ターフ・アドベンチャー   作:桂馬@ルキト

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第二章 災いの杖

── 私はまだ、洞窟の中にいた。

(アヌー)「まさか⋯このオレサマを引き抜いたのが⋯女だとは⋯」

ヤリ(アヌー)は、宙に浮いたままブツブツと呟いている。かなり困惑しているようだ。

確かに私は女だ。だからなんだ!

すると、アヌーが突如大声で叫び出した。

「オレサマの主(あるじ)が女?フン!認めん!!」

その言葉にムカついた私は、目の前のナマイキなヤリにこう言い返した。

(ターフ)「はぁ!?抜いてもらっといて何その態度!ありえないんですけど?」

私とアヌーはその場でしばらく言い争うと、アヌーが声を荒らげてこう言い切った。

(アヌー)「とにかく、キサマと手を組むなど願い下げだ!」

(ターフ)「あっそ!じゃあもういい!」

結局、出会った早々ケンカになってしまった。

しかし、このナマイキなヤリをこの場に放置しておく事も出来ず、仕方なく、返事をしなくなってしまったヤリ(アヌー)を持ち帰る事にした。

洞窟を出て、家に帰ろうと思ったその時、一人の男の子がもの凄い勢いでかけて来た。

すごく慌てている様子だ。

私は「どうしたの?」と声をかけた。

男の子はひどく青い顔をして、切羽詰まった声で私にこう訴えた。

(男の子)「魔女が魔物をいっぱい出して村を襲ってるんだ!ボルトの兄ちゃんが戦ってるけど、早く誰かを呼ばないと、兄ちゃんが危ない!」

ヤリの次は魔女とは⋯まったく、不思議な事が次から次へと⋯

とにかく、急がなければ。

私は男の子に案内を頼み、魔女の元へと走り出した。

 

── 一方その頃

ボルトと魔女は激しい戦いを繰り広げていた。

紫色の髪に、全身紫色の衣装を身にまとった魔女は、優しそうな笑みを浮かべながら、禍々しい魔物を次々と繰り出し、ボルトを取り囲み襲いかからせる。

しかしボルトは、魔女が繰り出すその魔物たちを次々と自慢の鉤爪(かぎづめ)で引き裂いていく。

二人の力はほぼ互角だった。

(ボルト)「いいかげん魔物を引っ込めろ!どこの誰だか知らんが、村を荒らすヤツは、この俺が全員ぶっつぶす!」

それを聞いた魔女は、ニコニコ笑いながらこう答えた。

(紫の魔女)「それは出来ませんね。ですが、オーブのありかを教えてくれるのであれば、この子たちをお家に帰しますね。」

(ボルト)「オーブはおとぎ話でしかないんだ!わかったらとっとと帰れ!」

ボルトは紫の魔女目掛けて飛びかかった。

しかし、その攻撃は魔女の張ったバリアに阻まれてしまう。

ボルトが何度攻撃してもバリアは硬く、紫の魔女には傷ひとつ付けられない。

(紫の魔女)「いけませんね、女性に暴力をふるっては。」

紫の魔女は、またニコニコしながら言った。

怒っているのか、面白がっているのか、全く分からない。

それが逆に気味が悪い。

(紫の魔女の杖)「主(あるじ)よ!いつまでも小僧にかまっている暇はない。他を当るぞ。」

紫の魔女が持っていた杖が突然喋り出した。

思わず、ボルトの攻撃の手が止まる。

(紫の魔女)「はぁ⋯教えてくれそうな人だと思ったのに⋯残念ですね、マガさん。」

そう言うと、紫の魔女はどこからかほうきを取り出し、マガと呼ばれた杖を持って、そのほうきにまたがった。

紫の魔女が飛び立とうとしたその時、男の子に案内されたターフが駆けつけた。

(ターフ)「ボルト!加勢するよ!魔女はどこ?」

ボルトはほうきに乗った魔女を指差した。

すかさず、ターフは紫の魔女に向かって声を張り上げた。

(ターフ)「待て!!」

その言葉が届いたのか、魔女の乗ったほうきがピタリと止まった。

そして、ターフが持っているヤリを見てこう言った。

(紫の魔女)「あら、あなた⋯伝説のヤリに選ばれたようですね。それなら⋯その力がどれほどの物か、試させていただきます!」

そう言うと、魔女は天空から魔物を繰り出してきた。

黒い犬のような魔物が次々と現れる。

(ターフ)「アヌー!戦える?」

そう問いかけても返事がない。さっきのケンカで、まだ腹を立てるのか?

そう思ってよくよくアヌーの顔(?)を覗き込むと、なんとアヌーは呑気にイビキをかいて寝てるじゃないか!

(ターフ)「アヌー!起きろ!!」

ターフは杖をガクガクと揺さぶり、寝ているアヌーを叩き起した。

やっと目を覚ましたアヌーだったが、ターフと目が合うとそっぽを向いてしまった。

(アヌー)「言ったはずだ。女と手を組むつもりは無いと。」

(ターフ)〈まだ引きずってる⋯〉

ターフはさっきのケンカを思い出した。

(ターフ)〈私もちょっと言いすぎたかな⋯?〉

そう思うと、だんだん不安になってきた。

その時、真っ黒な犬の魔物たちが、一斉にターフを目掛けて走り出した。

それを見たボルトが叫ぶ!

(ボルト)「来るぞ!」

しかし次の瞬間、複数の矢が犬の魔物たちを次々と貫いていた。

矢に貫かれた犬の魔物たちは、たちまち黒い霧となって消えていく。

ターフが矢の飛んできた方向に目をやると、右目はピンク、左目は緑色をしたオッド・アイの少女が、木の上から紫の魔女に狙いを定めて矢を引き絞っていた。

よく見ると、オッドアイの少女のいる木の下に、さっき道案内をしてくれた男の子がいる。きっとこの子が少女を呼んでくれたのだろう。

(紫の魔女)「今日は運が良かったようですね。私はひとまず帰ります。ちなみに私の名前はマフィー。マフィー・リクルスです。次もまた私とマガさんの邪魔をするのなら、今度は本気でお相手しますよ。その時は覚悟して下さいね。」

そう言うと、マフィーはひらりとほうきにまたがり、空高く飛び去ってしまった。

しばらくすると、矢をかまえていたオッドアイの少女が木から降りて、こちらへと近付いて来た。

(ターフ)「助けてくれてありがとう。」

ターフはオッドアイの少女にペコリと頭を下げた。

(オッドアイの少女)「礼には及ばないわ。それと、私はレイン。レイン・ザ・コモドドラゴンよ?」

すると、レインはターフの足から血が出ている事に気が付いた。恐らく急いで駆けつけている間にどこかで切ったのだろうが、ターフ自身も傷がある事に気付いていなかった。

(レイン)「その傷、見せてくれない?大丈夫、すぐに終わるから。」

そう言うと、レインはテキパキとターフの足を治療し始めた。

(レイン)「私のママは医者なの。はい、これでもう大丈夫よ。」

(ターフ)「悪いな。何から何まで⋯」

ターフは足に巻かれた包帯をしげしげと眺め、もう一度レインに頭を下げた。

(ターフ)「君がレインを呼んでくれたんだね?」

ターフはレインの隣にいた男の子に話しかける。男の子は黙って軽くうなずいた。

すると、遠くからその男の子の元に、母親と思しき人が駆け寄ってきた。

男の子はその女性の顔を見て走り出し、そのまま二人は抱き合った。

聞けば、魔女が村を攻めてきた時、親子は離れ離れになってしまったんだそうだ。

そんな状況だったのに、母親を探す事より、ボルトを心配して人を呼びに行った男の子の行動は、とても立派だったと思う。

すると突然、空から緑色の宝玉が降りてきて、抱き合う親子の頭上で、まるで二人を祝福するかのように輝き始めた!

(ボルト)「これは⋯さっきの魔女が欲しがっていたオーブなのか?本当にあったとは⋯」

しばらく誰も口も利けず、輝くオーブを見つめていると、ゆっくりと輝きを失ったオーブは、物凄い速さで森の奥へと消えていった。

皆が呆然と立ちすくんでいると、唐突にアヌーが口を開いた。

(アヌー)「オーブは全部で七つある。」

(ボルトとレイン)「ヤリが喋った!?」

ボルトとレインが驚いて声を上げる。

そんなボルトとレインには目もくれず、アヌーは話を続けた。

(アヌー)「ヤツらはそのオーブを集めて、邪神を復活させようとしているのだろう。その邪神の名は⋯オーマガ!かつて、このシワイ島の大陸を滅ぼしかけたバケモンだ。」

(ターフ)「邪神⋯オーマガ⋯!」

ターフは邪神の名前を聞いて、つばをゴクリと飲み込んだ。

(アヌー)「オレサマはそのオーブの守り神、アヌーだ。で、ヤツが持っていた杖はまさしく、災い(マガ)の杖⋯と、いったところだろう⋯」

(ターフ)「守り神だったとは、初耳だ。」

(ボルト)「つまり、ヤツらより先にオーブを探し出して守ればいいんだよな?」

(アヌー)「そういう事だ。」

そこまで言うと、アヌーはターフに向き合い、少し気まずそうに言葉を続けた。

(アヌー)「それとターフ⋯さっきの事はすまなかった⋯」

(ターフ)「私も言いすぎたよ。ゴメン。」

二人はニッコリと笑いあった。

(アヌー)「改めて、キサマを主(あるじ)と認めよう。ただし、全てを認めたわけではないがな。」

(ターフ)「何それ?」

和やかに笑いあう二人の間に割って入るように、ボルトとレインが顔を出した。

(ボルト)「そのオーブ集め、俺も協力させてもらうぜ!面白そうだからな!」

(レイン)「安全な旅には、安全な看護師が必要じゃない?」

ターフは二人の顔を交互に見つめると、はっきりと言い放った。

(ターフ)「よし!善は急げだ、さっそく明日出発するぞ!」

ターフの旅は始まったばかりである。

 

──一部始終を水晶玉で見ていたマフィーとマガ⋯⋯

(マフィー)「厄介な相手が現れましたね、マガさん。」

(マガ)「若い芽は早めに潰すまでだ。主(あるじ)よ。」

(マフィー)「ですよね。ターフ、あなたの苦しむ顔を見るのが今から楽しみです。フフフ⋯」

マフィーはそう言うと、不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

 

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