SSSS.GRIDKNIGHT Another God Wish   作:ゴリニティ75

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第54回 再・臨

 

 

破壊した校舎の瓦礫らを突き抜け、怪獣がその全貌を露わにした。

 

巨大な二足歩行の恐竜を想わせる体躯に白い鎧のような装甲。

 

そして分厚い鱗に覆われた胴体は、瓦礫の粉塵を纏いながらゆっくりと身を起こす。

 

異様なほど発達した、円環状の()()()が特に目を引く。

 

膜とも骨ともつかない構造が幾重にも重なり、

首から胸元にかけて、身体そのものと溶け合うように広がっている。

 

「…あの怪獣……確か前に……」

 

樹は、あの怪獣の容姿に何処か見覚えがあった。

 

それは、樹とナイトが初めて出会った日。

 

グリッドナイトとして、初めて戦場に立ったあの日、キヨシ台に現れた怪獣、【ゴウ・ゴルガ】。

 

二足歩行の体躯。

 

恐竜を思わせる輪郭。

 

そして何より、首元に広がる異様な大きな襟巻き。

 

目の前の怪獣は、その記憶に非常に酷似している。

 

「あ、気づいてくれた?」

 

校舎を内側から破壊しながら姿を現した怪獣を前にして、ただ一人、場違いなほど嬉々とした表情で、コピーは淡々と語る。

 

「そう、あの子はグリッドナイトが初めて戦った怪獣をベースにしてるの」

 

瓦礫が崩れ落ち、悲鳴と警報が入り混じる中、

その声だけが、やけに落ち着いて響いている。

 

「めっちゃ強化して、色々改造もしてさ〜

ザ・パワーアップって感じで、強そうでしょ?」

 

壊れ続ける“日常”を背に、コピーは両腕を広げてうっとりするような表情で怪獣を見上げる。

 

「ウルトラシリーズじゃ定石だもんね〜……序盤に倒した怪獣が超強くなって帰ってくるのがさ」

 

皮肉にも、樹の教えた知識だったものが、今はこうして─現実を壊す理屈として使われてしまっている。

 

今となってはそれを後悔している自分がいた。

 

「なんで……なんでこんなことができるんだよ……!」

 

一気に押し寄せてくる色々な感情を抱えたまま樹は叫ぶ。

 

崩れていく校舎。

 

瓦礫に埋もれる人影。

 

さっきまで、笑い声で満ちていた場所。

 

 

コピーは振り返りもせず、崩れ落ちる校舎の方へ歩き出す。

 

瓦礫が落ち、砂埃が舞う中へ、ためらいなく足を踏み入れていく。

 

「……待って……!!」

 

崩れ落ちる瓦礫の音にかき消されかけた声に、

コピーは、ぴたりと足を止め振り返る。

 

砂埃に霞む視界の向こう、その視線だけが、樹を捉える。

 

「……私なんかに構ってる暇、ないんじゃない?」

 

背後で、校舎が大きく軋む。

 

「早くしないと──」

 

瓦礫が崩れ落ち、コピーとの間の足場が飲み込まれていく。

 

「この学校の皆んなも、再構築されちゃうよ」

 

轟音とともに、壁が崩壊する。

 

砕けたコンクリートと粉塵が舞い上がり、コピーの姿は、その中へと消えていく。

 

それでも、最後に。崩れゆく音の向こう側から、かすかに、しかし確かに届く声。

 

「守れるもんなら全部守ってみなよ、"グリッドナイト"。」

 

そう言い残し、彼女の姿は完全に消えていった。

 

 

 


 

 

 

樹の背後で、怪獣が低く唸った。

 

[:—————/((;;////::!!!!]

 

その声に呼応するように、校舎全体が大きく軋み、影が、不自然なほどに揺れ動く。

 

怪獣の出現によって歪められた建物は、

もはや均衡を保てず、限界へと達していた。

 

ピシッ───

 

乾いた音が、樹の足元から走る。

 

次の瞬間、ひび割れたコンクリートが耐えきれず、崩れ落ちた。

 

「―なッ」

 

踏み出した瞬間、足場が消える。

 

視界が反転し、重力だけが、唐突に樹の身体を引きずり下ろした。

 

今までいたのは屋上、実に四階分の高さ。

 

風を切る音が、耳元で唸る。

 

 

あ、これ、死ぬやつ──────

 

思わず、目を瞑る。

 

 

「……っ!?」

 

 

目を瞑ったのも束の間、身体が宙で止まり、衝撃が走ると同時に、視界が引き戻された。

 

「…ヨッと」

 

視界が定まり、目に映ったのは、桃色の髪と同色のサングラス。

 

見慣れたスーツに、左胸元の龍の意匠が施されたピンバッジ。

 

「大丈夫か……樹……!」

 

頼もしく、ニヤリと口角を上げながら、

レックスは片手で樹の身体をしっかりと支えていた。

 

「レックスさん…!!」

 

足元では、崩れ落ちたコンクリート片が、

遅れて地面へと叩きつけられ粉々になる。

 

ほんの一歩、ほんの一拍。

 

レックスが来てくれなかったらあぁなっていたと思うと恐ろしい。

 

「レックスさん…まじで、ありがとうございます」

 

震えを押し殺すように礼を告げると、レックスは気にも留めない様子で肩をすくめた。

 

「おぉ、気にすんな…ひとまずお前が無事でよかった…」

 

いつもならニカッと歯を見せて笑ってくれるイメージだったが、今日のレックスはいつになく真剣な顔つきだ。

 

 

樹は、改めて周囲を見渡す。

 

壊れた校舎。

 

逃げ惑う生徒たち。

 

すぐ近くで響く、怪獣の唸り声。

 

「あの……太陽と古澤さんは……」

 

恐る恐る尋ねると、レックスは即座に答えた。

 

「安心しろ2人とも無事だ。

逃げ遅れた奴らとかを探し回ってる途中で出会って、避難誘導とかしてもらってる」

 

 

「.....良かった.......」

 

思わず、胸の奥から安堵がこぼれる。

 

だが、その安堵を押し流すように、すぐ近くで怪獣の足音が重く鳴り響いた。

 

地面が震え、怪獣の影が大きく揺れる。

 

「樹…とりあえず今は時間がねぇ。

人命救助とかその他諸々は俺たちがやっておく。お前は───」

 

最後まで言い切るよりも早く、樹は前へと踏み出す。

 

「わかってます、俺はすぐにコンピュータルームへ行ってナイトとアクセスフラッシュを───」

 

「いや、お前は一階へ降りて外へ出てライラと合流しろ」

 

レックスの声は低く、切迫していた。

 

「怪獣が学校の中心部から出やがったせいで、校舎全体が崩壊しかけてる…」

 

足元で、嫌な軋みが走る。

 

「今あそこに向かったら、いつ崩れてもおかしくねぇ…下手すりゃ、生き埋めだ」

 

樹の胸が、嫌な音を立てて軋む。

 

「でも……ナイトは……」

 

言いかけた樹の言葉を、レックスが遮った。

 

「心配すんな。さっきライラから連絡がきて

ナイトの入ってるコンピュータは、部屋が崩れる前になんとか持ち出せたってよ」

 

「……良かったぁ……」

 

安堵の息を吐いた樹に、

レックスはようやく、いつもの調子で口角を上げて告げる。

 

「よし、それじゃあ俺たちも終わったらすぐ加勢に行く」

 

んっと、無言で拳を突き出すレックス。

 

「それまで負けんなよ……って、ナイトにも伝えとけよ?」

 

「はいッ!」

 

迷いのない返事と共に、樹はその拳に自分の拳をぶつけ、それぞれ駆け出していく。

 


 

 

「イツキ!こっちこっち!」

 

なんとかまだ通れそうな廊下や階段を巡り、ようやく外へ抜け出すとともに、ライラの幼いが芯の通った声が耳へ飛び込んできた。

 

「…!」

 

声のした方へ駆け寄ると、避難誘導用の垂れ幕が架かり、既に巨大化していたダイナストライカーの姿があった。

 

「ごめん待たせちゃって…ナイトは?」

 

ダイナストライカーの“窓”にあたる部分から、

ライラが上半身をにゅっと乗り出し、手を伸ばす。

 

「コノ中。さぁ入っ…て…!」

 

樹の身体は赤子を持ち上げるようにぐいっと引き寄せられ、半ば放り込まれるように、コクピット内へと入れられた。

 

「いてて…」

 

 

「…来たか、樹。」

 

落ち着いたナイトの声の方へ視線を向けると、複数のバッテリー機器に接続されたコンピュータが、隅の方へ置かれていた。

 

「…学校も壊れちゃって危ないし…前回の反省も踏まえて…思い切ってこのインナースペースに入れてみたんだ」

 

思い切りが凄すぎるが、…まぁライラなりに手を尽くしてくれているのは伝わったので頭を撫でておく。

 

「ありがとな、ライラ。

…取り敢えず…まずは怪獣をどうにかしないと」

 

樹の言葉に、ライラは小さく頷く。

 

「……アタシたちは、引き続き学校に取り残された人たちの救助をしとくから…イツキとナイトは学校から怪獣を遠ざけて」

 

そのやり取りを受け、コンピュータの画面越しにナイトが静かに口を開く。

 

「幸い……怪獣が現在、学校敷地内に滞留しているおかげで街の住人たちは、既に安全圏への避難を完了している」

 

確かに、怪獣は出現してから未だ敷地の外へ出ておらず、崩れゆく学園の中心に居座り続けていた。

 

まるでグリッドナイトを待ち構えているようだ。

 

「これ以上、戦闘を学園内で続ける意味はない。

戦場を街側へ移し、被害を最小限に抑えるぞ」

 

「うん!……ナイト──いこう!」

 

樹は構えた左腕に、右腕を力強くクロスさせる。

 

「アクセス……フラァーッシュ!!!」

 

叫びと同時に、樹の身体は眩い光へと変わり、

吸い込まれるようにコンピュータの内側へ突入していった。

 

戦場へ向かう二人の背を見送りながら、樹に撫でられて少しズレた帽子を、ライラはそっと直す。

 

「……気をつけてね。二人とも……」

 

胸元のブローチを、震える手でぎゅっと握りしめながら、ライラは呟いた。

 

「あの怪獣……

これまでの怪獣より、遥かに……強い……」

 

 


 

 

 

校舎の中心部。

 

崩れ落ちた壁と、折れ曲がった鉄骨が積み重なり、かつて生徒たちの笑い声で満ちていた場所は、すでに原形を留めていない。

 

瓦礫の山の奥で、怪獣が低く、腹の底から響くような唸り声を上げる。

 

その視界の先―光の粒子が弾け、空間を切り裂くように紫色の影:グリッドナイトが現れる。

 

 

ひび割れた校舎を背に、白と黒の装甲が、きしむ音を立てながら戦闘姿勢へと移行した。

 

『…あの怪獣は…』

 

地上へ降り立ち、怪獣を眼にしたナイトが呟く。

 

〈…ナイトも気づいた…?あれは…俺たちが1番最初に戦った怪獣の……強化された姿…らしい…〉

 

記憶が重なり合う。

 

かつて倒したはずの存在。

 

だが、目の前のそれは、明らかに“別物”だった。

 

怪獣の装甲―白い鎧のような外殻が、不気味な光を鈍く反射する。

 

大きさも、一回り、いや二回り、肉体そのものが肥大化し、無理やり詰め込まれた力が内側から膨れ上がっているかのようだ。

 

装甲の継ぎ目は歪み、筋肉と装甲の境界は曖昧に溶け合い、“防御”というよりも、暴力的な質量としてそこに存在している。

 

首元には、特徴的な襟巻き状の装甲。

 

しかしそれはかつてと違い、一層ではない。

 

二層が重なり合い、内側から脈打つようにそれぞれが僅かに震え、不気味な律動を刻んでいた。

 

 

 

名を──共鳴侵蝕怪獣 ネオゴウ・ゴルガ。

 

 

 

[:—————/((;;////::!!!!]

 

低く、地を這うような咆哮が、崩壊した校舎の残骸を震わせる。

 

低く、腹の底から這い上がるような咆哮。

 

それは、樹の記憶の奥に焼き付いた、“あの日”と同じ身も心も震える恐怖を覚える音だった。

 

キヨシ台(あの場所)で、ゴウ・ゴルガ(あの怪獣)との再戦───

 

だが―立っているのは、かつてよりも遥かに歪んだ存在。

 

学園という“日常”の中心で、

再び、あの戦いがなぞらえられようとしていた。

 

『いくぞ…樹…!』

 

〈応…!!〉

 

そして今──その戦いの火蓋が、再び切って落とされる────

 

 

 





あとがき

はい、ということで帰ってきましたゴウ・ゴルガくん。

強化される怪獣って大体メカ化することが多いので、今回は敢えて単純に生物としての次のステージにいった強化形態にしてみました。

本家の電光超人グリッドマンでもメカ系は後半めっちゃ出るんですけど、ネオ系は1体しか出てないんですよね…(ネオメタラスのみ)



果たして"ネオ"ゴウ・ゴルガくんの活躍は如何に…?


…ということで次回の更新まで…あでゅー!


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