私は、薄暗い洞窟の中にいた。
洞窟の奥からは光が漏れていた。
そこには、黄金に輝く一本のヤリが台座に突き刺さっていた。
私はそのヤリを、おそるおそる台座から引き抜いた。
すると、ヤリはまばゆい光を放ち、私は目を開けていられなくなった。
徐々にその光は暗くなっていき、最後には光は完全に消えてしまった。
やっと目を開けられるようになって、しばらくぼんやりとヤリを眺めていると、突然、ギロリ!とヤリがこちらに目を向けてきた!
思わず、「わっ!」と驚いて手がすべる。
が、ヤリは落ちずにフワリと宙に浮いた。
私があっけにとられていると、宙に浮かんだヤリが突然、柄の部分で私の頭を ぽかっ!と殴った。
殴られたせいで頭がクラクラする。…なぜ…この洞窟に来たのか⋯
…このヤリは一体…?
──シワイ島。 ここが私の住んでいる島だ。
その片隅にある小さな村。カラス村。
そこで毎日魚を釣ったり、夜になったら星を数えたりして、自由気ままに暮らしていた。
だが、今日は私にとって、最も重要な日だ。
なぜなら、今日は「チキン大食いレース」の日。
この「チキン大食いレース」とは、その名の通り骨付きチキンをたくさん食べた者の勝ち!という、いたってシンプルな遊び。
しかし、私たち10代の若者たちにとっては、真剣勝負の「決闘」なのだ。
今日こそは、長年負け続けているライバル、ボルトに勝つ!
今までのアイツの最高記録は80皿、私の最高記録は73皿⋯
でも今日は、絶対にアイツに勝ってみせる!私は気合いを入れた。
いつもの食堂に、観客たちが集まってガヤガヤと騒ぎ出した。
私もウズウズと血が騒ぎ始めた。
「始め!」というシェフの合図と共に、「チキン大食いレース」が始まった。やはりアイツの食べるスピードは早い!他の参加者をぶっちぎりで追い抜き、あっという間に30皿40皿と平らげていく。
それに比べて、私はまだ15皿だ⋯もはや格が違う⋯
この食堂で作られる骨付きチキンは、とても美味しくて大好きだ。
だけど、何本か食べ進むと、油のギトギト感にやられて、胃がはち切れそうになってくる。
気がつくと、他の参加者と大差をつけたアイツは90皿という大記録を出していた。勝負はついた。
結局、私は75皿でギブアップ⋯完敗だ⋯
「これで113連勝!でもって、記録も更新しちまったぜ!」
アイツの得意げなヒーローインタビューが聞こえてくる。
私はため息をついて、食堂を後にした。
アイツに負けた事と、骨付きチキンの胃もたれとで気分は最悪。
その時、たまたま通りがかった薄暗い洞窟の奥から、光が漏れ出していて、私は導かれるように、洞窟の奥へと足を踏み入れた。
薄暗い洞窟の奥へ奥へと進んでいくと、そこには綺麗な装飾のされた1本のヤリが台座に突き刺さっていた。
私はそのヤリをおそるおそる台座から引き抜いた。
すると、ヤリはまばゆい光を放ち、私は目を開けている事が出来なくなった。
やがて、徐々にその光は弱まり、最後には完全に消えてしまった。
やっと目が開けられるようになり、しばらくぼんやりとヤリを眺めていると、唐突に装飾だと思っていた部分が開き、ギョロっとした目玉が私を睨みつけてきた!
私は「わっ!?」と驚いて手が滑り、思わずヤリを放り出してしまう。
瞬間、ヤリは落ちる事なく宙にとどまり、ますます私は驚いた。
私があっけに取られていると、ヤリが宙を滑り、柄の部分で私の頭を ぽかっ!と叩いた。
「うかつに触るな!ヒヨっ子が!!」
ヤリが動いて、喋っている!私は夢でも見ているのだろうか?
⋯いや、夢じゃない⋯叩かれた頭の痛みが、そう訴えている。
黄金のヤリが宙に浮き、喋っている、しかも睨みつける視線はヤリのように鋭い。ヤリだけに⋯
黄金のヤリは
「キサマの名はなんと言う?名乗れ!」
と、えらく横柄な態度で言い放った。
私は少し考えたが、戸惑っていても仕方がない。ひとつ大きく深呼吸をすると、私はこのナマイキなヤリに言い返した。
「私の名はターフ。ターフ・ザ・ジャッカルだ!」
ヤリは上から下まで私をジロジロと見ながら
「オレ様はアヌーだ。見たところオマエは⋯お、女!?⋯」
私が女だからなんだと言うのだ、そんな事は見ればわかるだろう。女で悪かったな。
これが、私とアヌーとの出会い。
この出会いが、全ての始まりだった。
初投稿です。
感想よろしくお願いします!
なるべく批判は優しめにしてもらえると⋯( ;꒳; )
次回もお楽しみに!
【次回予告】
「第2章 災いの杖」