筋肉ムキムキ細マッチョウマーウーマン≒アグネスタキオン概念はかならずや流行らせろ。
「君は機関のつくりだした、ウマ合成型オーグメンテーションプロジェクトの最高傑作だ。ウマズライダー。そう、名付けさせてもらおう」
これを被ってくれ。
男はそういって、奇妙なヘルメットを手渡してきた。
ウマ娘の異形の成れの果て。耳だけは似ていたから、かろうじてそうだと分かった。
だが……。梅毒患者のそれのよりも鼻は腫れていて──いや、間延びしているまである。そうして何よりも、目がイッている。なんか横向きについていた。
それは──
だが、男はかまわず喋りつづける。
「ターフイ初号型マスクだ。君の身体に施されたプラーナの吸収増幅システム──つまり体内とエナジー・コンバーターにおける、君の生命力そのものを直接支えているそれ──君を超人に変えた、圧縮されたプラーナの力の源──それへと、連動している。
このほかにも動力源として、防護服の胸部コンバーターラング、そしてベルトに連動している。残存しているプラーナを強制排除すれば、ウマ合成型オーグメント、
池谷と自称してみせた、いちおうはトレセン学園の一介のトレーナーなはずの彼は、いまや拳銃さえその手に持っていた。そうしてブラックスーツに白いYシャツだけの、さながら喪服のようなその姿に似つかわしい白銀のアタッシュケースを片手から下げていた。
このケースの取っ手に手錠がかけられ、そのもう一方がほかでもない彼女──いまや『ウマズライダー』と名付けられた、そんな一人のウマ娘──の手首にある、手錠のもうかたわれへと結びつけられていた。
運命の鉄鎖。それが彼らを繋いでいたのである。男は黒ずくめで、少女はあのヘンチクリンなヘルメット、そうして着込まされた白銀のいかついウルトラマンじみた姿だった。ただ腰元のベルトのバックルがそこにある、赤く塗装されたエネルギータービンの羽根をみせつけんばかりであった。
そこはトレセン学園から郊外のほうにある一戸建ての廃屋だった。ウマ娘の少女がここで目覚めたときには、すでにある騒動を彼女はへたあとであった。
ただ彼女にはその記憶がないのである。池谷と名乗ったトレーナーをここへと呼びよせたのも『過去の』彼女自身であると、そう池谷からきかされても、やはりイマイチぴんとこないばかりだった。
池谷はおぼえのないという少女の言にはやや驚いて、困惑さえしているようであった。
「変身の脳負荷のあまりに、記憶がうちけされたのか……? いや、しかし、いまは不味い。追っ手が来ている!」
追っ手?! 少女が仰天する番だった。いわれてみれば、知らぬ天井に出迎えられて目ざめてからこの方、ドキドキしっばなしだった心臓の拍動、それ以外の
「被れ!!」
少女の手にしていた馬面のヘルメットが、彼女の小さな掌にズッシリとのしかかかる。
池谷がその手にしていた
あろうことか、追っ手はその古びた木のドアにRPGをぶち込んだのだった。
木っ端やモルタルの破片が勢いよく飛び散る。とっさに池谷はウマ娘の少女をかばいながら床へと伏せた。そのブラックスーツの背に血がにじみ、池谷のきたない悲鳴がワイルド・ケモノの雄たけびのように響きわたる。ンィアーッッツ!!
大破壊損壊された元
「どうも、池谷≒サン。ターミネーターです」
「ど、どう……も (吐血音) ター、ミネー、タ、さん。(血の流れ出す音) いけだに、でず」
背中から建築材が腹にまで抜けていようと、挨拶には挨拶を返すその心の姿勢、リッパ!
だがターミネーターには人の心はない。そのロケットランチャーに次発を装填する。狙うはいまや死に体の池谷、その頭部。池谷の瞳が真開き、ターミネーターのその冷酷な無表情をうつしだした。無慈悲!! 池谷に救いはあるのか、死ぬな池谷! 次回、池谷、死す!!
「、……ゃ」
「さようなら、池谷≒サン。俳句を詠もう(勧誘)」
「ぐぅうう……、きさまら、ショッカーの手のものか……? い、や……?」
ターミネーターの顔が初めて表情をみせる。オマイガー!! その
「冥土の土産におしえてやろう。ショッカーはわれわれ、オロチサン製薬と手を組んだ」
「なんだと……ッッ」
「……池谷≒サン。これはかねてからの疑問なんだが、わたしは君の孤軍奮闘ぶりをしっている……」
ターミネーターが何を思ったか、そのRPGから弾頭を抜き出し、信管の安全ピンをつけっぱなしにしたまま、地面に倒れふす池谷の目の前にそれを持ってくる。
池谷はその胸のなかに、あのウマ娘の少女を抱きかかえて庇ったまま、腹に建築材がつきささり動けなくなっていた。ウマ娘の少女は失神したのか、微微ともうごかない。
ターミネーターは、池谷がそんな彼女を胸もとに抱いてでも守ろうとしているのを尻目に、RPGのロケット弾頭を池谷の頭のうえで
弾頭の先についた信管、その安全ピンが引き抜き式であるにもかかわらず、この針金でできた輪っか状のピンに指をかけ、揺らしているのである!
あろうことか、このピンさえ抜けてしまえば、対戦車用のその弾頭が池谷の頭上からおっこちて、池谷の頭部に激突したその衝撃で炸裂してしまうかもしれないというのに──だ。
ブッダ!! そうして、ナムサン!! もしもそうなれば──もはや血を流しすぎて瀕死といっていい池谷はもちろん、彼がその身を呈して守ろうとしたウマ娘の少女さえも、ゴリンジユウ
しかし、ふとターミネーターはその悪夢の弾頭ゆすりをやめ、そうして……
……弾頭からピンを、ぬいた。
「ネーンねよ、こーろリヨ、OH
悪夢のようなベイビースリープソングが、ターミネーターの野太いバリトンボイスで、さながら死のレクイエムのようにして池谷、そうして彼らのいる廃屋のなかに響く。
なんとマッポーなリズム!! ショウシャ・オブ・ギオンのアラームさえも、上書きできそうなほどの冒涜的なそれだ。だがターミネーターはいまや彼が手にしている、文字どおり一触即発なRPG弾頭を片手でたやすく、わしづかんでいる。
「池谷≒サン。聞きたいことがある」
もはや顔から血の気もうせ、真っ青になりながらもどす黒い紅にそまったブラックスーツ姿のまま、床に倒れふす池谷。
そんな彼のすぐそばに立ち、あるいはその頭上のあたりに弾頭をもって掲げ、ターミネーターは問いかける。
池谷の流れ出す血が床を伝い、ながれていってはターミネーターの足元は疎か、あのドアだった場所にまで、──そうしてあるいは今や池谷の手にとどくはずもない床に落ちたコルト・パイソンへと──、未練がましく行き着いてゆく。
「なぜ、君は戦う?
「われわれオロチサン製薬でさえ、いまではあのショッカーとやら、それが掲げている理想の幸福とやらにツイジュウしないといけない有様だ……」
「池谷≒サン、
「私はこれまで、君と幾度となく相対した。私は君となら、この世界、このウマ娘という異分子の蔓延る世界を浄化し、あるべき人の世界にできると信じている」
「池谷≒サン。さあ、答えを。ギブ・ミー・アンスアー!」
──池谷はいまや、
──!!!! ブッダ!!! ワッツ・ザ・クソ!!
天高く突き上げられしは、池谷≒サンの正真正銘のクスリ指!! このサイン、クスリ指だけを上向きにして上をつき刺し、あとの指は握りしめるサイン──ブッダ・サイン!!!
これはオロチサン製
ターミネーターの防弾チョッキを着飾っただけの肉棒をおもわす、その黒光りする体躯そのものが憤激によりまさに怒張せしめる──なんたるア・シュラ・バなそのあり様!!
「池谷≒サン。貴殿はもう少し、賢明かと思っていた……!」
だが、そんな悲観にあふれる声とは
それからは言葉もいらないといわんばかりに、ターミネーターはもっていたロケット弾頭を、あくまでもそっと、地面に倒れる池谷と、かれが抱くように守ろうとしていたウマ娘の少女のあいだへと挟みこませた。
「アデュー、池谷≒サン。お前は失血死で死ぬだろう。そうして、お前が守ろうとしていた女は、その目覚めで身じろぎしたそのときに、この弾を床に落としてしまい、起爆して──
──死ぬ。
──おやすみ。池谷≒さん」
だが、それに答える声はもはや、なかった。
ターミネーターが、倒れる二人に背を向けて外へと立ち去ってゆく。魁偉なるその体が影となり、二人にかぶさってゆく……。
いや!?
もはや見えているかさえ怪しいその目に、あの魔を絶ちては悪をぶった斬るコテツ・カタナのするどい輝き!! そうして彼の盲目がどうしたのか、その手が刹那ともなく、音さえもなく空を切ったかと思えば、──
あの
アゼン!! まさか池谷は最後のそのまごうことなき死力を、その一投げにかけたというのか──?
ターミネーターがまさにカラクリじかけのように振り向きざま、弾頭をそのぶっとい脚で蹴り飛ばす──
──その
それは人形になりながら──スタンドだ! ──手として伸ばしていた先にある、あの
一発しか聞こえない──
ターミネーターの額が撃たれて背ごと反り返り、
ターミネーターの足元で、あの忌まわしきロケット弾が爆発し、
ターミネーターのもつRPGが弾き飛ばされる!
チェスト!! 池谷のスタンド、
引き金をひきながら、つづけざまに撃鉄を三連打してみせるフィンガー・テクニック! その射撃はあまりの速さに、三発撃たれた者には一発しか銃声がきこえないという──!
ターミネーター、打ちのめされたばかり、いまおきあがろうとしていたソイツが、吐くように罵りの声を上げた。
「お、お……前は!」
だがたちあがったターミネーターに、容赦の微塵もなく襲いかかる白銀の人影! イヤーッ!! その頭部には、馬頭觀音ビジュアルなあの奇怪面妖とした仮面だ!!
イヤーッ イヤーッ イァーツ イヤーッ イアーッ!!
グワーッ グワーッ グワーッ グワーッ グワーッ!!
恐れ知らずの連打!! たまらずターミネーターもひざをつく!
「き、きさま…… なんだ! データに、ない、やつだ……」
ターミネーターがうめく。
それに答えたのは、さながら少年のような声をするようになった、しかしやはりあのウマ娘、あの少女にちがいない。
「すまん、あいにく名乗るほどの名はもたない主義なんだ」
少女だった、いまや
「──