SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish 作:ゴリニティ75
— グリッドマンと共に戦う4人の仲間─新世紀中学生
—— 猫をおいかけたり、スーパーで買物をしたり、みんなで鍋をつつく毎日
———これは、新世紀中学生4人の知られざる日常
— 新世紀中学生の面々が紡ぐ個性豊かな日常を記した、温かな日記の世界があった
『……グリッドナイトが、消えた……?』
誰かの呟きが、戦場の空気を凍らせた。
一同の視線が、一斉に空へと向かう──
そこにいたはずの紫の巨人、グリッドナイトの姿は、まるで最初から存在しなかったかのように掻き消えていた。
爆風と土煙が渦巻く戦場。
その激しさの中で起きた“消失”は、ほんの一瞬の出来事だった。
空へと跳躍し、攻撃の構えを見せたかと思えば──
彼は、ぴたりと動きを止め、そのままピクセル状に崩れ、忽然と姿を消した。
まるで、彼の時間のみが一瞬だけ“静止”したかのような異様な光景だった。
『また……前みたいな…怪獣の能力なのか……?』
太陽の脳裏に、あの日の記憶がよぎる。
──“幻憶奇蹄怪獣”ゴウ・ムネモシュネ。
あらゆる存在を記憶の迷宮に引きずり込む能力を持った、あの獏のような異形の怪獣。
あの怪獣と同じような…何か特殊な能力でグリッドナイトが消えたのでは────
『……いや。あれは怪獣の能力じゃない。他の、外的要因だよ』
太陽の心の声を読んだように、ライラはその考えを否定する。
ダイナストライカーのインナースペースで、目を閉じ、周囲に意識を集中させる。
『──…』
彼女の耳に飛び込んできたのは、ノイズにまみれた音の奔流だった。
爆発の轟音。怪獣の咆哮。砕ける波音。崩れた建物。悲鳴、警報──
すべてが重なり合い、必要な“音”をかき消していた。
『ノイズが多すぎる……っ』
ライラが苦悶の表情を浮かべる。
『…ねぇ…あれっ…海の家が……!』
その異変にいち早く気づいたのは、響子だった。
高空を旋回していたダイナウイングの視界に、崩れかけた建物──海の家だ。
樹とナイトがアクセス・フラッシュを行うための、あの場所だ。
傾く屋根。崩れた壁。怪獣による爆風の影響か、すでに半壊状態だった。
『ライラ………樹は……ナイトさんは!?』
「……わかんない……いろんな音が混ざってて、うまく聞こえない……!」
太陽も、ライラの声にも、焦りが滲む。
爆発音、怪獣の咆哮、波の砕ける音、崩れた建物の軋み──
ありとあらゆる音が一斉に押し寄せ、彼女の“耳”をかき乱す。
あらゆる音に敏感な彼女ですら、判断できないほどの混線。
嫌な汗が、額を伝う。
『響子ッ! 急いで、樹のところ行ってやれ!』
攻撃を避けながら必死に叫んだのは、ダイナダイバーで怪獣を引きつけるレックスだった。
ゴウ・スカイラヴィーゼルの攻撃は、なおも鋭さを増している。
その声に、響子がハッとする。
「で、でも……!」
グリッドナイトが消えた今、怪獣の動きはむしろ“研ぎ澄まされている”ようにさえ感じる。
合体怪獣は手強い。
ダイナゼノンに合体しなければ、まともに相手すらできない。
そんな状況で、自分が離れてもいいのか──
しかし、今この場で自由に動けるのも、空を飛べるダイナウイング、それを操縦する彼女だけだ。
迷いの色が滲む響子に、太陽の声がまっすぐに届く。
『委員長っ! 俺たちなら大丈夫だから、行って!』
その言葉に、響子は目を見開く。
仲間たちの視線──そこには、不安でも諦めでもない、確かな信頼があった。
『……みんな、ありがとう。…すぐ戻るから!』
彼女の機体が旋回する。
風を裂き、きらめく翼をひるがえしながら、崩れかけた海の家へと飛び去っていく──。
『……っと、大見栄を張ったはいいものの……』
太陽がため息混じりに呟いた。
響子が飛び立った今、残された三人の戦力でこのゴウ・スカイラヴィーゼルを食い止めなければならない。
──圧倒的な戦力差。それでも逃げ場はない。
『ライラ、さっきのでっかくなってたやつ──また出来たりしない?』
太陽がわずかな希望を込めて尋ねる。
思い浮かべたのは、ゴウ・リアーゾル戦の時。
小さな怪獣が放った巨大化光線で、ダイナストライカーが一時的に巨大化し、突破口を開いたことがあった。
海側でゴウ・ソナーベルと戦っていた太陽からもその光景は印象に残っていた。
ダイナソルジャーやダイナダイバーも巨大化できたなら…戦力差も多少は埋まりそうなものだが…
そんな太陽の淡い期待に、ライラは困ったように肩をすくめ、水着のポケットをそっと覗き込んだ。
『うーん……ちょっと厳しい……カモ』
ポケットの中で、わずかに動いたのは──錆びた金属のような色味をした、手のひらにすっぽりと収まるサイズの小さな怪獣。
あの時──ピンチの最中に、一度だけ無理をして、巨大化光線を放ち、仲間たちを救ってくれた。
今も、その身体には疲労の色が濃い。
小さく鳴いて、頼りなく瞬くその目に、再び力を振り絞らせるのは、あまりにも酷だった。
ライラは小さく頭を下げ、ポケットの上からそっと手を添える。
『……なんとか、俺たちだけでやるしかねェ……!』
レックスがダイナコントローラーを握りしめ、歯を食いしばる。
敵は確かに強い。それでも──立ち止まるわけにはいかない。
『……いつキョウコが戻ってきてもいいように。アタシたちだけで合体して食い止めよう…!』
珍しく仕切るライラの声に、残る二人も無言で頷いた。
それぞれのコクピットで、拳を握る。思いはひとつ。
機体が光のラインに沿って動き出す。
ダイナソルジャーを中心に、車体を左右に分割したダイナストライカーが巨大な腕装甲となって両腕に装着。
ダイナダイバーは、バーストスマッシュモードの要領で脚部へと連結。
──そして、三機の力がひとつに重なる。
『『『ダイナソルジャー・ストライカー ダイバーコンバインッ!!!』』』
爆音のような衝撃とともに、砂浜に新たな巨体が現れる。
『……何気に、初めてやる合体だな……』
太陽がポツリと呟く。
胸の奥に緊張が渦巻く────
「…新条くん!」
響子は戸を押し開けると、息を整える間もなく中へと駆け込んだ。
薄暗い部屋の空気は、どこかもわっとしていて、肌にじっとりと汗が滲むような熱気がこもっている。
…部屋が…妙に暑い…ような…?
軽く息苦しさを覚えながら、部屋の中を見渡しすが、何処にも樹の姿がない。
そしてパソコンの画面には、グリッドナイトの姿も映っておらず、ただ黒く沈黙している。
「……ナイトさんも、いない……?」
響子は慎重に歩みを進め、カウンター奥のパソコンに手を伸ばす。
「──あつッ…!」
指先に伝わる異様な熱。
まるで何かが内部で焼き付いたような高温に、思わず手を引っ込める。
ファンの音は止まり、画面は真っ暗なまま微動だにしない。
完全にフリーズしてしまっているようだ。
「えっと……私に…何かできることは…」
響子は戸惑いながらも、周囲を見回す。
カウンターの裏に回り込み、膝をついてパソコンの下を覗き込んだり、接続されているコード類を確認したり、どこかに異常がないかと不慣れな手つきで探り始める。
けれど、見たところどこかが壊れているわけでも、配線が外れているわけでもなかった。
「…かくなる上は……」
ざわつく胸を押さえながら、響子は再び膝をつき、なんの躊躇もなくパソコンの電源コードに手をかける。
「…………えい」
一拍の沈黙。
「……そんなわけないかぁ…」
と、ため息を吐いた刹那────
「─────────ウワァ!?」
突如、パソコンの筐体から光の矢のような何かが勢いよく飛び出す。
「きゃっ!」
響子が身を引いたと同時に、樹は床に叩きつけられ、勢いのままゴロゴロと転がり──カウンターへと派手にぶつかり、ようやく止まった。
「…うゥゥ…」
呻きながら体を起こす彼の姿に、響子は思わず駆け寄った。
「新条くん?!…だ、大丈夫!?」
「いてて……って古澤さん?なんでここに…っていうか俺…戻ってきてる…?!」
「戦いの最中にグリッドナイトが消えちゃって…私…2人に何かあったのかって心配で…」
「と、とにかく…もう一度、アクセス…フラッシュを…」
まだ戦いは終わっていない。仲間が戦っている。早く戻らなくてはならない。
樹はパソコンの前に立ち、左腕をかざす。
しかし——画面は暗いまま、沈黙している。
「…ナイト…?」
その後ろで、響子がコンセントを何度か差し直すが、画面は黒いままだ。
「……もしかして」
何かに気づいたように小さくつぶやき、響子は室内を見渡す。
室内の妙な暑さの原因…それは先程まで稼働していた筈の空調機が停止していること。
続いてカウンター近くの冷蔵庫を開ける。
まだ冷気は残っているが、冷蔵庫内の灯りは消え、下の段の冷凍庫内の氷は薄っすらと溶け始めている。
「…やっぱり…」
「…どうかしたの?古澤さん」
「ナイトさんが画面に映らないの……怪獣のせいだと思う。ここら一帯の電気も電波も、遮断されちゃってるみたい……」
そう言いながら、スマホを取り出す。画面には「圏外」の表示。
「…え…」
グリッドナイトの突然の消失——
それは、怪獣の影響で起きた停電によって、空調が止まり、パソコンの冷却機能が限界を超えたことに端を発していた。
真夏の暑さに冷却が追いつかず、処理は破綻し、熱暴走によるエラーでリンクは途絶えた。
偶然がいくつも重なり、けれどそれは、避けがたい必然へと変わっていった。
落ちるべくして、グリッドナイトは“落ちた”のだ。
それが、敵の意図したものだったのか、それともただの運命の歪みだったのか——今の樹には、知る術もない。
「…ダメだ、ダメだよ…ナイト————」
けれど確かなのは、グリッドナイトはもういないということ。
そして、自分ひとりではどうすることもできないという現実。
「……俺は………俺1人じゃ…何も…」
今まで思ってもいなかった状況。
小さくつぶやいた声は、誰にも届かず、止まった空間に溶けていった。
[——!—;::/-:;!!!!!!]
雷鳴のような咆哮が、戦場に響き渡る。
ゴウ・スカイラヴィーゼル──空と地上を自在に飛び交う、合体怪獣。
その口から放たれる灼熱のレーザーが、空気を裂き、地を穿つ。
脚部のミサイルポッドが展開され、複数の追尾ミサイルが地形を縫うように迫る。
『くそっ、速い……!』
ダイナソルジャー ストライカーダイバーコンバインが爆煙の中で身を捩り、ギリギリで衝撃をいなす。
「こっちもただやられてるばかりじゃねぇぞ……!」
レックスがそう叫び、両腕の砲口からストライカーストームα、βを撃ち放つ。
閃光とともに砲撃が空を裂き、宙を舞うゴウ・スカイラヴィーゼルへと襲いかかる。
[——‘:;;;;……]
だが、命中しても手応えは薄い。機体は徐々に押され始めていた。
『……ッぐ……!』
直後、空中から降り注ぐリング状のエネルギー弾が着弾し、光と爆風が一帯を包み込む。
攻撃の手は止まらない。
かわしても、次の瞬間には別の角度から──
その精度と火力に、圧倒されるばかりだった。
『クソッ……!』
太陽は荒い息を吐きながら、腕で額の汗をぬぐう。
悔しさがこみ上げる。
…俺にもグリッドナイトのような”強さ”が、自分にもあれば…
……もっと絶対的な力があれば…こんな状況を変えられるかもしれないのに……!
心の中の悔しさ混じりの叫びが、ダイナコントローラーを握る力が強くする。
と、──その時、通信端末のモニターが点灯する。
「みんな! !大丈夫?!」
画面の向こうに、響子の顔が映る。
背後には、荒れた海の家。
どこか焦ったような声が響いた。
『なんとか……ってわけじゃないけどね』
攻撃をいなしつつ、ライラが答える。
乱れた髪をかき上げながらも、声はかろうじて落ち着いていた。
「で、そっちで何が起きてた?! ナイトの奴はどうなったんだ?!」
レックスの問いに、響子がわずかに言葉を詰まらせる。
そして、その背後からもう一人の姿が現れる。
「俺は……無事なんだけど……ナイトが……」
画面越しに現れた樹は、唇を引き結びながら短く語る。
「パソコンが…熱暴走を起こして電源が落ちちゃったみたいなんです。
怪獣の影響で停電して、冷却も止まってて……処理が追いつかなくなったの…かも?
それで…突然アクセスフラッシュが解けちゃったみたいで…」
その言葉に、太陽が沈んだ声を漏らす。
『……そんな……』
絞り出すような声が、戦場に漂う潮風に溶ける。
グリッドナイトがいない──その事実が、彼らの中で何よりも重くのしかかる。
今まで仲間として共に戦ってきたグリッドナイト。
その存在に、知らず知らずの内に頼っていたのだと全員が気づかされた瞬間だった。
『…一度、引くって選択肢も……あるよ?』
ライラの声が通信越しに届く。
見た目は一番幼いのにも関わらず、この場の誰よりも冷静さを失わず現状を分析しての提案。
だが、それも妥当な案だ。
このまま戦いを続けるには正直、分が悪すぎるが悪すぎる。
ゴウ・スカイラヴィーゼル──この数分戦っただけでも分かる。
今の自分たちでは…例え響子が戻ってきて、ダイナゼノンに合体したとしても勝機は薄いだろう。
それでも──
『……引けねぇ』
低く、芯のある声が響く。レックスだ。
薄ピンクのサングラス越しの表情は見えないが、声には確かな経験と覚悟が滲んでいた。
『今、ここで踏ん張らなきゃ……何のために、俺たちがいる…』
『俺たちが…『今』を守らなくてどうする…!』
その一言が、それぞれの胸に突き刺さる。
…ここで自分たちが退いたら、どうなる?
怪獣を海岸近くまで近づけたら、沿岸の施設、避難の遅れた人たちが巻き込まれるかもしれない。
大切なクラスメイトも、帰るべき場所も、失ってしまうかもしれない。
グリッドナイトがいない今、止められるのは──自分たちしかいない。
太陽たちの胸に再び熱が灯り始めた、その時だった。
「……あのさ」
静かに、だが確かな意志を込めて、樹が口を開いた。
モニター越しにその顔が映る。
「…ナイトが消えたのは、パソコンのエラーや停電のせいだって──それは間違いないと思う。
でも……たぶん、それだけじゃないんだ」
太陽、ライラ、レックス──誰も言葉を挟まない。
響子も黙って、横に立つ樹を見守る。
「この前の…獏みたいな怪獣にやられたときさ、記憶の中に閉じ込められて……あのとき、ナイトが助けに来てくれたんだ。
でも俺…現実に戻るのが怖くてさ。
現実の全部が嫌で、ずっと逃げてた。
なのに、ナイトはそんな俺に…“勇気を出せ”って言ってくれて──
……めちゃくちゃ、嬉しかった。
その言葉に…なんかすごく救われたんだ。
ナイトだけじゃなくて…みんなも俺を信じてくれてるだって知って…それに応えたいって、ずっと思うようになったんだ。
信じてもらえたことが嬉しくて、期待に応えたくて……無理してでも変わろうって…勇気を出そうって…
それから俺なりに頑張ったつもりだった…ううん、今思えば、その気分に浸っていたかったんだ。
クラスでも、前よりみんなに話しかけたり、輪の中に入ろうとしたり……それ自体は、ちゃんと楽しかったし、後悔してない。
でも──気づいたら、少しずつどこか無理してて。
“変わらなきゃ”“ちゃんとしなきゃ”って、そればっかり考えてた。
気づけば、“勇気を出すこと”が、ゴールみたいになってて…
たぶん、空回ってたんだと思う。“勇気”の意味を、どっかで履き違えてた。
……ナイトが本当に伝えたかった“勇気”って、
そうじゃなかったんじゃないかって、今なら…思う。
それに……俺、焦ってた。
俺は勇気を出してるつもりだった。でも、ナイトは……何か大事なことを、ずっと俺に言おうとしてて、それを言ってくれない気がして……
信頼されてないんじゃないかって、勝手に思い込んで……
悔しくて、怖くて……それでつい、さっきの戦いの最中にナイトに当たっちゃって…
……ナイトが本当に伝えたかった“勇気”って、
こんなんじゃなかったはずなのに…
自分のことばっかりで…ナイトのことを知ろうともしてなかった…
……俺が最初に“勇気”を出すべき相手は……ナイトだったのに」
静かに、でも確かに―胸の奥の声を言葉に換えていく。
「……もう一度、会いたい。ナイトに。」
遠く離れてしまったかもしれない存在。
でも、ちゃんと向き合いたいと思った。
今度こそ、自分の言葉で、想いを伝えるために。
「もっと…ナイトのことを知りたい。
ナイトが、何を感じて、何を思ってたのか……
ちゃんと聞きたいんだ。あいつの言葉で…
だから…俺が…ナイトを…コンピュータを必ず復活させる…今度こそナイトと向き合うために…」
その言葉には、言い訳でも責任逃れでもない、ただまっすぐな後悔と自覚がこもっていた。
モニターの向こうで、太陽たちは何も言わない。
けれどその沈黙は、否定でも拒絶でもない。
──ただ、受け止めていた。
誰かが何かを言い出すでもなく、静けさだけが少しのあいだ流れる。
そして、再び樹が口を開いた。
「パソコンを復旧させるまでの間は…みんなに頼らせてほしいんだけど……その、いいかな……?」
言い終えた後、気まずそうに目をそらす。
『……ッはは…さんざん自語りしといて…締まらないなぁ……ま、そういうところが樹らしいと言えば樹らしいか』
太陽が思わず苦笑する。
『うん……イツキとグリッドナイトが戻ってくる間は…なんとしても怪獣を食い止めるよ』
フンスフンスと腕を上げ下げし、任せろとアピールしてくるライラ。
『…戻ってくる間…?お前らが戻ってくる前に…ダイナゼノンで倒しちまってるかもしれねぇぞ?
…もしそうなったら…ナイトと一緒に俺のことを『レックスのアニキ!』呼びしてもらうからな?』
揶揄うようにレックスは笑い、そして樹に改めて言葉を送る。
『樹!…ナイトは──お前が信じたその“勇気”で、もう一度呼び戻してやれ!』
モニター越しに拳を突きつけ、ニカっと笑う。
樹が少し驚いたように目を見開き、そして、小さく笑う。
「ありがとう…みんな」
そのとき──隣で聞いていた響子が、ふと優しく口を開く。
「……今度は相談、してくれたね」
その一言に、樹は照れくさそうに視線を逸らしながら、でもどこかホッとしたように頷く。
「うん…まだなんか…抵抗はあるけどね…」
少し間をおいて、樹は続ける。
「古澤さん…せっかく心配してここまで来てくれたけど…──」
合体怪獣との戦いの最中だというのに、わざわざ自分たちの元へ足を運んでくれた響子。
そのことを思うと、なんだか…申し訳なさばかりが込み上げてくる。
だからこそ、何をどう言えばいいのかわからなくなって──
樹の言葉は、歯切れ悪く、ゴニョゴニョと濁っていく。
──その様子を見かねたように、響子が言葉をかぶせる。
「うん、わかってるよ。…私は先に戻っとくね」
響子は、やわらかく微笑む。
樹はダイナウイングのインナースペースから砂浜に降り、響子の背を見送る。
海風が吹き抜け、潮の匂いが微かに鼻をかすめた。
「新条くんは……一人で大丈夫そう?」
「うん…それは…うん…まぁ…多分…そー…maybe…」
その頼りない返事に、響子がちょっとだけ眉をひそめる。
「……新条くんって、人の言葉に一直線に影響受けすぎ」
少しだけ呆れたように、でも優しく言い聞かせるように続けた。
「もっと自分を持って。自信、持っていいんだよ?
それも…『勇気を出す』ってこと、だからね」
「……はい」
「返事ははっきりと!」
「は、はい!」
樹が照れたように頷くと、響子は「よろしい」とにっこりと笑い、くるりと背を向ける。
「それじゃ!」
その言葉を言い残し、彼女はダイナウイングへと乗り込み、勢いよく空へと駆け出していった。
「…ほんと…古澤さんには頭あがんないよ」
最初にグリッドナイトと一緒に戦ってることバレた時からずっと、響子に助けられ続けている。
「…ありがとう古澤さん、俺…わかったよ、俺がやらなきゃいけない、俺にしかできないこと」
少しだけ笑って、アクセプターをそっと握る。
「……ナイト、今度こそ…お前とちゃんと向き合うよ」
そう呟くと、彼は再びパソコンの前へと向かっていった。
彼に言われた、真の意味での“勇気”に少しだけ気づけたから─────
〈あとがき?〉
???「おはなし(=対話)がハッピーをうむんだッピ!」