SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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最初の話は、ゴウ・ムネモシュネを倒す少し前から始まります…


第37回 濫・觴

 

「いやあああああああああああああああああああッ!」

 

あちこちからサイレンの音と悲鳴が混ざったような音が響く。

 

街からは炎が轟々と燃え上がり、焦げ臭い、そして血生臭い—死臭とも言える匂いが鼻を刺激する。

 

空はナイフで抉られたように赤く、不気味な亀裂が全面に広がり、内からは不気味な遠吠えが聞こえる。

 

実体を持った生きる天災、歪んだ意思を持つ惨禍—【怪獣】。

 

夥しい数の怪獣は、いとも簡単に世界の全てを飲み込んでいく。

 

「〜♪〜♪〜♪」

 

そんな絶望的な地面を、望美は弾むような足取りで歩いて行く。

 

"キヨシ台"とよく似た雰囲気を纏う、その街を。 

 

「〜〜♪…」

 

蹂躙されていく世界をしばらく歩いた後、望美は一人の小さな幼女を見つけた。

 

望美と同じ紫の髪を持つ、儚げな少女を。

 

「……マ…マ…?…パ、パパ………?ど、こ……」

 

かつて両親だったモノの死骸と、肉片が散らばるその中心で、彼女は骸のように倒れ伏していた。

 

少女の眼からは、とうに光が消え、虚空のみが写り続ける。

 

「……たす…けて…よ……ぐりっ…ど…ま、……ン」

 

そんな少女の腕には、【電光超人】のソフトビニール人形が握られていた。

 

突如訪れた脅威に、少女はさぞ絶望したであろう。

 

しかし、意外にも少女の顔は笑顔だった。

 

いや、染められてしまったというべきか。

 

或いは…笑うという感情意外を失ってしまったか…そのように思えた。

 

「………」

 

そんな少女を望美は冷めた表情で見つめ、呟いた。

 

「…グリッドマンは…助けてくれなかった」

 

淡々と言葉を結んでいく彼女は、いつものおどけたような口調の見る陰もなく、切なさが揺れる。

 

それはまるで、自身の過去を憐むような、そんな表情だった。

 

「身勝手ですよね、自分が創造(・・)した世界なのに」

 

穏やかな声音だがその内には、不気味な思想が秘め隠されているようにみえた。

 

「グリッドマン…あなたは私のすべてを奪った…家族も、世界も、生きる気力も、わたしの存在自体も………ほんと…最悪のヒーローです」

 

そう言い終えると、望美はいつものニコニコ笑顔の表情へと戻り、甘く微笑んだ。

 

「ふぅ…これでやっと…私も覚悟ができました★」

 

すると、望美を中心として、ノイズが交じり、やがてフィルムにヒビが入っていく。

 

「…今度は私が…貴方の全てを奪ってあげます♪」

 

口許は笑顔の形で彩られているが、それは偽りの仮面のようなモノ。

 

その仮面の下にどんな感情と思想が隠れていようとも、他者に見せるのは造られた笑顔のみ。

 

「さようなら…過去の私♪」

 

最後に虚な瞳の少女を一瞥し、望美は怪獣の呪縛を解いた——————

 

 

「〜♪〜〜〜♪」

 

彼女が何故、自分からゴウ・ムネモシュネの能力で記憶世界に囚われたのか。

 

それは、自身の過去を、【夢のヒーロー】への憎悪を、忘却しないようにするため。

 

 

 

—-これは、笑顔以外の感情を忘れてしまった少女の序曲(プレリュード)

 

壊れてしまった彼女の歩みは、もう止められない——————-

 

 


 

「…どーにかなったみてぇだな」

 

ゴウ・ムネモシュネがダイナレックスによって灰燼へ帰すとともに、世界に修復の光が広がるのを見て、ボラーはニヒルに口端を吊り上げる。

 

「で…オメェら…まだ、続ける気か?」

 

呆れた様子でポリポリと頭を掻くボラーの視線の先には、地面に倒れ伏す二人の姿があった。

 

「うっそ…2対1で負けるシチュエーションとか、あるんだ…」

 

返り討ちに会うとは思ってもみなかったのか、ヴィットは苦々しく笑う。

 

「…何故…勝てない…」

 

一方のキャリバーも、自身の刀を杖代わりに地面に突き立てるが、衰弱しきっているのか立ち上がることができず唸る。

 

「…そんなの決まってんだろ」

 

ボラーはゆっくりと二組に歩み寄ると、声のトーンを一気に下げた。

 

「「……ゴクン…!」」

 

瞬間、その場の空気がピリつき始め思わず二人は息を飲んだ。

 

「お前らの攻撃にはなぁ…(ここ)が籠ってねぇんだよ」

 

ボラーは、自身の左胸…心臓部を親指で示しながら言葉を綴る。

 

「守るべきもんも覚悟もできてねぇ奴らが…勝てるわけねぇだろ」

 

【決まったァッ!】と内心満足げな声を吐露し、ボラーはスクラップメーカーダガーを掌中でクルクルと回した。

 

「…俺の…刀…には……」

 

その言葉を受け、キャリバーは何か思い耽るように自身の持つ刀身をジッと見つめた後、それ以上何か行動しようとはしてこなかった。

 

「………」

 

…さてこれからどうするか—そう考えていた矢先、突如、空から何者かが飛び込んできた。

 

 

「そこまでだ。」

 

地面が割れ、振動が伝わってくると共に、一つの影が現れる。

 

「…マックス……」

 

棘つきのナックル状の武装—ドラゴントゥースパイクを右腕に装着し、口許を金属マスクで覆う巨漢が、ボラーとキャリバーたちの間に割り入った。

 

「…両者とも武器を納めてくれ」

 

静かにかつ迅速に状況を掌握し、その場を無力化させる。

 

「"アァン"?!何他人の喧嘩割り込んでんだテメェ…そんなんでやめるやついるわけ———-」

 

「はいはいー俺1抜けね、降参降参っと」

 

「んなッ…ヴィットお前、プライドつーもんはねぇのか!?」

 

「ん〜…ないかな、俺は。もとはといえばキャリバーの手伝いで来たわけだし」

 

「…ナ……」

 

ピクピクと眉間に皺を寄せ、呆気にとられるボラー。

 

横のキャリバーに視線を向けると、サムライは自身の刀を地面に置き、腰を折って謝罪の意を示していた。

 

「す…すまないことをした、…謝罪させて欲しい」

 

キャリバーはさらに、『コレがジャパニーズ土下座!』と言うかのように、身体を地面へと近づけ始める。

 

「…アァアァ!?なんだお前らァッ!なんかもう冷めた!帰る!?次会ったときは覚悟しとけよ!?」

 

そのあまりの切り替えの早さにボラーはプンスカと怒り、背中を向けると、帰り道へと足を進んでいってしまう。

 

そんなボラーをマックスはぎこちない様子で、呼び止めた。

 

「待ってくれ。…バスター…ボラー…、一つだけ…君に問いたい」

 

「…んだよ」

 

マックスたちの方へは振り返らず、背中を向けマックスに応答した。

 

「…君から見て…我々は……怪獣に見えるか…?」

 

その問いに、ボラーはしばし合間を空けた後、答えた。

 

「…さぁな、確かに今のテメェらは怪獣見える……けどな」

 

顔だけを後ろに向け、淡々と答えを口にした。

 

「…お前らみてぇにバラバラになってくっつく怪獣…いるわけねぇだろ」

 

「…そうか」

 

一コマ間を空け、ボラーの言葉を受け取ると、マックスは静かに目を閉じ、天を仰いだ。

 

その姿はまるで、『何かの覚悟は出来た』そう言っているように見えた。

 

「ふんっ」と息を吐き、ボラーはまた足を進めようとしたその時。

 

「…ま、待て。」

 

次はキャリバー呼び止められ、今回はさすがに振り返りまいと一歩を踏み出そうとする。

 

だが、キャリバーが放った言葉に、ボラーの足は停止させられた。

 

「…魔王の影(・・・・)に…気を付けろ」

 

 

「……!おい、ちょっと待て、お前それどういう————」

 

その言葉を伝えた後、キャリバー、マックス、ヴィットの3人は忽然と姿を消した。

 

「……魔王の影だぁ…?…この電子の世界で魔王つったら…」

 

嫌な思考ばかりが頭の中を駆け巡る。

 

「………」

 

キヨシ台に黒き混迷の闇が、広がろうとしていた。

 

 


 

「クソクソクソックソクソクソクソクソクソクソッ!!」

 

ゴウ・ムネモシュネが撃破され、コピーは怒り狂う。

 

素足を机の上に無造作に投げ出し、踵でゴンゴンと机を叩く。

 

「……」

 

そんな毎度見飽きた姿をファージは見つめ、ただ沈黙していた。

 

…先日スランプに陥ってからなんとか持ち直したかにみえたが…そうでもなかったらしい。

 

今の彼女に、もう成長の術はない。

 

ひたすら閉鎖された空間にいるだけではやはり、情動の変化はないのだ。

 

「……そろそろか」

 

ファージはそう呟き、踵を返すと、薄暗い部屋を後にした。

 

 


 

「…んで、どーいう状況なのコレ」

 

怪獣騒ぎが終わり、戻ってきたボラーの目線の先には、バスケをしている樹と太陽がいた。

 

 

ボラーの記憶が正しければ、二人は絶賛喧嘩中だったハズだが…

 

「学校に帰ってくるやいなや、校庭に飛び出してずっとあーやってるよ」

 

椅子を台座代わりに窓の外を覗くライラがそう補足した。

 

「ウジウジしてるだけじゃあ…気持ちは伝わんないからな」

 

レックスはサングラスをピカリと光らせ、対決を見守る。

 

 

「新条くん…意外と善戦してる…!」

 

響子の言葉に、二人の試合へと視線を戻すと、樹が今まさにドリブルを繰り出し、太陽を出し抜いていた。

 

「ハァ…ハァ…きっつ……あ!」

 

「もーらいっ!」

 

もう少しでシュート…というところで樹はボールを取られ、すかさず太陽の猛攻が始まる。

 

「ハァ…くっそ…!」

 

息を切らしながらも、普段からバスケをしている太陽に食いつく。

 

「これで…終いに…!」

 

太陽は、ゴール前から6.75m離れた楕円形のラインから、スリーポイントシュートを狙い、放つ。

 

そこに。

 

「ナイト爆発…光波弾ッ!?」

 

視界の端から樹が飛び出し、太陽のシュートをカットしてみせた。

 

「……なっ…」

 

絶対に決まると思っていた球は、樹によって奪われ、そのまま樹は反対のゴールネットへと投げ入れた。

 

「グリッドナイト…サーキュラーァッッ!?」

 

体育の授業中、少数の男子がみせるその究極の運ゲーを、樹は成功させて見せたのだ。

 

「…………」

 

太陽は、呆気に取られ、ただ反復するボールを見つめる。

 

「タイヨウが…負けた……」

 

フルフルと身体を揺らした後、太陽はバッと顔を上げた。

 

「ッ…ァハハハハハハハハハハハ!なんだよそれ!」

 

その出鱈目すぎる行動に、思わず笑いが込み上げてきたようだ。

 

「俺の…ハァ…秘技…ハァ…だ…ハァ…インドア派にはキツすぎる…」

 

顔を青くしながら、なんとか勝利を納めたことを確認すると、樹は地面へと横になった。

 

「お前、あとでナイトさんに怒られるぞ(笑)」

 

「それは…割と真面目に怖い…(泣)」

 

樹の隣に倒れ込み、二人は空を見上げ、言葉を交わす。

 

「あの…さ…、その…プリント…せっかく届けてくれたのに……ごめん。本当…お前の気持ちも知らずに…あんなこと言って…」

 

「…俺も…謝りたい。ごめん。ムカついてたとは言え…手を出すなんて…大人気ない…最低だ」

 

離れていた二人の距離が、バスケを通じてその蟠りを埋めていった。

 

「大人気ないって…お前まだ子供だろ?」

 

「…少なくともお前よりは精神年齢上だ」

 

「んなッ…高校生でウルトラマン好きなやつに言われたくないわ!」

 

「アァン!何が悪りぃんだよ!いいか!ウルトラシリーズはな、老若男女、大人から子供まで楽しめる、そんな偉大なコンテンツなんだよっ!!いつまで経っても球遊びしか出来ない奴に言われたくないッ!(早口)」

 

「ンダとゴラァ!!」

 

「やるかゴラァッ!?」

 

再び和んできたムードも壊れていき、またまた険悪なムードに戻っていく。

 

「あちゃー…またああなっちゃったよ」

 

額に手を当て、一同はため息を吐いた。

 

「……夫婦漫才かよ」

 

ボラーは今まで観戦していたのがアホらしくなり、グチる。

 

「あはは……でも…二人はこれで良いんじゃないかな」

 

響子は苦笑いしながらも、彼らを和やかに見つめ、呟いた。

 

「…ずっと仲良しでも…ダメなんじゃないですかね、人は。

時には…互いにぶつかり合って変わっていくのも…大切なんだと、私は思います」

 

「…そうかもな」

 

穏やかな瞳で窓の外の二人を見据え、ボラーは口端を上げた。

 

今回の一連を受け、彼らの背中はまた一段と大きくなったように感じた。

 

 

 

こうして、樹たちの夏休みが、始まった————-




あとがき

Q. ゴウ・ムネモシュネの記憶に閉じ込める能力って体験型(当時の出来事を追体験)なのに、どうして望美は過去の自分と現在の望美で別れたんですか?

A. 結論→彼女もまたイレギュラーな存在だからです(n回目)


はい、ということでやっとゴウ・ムネモシュネ回完全終了。

…いや長すぎぃッ!9話掛かって自分でもびっくりしてる今日この頃。
時はあけぼの 夏はクソ…

ということで…次回投稿まで…adieu!
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