ミノルとミウの冒険譚   作:荒田少年

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Pixivでも投稿してます。需要有りそうなら3話以降書きます。


陰の冒険者になりたくて!~新米冒険者の誕生~

 シドは転生して以来、最も困難な状況にいた。

「敵がいない・・・」

 

 学園の最上級生になったころ、ミドガル王国ではある大事件が起きた。国王がシャドウガーデン(偽)に暗殺され、王城が制圧された。しかし、アイリス率いる紅の騎士団が賊を討伐。国王に即位したのだ。

 ここで終れば美談になっていたのかもしれないがそうは問屋がおろさない。王城から脱出したミドガル王国宰相が国王の遺言を公表。なんとアイリスではなくアレクシアが次の国王として指名されていたのだ。それを受けて新国王アイリスはアレクシアを投獄。それでもアレクシアを支持した地方の貴族を討伐すると宣言した。

 こんなイベントをスルーする僕ではない。アレクシア支持派の貴族軍の一部のクリスティーナが率いる軍に一兵士として合流。反乱軍に対して暴れまわるアイリス率いる紅の騎士団を滅ぼし、アイリスを捕らえこの内戦を終わらせたのであった。その後も今度はアレクシアに対して反乱を起こす貴族が現れたり、盗賊が急増したりとしばらくは楽しめたのが・・・学園卒業時点で王国内はすっかり平和になってしまった。陰の実力者ムーブをする機会が失われたのだ。

 

 学園を卒業してから表で何をするのかずっと決めていなかったけど・・・決めた。この国を出て元の世界でも定番だった冒険者になろう。その為には・・・パーティを組まなくては。そして僕はミツゴシ商会のガンマの元へと向かった。

 

「パーティー結成・・・ですか? 冒険者のグループの最小単位をそのようにいうと行商人から聞いたことがあります。ですが、それにどのような意図が・・・」

 

(おお~やっぱりこの世界にもいるんだ。冒険者もパーティーも。これならいけそうだな。)

 

僕の計画はこうだ。

僕はどこにでもいる普通の冒険者。パーティーの陰に隠れる目立たない存在だ。だがしかし、強大な敵が現れたときのみ正体を隠しながら真の力で敵を圧倒する・・・いいよね。

そしてそんなプレイをするにはそんな僕の事情を察しながら一緒に旅をしてくれる仲間が必要だ。ソロの冒険者じゃモブになるの大変そうだしね。

アルファは・・・いつも忙しそうだし駄目だろう。

ベータは・・・ナツメという顔があるから駄目だ。

ガンマとイプシロンも同じ理由で駄目。

デルタは・・・たまにならいいんだけどね、たまになら、うん。

ゼータは一人が好きそうだし・・・イータは外に出ないだろう。

七陰は全員駄目。その他となると・・・

これらの考察の結果、ある一人がパーティーにふさわしいと考えたのだ。

 

「僕はこれから冒険者として旅に出る。この国にはおそらく帰ってこないだろう。そしてその時に一緒にパーティーの一員として旅にでる子を探していてね。」

 

「!!パーティーとして・・・一緒に・・・?それは一日中でしょうか。宿屋も一緒に泊まるのですか?」

 

「勿論。パーティーだからそうだよ。」

 

(シャドウ様が国外に出てもう戻ってこない・・・勿論それは大変なことなのだけれどそれよりもこのパーティーなるものに入れば・・・シャドウ様と四六時中一緒にいることが出来る!私以外誰も知らない今こそが最大のチャンス!)

 

「シャドウ様。不肖この私ガンマが・・・」

 

「あぁごめん。既に誰を連れていくかは決めてるんだよね。彼女がよければなんだけど。」

 

「!?だ、誰でしょうか?」

 

「ニューだよ。」

 

「・・・・・・え?」

 

いったいどうしたというのだろう。

いつも通りミツゴシ商会で警備任務を行っていたところ、ガンマ様にものすごい形相で呼ばれたのだ。

全く転ばないし・・・床が足踏みで割れてるし・・・こんなガンマ様を見たのは初めてだ。

いったい何が・・・急いで呼ばれた場所へ向かうと、

 

「あぁ、ニューよく来てくれたね。」

 

「シャドウ様!?どうしてこちらに?」

 

「実はね。今日か明日でこの国を出ることにしたんだ。そしてその旅にニューに一緒についてきてほしいんだ。」

 

「私が・・・シャドウ様と一緒に!?」

 

「うん。嫌だったら別にい・」

 

「嫌ではありません!是非お供させてください!どのようにでもお使いください!!」

 

「う、うん。わかった。それじゃあすぐに準備しようか。まずは実家にいかないとね。」

 

「シャドウ様の・・・実家ですか?」

 

そして私は・・・シャドウ様と一緒にシャドウ様の実家に向かった。シャドウ様には何も言われなかったが変装は・・・ローズ王女にも気づかれなかったしいらないだろう。それにシャドウ様の家族に偽りの姿をお見せするというのは後ろめたい。

 

「絶対ダメ。」

 

それが旅に出るというシャドウ様の突然の宣言に対するクレア・カゲノーの返答であった。

 

「絶対ダメ。どうしてそんなことをいうの?冒険者なんて貴族がなるものじゃない。就きたい職業がみつからないというのならお姉ちゃんが何でも見つけてあげるわ。これでも王族にはコネがあるの。」

 

「別に逃げるために冒険者になろうとしてるわけじゃない。僕にはどうしてもやらないといけないことがある。その為には冒険者という職業と・・・この国を出ることが必要なんだ。」

 

「絶対ダメ。そんなこと私もお母さんもお父さんも、そしてアレクシア王女も絶対許さないわ。どうしても行くというならこの姉を倒してからいうことね。」

 

「くっ・・・」

 

シャドウ様は普段は冴えない青年シドとして振舞っておられる。そしてシド様では武神祭優勝のクレア様と戦うことはできない・・・ここは私が・・・

 

「そういえば最初に言わないといけないことがあったのを忘れていたわ。

この子はだれなの?シド。」

 

「彼女は・・・・・・ミウだ。」

 

(ミウ・・・?)

 

「ミウ・・・?変わった名前ね。いや、そういうことを聞いてるんじゃないわ、どんな関係なのか聞いてるの!」

 

「彼女は・・・・・・・・・僕の志に共鳴して一緒に冒険者をしてくれることになった人なんだ。」

 

「志に共鳴・・・?あなた、それは本当なの?」

 

「・・・はい。私は・・・シドさ・・シドくんの意志の強さに惚れたんです。彼ならどんなことでも成し遂げると信じています。」

 

「なんか嘘くさいわね・・・口裏を合わせるために連れてこられただけにみえるわ。学園の人ではないように見えるけど・・・」

 

「・・・嘘ではありません。本気です。私は彼の剣となります。私があなたを倒せばシドくんが旅に出るのを認めてくれますか?」

 

「面白いじゃない。そこまで言われたら戦わないわけにはいかないわね。」

 

なんか怖いから黙っていたらすごい展開になってきたな。不思議。

 

「勝敗はどうするのですか?」

 

「私に負けを認めさせたらよ。」

 

なんて意地悪な条件なんだ。

 

「分かりました・・・。始まりの合図は?」

 

「シドがやって。」

 

ここで僕に振るんだ!?

 

「それでは両者神妙に・・・始め!」

 

その声とともに両者は一瞬で詰め寄った。どちらも相手の剣を狙っている。それで相手の戦意を喪失させようというのだろう。

そして剣の振りの早さではミウの方が上回っていた。

 

(私を凌ぐ速さ・・・移動も剣の振りも何もかもアイリス元王女並・・・いったい何者なの・・・?だけど、速さだけなのなら私の勝ちよ。)

 

クレアはミウの剣筋を紙一重でかわしそのまま体をひねり背後に回った。

 

(剣狙いはフェイク。本命は彼女の無防備になった背中よ。悪いけど眠ってもらうわ・・・)

 

そして剣を振り下ろし剣が命中した・・・はずだった。

 

(!?いない・・・!?まるでこれはジミナに扮したシャドウが見せていたというあの・・・!?)

 

「残像です。」

 

ミウがクレアの後ろでクレアの首筋に剣を突き付けていた。

 

「クレア様・・・約束です。シドくんを解放してください。」

 

「まだ・・・まだよ・・・こんなんじゃ認められないわ。」

 

そういうとクレアはミウの剣を弾き飛ばした。足元から伸びた血の触手によって。

 

「!?これは・・・」

 

「この力は非常事態以外に人前で使うつもりはなかったのだけれど・・・今が非常事態よ。」

 

そういうとクレアは血の触手をミウのもとに伸ばしながら剣を振り下ろそうとした。

 

「私も・・・負けられません。」

 

そういうとミウは魔力を解放した。紫と茶色を混ぜたような色・・・ダークレッド色の魔力だ。

 

「何なの・・・?この魔力は?こんなの、学園どころかこの国で・・・」

 

そして決着がついた。ミウの魔力に触れた血の触手は全て消失し、ミウの剣に触れたクレアの剣も簡単に割れた。

 

「こんな・・・こんなことが・・・」

 

「あなたがシドくんのことを大事に思っていることは分かっています。だからこそ・・・彼の自由を認めてください。もし心配なのであれば・・・あなたより強い私が命を懸けて彼を守ります。」

 

「・・・本気なのね?」

 

「はい。彼は私の運命の人です。」

 

「正直あなたにはおかしい点がありすぎるけど・・・シドを思う気持ちだけは本物だと分かったわ。いいわ。連れて行きなさい。」

 

「・・・はい。託されます。」

 

「傷ひとつでも付けたら絶対許さないわよ。あと婚前交渉は絶対禁止。いいわね?」

 

「は、はい・・」

 

「じゃあ早く行きなさい。こんな膨大な魔力で戦闘をしていたら誰かがすぐ来るわ。母さんたちには説明しておくわ。そしてシド!」

「う、うん・・・」

「こっちにきなさい。」

「うん・・・」

「なんでかしら・・・もう一生会えない気がするわ・・・あなたは絶対帰ってくるのに。」

「いや僕は帰ってこな」

「帰ってくるの」

「う、うん・・・」

「・・・正直自分でも思うわ。うざったい姉だと。まぁシドが離れようとするからなんだけど・・・」

「・・・姉さん?」

「何でもないわ。ほら、行きなさい。もう後ろを向いちゃだめよ。」

「うん。わかったよ。」

「落ち込むお姉ちゃんを振り返ってみちゃだめよ。」

「わかった。」

「一度くらいみてもいいけどね。」

「わかった。」

「絶対見るのよ。」

「うん。」

「それじゃあね。」

「じゃあね。」

 

そしてシドと謎の女ミウは一度も振り返らず去っていった。本当に・・・あの子らしいわ。

シドが国を出てまでやりたいこと・・・それに私は関われないのね。

おそらく貴族であってはできない事。国内ではできない事。私では到底思いつかない何かをするつもりなのだろう。

アウロラの力があっても・・・こんなんじゃだめね。シドの姉失格だわ、私。そして私はこれからこの国で何をしていけばいいのかしら・・・もうシドはいないのに。う、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・

 

幽霊さんはクレアを少し心配しながらシドが消えていった方向をずっと眺めていた。

 

「シド様・・・」

 

「うん?」

 

「先ほど私のことをミウと呼んでおりましたが・・・」

 

「あぁあれね。」(冒険者の詳細設定は旅をしながらゆっくり練ろうと考えていたから焦ったなぁ)

 

「それは私のこの旅でのコードネームですか?」

 

「そうだよ。」

 

「僭越ながら・・・どのような意味かお聞きしてもいいでしょうか。」

 

「・・・。」(ニュー→新羽→美羽という風にカタカナを漢字にして適当に考えただけなんだよなー)

 

「美しい羽という意味だ。異世界ではな。」

 

「!シ、シド様!!ミウは幸せ者でございます!!」

 

「・・・」(ニューって意外とイプシロンを彷彿とさせるリアクション具合だよなー)

 

「そして・・・僕はミノルだ。シドじゃなくてミノルだ。ミノルかミノルくんと呼ぶこと。いいね?」

 

「ミノル・・・?少し慣れない語句ですが・・・頑張ってなれます。ミノル・・・ミノルくん。」

 

「うん。そうそう。」

 

この国にいる間はシドとして動くけど・・・出てからは今までの一切の過去を捨てよう。

出生不明の冒険者モブ、ミノル。そんなミノルがまだ見ぬ世界で陰の実力者としてうごめく・・・

学園のイベントに勝るとも劣らない楽しみがありそうだな。フフフ・・・

 

私はミウ・・・ミノル君と一緒のパーティーの冒険者。

私にこんな役回りが訪れるなんて思いもしませんでしたが・・・

シャドウ様の半身となれるよう今まで以上に気を引き締めなくては・・・

 

かくして二人の旅が始まった。

まだ見ぬ未知の世界が彼らを待っているのであろう。

つづくかも?

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