幾何学模様にネオンカラーを断続的に発光させながら、怪獣:ゴウ・ムネモシュネは前進する。

 

誰もいなくなり、静寂に沈む街を見届けると、次のターゲットを探しにまた、歩み出す。

 

そうして、いくつもの街の人々を飲み込んでいくのだ。

 

[———!!!!!!]

 

新たな地で、再度雄叫びを上げようとした瞬間。

 

突如、ゴウ・ムネモシュネの身体が膨れ上がり————

 

[————!:(!!!???!!!!!!!!!]

 

という悲鳴とともに身体の至る部位から4本の光に覆われたフィルムが勢いよく噴き出す。

 

「ぉォォッ!帰ってきたあぁァァッ!!!」

 

自らの記憶へと打ち勝った者たちが今、現実へと舞い戻る。

 

「レックスさん!」

 

「え…ここどこ?!キヨシ台からめっちゃ離れてるんですけど!?」

 

「もう…こんなところまで…素早く対処しよう、みんな!」

 

「…太陽!響子!ライラ!…お前ら最高だ!」

 

銀色の機体を見事に操る、いつも通りの彼らを見てレックスは嬉しそうに笑う。

 

「…まだ新条くんとナイトさんが…!」

 

「樹………」

 

辺りにグリッドナイトの姿がなく、響子と太陽は不安の表情を見せる。

 

それを払拭するように、ライラは温かな声で語りかける。

 

「あの怪獣を倒せば…囚われている人たちも戻ってくるはずだよ!」

 

「なら…俺たちの手で…目ぇ醒めさせてやるまでだァッ!」

 

レックスは雄叫びを上げ、それと同時に攻撃を開始する。

 

 

「—-とは言ったけど…」

 

[———//::::;!!!!!!!]

 

レックスたちの勢いと裏腹に、現状は拮抗していた。

 

「ッ…厳しそう…」

 

自身の中から脱出した者たちを再び体内へと戻そうと、ゴウ・ムネモシュネは再度、身体の中から螺旋に広がるフィルム状の光線を浴びせる。

 

「ッ…あの光線に当たったらまた振り出しに戻っちゃうよ!気をつけて!」

 

避けるので精一杯で、攻撃を与える暇がない。

 

仮に攻撃を与えられたとしても、弱体化しているこちらの機体の攻撃では全く歯が立たないのだ。

 

いつものようにグリッドナイトがいないというこの状況で、怪獣:ゴウ・ムネモシュネを撃破しようというのは不可能に近いことだ。

 

しかし、レックスだけはニヤリと口角を上げ笑っていた。

 

「全員の力…合わせるぞ………!」

 

「「「えッ……!!!」」」

 

電撃を喰らったかのように、全員が驚きの表情を見せる。

 

「全員の…力を…?」

 

「合わせるって…」

 

「でも——」

 

戸惑うのも無理はない。

 

4機での合体は前回、失敗に終わっているためだ。

 

まるで各機体が合体を拒んでいるかのような、今の自分たちには何かが足りていないと言っているような感覚はまだ記憶に新しい。

 

その合体をレックスはまたやると言い出したのだ。

 

前回のように合体が失敗しないかを危惧するのも無理はない。

 

だが、その失敗を経験しても尚、レックスの笑みは消えなかった。

 

「大丈夫だ…!今の俺たちなら…いけるッ!」

 

前までは、心がバラバラだった。

 

だが、今は違う。

 

グリッドナイトを、樹を救いたい——その想いが、この場の全員の心を一つにした。

 

全員の目的が、心が…一つになった今ならば————

 

「ッフ…そうですね…わかってます、そうですよね…レックスさんはいつも…!」

 

「…そうだね…行こう!」

 

「よーっし!」

 

レックスの想いに応えるように、太陽たちも声を上げる。

 

「よっしゃ…いくぞォォォォォォォッッッ!!!」

 

 

ダイナソルジャー、ダイナウイング、ダイナストライカー、ダイナダイバーの各機が、フォーメーションを形成、

 

光の煌めく天空へと飛翔していく。

 

ダイナウイングが胸部アーマーに、ダイナストライカーが巨大な両腕に、ダイナダイバーが全員を支える脚へと、次々に合体していく。

 

最後に、ダイナソルジャーの頭部に兜が装着され、ダイナソルジャーの口にあたる部分が展開して巨人の顔を露出させる。

 

「「「ダイナソルジャーウイングストライカーダイバーコンバ———…」」」

 

3人の声が重なる中、レックスは静かにその名乗りを制止した。

 

「いや…違う…」

 

「ちがう…?」

 

「どーいうこと…」

 

「レックスさん…もしかして…!」

 

合体した時に流れ込んできた、さまざまな記憶。

 

あぁ—–そうか…これは—————

 

「あぁ…今…思い出した…こいつの…いやお前の…本当の名前は———」

 

巨大な右腕を天を掴むかの如く力強く、掲げる。

 

すると、巨人のボディがワイヤーフレーム状の光の線に彩られる。

 

それと同時に、全身を真紅の炎が立ち昇り、包む。

 

『合体竜人!』

 

振り上げた拳を炎と共に握り締め、ふり払う。

 

それに伴い、巨人の色が変化していく。

 

それはまるで燃え上がる炎のように、巨人を銀色から赤色へと染め上げた。

 

『…ダイナゼノン!!!!』

 

燃えたぎる想いを胸に、伝説の巨人が今、その真の姿を取り戻した———————




あとがき

ひ…記憶の案内人さんとレックスとの会話は、ユニバースの北海道物産展でのシーンのオマージュにしたつもりです…

あと読者の方々…小説名変えてたの気付きました?
旧:グリッドナイト物語→新:Another God Wish

これが何を意味するのか…それじゃ今回はここで…adieu!!
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