SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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二週間遅れての投稿なので実質初投稿です()

今回…最初に言っとくと、長いです。

だけど結構、[コピーにとって大事な回]になると思いますので覚悟してくださ∩^ω^∩


第39回 逢・着

 

「待たせたね諸君。」

 

隣町のショッピングモールの水着コーナー。

 

一年E組男子グループは何がどう転んでこうなったのか、水着ファッションショーを開始していた。

 

「これが…俺の勝負水着でいッ!」

 

フィッティングルームのカーテンが勢いよくガラッと開かれ、金髪の西野の水着がお披露目される。

 

「あははははっ!お前っそれ!あははは!」

 

彼の着用した際どい水着姿にドワッと、男子組の笑いが引き起こる。

 

もはやTバックとも言えないその姿は女子陣には到底お出しできないだろう。

 

「…もうそれほぼ見えちゃってんのよ」

 

樹は冷静な面持ちでツッコミむも、だんだん笑いが込み上げてくる。

 

「…セクシー西野ですまない()」

 

「ブハァッ!?」

 

西野の追撃が樹にクリティカルを出し、思わず吹き出す。

 

「は、腹痛い…」

 

先程からの男子ノリの猛攻に、笑い過ぎて腹が捩れるようだ。

 

 

「さて続きましては…野球部…塚野ォン!!」

 

「ブゥンッ!!」

 

今まで疎遠だった世界だが、案外悪いもんじゃないと思えてくる。

 

「いいぞーもっとやれー!!」

 

男子組はさらに盛り上がり、それにつられて、樹も声を張る。

 

「……おオ……」

 

その様子の樹に、隣の男子は目を丸め、声を漏らす。

 

「……なに?」

 

—しまった—ついその場のノリで盛り上がり過ぎてしまった—…絶対調子乗ってると思われる…

 

そんな被害妄想をしていたが、周りの男子の声は温かいものであった。

 

「いや…なんか新条ってさ…ノリ良いんだなって…意外だった」

 

「ほんとそれ!いつも目つきめっっっちゃ悪いし、謎に話しかけるなオーラ出してたからさー…」

 

「…え、別に出してた覚えはな————-あるわ」

 

寧ろ身に覚えしかなく、非常に申し訳ない。

 

 

「そーえば…ねぇ、LINE交換しよ?」

 

「あ、俺も俺も!」

 

と、今日一日で男子全員とLINEを交換してしまった。

 

「夏休み中どっか行こうぜ!」

 

「せっかくやから遠出しようや」

 

「ボーリングとか…カラオケとかも…ええな!」

 

初めて話す奴らばかりだったが、どいつもこいつもフレンドリーな奴らばかりだ。

 

「…ッフ」

 

樹の顔には、不思議と笑みが溢れた。

 

なんだか、自身の悩んでいたことが妙にちっぽけに思えてきて。

 

こんなことで良かったんだと、気付かされて。

 

「な?来てよかっただろ?」

 

と、さりげなく背後から声を掛けてくる太陽。

 

「…まぁ……悪くは…ないかな」

 

そうして樹は照れた笑みを返すのだった。

 


 

「…げぇ…あれ…male組じゃね」

 

遠方に樹たち男子組を見つけ、こちらもショッピングモールに来ていた響子の友人Aの風間は顔を顰める。

 

「ホントだ…って、何でわざわざ男子組のことmale組ってカッコつけちゃってんの?男子中学生?」

 

風間の言葉に、こちらも同じく響子の友人Bである花子は気怠げにツッコミを入れた。

 

「……男子は良いよねー…みんな「仲良し!!」って感じで壁なんてなさそうじゃん…それに対して私ら女子は…」

 

「…そこは「Female」って言わんのかい…

ま、そだねぇ…女子は…闇…深いからねぇ…」

 

うんうんと頷き合う二人を他所に、響子はキョトンとした顔をする。

 

「…そう?」

 

「いやキョッピーは学級長だからそれなりにみんなとコミュ取れてるかもしんないけどさ…やっぱうちらはそうはいかないのよね…」

 

「ねー…みんな顔には出さないけど裏の顔っつーものがあるんだよぉ…」

 

「そうそう…問川とか、稲本とかねー…でも…私が特にヤバそうだと思うのは————-」

 

 

 

「「小鳥遊さん」」

 

 

二人の声が重なる。

 

「「だよねー…」」

 

と、意見がガッチした二人は腕を組み、頷き合う。

 

「え…?望美ちゃんが?」

 

その空気にまた1人、キョトンとした表情で響子は首を傾げる。

 

樹の隣の席の女の子—小鳥遊 望美。

 

クラスでもかなりの人気者だ。

 

転校そうそうにクラスメイトと打ち解け、今ではカースト上位の娘…と響子は認識している。

 

もちろん何度も話したこと、遊びに行ったこともあるし、クラスを纏める際には何度も助けてもらった仲だ。

 

友達と言っても差し支えないだろう。

 

「そう、その望美ちゃん」

 

だが、二人はどうやら望美が苦手のようだった。

 

「なんかさぁ…いつもニコニコして可愛いし、美人だし、頭良いし、優しいしで…これと言って悪いとこはないんだけど…その…」

 

言いづらそうに顔を仰ぎながら、伸びる。

 

「…完璧すぎって言うか…さ?どこか全てのことを見通してる…みたいな…不気味さがあるんだよね…」

 

妬み、僻み。そんなモノではない、根源的なものからくる恐怖というべきか。

 

底の見えない恐怖。あの笑顔の先には何があるのか。

 

皆、言葉には出さないが、内心そんな想いを秘め、日々を送っているようだ。

 

「…でも…私は望美ちゃんは良い子だと思うよ?」

 

その話を聞いて尚、響子は本心から朗らかに笑みを返した。

 

「うん…キョッピーはもうちょっとヒトを疑おっか。」

 

優しい瞳の二人にそう諭され、頭を撫でられた。

 


 

「は〜い★到着しました!ショッピングモール〜♪」

 

「……帰りたい…」

 

意気揚々、意気消沈と、互いに真逆の反応を望美とコピーはモールの前で体現していた。

 

キヨシ台から電車で20分ほどの大規模な商業施設。

 

食料品、生活雑貨、文房具、ゲームセンター、映画館、ホビーショップ、フードコート、レストラン街、カフェ…等。

 

ここに来れば大体のものは揃う、というぐらいに様々な店舗が並び立つ。

 

それ故、毎日数多くもの人間が利用するため、様々な情動との接触、コピーの外慣らしにはうってつけの場所と考えた訳だ。

 

「今日のところの目標は〜…ドゥルルルルルッ!!デェンッ!三時間散策すること〜♪」

 

「え…マジで言ってます?いや無理無理絶対無理です。」

 

「アハハハ〜♪大丈夫ですって♪誰もコピーちゃんを取って食おうなんて思ってませんよ〜♪」

 

「で、でも〜……」

 

 

 

「ん〜…じゃあ〜♪コレ、あげちゃいます★」

 

望美はポケットの中から何やら歪んだ魂のようなものをコピーに渡す。

 

「これ…は、…バロック、パール…?」

 

それは普段コピーが怪獣を創る際、核—言わば怪獣の心臓に使用する不思議な代物だ。

 

「はい♪まぁ…何かあった時ようのお守りに♪」

 

そう言って、またいつものニコニコとした笑顔で望美は笑う。

 

望美はこんなものを何故—————その意図を探ろうとしたが、コピーはそれ以上、望美に声をかけるのを躊躇った。

 

「…ということで行ってらっしゃーいっ★」

 

ドーンとコピーの背中を押し、望美は待ち合わせをしていたクラスメイトたちと歩いて行ってしまった。

 

 

「のっ…望美さんン…」

 

あっという間に一人にされたコピーは、今まで映像でしか見てこなかった人の群れにビビりつつも、一歩を踏み出した。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「—でさ〜」「マジ?!それ!」「それは気持ちえぇな!」「えぐぅ!」………

 

様々な言葉が行き交い、情報が錯綜する。

 

「………ッ」

 

その言葉の全てが、自身に向けられているかのような不快感。

 

自身のことを疎み、嘆くかのようにどんどん耳に響いていく。

 

初めて受信する、その感情に、コピーは嫌悪の感情を覚えた。

 

「…………」

 

そうしてしばらく散策した後、コピーは静かそうな場所へと辿り着いた。

 

「……ここにいよ…」

 

吸い込まれるように足が「本屋」と書かれた場所へと向かっていった。

 


 

「安心せい!履いておりますヨ!!」

 

シッティングルームから出てきた男子の穴だらけの水着姿に、どわっと笑いが起こる。

 

「うん。さっきと絵面変わってないんだけど()」

 

ショッピングモールに来て、早もう2時間経過したが、全くもって男子組の買い物は終わっていなかった。

 

「……まだ結構かかりそうだな」

 

樹や一部の男子は既に自身の水着を調達することが出来たのだが…未だに大半の男子は決めれていなかった。

 

さすがに笑い疲れてきて、そろそろ休憩したいな…と顔が引きつってくる。

 

「…どっか寄りたいとこある?」

 

そんな表情の樹を察してか、太陽が話しかける。

 

「…だったら俺ちょっと本屋行きたいんだけど…」

 

「あー……オケ、俺も他の店みたいから、終わったらまた合流って流れで」

 

「りょ。」

 

と、太陽の天の一声によって、水着を買い終えた組は各々自由散策となった。

 

 

 

 

「うーし」

 

ということで樹は宣言通り、本屋へと足を踏み入れた。

 

入り口付近の『あの◯◯先生の話題作!』や『これで君も失敗しない』などと書かれた自己啓発本、ましてやファッション誌などには目もくれず、奥地へと向かう。

 

「こんなへん…のは…ず」

 

と、特撮界隈の雑誌が並ぶコーナーで足を止めた。

 

今回の樹のお目当ては、今月発売の[宇宙船]だ。

 

特撮ファンの我々が大変お世話になっているSF・特撮ビジュアルマガジン—[宇宙船]。

 

某仮面のバイク乗りやカラフルな特殊部隊など、様々なヒーローの特写、最新情報、キャストからの裏話などなど…ファンにとってはたまらない雑誌である。

 

そして、今月の目玉はなんと言っても《ウルトラ怪獣大特集》だ。

 

今までのTVシリーズ、OVA、映像特典、ウルサマ等に登場した全ての怪獣の情報が所狭しと載っている…とのことだ(流石に神すぎる)

 

勿論、樹はすでに予約済みであり、後は届くのを待つのみなのだが…

 

人間というのは欲深いもの、ましてや今回は神のような内容だ。

 

是非とも保存用にもう一冊欲しい—と、樹の本能が言うことを聞かないので、仕方なく、"仕方なく"買いに来た訳だ。

 

「…とか言ってる間に…」

 

…他人から見たらおそらく気色の悪い自語りを終え、ついにお目当ての品を発見した。

 

しかもラスト一冊。

 

ラッキーと言わんばかりに、意気揚々に雑誌へと手を伸ばした、そのとき————————

 

 

「「あッ」」

 

視界の端から、もう一つの細い華奢な手が現れ、樹の手と重なった。

 

「「…すっ、すいません…」」

 

と、またもや同じタイミングで言葉を発し、両者は雑誌から手を離した。

 

「「……」」

 

互いに身を引き、お互いの姿を見定める。

 

女子高生…だろうか?。恐らく同い年くらい…だろう。

 

制服の上にはパーカーを羽織っている。

 

顔は…うん。パーカーのフードを深く被り過ぎててよくわからん。

 

フードからチラリと見える髪は漆黒。また、奥にはレンズの光の反射が見えるため眼鏡をかけているようだ。

 

…というか…そんな全容に目が行く前に…どうしても彼女に言いたいことがある…それは…

 

 

 

「でっっっっか」

 

 

ナニがとは言わんがデカい。この言葉で察してくれ(後生の頼み)

 

オブラートに言うとモデル体型というやつだろう…主に上半身が。

 

それと…なんだその制服の着方…痴女かな?自身の魅力を充分に理解して、こちらを挑発するかのような姿だ。

 

制服の上から赤紫のパーカーを重ね着し、それを胸元まで開け、さらにはタイツって…独特すぎだろ、流石にキヨシ台高校にも居ないよ()

 

「…で……?」

 

樹の言葉の意図が分からず、黒髪の少女は首を傾げる。

 

「あ、あぁ…っと気にしないで」

 

初対面の相手に、いきなりセクハラまがいのことを言ってしまったことを樹は内心、深く反省する。

 

ホントゴメンナサイ。…でも健全な格好には見えないそんな服装をしている君にも問題が(((殴

 

 

「え……と……ど、…う、ぞ…」

 

「いやいや…こちらこそどうぞどうぞ…」

 

譲り合いをしてはお互いに「じゃあ…」と手を伸ばし、また手が重なってを繰り返し続ける。

 

「「…すっ…すみません…」」

 

互いに譲ろうとする意思はあるが、それとは別に互いに、譲れない意思というこもあるためこうして状況は拮抗している。

 

だが、彼女からは確かに、怪獣への情熱が見て取れる。

 

「…怪獣…好きなの?」

 

「………うん」

 

 

そんな彼女に、気づけば声を掛けていた——————-

 

 

⬛︎ ⬛︎ ⬛︎

 

 

「-—あれ…新条じゃない?」

 

一通り買い物を終え『STARBOWS COFFEE』にて響子たち3人組はフラペりながら駄弁っていた。

 

「んー…どこ?」

 

「ほらほら、あそこの奥らへん」

 

花子が指差した位置へと、響子と風間は目線を向けた。

 

 

 

 

「—これはどくろ怪獣レッドキング。…赤くないけど"レッド"キングね」

 

「……とうもろ…こし…?」

 

「……見えるけどさ…」

 

「でも…私、この子…ちょっと…好き、かも」

 

「…わかる!?特にこの三代目のスーツが特にたまんないんだよね〜

あ、あとちゃんと赤いやつもいるんだよ!ほらこのパワードレッドキングとか、最近だとスフィアレッドキング…それに黒い———」

 

 

 

 

「わーほんとだー…なんか盛り上がってるー……ううん?新条くんの隣にいるフードの子……ナニがとは言わないけど…その——」

 

寸止めで風間の口を花子の手が塞ぐ。

 

「待て。それ以上はいけない」

 

「で、でも…」

 

「「………」」

 

しばらく無言の間を開け、後に—

 

 

「「…でっっっっか。」」

 

 

と、奇しくも何処かの誰かさんと同じ言葉が出た。

 

「ってか、あの女誰よ。新条の彼女?ねぇ彼女?」

 

「えー…うーん…彼女…というか、私にはなんか親戚みたくに見えるけど…」

 

「あー…言われてみれば…どことなく…オーラ?雰囲気っつーのが似てる気ぃするね」

 

花子と風間はフラペチーノ片手に、遠目から二人の動向を探り盛り上がる。

 

そんな2人の後ろで、響子はジィッと深妙な面持ちで樹の姿を目で追っていた。

 

「………ンン……」

 

「ど、どしたキョッピー?だいじょぶ?華の乙女がしちゃいけない表情になっちゃってるけど…そこら辺の草でも食べた?」

 

「いやヤギか……ほら、きょうこ反応に困ってん…じゃん」

 

先程までの様子と明らかに違う様子の彼女に、二人は必死に声をかける。

 

「アァ、ウン、ダイジョブダイジョブ、アハハハ(^_^)」

 

「「……」」

 

タダならぬ雰囲気の響子を見て、二人の思考はシンクロレベルに達し、呟いた。

 

((…これ絶対ヤバいときの響子だ))

 

長年友達をやっているからこその、察知。

 

普段は人柄もよく温厚で、誰にでも天使のように優しく、それでいてどこか抜けていて、表裏がない彼女だがそれ故に何かあるとすぐに顔に出やすい。

 

「アハ、アハハハハハ………。」

 

まるで、心ここに在らずといった様子で笑い続ける。

 

「キョッピー!おーい、聞こえてますかー!」

 

風間がブンブンと響子を揺するが、効果はいまいちのようだ。

 

「アハ、ッハハハッハハ———ぷ、ぷしゅ〜」

 

やがて空気が抜けたように響子はその場へ萎んだ風船のように倒れ込んだ。

 

「「きょ、きょうこ〜ッ!?!?」」

 

 

倒れ込んで、朦朧とする意識の中で、なんとも言い得ぬ感情が胸がいっぱいになった。 

 

こんな気持ちになるのは初めてだから。

 

これがなんという感情なのか、私にはわからない。

 

だけど…楽しそうに微笑む樹と、名前すらも知らぬ黒髪の少女の姿を見ていると、胸の奥がズキンと痛んだのは…なんでだろう————-

 

 

 

⬛︎
 

 

 

「——-ヤメタランスは特にその光線が…」

 

どのくらい時間が経ったのだろうか。

 

気づけば、名も知らない黒髪の少女と普通に談笑していた。  

 

「ウッワアァッ〜!良いね良いね〜!それで、それで?!」

 

ウルトラ怪獣に関しては初耳なのか、樹の語りを興味深そうに目を輝かせながら少女は聞いてくれた。

 

—————————————————

 

ついつい話に熱中しすぎてスマホの通知に気づいたのは、ここから更に数十分後だった。

 

「…!うっわ…やべぇ」

 

ふと、ポケットの振動がやけに多いなと感じ、スマホを開くと鬼のスタ連が溜まっていた。

 

「?どうしたの?もっと怪獣のこと教えて?」

 

「ごめん…俺、そろそろ行かないと」

 

「…そっ、か…」

 

樹がそう伝えると、彼女はショボリとした表情をし、静かに雑誌のページを閉じた。

 

「……」

 

本当はまだ語っていたかったが、流石にここまで通知が来ているので無視するという選択肢はハナからない。

 

…それに…怪獣大百科まだ全然ページ進んでないもん,3時間ぐらいすぎてまだ帰りマンのページなんだもん()

 

このまま語ってたら真面目に3日ぐらいかかりそう(小並感)

 

「…そう、だよね……」

 

…えぇ…やめて…その表情。その泣く寸前の小動物みたいな顔…

 

…なんかこう…こっちの母性本能?に直でクるものがあるから…!?

 

しばらく思考を巡らせた後、樹は『宇宙船』を持って走っていく。

 

「……ンン……あの…ちょ、ちょっとだけ待ってて…!」

 

数分後⭐︎

 

 

「はい、これ」

 

「……え…?」

 

本屋のすぐそばの椅子に腰掛けていた黒髪の少女に、樹は包装された雑誌を手渡した。

 

「その本…君にあげるよ」

 

「え、え…で、も…」

 

その樹のいきなりの行動に、少女は戸惑いの目線を向ける。

 

「いいよ、本当に。なんて言うか…俺もこんなに怪獣のことで盛り上がれてスッゲェ楽しかったから、それはお礼ってことで」

 

ここまで素直になれたのは、これが初めてかもしれない。

 

純粋な気持ちで、ありのままの自分を久しぶりに出せたのは。

 

「…そ、それじゃ」

 

だんだんと先程の自分の発言がなんだかとてもクサイものだったと自覚し始めたので、樹はそそくさとその場を去った。

 

…そーえば、名前くらい聞けば良かったな…と思うが、今更戻ったらそれはそれでキモキモのキモだ…そう自己完結し、男子組の元へとかけて行った———

 

 

「おっせぇよ、もうみんな待ってるぞー」

 

太陽は本屋の前で待っていてくれていたらしく、到着そうそう愚痴を言われた。

 

「いやぁ…すまんすまん」

 

こうして水着ショッピングは終了し、樹たちは海水浴への準備を進めるのだった————

 

 

♦︎ ♦︎ ♦︎

 

 

自身に本をくれた、名さえも知らぬライムグリーンの髪色の少年と、彼を待っていたオレンジ髪の少年の会話に、彼の名前らしき発言が聞こえた。

 

「…いつ…き…くん……か」

 

離れていく樹の背中を見つめ、コピーは彼の名前を反芻する。

 

「…」

 

正直言って、彼の行動は理解できない。

 

見ず知らずの自分に話し掛けるのに飽き足らず、手元にある雑誌を自身に送るだなんて、とんだお人好しだ。

 

今までこの世界の人間に対して、何も思うことはなかった。

 

だってそうでしょ?この世界の人間は死んでもまた再構築されるんだから、いちいち個人の情報に関してとかどうでも良い。

 

…でも、彼に関しては少し…ほんの少しの微量なる興味が湧いた。

 

彼の怪獣への情熱は、自身と通ずるものがある。

 

彼からは怪獣の膨大な知識が見受けられた。

 

もしかしたら、彼はこちら側にくるべき人材なのかもしれない。

 

「…また、会えると良いな」

 

そう呟き、彼女は微笑を浮かべた。

 

望美との目標時間の三時間を迎え、コピーはショッピングモールを出てあらかじめ決めておいた、彼女との集合場所へと向かう。

 

『いつき』と呼ばれた少年がくれた雑誌を、両手で大事に抱えながら。

 

 

 

「そこのおねえさんー」

 

と、集合場所の手前にある路地から大学生ぐらいの青年たちが、コピーを呼び止めた。

 

「ちょっと俺たちと少し遊んでいこーよー」

 

飲み会でもしていたのか、口から酒くさい匂いがコピーを不快にさせる。

 

「っシシ…イロイロと教えてあげるからさ〜っ!」

 

酔っ払い特有の高揚した態度で、コピーの肩に腕を回してくる。

 

「…え…っと……お断…り…しま———-」

 

「なるべく穏便に♪」と表立っての行動は極力避けるよう言われているため、相手の気に障らない態度で腕を退け、返す。

 

「良いじゃんちょっとだけだからさ〜!ホラ、そのフード取っちまえ…ヨッ!!」

 

その対応に怯むことなく、寧ろしつこく揶揄うように絡み、コピーのフードを無理矢理引き上げた。

 

「うっはぁ…やっぱチョー当たりじゃん」

 

フードを取られ、彼女の黒髪と赤いメガネ姿が露見する。

 

男たちは舐め回すような目でコピーの姿を臨み、その顔がゲスい顔へと変わっていく。

 

「やめ…て…くだ…さ…い」

 

なるべく表情を変えず、嫌悪の眼差しを向けるが、男たちはさらにコピーの腕を引っ張り、着いてこさせようとする。

 

「へっ…女が男に力で勝てる訳ないだろ?オラァッ!さっさとついて来い!」

 

「…、あっ…!」

 

腕を無理矢理掴まれた反動で、両手に持っていた『宇宙船』を落としてしまう。

 

「んン…?なんか落としたぞ?…なんだこれ、うちゅう…せん…?」

 

「…さ、…触らない…で……くださ————」

 

「ウッワァ……見ろよコレウルトラマンの本じゃん!年頃の女の子がこんなん読んでんだぁ…ヤバァ…」

 

雑誌を取り返そうと向かってくるコピーを嘲笑い、若者たちの挑発するような口調はさらに加速していく。

 

「懐すぎぃ!バルタン星人だっけ、フォッフォッフォッ!」

 

「アハハハハハッ!!おまっ!上手すぎィィッ!」

 

「………」

 

ドクン、ドクンと胸が、締め付けられるように痛い。

 

…なニ?コ、レ

 

ナんダこの感情、情動は。

 

今までに感じたことのない、沸き立つような厭忌。

 

それはグリッドナイトに怪獣が敗れた際の憎悪とも違う、黒い感情。

 

何故彼らのように他人を、弱者を、さも当然かのように簡単に痛ぶり、自身の慢性を満たすような存在があるのか。

 

お前たちは私たちに創られたただの一個体にすぎないというのに。

 

 

「…気に入らない」

 

気に入らない気に入らない気に入らない気にいらない気に入らない気にいらない気に入らない気に入らない気に入らない気にいらない気に入らない気にいらない気に入らない気に入らない気に入らない気にいらない気に入らない気にいらない気に入らない気に入らない気に入らない気にいらない気に入らない気にいらない気に入らない気に入らない気に入らない気にいらない気に入らない気にいらない気に入らない気に入らない気に入らない気にいらない気に入らない気にいらない消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ 消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ ———-

 

コピーの瞳にはもう、青年たちの姿はただの針金の入った石粉粘土(ファンド)にしか見えなかった。

 

こんなもの怪獣を創るのと同じ。

 

気に入らなければ消してしまえば良い—

 

「…チッ…なんだその顔」

 

青年たちに言われ、コピーはやっと今自分が笑みを浮かべているのに気づいた。

 

「気に入らねぇガキ……こんなもん…!!」

 

そのコピーの態度が彼らの気に障り、青年たちは『宇宙船』を地面に叩きつけ、力一杯に踏みつける。

 

「はぁ…はぁ…ふぅい〜…スッキリしたぜ」

 

表紙はグチャグチャに破け、足跡がいっぱいに付けられた『宇宙船』を満足げに青年たちはコピーがさも苦情の表情をしているだろうなと彼女の顔を覗き見た。

 

その瞬間————

 

 

「…最悪」

 

 

コピーの中で何かが、目覚めた。

 

 

[———!!!!!!!!]

 

 

望美にお守りにと貰っていたバロックパールが、コピーの歪んだ情動に反応し、怪獣の姿へと変貌した———-

 

 

ッヒィ…!?なんだコイ———」

 

その姿を見て悲鳴をあげるが、その途中で声は途切れ、代わりに血潮が周りを満たす。

 

「オ、オイ…どうしたんだよッ!何がどう———」

 

ある者は胴体を、膝を、ある者は首からナニかに切り裂かれ、命がまた一つ、また一つと消えていく。

 

「やめろ…ヤメ、ロ……命だけは………ヤメ———————」

 

最後に残った青年はその顔を絶望へと染め上げ、命乞いを繰り返す。

 

 

[———!!!!!!!!]

 

 

「ヤメ、ヤメロォォォオオッッ————————」

 

だが、命乞い虚しく、彼の命もまた、簡単に消えていった。

 

頭上に羽ばたいた怪獣から滴り落ちた血が、雨のようにコピーへと降り注ぐ。

 

「…ッハ…アハハハハハッ!アハハハハハハハハハッ!」

 

血の気が引いた彼らの遺体を一瞥し、コピーは身体全体で大きく笑い続ける。

 

 

「あはははッ♪…どーやらようやく…開花したみたいですね〜♪もう一人の神さまが♪」

 

迎えに来た望美はその光景にも余裕の笑みを浮かべ、一人呟いた。

 

——これでようやく、大事なピースが揃った。

 

———-私たちの望みを叶えるための、要の…ね。

 

 

コピーの情動から生まれた怪獣は降り立つと、彼女に頬擦りをするように頭を近づける。

 

「そうだ!キミの名前決めないと…えと…」

 

今までの怪獣とは一味違う彼を、優しく撫でる。

 

「どーせなら格好いいのが良いよね〜……あ、そうだ…キミの名前は……」

 

メタリックパープルに輝く機械的な翼竜のような見た目——近しいもので言えばワイバーンに似た姿をしている。

 

その姿は、かつてダイナゼノンと共に世界を救った黄金の竜と酷似していた。

 

そんな怪獣に、彼女は愛情のようなものを注ぎ、その名前を読んだ。

 

「…シャドーバーンだ」




あとがき

シャドーバーンって何?、って方はネットで調べてみよう!(多分1番上に出てくるよ^ - ^)

ってかシャドーバーンの容姿説明、1話前にも使って————

今回の話…前半と後半で温度差エグくて風邪引きました()対戦ありがとうございました()

…ということで…次回の投稿まで、adieu!!
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