第3回〇〇年度高度育成高等学校卒業生進路に関する会議
議事録
「本日は忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。それでは、ただいまより第3回高度育成高等学校卒業生進路に関する会議を行いたいと思います。さっそく本題へ入りたいと思います。現在の状況を説明お願いします」
「えー、今年度の高度育成高等学校の暫定Aクラスがほぼ確定致しました。この場合のほぼと言うのは何かと言いますと、この学年の最終試験も終了し、何かしらの不祥事が起きない限りはクラスが入れ替わることがないことを意味する次第であります。早く暫定と言う文字が取れることを願う次第でありまして」
「状況を手短にお願いします」
「失礼いたしました。暫定Aクラスの進路ですが、前回の会議で説明しましたとおり、関係者各位のご協力もあり、無事に希望する進路・就職先へのあっせんが進んでおります。本年度の特徴といたしましては、ここ最近の傾向を示すとおり、海外を希望する生徒が5人と国外を選ぶ生徒が増えております」
「それは問題ないのか?」
「受け入れという意味では問題ありません。幸い、海外の大学からも是非にと受け入れの了承を取り付けてあります。ひとえに、多くの卒業生たちが結果を出してくれていることが好意的なものへとつながっているのだと思います。そういう意味では高度育成高等学校に出資している価値があったのではないかと」
「学校の存続はこの会議とは無関係では?」
「失礼いたしました。何かと税金の無駄遣いだと騒がれることも多くありまして、どんなもんだと海外からの評判を叩きつけてやりたい気持ちにもなる次第でして」
(一同笑い)
「それは頭脳の流失に繋がっているのでは?」
「これは手厳しい。確かにそういう面もあるかもしれませんが、日本人が国外で活躍する道を作るというのは非常に意義があるのではないかと」
「ですので、学校の存続に絡む内容は別の会議でお願いします」
「失礼いたしました。今後も海外を希望する生徒が増えることが予想されますが、先ほど話したとおり今のところは受け入れ体制に問題は起きておりません。が、今後も増えていくとどうなるかは悩ましい次第であります。やはり国内と比べるとフォローできる範囲も乏しく、相手の好意と生徒任せとなりますので、実際に4年前に卒業した生徒は、留年を繰り返した後に退学をした生徒も出ております。その大学からは、これが続くようでは受け入れを断らざるを得ないと釘をさされております」
「やはり希望先は国内に限定するべきでは?」
「高度育成高等学校に限らず、海外に進学する生徒はおりますので、この学校だけ国内に限定するというのは難しいものがあるかと」
「海外に行きたい奴は実力で行けばいい」
「もちろん、実力でも合格できるだけの教育は行われているはずですが、この希望するところへ進学・就職できるというのはこの学校の最大の売りであり、生徒がAクラス入りを目指して頑張る動機にもなっております。そこを崩して生徒のやる気を維持できるのかどうかは」
「そんな見え透いたニンジンがなければ頑張れない人材など税金で作る必要があるのか?」
「学校の存続に絡めた指摘は控えてください」
「ごほん。えー、今後の課題としてなるべく国内の大学に進学したくなるような、国内の大学の魅力をより伝えられるようにするというのを努力目標として掲げるというので、そこはなんとか……とりあえず話を戻します」
「ふん」
「進路状況に戻しますが、前回の会議では未定となっていた女子生徒の希望進路。『綾小路清隆のお嫁さん』という希望ですが、どうやらカップルであることが確認が取れましたので、認める方向でどうかと決議したいと思います」
「……そんなふざけた進路を通すのか」
「希望は希望ですので、どちらかが親の同意が必要な未成年であれば、ほぼ100パーセントの例外にすることも出来ますが、どちらも成人済みですので、カップルの片方が結婚したいと願うものを蹴る理由としては弱いかと」
「男側の同意無く結婚するのは、人道的な問題はないのか?」
「最悪婚姻届けだけ出して、無理なら離婚してもらえればそれで」
「おい」
「入学してすぐ退学するのと同じような形として押し通せるかと」
「多少強引だが、やむをえまい」
「では、この女子生徒の希望進路『綾小路清隆のお嫁さん』というのを認めるということで、よろしいでしょうか」
「「異議なし」」「ふん(放棄)」
「賛成多数と言うことで、可決とします。これで前回の会議でお知らせした全生徒の進路が確定いたしました」
(一同、拍手)
「ありがとうございます。これで終わりとなれば万々歳ですが、しかしながら、由々しき問題が生じまして」
「由々しき問題?」
「お配りしました資料3*1をご覧ください」
「Aクラスが増えたのか?」
「増えただけでしたら、昨年はもっと大勢いましたので、そこまで問題となりません」
「ふん。南雲とかいう生徒が大量にAクラスに引き込んだんだったか。はた迷惑な生徒だった」
「いけませんよ、ルールで認められているものですから」
「クラス同士で争うという趣旨に反する行為を認めたのがそもそもおかしいのだ」
「それは去年話し合って結論をつけたことでしょう」
「わしは賛成しておらん」
「そこまでにしてください。話がそれています。資料3の話に戻してください」
「失礼しました。資料3に女子生徒の希望進路を記載しておりますので、お読みください」
「こ、これは……」
「若さって凄いですね」
「先程の決議よりも先に議題するべきでは?」
「な、なんだこのふざけた進路は、ふざけるな」
「お静かに、気持ちは分かりますが、そこは冷静にお願いします。資料に記載しました通り、この移籍してきた女子生徒もまた『綾小路清隆のお嫁さん』という進路を希望しております」
「どういうことだ」
「なんでも先程の女子生徒が希望進路に『綾小路清隆のお嫁さん』を希望したというのを聞きつけて、抜け駆けをさせまいとAクラス入りをしたそうです」
「ポイントを貯めこんでいたのか?」
「人望がある生徒だそうで、クラスの皆から応援されてポイントを託されたと」
「バカな!? 卒業時にポイントを現金化できることは、公表済みのはずだぞ。そんな大量のポイントを応援で渡すなど」
「集めた経緯はここでは、問題としません。実際に学校側も、問題なくポイントを集めたことを認めたために、移籍が認められています」
「青春ですなぁ」
「いやー若い」
「しかし、どうするというのだ」
「そもそも綾小路と言う生徒は先程の生徒と付き合っているのだろう。それならば、却下するしかないはずだ」
「ええ、おほん。そのご意見は御もっともなんですが……」
「なんだ。反論があるのか」
「この綾小路と言う生徒は、この移籍した生徒とも恋人関係にあるようです」
「なんだそれは」
「二股ですか」
「これが若さってやつか」
「……うらやましい」
「誰だ、今うらやましいっていったのは、けしからんことだろうが」
「まあまあ、落ち着いて。どちらの女子生徒も納得の上で3人で付き合っているという話でして」
「それで出し抜いて結婚しようとしたのか」
「修羅場だな」
「中に誰もいませんよ」
「「「ナイスボート」」」
「静粛に、バッドエンドにしてどうするんですか。この3人の関係はよく知られているらしく、だからこそクラスメイトも応援して移籍のためのポイントを出した、と。その気持ちを考えれば、希望する進路を認めるべきだと私は考える次第でして」
「ならば、先の生徒の希望は却下するのか。何のために決議したというのだ」
「いえ、それはそれで認めるべきかと」
「バカな、どうするというのだ!」
「同じ生徒との結婚を希望する生徒が2人いる以上、どちらとも結婚するということで100パーセントの実績を維持することにもつながると思います」
「どちらとも結婚だと!?」
「重婚ですな」
「うらやましい」
「夜が大変でしょうに」
「これが若さってやつか」
「さっきから若さについてしか発言してません。もう少し考えてください」
「これも若さってやつか」
「……法律違反を認めるとでも? それともなんだ。結婚してすぐ離婚して結婚するとでも?」
「いえ、違います。この際、法律の方を変えてもいいのでは? このあたりどうなんでしょうか、内閣府の見解をお願いします」
「そうですね。重婚については認められない国の方が多いですが、結婚できる余裕がある人が責任を取れる範囲で複数人と結婚することは少子化対策からも有効なのではないかという意見は出ております」
「バカな。そんなたわごとを。結婚できる余裕がある人を増やすのが国の仕事と言うやつではないのか」
「それは正論なんですが、日本の少子化は背に腹は代えられないという状況まで追い詰められているわけでして、日本は歴史的に見てもほんの一昔前までは、有力者の妾は暗黙の了解として認められていた国でもあります」
「そ、それはわしが妾の子だからバカにしてるのか?」
「そんなことはありません。妾の子ということも存じ上げておりませんでした」
「ぐぬぬ……」
「話を戻します。いろいろと多岐にわたって調整は必要になるかと思いますが、内閣府としては前向きに検討したいと思います」
「分かりました。では、希望進路の『綾小路清隆のお嫁さん』を認めるという方向でよろしいでしょうか?」
「卒業までに間に合うのかは厳しいですが、重婚を一丁目一番地、全員野球でなるはやに合法化したいと思います」
「それは心強い」
「これで希望進学100パーセントを維持できますね」
「俺も節子を愛人から嫁にできる」
「今、何か言いましたか?」
「な、なにも言っていない。俺に、愛人などいないから」
「そういえば銀座のママと大層親しいとか」
「うらやましいですなぁ」
「これが若さってやつか」
「えー、皆様方、そういう話は会議が終わった後でお願いします。そうですね、いいタイミングですのでここまでにしましょう。全員の希望進路への進学・就職・結婚が決まったということで、この会議は締めたいと思います。あとは、重婚の調整だけお願いします」
「分かりました。それでは閉会としましょう」
「「「「ありがとうございました」」」」
こうして日本で重婚が合法となり、綾小路清隆は重婚第一号として歴史に名を刻むのであった。
とある生徒の名前と希望進路が記されている
内閣府が見解を述べていますが立法は国会の役割です。