仮面ライダーO   作:墓脇理世

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異能共鳴(スキルリンク)
第1話「ヒーローの『覚醒』」


 少年は、夢を見ていた。

 荒廃した大地、ボロボロの身体、照りつける太陽すら覆う霧のヴェール。まさしく『絶望』の2文字で言い表すことのできるだろう風景の中に、黒薙(くろなぎ)颯斗(はやと)は立っていた。

 巨大な魔物が、逃げ惑う人々を次々に喰らい殺す。立ち向かった者はその鋭利な爪で身を引き裂かれ、無残に荒野の染みとなった。

 その光景を見ても、何も思わない。いや。何も、思えなかった。何かを想像することすら許さない血生臭い香り、圧倒的なまでの威圧感、それらが少年の思考を奪い去る。

 そんな中、悲鳴や魔物の呻きとは違う音が耳に入ったような気がした。

「ミスティ、テメェだけでも逃げろ!」

「嫌です!私はまだ戦えます!まだ、マスターと共に戦いたいんです!」

「テメェにしかできねぇことがあるんだよ!だから頼む、ここから離れろ!」

 白髪の少年と、青髪の少女。2人は何かを言い合っているようだが、黒薙にはその深い内容までは伝わらなかった。

「でも!でも!!」

「いいから!向こうに行けェェェェェェ!!」

 黒薙の視界が歪む。霧が濃くなり、黒薙の意識を奪う。この世界は、悪い夢か、それとも……。今はまだ、その答えは見えない。

 


 

「痛て……なんて夢見てやがんだ僕……」

 ズキズキと痛む頭を抑えながら立ち上がる黒薙。彼は無法不良(ロードアウト)──道を踏み外した不良生徒のことだ──から妙な形をした石像を押収して以来、頻繁にこの夢を見る。

 ──まるで呪いか何かだな……

 黒薙は息を吐いた。ただでさえ春の陽気に当てられてやんちゃに手を出す生徒が多く、取り締まる風紀委員の仕事が忙しいというのに、妙な夢に踊らされていては無理もないだろう。

 そのとき、携帯がブルッと震えた。表示された名前は“赤萩(あかはぎ)亜矢(あや)”。黒薙の同級生にして、またかつて黒薙が救った相手でもある。

「はいこちら黒薙、要件は?」

『「要件は?」じゃないわよ……アンタ、いつまで私を待たせるつもり?』

「いつまで、って……あぁぁぁぁぁ!!悪い赤萩さん!!すぐ行きますんで命だけは!!」

 慌てて告げると、そのまま通話を切った。

「やっべ、完全に春の陽気にやられてた!そういえば赤萩さんに呼び出されてたんだった!!」

 急いで学校を抜け、停めておいた自らのバイクに跨る。亜矢と待ち合わせた場所はそう遠くないが……急いでいたためか、路地から出てきた青髪の少女に気付かず、横から撥ね飛ばしてしまった。

「あいたたた……まったく何なんですかもう……あ」

「あぁぁぁごめんなさいごめんなさい!!!金ならいくらでも払うし救急車も呼ぶんで見逃してください!!!!」

「いえ、大丈夫です……別に大した怪我でもありませんし、この程度なら休めばすぐに治るはずですので……ところで、以前どこかでお会いしませんでしたか……?」

「いや、今日が初めてだと思うが……」

「そう、ですか……では、特に用はありませんのでさようなら。今のように人を轢かないようにお気をつけて」

 不思議な少女だ、と黒薙は思った。かなり速度が出ていたバイクに追突されても傷一つないように見えた。それについては身体硬化系統の能力だと思い込むことにしたが……

「どこかで見たことがあるような子だったな……」

 再び携帯が震えた。心なしか表示される文字が怒りに揺らめいているようにも見えた。

「あっ、はい、こちら風紀委員連合『執行衛兵(エンフォーサー)』第66支部……」

『そういう茶番はいいから、早く来てくれないかしら?私、いい加減に携帯を叩き割っちゃいそうなんだけど』

「悪い赤萩さん、あと少し待ってもらっていいか?」

『どのくらい?呼び出しておいて何だけどさ、ぶっちゃけ私もう帰りたいんだけど?』

「あと2分くらいで着くと思う、ほんとごめん、あとで行きつけのカフェ奢るからさ」

『……べ、別に、そういうの期待してるわけじゃないから……ま、まぁ?アンタがどうしてもって言うなら奢らせてあげないこともないけど』

「はいよ、それじゃちょっと待っててくれ」

 

《hr

 

 呼び出された高架下に到着した。

「悪りぃ、遅れた」

「アンタさぁ、遅れたで済む時間だと思ってるわけ?」

「ほんとごめんな赤萩さん……で、僕を呼び出した用事ってのは一体?」

「え、えっと……その……」

 黒薙は赤萩に用事があると呼び出されていたが、その用事までは聞かされていない。

「その、さ、あの、私、ね?その……」

「???」

「私、アンタのことが……」

 だが、この言葉に続くはずの甘いものはなかった。なぜならば、

「赤萩さんッ!伏せろッ!!」

 おおよそヒトから乖離した姿の怪人が、背後から襲いかかろうとしていたからだ。

「きゃあっ!」

「テメェ、何モンだ!?」

『……』

 白塗りのピエロのような怪人は、答えない。

「……赤萩さん、僕のバイクに乗って逃げろ。オートパイロットで勝手に動いてくれるから」

「で、でも、そしたらアンタは……?」

「安心しなさい、僕は『執行衛兵』ランサー部隊の隊長だぜ?」

「でも!!」

「いいから行ってくれ、早く!!!」

 半ば強引に赤萩をバイクに乗せて、逃げさせる。到着先に設定されたのは『執行衛兵』の本部。到着さえすれば増援が勝手にこちらに向かう。

『……別れの言葉は、あんなもので良かったのか?』

「まさかバケモンに心配される日が来るとはな……だがお生憎様、ここで散るのはテメェの方だ」

『なるほど。余程、愉快な人体模型になりたいと見た』

 怪人は黒薙に向かって一直線に走り出す。

「うおっ!?危ねぇだろうが!!武器は反則じゃねぇの!!?」

『知ったことか、恨むなら己の能力を恨むことだ!』

 棍状の武器を振るわれ、どんどんと逃げ場を失っていく黒薙。

『終わりだ、死ぬがいい!』

 その武器が黒薙の頭蓋を砕こうとしたその時。

「あーらら、引っかかっちゃった?間抜けが、僕がなんのために情けなく逃げ回ってたと思ってやがる」

 執行衛兵は全員があるものを装備している。『懲罰手甲(ジャッジメントハンド)』、入力したコードによって108もの能力を使用できる万能のツールだ。

「『第一懲罰術:捕縛(アインスジャッジスキル:バインド)』、これでテメェは終わりだ」

『第一懲罰術:捕縛』は設定した複数の地点を結んだ交点に向けて鎖を射出し、文字通り相手を『捕縛』する能力だ。

「神妙にしろオラァ!」

 ブーツに付けられたスイッチを押し、渾身の蹴りを怪人の腹に放った。だが……

「な、に……ッ!?」

『その程度で自分を倒せると思ったか?馬鹿め!』

 黒薙は蹴りを放った足を掴まれ、鎖ごと違法駐輪の自転車の群れに投げ飛ばされた。

「がァ……ッ!?ゲホッ!」

『自分の手を煩わせた罰だ、死ぬがいい!』

 だがその攻撃も、何者かにより弾かれる。

『どいつもこいつも……』

「まったく……素人が怪物相手に何を考えているのですか?」

「アンタ……さっきのあの子か……?」

「そうですよ、轢き逃げ犯の先輩?」

 少女は握った近未来的な銃を放ち、怪人を少しずつ追い詰めていく。

『貴様、何者だ!』

「さぁ?何者なんですかね……私もその答えを探しているんですよ」

 終始優位に立っていたが、エネルギーが切れ、一瞬の隙ができた。

『自分が何者かもわからぬ小娘が自分に勝てると思うな』

 その隙を突くように回し蹴りを少女の胴に放つ怪人。

「テメェ、何やってんだゴラァ!」

『邪魔だ』

 怪人に立ち向かう黒薙だが、あっさりと弾き飛ばされ、その衝撃で鞄に入れていた石像が飛び出た。

(クソ、こいつに状況を打開できる力があれば……!)

 黒薙の心の叫びに答えるかのように、石像が淡い光を放ち始める。

(頼む、イチかバチか、何とかしてくれ……ッ!)

 転がっていた石像を掴み、立ち上がると、より一層光が強くなり、次の瞬間には色を持ったベルトのバックルとなった。

「いける……いけるぞ!オイそこのピエロ野郎!僕がテメェを相手してやる!」

『はぁ?』

「見てな、今から僕はテメェをブッ倒すに然るべき姿になるぞ」

 バックルを腰に当てるとベルトが展開され、黒薙に巻きついた。

 そして、ドアノブのようなレバーを倒し、黒薙は叫ぶ。

 

「変身!」

 

『Ready?Immaturely OO……』




pixivの方からこちらにやって参りました、墓脇理世と申します。
こちらの作品は、私がpixivで2019年〜2021年にかけて投稿していたものを、そのままハーメルンに持ち出したものになります。
バクトを投稿するにあたり、せっかくですのでこちらも投稿することにしました。
文章なども当時のものをそのまま使用しており、至らない点も多々ございますが、何卒ご了承ください。
感想などございましたら、ぜひコメントしていただけると幸いです。墓脇でした。
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