SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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#9
第38回 初・夏


 

アブラゼミが忙しなく鳴き、灼熱の日差しが照る夏休みのとある一日。

 

最近ハマってしまった駄菓子という娯楽を堪能しながら、ライラは帰り道の河川敷を気ままに散歩していた。

 

「〜ー〜♬」

 

家に帰ってから食べようと思っていた帆たらを、気がつけば手を伸ばし頬張る。

 

樹から貰う、月の軍資金は1500円。

 

そのお小遣いをこうやって豪遊するのが、最近の楽しみであり、悩みでもある。

 

外出時と帰宅時の財布の重みの差異に、日々悩まされる今日この頃だ。

 

…こんなことを考えられるようになったのも、彼らとの出会いの賜物であろう。

 

そんなことを思い直しながら、ニコリと微笑み、足を進めた時。

 

ゴキンと、足元から何かを踏んだ音が響いた。

 

…まさか犬のウン——-と思考を巡らせた後、恐る恐る脚を持ち上げる。

 

「…なんだ…これ」

 

と、一目ではその踏んだ物体を理解できず、腰を落とし間近に迫ってみた。

 

一見すると泥だらけの鳥…だが羽毛はなく生物的というよりも機械的な印象を受ける。

 

前肢には翼、小さいがしっかりと鉤爪のある脚部、そして竜—-どちらかというとワイバーンに似ている頭部———これは…

 

「…怪…獣…?」

 

 


 

「ううー………どーするかな…」

 

いつになく真剣な面持ちでスマホを睨み、樹は頭を抱える。

 

その理由はクラスLINEから送られてきた内容についてだ。

 

 

せっかくの夏休みだからクラスのみんなで海行かない?

 

 

夏休みが始まり早一週間。

 

今年の夏は念願の[ウルトラマンUSA]の一気見とウルフェスサマーに入り浸ろうと考えていた矢先、この一本のLINEが入ったのだ。

 

いつもの樹なら迷うことなく辞退していた。

 

現に、春に行われた1年E組のカラオケ大会は樹だけ欠席したのだ。

 

ならば今回もそうすれば良いではないか——そう思う自分もいる中、先日ナイトに言われた言葉が脳裏を過ぎる。

 

——-その少しの勇気で…お前の世界は大きくなっていくはずだ——-

 

失うことを恐れるな、お前は一人じゃないと、ナイトは言ってくれた。

 

「…ナイト……ちょっと勇気貸してくれ…」

 

左腕のアクセプターをそっと撫で、樹は大きく息を吸い、整える。

 

「………ヨシッ…」

 

…覚悟はできた。

 

まだ少し震えが残る腕を押さえ、スマホを取ると、何やら太陽から一通のLINEが送られてきた。

 

今日、男子で水着買いに行くから駅前集合な★

 

「…LINEすんの遅ぇつーの」

 

…ってか強制かよ、と毒吐きながらもどこか嬉しそうな笑みを浮かべてしまう。

 

思えば太陽はずっと自分のことを気にかけて誘ってくれていた。

 

毎日、学校に行くのが億劫だったのに。帰り道が憂鬱だったのに。休日が退屈だったのに。

 

太陽は樹の一歩をいつも待ってくれていたのだ。

 

「…ッシ…!行くか…!」

 

LINEを返信するやいなや、すぐさま身支度を済ませて階段を駆け下りる。

 

「あ、ライラ」

 

玄関先に着いたところでガチャリとドアが開き、ライラが帰宅した。

 

「…タダイマ。」

 

樹の声にビクッと反応し、ぎこちない様子でライラは言葉を返す。

 

「レックスさんはバイト…?で、俺もちょっと出かけてくるけど———…その後ろのナニ?」

 

取り敢えず留守番頼むという旨を伝えようとしたところで、ライラが何やら後ろに手を回しているのが気になった。

 

「い、いやぁ…?な、なんでもないよ、」

 

白々しい態度で口笛を吹こうと口を尖らせている。

 

…全くもって吹けてはいないのだが。

 

「あー……そう…?」

 

回り込もうが、覗き込もうが、絶対に見せないという決意が見える。

 

ここまでされては逆に何を隠しているか知りたくなってくるが…

 

無理にでも奪い取る…という行動までは流石にしない。

 

それに…まぁライラも"一応"乙女だ。

 

夜中にレックスに負けず劣らずのイビキを発しているが。

 

樹が起こさないと昼間まで寝続けるが。

 

部屋に一人で放っておくと、次の日にはゴミが部屋いっぱいになっているが。

 

"一応"乙女なのだ。

 

大事なことなのでもう一度言っておこう、"一応"乙女なのだ。

 

「…失礼なこと考えてるでしょ」

 

「"ソンナコトナイヨ"」

 

そんなやり取りをしている間にも、時間は経過し、太陽たちとの集合時間が迫る。

 

「あー…えっと、昼飯は冷蔵庫に入ってるから好きな時食べて。あと洗濯物畳んで部屋の前置いといたからしまってお————-」

 

「…お義母(おかあ)さん?」

 

どうやら太陽のお節介が自分に移ったらしい…恐るべし…などと思いながら、玄関の扉を開ける。

 

「それじゃ、行ってきます」

 

「うん、イッテラッシャイ!」

 

樹が行ったのを確認し、ふぅっと一息つくと背中側に回していた腕を前へと運ぶ。

 

すると、言い忘れたことがあったのか樹が玄関ドアを再度開けた。

 

「あ、あと遅くなるかもだから引き出しのオヤツ食べてて————」

 

「"ハヤクイケッ"!!」

 

「ヒッ……」

 

ライラの物凄い圧に追い出され、そのままバタンとドアを閉められた。

 

「……反抗期?」

 

一応自分の家なんだが…ということを思いつつも、ショッピングモールへの道を歩いて行くのだった。

 

 


 

「これも…違う、これも…あれも…しっくりこない…」

 

薄暗い異様な部屋の中で、彼女:コピーは紙粘土を捏ねてはつけ、カッターで削りを繰り返していた。

 

「あー…もうやめた」

 

ややあって、コピーは怪獣の人形を無造作に手で払った。

 

完成しかけていた人形は床で原型を留めぬままひしゃげている。

 

再びスランプに陥って早数週間。

 

何度か怪獣製作に挑戦してみるものの、どれもあと一味足りず、こうして日々悩まされている。

 

革新的な[何か]が足りず、こうして彼女をスランプへと陥れている。

 

「あら勿体無い♪」

 

落ち崩れた紙粘土を指で摘みながら、望美はコピーへと近づいた。

 

「それじゃあ〜♪コピーちゃんもそろそろ"本格的"に、外デビューしちゃいましょうか♪」

 

「…前にも出たことあっただろ」

 

いつの間にか背後で話を聞いていたファージが望美へ口出す。

 

「ノンノン、前のとは違いますよ〜♪」

 

そうケラケラと笑うと、望美は飛び跳ねるようにコピーへと顔を近づけた。

 

「これからコピーちゃんには部屋に籠もってばっかりじゃなくて、外へ出て色んな物を、人を感じてもらいま〜すっ★」

 

「え?ええええええええええええええええええっ!?む、無理ですよー…ふぁ、ふぁーじしゃん〜」

 

望美の提案にコピーは弱音を吐き、ファージへと助けを求める。

 

「……それで解決できるんだろうな?」

 

「はい♪私が責任をもって♪ちょうどクラスの子にショッピングに誘われたので〜コピーちゃんも一緒に連れてって良いですか?練習ということで♪」

 

「…お前の好きにしろ。…俺は第三次実験の準備を進める」

 

「そ、そんなぁ〜…」

 

はわわと口をパクパクさせ逃げ惑うコピーのフードを掴むと、そのまま部屋を出た。

 

「はーい♪好きにさせてもらいます♪それじゃあショッピングへ〜しゅっぱーつ★」

 

「ひいぃぃぃィィッ!!」

 

 

 

 


 

今度こそ樹が出て行ったのを確認し、ライラは卓上に拾ってきた小さな怪獣?を置いた。

 

「うーん……キミは…一体何者…?どこからきたの?」

 

駄菓子屋のおばあちゃんにオマケで貰った棒付きキャンディを口に入れ、怪獣をツンツンとつついてみる。

 

「…泥はだいぶん落ちたけど…コレ…錆…なのかな…」

 

先ほど浴室でシャンプーやボディソープを使用し、なんとなく汚れを落とそうと試みたのだが…結果はあまり芳しくなかった。

 

泥を被った部分は随分とマシにはなったものの、怪獣の身体には未だ錆のような汚れが残る。

 

「元気…ないね…」

 

遭遇した時からすでに衰弱しきっており、今もそれは変わらないようだ。

 

「これ、食べる?」

 

と、冷蔵庫に入っていた塩焼きそばを箸で摘んで食べさせようとするが、反応はない。

 

「…食べないかー…」

 

椅子の背もたれにもたれ掛け、万全尽きたというようにライラは伸びる。

 

…そーえば、怪獣って人の情動と結びつきが強いと聞いたことがある。

 

樹や太陽たちと触れ合わせればもしかして———-

 

新たな妙案を思いつき、飴をガリっと奥歯で噛んだ。

 

 

 

「——………」

 

その一瞬。

 

謎の小さな怪獣が、棒つきキャンディに反応したように見えたのは…気のせいだろうか。

 

 


 

「…話を纏めるぞ」

 

キヨシ台高校2階のコンピュータ室で、ナイト、ボラー、レックスは集まり情報を整理していた。

 

「レックス、貴様記憶が戻ったのか」

 

「んまぁ…一部だけどな。新世紀中学生としての記憶…つーより、フジヨキ台の【ガウマ】としての記憶を思い出したって感じだ。

…だからまだお前らの言う[ぐりっどまん…?]に関してはわからないのが俺の現状だな」

 

「お前せっかく全部思い出せそうだったのに勿体無ぇなぁ」

 

と、レックスのことをボラーは揶揄う。

 

「…いいんだよ、俺は…これで」

 

「ほーん…」

 

あの記憶世界で選んだ選択に、レックスは後悔はない。

 

そう思わせるように、口端は上がっていた。

 

「…次に、古澤響子が提供した情報だ」

 

ゴウ・ムネモシュネ戦の後、響子は自身の体験した奇妙な出来事について、遂に話した。

 

「死んだ人間が甦った…ねぇ…そんなこと有り得んのかよ」

 

怪獣により死んだはずの親族が甦り、さらには人格まで変わっていたということを響子は語った。

 

信じてもらえないことを恐れていた響子だったが、彼女の話を一同は真剣に聞き入り、誰も彼女を笑うことはなかった。

 

これでようやく彼女の荷も軽くなることだろう。

 

「でも…響子の話じゃ見た目は一緒でも中身は違うんだろ?どーなってんだろうな…」

 

「考えられる可能性としては…戦闘後に射出される、あのフィクサービームのような"謎の光"の効力が【修正】ではなく…【"再構築"】である線だな」

 

「…再構築…?」

 

「怪獣によって死亡—-すなわちロストした生命体は、外観の情報はそのまま、だが中身は全く新しいものへと作り変えられるということだ。」

 

「でもよー…それなんの意味あるんだよ?そんなことしなくても新じょ——-ツツジ台の神様みてぇに存在まるごと消して、「はい終了」の方が良くねぇか?わざわざその【再構築】をやるメリットってなんだ…?」

 

この世界には、未だ数多の謎が残る。

 

だがここに来てようやく、ピースが揃いつつあった。

 

「あーあと、キャリバーたちと接触した」

 

…接触というか…襲われたと言うべきか怪しいところではあるがまぁ嘘は言っていない。

 

「そんで…『魔王の影に気をつけろ』だとよ。…これどう思う」  

 

「…魔王……」

 

この現代社会ではあまり聞き馴染みのない言葉に、レックスは何度か反芻する。

 

「…魔王…カーンデジファー…か」

 

「カーン…デジファー…?」

 

「あぁ…昔…グリッドマンとバトった「伝説の悪魔」だよ」

 

 

——-我が名はカーンデジファー。次元を超えたすべての世界を支配する魔王である——-

 

 

…二代目から話を聞いたことがある。

 

ハイパーワールドの次元犯罪者—カーンデジファー。

 

かつて、ハイパーエージェントからの逃走の果てに地球に侵入し、"一人の少年"を悪の道へと誘い込み、現実社会をも支配しようとした者だ。

 

グリッドマンと3人の少年少女たちの活躍により、消滅したとの話だが…

 

「だけど…今さらなんでそんな奴が…」

 

「キャリバーがどういう意図で言ったかはわからんが…これで黒幕が読めてきやがっ————」

 

結論を導き出そうとしたところで、ボラーの携帯から着信音が鳴り響く。

 

「んだよ…こんなときに…って…?!お前なんで俺の番号知ってんの?!」

 

電話の相手にボラーはキレ気味に声を荒げる。

 

「は…?ちょ、ちょっと待て、お、おい聞いてんのか———チッ切りやがった」

 

悪態吐きながらボラーは、なんとも微妙な顔つきで、二人の方へ向いてきた。

 

「ハァ…噂をすりゃあ…愉快な怪獣さんたちからデートのお誘いだ」

 

しばし顔を見合わせ、無言の時が過ぎた後、ナイトとレックスの困惑した声が重なった。

 

「「"あ"?」」





あとがき

前回からやっと本編進めることができました

今までの話は言わば前座にすぎないのです٩( ᐛ )و(キャラの方針とか)

ここから物語は加速していく!…予定なので今後ともよしなに()
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