仮面ライダーO   作:墓脇理世

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第11話「総て『破壊』するもの」

「マテリアブレイカー。マテリアキーのリミッターを強制的に解除し、本来以上の力を生み出すガジェット。それが、これからの戦いに必要になります」

「……なんだそりゃ?それは今出しますっつってすぐ出せるようなもんなのか?」

「少し時間はかかります……けれど、その力は、間違いなく先輩を強くする。誰にも負けないくらいに、強く」

 ミスティはまっすぐな瞳でそう言った。

「……チッ。ひとまずはテメェに従うよミスティ」

「わかってくれたならいいです、先輩」

 黒薙は不服そうな顔をしながらも、渋々了承した。

「……で、朱鷺澤。赤萩さんがさらわれた時のことを話してもらっていいか?別に嫌なら話さなくてもいいけどよ」

「う、うん……僕なんかが役に立てるなら……」

 朱鷺澤は自分が見た全てを黒薙に話した。

「……チッ、あのクソ淫行教師、誰の友達に手ェ出したか思い知らせてやらねぇとな」

『あー、あー、聞こえますかね?』

 黒薙が悪態をついていると、ふと、ミスティの端末からある男の、聞き覚えのある声がした。どうやらハッキングされたらしい。

『とはいえこちらからは発信しかできないわけですし確認もできませんが……一応言っておきますか。──赤萩亜矢は預かった。返して欲しければ指定した時に指定した場所まで来てくださいね』

 男は──菱杖透流は、それだけ告げると通信を切り……直後、地図データが画面に表示された。

 そこに添えられた文書データには、明後日の17時ちょうどにマークされた場所を訪れろ、と書かれていた。

「クソが、人をおちょくんのも大概にしやがれ……!」

「明後日、ですか……じゃあ、それまでに私はあれを作っておかないとですね」

「私も手伝いますよ、レーツェルちゃん。力になれるかどうかはわかりませんが……それで赤萩ちゃんを助けられるのならば」

「なら自分もやるっす、なんとかアイツらに仕返ししてやんないとイライラが収まらないんで」

 


 

「……おいおい、マジかよ。あの大馬鹿野郎、俺に何も言わずに何やってやがんだ……?」

「どうした、牧瀬?そんな真剣そうな顔をして。いや、友人が誘拐されて真剣になるのはわかるが……」

 冷静な声色で漏らす牧瀬と、落ち着いたような声だがよく見ると足を震わせる早見。

「ギャハハ!何でもねぇよ早見!っつーか怪我人とかいねぇのか?いねぇならいねぇに越したこたぁねぇけどよ!」

「赤萩を守ろうとして好田先生がやられたらしい。あまり大きなけがはなかったようなのが幸いだが……」

「……なるほどな。俺も俺でできることをしてやるとするか」

「ん?何か言ったか?牧瀬」

「何も言ってねぇって早見!じゃ、悪いが俺はちょっと用事があるから先帰ってるわ!黒薙になんか聞かれたらそう答えといてくれ!じゃあな!」

 牧瀬は笑みを崩さずに学校を去る。しかし、その笑顔の裏では猛烈な焦燥感に襲われていた。

(……チッ。人の忠告もロクに聞けねぇ自分勝手な部下を持っちまった上司ってのも面倒なもんだ。アイツぜってー殺す)

 

 

「怪我人の確認、終わりました、けど……ごめんなさい、遠山さん。私が、ここで待機していれば……」

「自分を責めるのはやめてくださいね、六花ちゃん。反動でほぼ動けない私の代わりに全校生徒の被害を確認したあなたを、いったい誰が責めるというのかしら?」

「で、でも、私が、ちゃんとできてれば……」

「くどいわ、双海六花。何度も同じこと言わせんな。そもそも執行衛兵を可能な限り呼び出したのは誰でしょうね?責任を持つべきはあなたではなく私よ」

 遠山は自責の念に駆られる六花を嗜める。

「お〜っす委員長、怪我人への応急処置の手配完了したっすよ〜」

 放っておけば長引くと判断したのか、有栖川が割って入った。

「ありがとうございます千聖ちゃん。ではレーツェルちゃんのところまで行きましょうか」

「へいよ……自分、あんまりレーツェルさんのこと信じてないんすけどね」

 無理もない。あれだけのことをした相手を信じるなど、事情も知らなければ無理があるというものだろう。

「えぇ、そうですね。けれど、まぁ、また裏切ったら今度こそ黒薙くんが責任取ってくれるらしいですし」

 対する遠山はくすくすと笑う。

「そ〜っすか。……で、レーツェルさんどこにいるんでしたっけ?」

「聞いて驚け千聖ちゃん。なんと執行衛兵の本部、その地下ラボよ」

 


 

「そういえば遠山先輩、前に言ってましたよね?“OOのベルトの仕組みさえ分かれば、ライダーシステムの開発は大きな飛躍を遂げる”って」

「えぇ、言いましたね。レーツェルちゃんの前で言った覚えはありませんが」

「ふふふ、黒薙先輩に話したことは全部私に筒抜けですからね……あとで話しますけど基本はそういうものだと思ってほしいです」

 ミスティら3人は執行衛兵本部の地下に設置されたラボに集まっていた。

「で、そのマテリアブレイカーとやらを作るのに必要なのってどんなもんなんすか?特殊な部品とかあるなら自分もちょいと財布の紐緩めるっすけど」

「その必要はないですね。部品が特殊というよりは構造が特殊というべきでしょうか……」

「なら安心っす、自分のお財布事情は今ちょいとばかし厳しいもんっすからね」

 ミスティの言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす有栖川。

「おっ、やってんだなミスティ。どうだ進捗は?」

「進捗率999%……とは行きませんね。むしろ限りなく0に近い感じです。今からやりますよ」

「おう、任せたよ……じゃ、僕はちょっと見回りがてら散歩してくる。なんか進展あったら連絡くれ」

 突然現れた黒薙は笑うと、ミスティらに背を向けて外に向かっていった。

「さぁ……私たちも始めるとしますか。レーツェルちゃん、千聖ちゃん」

 

 

『アホ薙颯斗〜!今すぐ第七学区に向かうにゃ〜!怪人が出た、それもあの裏切り者のクソどもにゃっ!!』

 翌日、明星学園復旧作業のため自宅で待機していた黒薙に、奈菜々からの緊急の連絡が届いた。

「了解っ、あのクソどもぜってぇぶっ殺す……ッ!」

 バイクに乗ると、黒薙は第七学区まで全力で駆けていく。到着すると、「地獄」としか言い表せないような光景が広がっていた。

『……到着が遅かったな、黒薙颯斗。もう少し早く来ていれば俺を止められたのではないか?』

『そ〜だよ、今から頑張ればボクなら止められるかもしれないけど……止めさせる気はないよ〜?』

「チッ、結城はともかくとして早瀬……テメェ、どこまで堕ちれば気が済むんだ……?」

 怒りというよりはむしろ戸惑いの色を浮かべながら、バキュームに問いかける。黒薙のその感情も無理もない。バキュームが、多くの住民を気絶させていたのだから。

『言っただろう、俺は常に自分が長く生きるために戦っていると。そのために他人のホルスを奪うなど……当然だとは思わんか?』

「なるほどな……テメェ、本気でそっちに浸かりやがったか。なら、かつての上司としてすべきことは一つだな」

 激しく憎悪のこもった目でバキュームを睨みつけると、黒薙はドライバーとマテリアキーを取り出した。

「テメェを止める。テメェは一線を超えちまったんだ……そのことを、愉快に爽快に理解しろ、早瀬。変身……ッ!」

『Time OO!』

 黒薙はOOに変身すると、それと同時にバキュームに飛びつく。しかし……

『黒いOOですら俺に勝てないのに、お前が俺に勝てる道理はないだろう?』

「チッ、やってみなくちゃわからねぇだろ、なんて言える戦力差じゃねぇよなァ!」

 OOの攻撃の全てを受け止めるバキューム。その反撃を一つ一つ着実に避けつつも、劣勢に陥っていることは誰の目にも明らかで。

『……いい加減面倒だな。雑魚の相手というのも』

「言ってくれるねぇ、僕の気持ちを少しはわかってもらえたか!?」

『……あぁ、痛いほどにな』

 


 

『さて、ボクはどうしようかな〜?あの脳筋バカとアホ薙ちゃんが殴り合ってる間に元々の目的でも果たしておこっかな?』

 OOとバキュームが戦う中、フォックスはこっそりとそこから逃げ出していた。

 周囲にいた者はみな執行衛兵が避難させている。フォックスはぐるりと周囲を見渡すと、人影の中によく知る相手を見つけた。

『みーつけた、ボクに殺されるまでのうのうと生き延びてくれてありがと〜、お陰で心置き無くあんたをぶっ殺せる』

「ひっ……!やめなさい!わたしは理事会の一人なのよ!?」

 その人物の背後まで瞬時に跳び降り、肩に手を乗せ、囁くように言った。

「チッ、アホ薙颯斗はなにやってんのかにゃあ!あたしらだけでこんにゃバケモン倒せるわけにゃいでしょうが……!」

「それでも、私たちは、あなたを止めます。一般市民には、絶対に、手を出させません」

『やれやれ……ほんっと、キミたちって正義が大好きだね〜、ボクも元々そっちだったし気持ちはわからないでもないけどさ〜』

 フォックスはため息を吐くと、その姿を消し、

『……だからって、ボクをこんなにした毒母への復讐を邪魔させるわけないじゃん?』

 二人の首を叩き、気絶させる。

『さ、今の言葉でわかったろ?あんたの命を狙うこのボクは、革命気取りのチンケな無法不良とかそんなチャチなモンじゃなく……』

 そして、赤髪で厚化粧の女の胸ぐらを掴み、

『あんたが、あんたのワガママで人生を滅茶苦茶にしやがったあんたの娘なんだよ。まさか娘の名前忘れるほどイカれた脳ミソはしてないよね、“ママ”?』

 その鳩尾に、強力な一撃を叩き込む。

「かッ、あッ……!?」

『その程度で吐かないでくんないかな〜、まだボクの復讐は始まったばっかなんだけど』

 明確な殺意のこもった拳が、女性の腹部を繰り返し叩き抜く。

「どう……して……わたしはあなたのために……」

『へぇ、まだ喋れるんだ。意外にタフだね〜……で、死んだ息子と夫の代わりと言わんばかりにボクに“オトコ”を強要したことのどこがボクのため?教えてよ、返答にかかわらず殺すけどね』

 フォックスは笑う。その笑みは、皮肉にも無邪気な少年じみていて。

「やめ、なさい……!執行衛兵の、私の目の前で、これ以上は、許しません……!」

『キミもタフだね〜双海センパイ、でも大人しくどいたほうがいいと思うよ〜?ボクだって関係ないキミまで巻き込みたくないしね』

 双海はホルスシューターを組み上げると、それをフォックスに放つが、狐面の怪人に阻まれる。

『じゃあね、さようなら。生まれてくる家を間違えたよ。来世こそちゃんと子供には愛を持ってあげてね』

 そして。フォックスの腕が、母親の胸を貫いた。

 


 

「先輩!ようやく完成しました!」

「遅ぇよミスティ!っつーか今受け取れる状況じゃねぇんだよ!!」

 マテリアブレイカーを完成させたミスティが到着した。しかし、バキュームに追い詰められているOOはそれを受け取ることができない。

『……なるほど、それがお前の奥の手か。なら先にお前を殺せば万事解決だな?』

「……ッ、テメェ……ッ!?」

 言うなり、バキュームはオーラを纏った脚をOOの胸に叩きつける。その一撃を受け、OOで大きく吹き飛ばされ、壁に突き刺さる。

「先輩っ!」

「チッ、痛ってぇじゃねぇかよクソ野郎……いちいち騒ぐんじゃねぇミスティ、マテリアブレイカーとやらがあんだろ?この一撃で僕を倒しきれなかったあのクソの負けだ、さっさとそれをよこせよ」

 変身が解除され、口から血を吐こうとも、黒薙は気にせず言葉を紡ぐ。

「……ッ、わかりました。ただし……力の使い方には気をつけてください。その力は、間違いなく先輩に大きな力を与えます。しかし、使い方を誤れば……先輩を殺しかねない力です」

「安心しなミスティ。僕には守るべき家族とか友達とか諸々がいる。どんな力だろうがテメェのモノにしてみせるさ」

「心強いことです……では、これを。マテリアブレイカー。先輩に危ういほどの力を与えるガジェットです。使いこなしてみてください」

 黒薙はミスティから手渡されたそれを左手に構え、その側面のボタンを押した。

『Materia Breaker!』

 そして、そのままバックルの下から滑り込ませる。禍々しい待機音声が鳴り響く中で、黒薙は叫んだ。

「変身ッッッッッ!!!!!」

『Open! Reclaim Lost Time! Time OO!』

『Breaking…… Enough Power Too Destroying Everything…… Breaking OO……』

 黒薙の身体はOOの鎧に包まれ……直後。その奥から、鎧を砕くべく、何者とも知れぬものが、姿を現した。

「ッ、あァ……ッ!?がァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 全身に突き刺すような痛みを感じ、黒薙は喘ぐ。叫ぶ間にも赤黒い針は黒薙の身体を貫き続け、ついにその声も聞こえなくなった頃……

『……Time Charge』

「ハァ……ハァ……耐えたぞ、ミスティ。僕はこの力に耐えてみせた。本気であのクソをぶっ潰す……ッ!」

『……残念だ。まだ生きていたか』

「安心しなクソ野郎、お前は二度と生きてる僕を目にすることはねぇんだからよ」

 OOの言葉と同時にバキュームは飛び退き、OOから距離を取ろうとするが……。

「遅ぇよ」

 それより早く背後を取ったOOが、剣を振るってバキュームの武器を破壊した。

『……ッ、やはり先ほどので殺せなかったのが効いたか』

「だなぁ……てな訳だ。本気でブチ殺すぜクソ野郎」

 逃げるバキュームを、OOが一方的に追い詰める。

 早瀬が幾度とない剣戟を受けていく中で、ふと、OOの動きに変化が訪れた。

「……あ、れ?からだが、うごかな……!?」

 その一瞬の隙を突くかのように、バキュームは大きく飛び上がる──が。

「eASoA」

 次の瞬間、数秒前とはまるで別人のようなそれは、特に飛びつこうともせず──ただ手をかざしただけで、バキュームを撃ち落とした。

『くっ、なんだ、なんなんだ、お前は……!? 』

「oYaKuRaAG義理uReAaToK?」

 人の耳には到底知覚できない言葉を紡ぎながら、壊れた人形のようにジリジリと、バキュームに近寄っていく。

『ま、待て!お、俺は、ただ生きていたかっ……』

「eRaBAuK、aGuSeG」

 両足を貫かれながらもまだ逃げのびようとするバキュームに対し、OOらしきものはただバックルのレバーを倒し、

『Breaking Time Strike……』

 躊躇いひとつない一撃を、その喉元に叩き込んだ。

『………………………………!!!!!』

 その一撃は、ひたすらに黒く、紅く、そして何より、重かった。

 故に、早瀬がそこに生きていたという痕跡はひとつたりとも残らず。

 ただ、マテリアピースのヘッドが転がるのみだった。

 


 

『アハ、アッハハハハハハハ!!ボク、ついにやったよ、やっちゃったよ〜!!!……?あれ、委員長じゃん?なんでそんな怖い顔でボクを見てるの?』

「…………最悪の気分ですよクソったれ。まさか本当に人を殺すまいとは思っていましたが……常に予想を最悪の方向に裏切ってくれてありがとうございます、本当に。おかげさまで心置きなく貴女を捕まえられる」

『言うね〜、でもキミたちじゃ願いを叶えて強くなったボクには勝てないと思うけど〜?』

 黒薙が早瀬を文字通り消し炭にした裏で、遠山はフォックスと相対していた。

「願いを叶えて強くなった、ねぇ……なるほど、奈菜々ちゃんの証言と照らし合わせるとつまり貴女達怪人は欲望が原動力、といったところかしら?そしてそれを叶えた時に強くなる、と。面倒な性質ですねぇ……」

『む〜、上から目線で評価されるのめちゃくちゃイラつくんだけど〜?』

「知りませんよ。私だって余計な仕事増やしやがったクソガキに現在進行形でイラついてんですからね」

 遠山が言うと、フォックスは飛びかかる。しかし、何が起こったか、一瞬だけフォックスの動きが止まった。その一瞬で、フォックスの変身は解かれていた。

「あ、れ……?なんでボク、こんなところに……あぁ、そっか……ボク、ママを殺して……」

 結城は涙を流しながら笑う。その瞼は開閉を繰り返し、まるで今すぐにでもこの世から消えてしまいそうに儚く、

「何を、やっているんですか?結城ヒナタ、貴女は……」

 敵対しているにも関わらず、遠山はつい優しい声をかけてしまった。

「うん。そうだよね〜……委員長、ボクには覚悟が足りてなかったみたい……欲望を叶えたはずなのに……体がそれについてこれなかったっていうか……」

 対する結城は遠い目で、悔いるように言葉を紡ぐ。

「だめだな〜……多分ボクはもうすぐ“消える”。その前にナナと……なんて、ボクが気絶させたんだよね」

「消える……?何を言っているんですか!貴女は罪を悔いて更生して再び世の中を歩かなければ……」

「だからさ、委員長。だめなんだよ。自分がこの世界からいなくなることなんてボクが一番わかってる。罪も償えずに逃げて……本当にごめんなさい」

「ふざけんじゃねぇ!私が何のために貴女を追ってきたかわかってんのか!?」

「わかってるから謝ってるんだよ、委員長……見ててね、これが欲にまみれた人間の末路、ってヤツだよ〜……」

 

 その瞬間。

 結城ヒナタは、文字通りこの世から消失した。

 

「……ッ、何が起こってんですか、怪人って何なんですか……!菱杖透流、追い詰められた少女をここまで利用した貴様を……私は絶対に許さない!」

 


 

「っ痛……あれ、ここはどこだ?って今何日だ!?」

「安心してください先輩。ここは私の寮ですし、一応25日ではありますがまだ菱杖透流が指定した時間までは10時間程度の猶予はあります」

 ミスティの声を聞き安堵する黒薙。しかし、ふと血相を変え、ミスティの肩を掴んだ。

「って待て!あいつはどうしたんだ!?早瀬だよ早瀬!!」

「あぁ、やっぱり意識ごとトんでましたか……本当に聞きたいんですか、先輩。仮面ライダーOOが、怪人・早瀬ジュンに何をしたか」

「あぁ……どうにも嫌な予感がするんだ、聞かせてくれないか?」

 鬼気迫る表情で迫る黒薙に、ミスティは一瞬目を逸らす。しかし瞬時に目の色を変え、黒薙を向き直した。

 

「先輩は明確に早瀬ジュンを殺害した……もっとも、灰になっちゃったんで証拠もなにもないんですけどね」

 

「………………………………あ?冗談、だろ?僕が人を……」

「殺さないように努めてきた、それなのに私の与えた力で人を殺めてしまうことになってしまい、申し訳ありません」

 ミスティの言葉が黒薙に深々と突き刺さる。

「嘘だ、僕が人を殺すわけねぇだろ!?そうだ、そうじゃねぇと……」

「二年前の決意が全部無駄になる、ですか?今更そんなこと言ったって意味ありませんよ。殺した人数が増えるかどうかの違いしかありません」

 あくまで淡々と、一切の悪意を孕ませずに続けるものだから、黒薙は余計に混乱する。目の前の女は、自分の主人が何をしたのか解っているのか?

「先輩自身も殺しかねないほどの強大な力です、これも教訓といっていいのでは?過ぎたことばっかり悔やんでちゃ仕方ないですよ」

「テ、メェ……ッ!人が死んでるんだろ!?テメェの目の前にいるこの僕がそうしたんだろ!?なのになんでテメェはそんなに平然としてられるんだよ!」

 怒声を上げる黒薙に対し、ミスティは冷たい目をして言った。

「…………まだ分からないんですか先輩。私は別に早瀬ジュンを殺めてしまったことを笑って許そうなんて思ってませんよ。むしろそれを咎める気持ちが強いからこそこうして気休めを言ってるんですけど」

「…………ッ、どうしろって言うんだ。僕はこんなことをするためにOOの力に手を伸ばした訳じゃねぇんだよ……」

「知ってます。だからこそ今回の一件は残念でならない……正直、こうなるかもしれないって予想はできてたんですけどね」

「だったらなんで僕にあの力を渡したんだ……?予想できてたなら止めてもいいだろ、なんで自分からそれを僕に渡したんだよ……ッ!」

「………………先輩にはもっと強くなってもらわなければ困るんです。そのために私は、危険な可能性に賭けざるを得なかった。本当にごめんなさい、先輩」

 ミスティは深々と頭を下げる。怒りのやり場がなくなった黒薙は目を閉じ、

「お前が謝る必要はねぇだろ。やったのは僕なんだからよ」

 そして、覚悟を決めた眼で言った。

「……僕がやったことが許されることじゃねぇってのは僕が一番わかってる。けど、今はンなこと言ってられる状況じゃねぇ。罪も何もかも背負って全部救ってやる」

「その言葉を待ってました、先輩……あぁ、私は朝ご飯を用意してきますけど、その間、先輩は妹ちゃんと話しててください。彼女、かなり心配してましたからね」

 ミスティがドアを開いた直後、澪が黒薙の目の前に姿を現した。




はい。結局暴走しました。このサブタイトルとマテリアブレイカーの名前で暴走しなかったら逆に詐欺ですしね。
OOの強化フォームであるブレイクフォームは、基本の三フォームを強化する形で変身されるものですが、長時間使っていると暴走してしまう危険を孕んだものになっています。要はハザードトリガーですね。
今後は、この暴走を克服していくのが鍵になっていきます。
いつも読んでいただき、誠にありがとうございます。
ご感想などございましたら、是非ともコメントいただけますと幸いです。墓脇でした。
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