「―――なるほど。要するに、少年――君が集落に炭を売っている間に君の家が鬼に襲撃された。その後、一人だけ生き残っていたと思っていた妹――禰豆子も実は鬼になっていて――、と。それは災難でしたね」
結構な災難だ。人として生きていても、これ程の災難に遭う事はそうそうないだろう。
そして、鬼になっていた、と言う発言がとても重要になってくる。この、鬼を増やすという手段は、鬼の始祖無惨か、その配下である十二鬼月の上位六体の鬼――上弦の鬼にしか許されていない――一応、幽々子様もできると言えばできるのだが、あの人は何か面白いことがない限り、基本的には屋敷から出ない――。と、なるとここを襲った鬼が絞られてくる。
近くで目撃情報がある鬼は――身体的特徴がある鬼は――二体。
まず、上弦の参は、情報によると、女は喰わないらしい。しかし、女も同様に喰われていたので、上弦の参は除外。次に、上弦の弐は、女しか喰わないらしい。しかし、男児も喰われていたので、弐も除外。
となると、無惨の可能性が一番高くなる。もし、ここに無惨が来たのなら、無差別に攻撃するという手段は取るだろう。
これで確信した。ここに来たのは無惨なのだと。この少年の妹が引き起こした惨劇ではなく、何らかの目的―――実際は目的などないのかもしないが―――で侵入した無惨が引き起こした惨劇なのだと。
「――ですが、鬼を生かしておくわけにはいきません。心苦しいですが、このまま一番苦しまない切り方で首を――」
「待て、魂魄」
「―――なんですか、冨岡さん。この鬼に情でも?」
「いや、そのようなことはない。しかし、この少年は正々堂々と俺に向かってきた――妹を守るために。だから、この少年と少女を生かしてやってはくれないだろうか?」
なるほど、それは一理ある――のか?
しかし、あの冨岡義勇は揺れ動かない、で有名なあの義勇があそこまで言うのならば、彼――少年には人を守るために自信を犠牲にする才能があるという事だ。しかし――
「...では、もし、この鬼が人を喰ったら、どうしますか?」
「そのときは、俺がこいつを殺し、腹を切ろう。それだけの覚悟は出来ている。だから、こいつらは俺に任せてくれないか」
―――なるほど、となると義勇にとってはこの兄妹は自身の命をかけるだけの価値があるという事だ。
「...分かりました。では、あなたにこの兄妹の事は任せましょう」
しかし、万一その鬼が人を喰った場合――
「あなたを殺し、その鬼も殺します。覚悟しておいてください」
「あぁ、肝に銘じておく」
「それでは、私はこれで。くれぐれも、その鬼の監視を忘れぬように」
本当は、ここで斬りたかったんですけどね。しかし、私も人情はありますからね。
そして、私はその場から去ったのである。
―――暇だ。
暇すぎる。何にも仕事が来ない。しかし、それはいいことだ。私も久々の休暇を楽しむとしますk...
「アアアアアアアアアアア゛ッ!伝令ッ!伝令ィィッ!」
「うるせぇ!幽々子様が起きるんですよ!黙ってください!」
「黙レィ!那田蜘蛛山に鬼ガ出タァッ!魂魄隊士ハ今スグ二那田蜘蛛山ヘ向カエェェェッ!!」
本当にうるさい。
と言う訳で、
少女着替え中....
はい。着替えました。
「と言う訳で、今日も行ってきます。休暇中なのに」
「おう。大変そうだな」
「本当、大変ですよ。では、行ってきます。幽々子様のお世話、よろしくお願いします」
「ああ。行ってこい」
はい。来ました、那田蜘蛛山。しかし、とても鬱蒼としている森ですね。しかし、結構日光が防がれるので私としても好都合な場所です。
「ここに情報があった下弦の鬼――“下弦の伍”がいる、と。そうですね、居そうな森です」
―――「あら、累を探してるの?それなら教えてあげられないわね」
この鬼は――?目を見てみても特別何か文字が書いてあるわけでもない。しかし、なんとも生意気だ。しかも――
「貴女――いや、お前。何人の人を喰らった?」
「さぁ?覚えてないわね。まぁ、最低でも五十人――ッ!」
奴がひるんだのも無理はない。私が結構強い殺気を出していたからだ。
「ほう?五十人?どうせそれより喰っているのだろう。ならば、すぐに斬るのみ!」
そして、私はいつもの動作に移った。
「全集中――魂魄流・本家派――参ノ型
『餓王剣・餓鬼十王の報い』!」
迸る閃光。しかし、弾幕が出ない。これはまさか...
「チッ、霊力切れか!」
ここは一旦退こう。霊力が切れていると分が悪い。
「そこの鬼!今日は私は一旦退く!しかし、覚えておけ!私が何度でも来るという事を!その業を断ち切るまで!」
「ハッ、負け犬の遠吠えなんて聞いている暇ないわ!私が逃がすとでも?」
「あぁ、逃がす!何故なら...」
スーッ―――
「全集中――魂魄流・非想天則派――壱ノ型
『人符・現世斬』」
この『人符・現世斬』は空間を切る。そして、基本はこの空間を切った後、繋がっているのは白玉楼の前に移動する。
「忘れるな!その業の重さは、すでに三途の川を渡れない!」
そう言い残し、私は裂け目の中に消えていった。
少女霊力回復中...
はい。回復しました。
と、言う訳でもう一度来ました。那田蜘蛛山!
「はぁ、本当にまた来た...今度こそはいいものを見せてくれるんでしょうね?」
「黙れ!その業を有無を言わさず断ち切ってやる!」
そして移る何時もの行動。
「全集中――魂魄流・本家派――肆ノ型
『獄界剣・二百由旬の一閃』」
その一閃は、地獄と極楽の間の距離――二百由旬にもなりそうなほどの長さ。そして、そこから放たれる弾幕は見るもの全てを――私も含めて――を魅了する。
そして、いつの間にかその鬼の首は切れていた。
「い、いや、嫌!死にたくない!」
「黙れ。その業は私が断ち切った。安心しろ、三途の川は渡れる」
私はそれだけ言い残し、他の鬼――本命の下弦の鬼を探しに行った。
―――何十分経っただろう?
一向に鬼の気配が感じられない。もしかしたらそんなにいないのかもしれない。
しかし、そんな私の予想を裏切り、またもやあのコンビを見つけた。それは――
地面に倒れ伏しているあの少年と冨岡さんだった。
すると、何やら冨岡さんが敵の血鬼術が迫りきているというのに呑気に立っていた。馬鹿なのか。
しかし、その予想は次の瞬間外れることになる。
「全集中――水の呼吸――拾壱ノ型
―――『凪』」
すると、何ということだろう。あの赤い蜘蛛の巣を高速発射したような血鬼術は粉々になっていた。
そして、その後、いつの間にか下弦の伍"累"の首を落としていた。
私は、その美しい剣技を見て私の剣士としての頭脳が動き始めたような感じがした。そして、その後すぐに新しい技が完成した。それが――『六道怪奇』。
冨岡さんの『凪』と同じく自身の間合いに入ったモノを六連斬で斬り刻む。そんな技と、もう一つできた技が――『弦月斬』。
これは、弧を描くように水平から反対側にまた水平に戻すような技で、その形が下弦の月、上弦の月に似ているから『弦月斬』と名付けた。
「冨岡さん。助太刀を...と、おや。もう終わっていたようですね」
と、わざとらしく言う。
「...魂魄か。あぁ、もう終わった」
「そうですか。それは良かったです。それと、その少年は久しぶりですね。前は自己紹介を忘れていました。私は『幽玄の剣聖――魂魄妖夢』です」
しかし、少年は緊張しているのか、話そうとしない。いや、違う。その前に話す体力が残っていないのだ。
「そうですか、お疲れのようですね。なら、私はここで撤退するとします。後処理は任せましたよ」
と、私は去っていった。
第弐話終
中々胡蝶さんよりの性格になってしまった妖夢さん。さて、少しこれまでのものを整理しましょう。
まず、魂魄流は様々な分派があります。一番型の数が多い流派は、”本家派”で、一番少ない流派が”黒分派”です。紹介しましょう。今までの。
本家派
壱ノ型――『幽鬼剣・妖道餓鬼の断食』
弐ノ型――『餓鬼剣・餓鬼道草紙』
参ノ型――『餓王剣・餓鬼十王の報い』
肆ノ型――『獄界剣・二百由旬の一閃』
非想天則派
壱ノ型――『人符・現世斬』
です。では、また次回orどこかで。