仮面ライダーO   作:墓脇理世

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第2話「刻む『秒針』のコンツェルト

「変身!」

『Immaturely OO……』

 

 リングが黒薙の身体を通過し、読み込んでいく。スキャンが完了すると、黒薙の身体は黒いアーマーを身に纏った戦士──仮面ライダーOOと化した。

『チッ、厄介なことをしてくれる……』

「なんだ?変身した僕を見て怖気付いたってか?」

『無抵抗のままに殺す方がこちらとしては楽なだけだ』

「言ってろクソ野郎」

 OOは怪人に殴りかかる。だが、

『その程度か、温いな』

 怪人は黒薙の拳を受け止めると、腕を捻り上げ、胴に力強い回し蹴りを叩き込んだ。

「が……ッ!?」

『威勢がいいのは口だけだったようだな』

 徒手空拳でOOを圧倒する怪人。だが、肘でOOの腹を撃ち抜こうとした瞬間、何かに気付いたかのように身を退けた。

執行衛兵(エンフォーサー)、それも総隊長が直々にお出ましか。これは一時撤退かね』

 飛び上がると、怪人は姿を消していた。

「黒薙くん、大丈夫でしたか?」

 装甲車から現れた紫髪の少女は、執行衛兵総隊長の遠山(とおやま)叶絵(かなえ)

「いやいや、逆に聞きますけどこれが大丈夫に見えます?」

 変身を解除して黒薙は言った。

「役職に似合わずボコボコにされていましたね、私が到着しなければここで命を落としていたという自覚を持つように」

「……わかってますよ、これまで何回ソレ言われてると思ってんですか」

「だからこそ、です。黒薙くん、あなた、今回もいつもと同じように死なないと思っていたでしょう?」

「……それ、は」

 否定はできない。黒薙自身幾度となく死線を切り抜けてきているのだが、それで調子に乗らなかったといえば嘘になるだろう。

「それで本当に誘宵学区の生徒さんたちを守れるのかどうか、よく考えてみることです。さて、本部に戻ってどこに逃げたか探しますよ」

 


 

「まっ、て、ください……」

 震えた体を起こしながら、青髪の少女は言った。

 装甲車の扉に手をかけながら、黒薙は振り向く。

「どうしたんだ?えっと……」

「ミスティ、です。ミスティーク=レーツェル……うっ」

「レーツェルちゃん、あんまり無茶すんなよ。君はさっきあの怪人に……」

「それは先輩も、同じこと、でしょう……?」

「僕はアレだ、人より少し丈夫なんだよ」

 もちろん強がりだ。確かに彼の体は常人と比べれば多少は丈夫かもしれないが、怪人の力の前にはそんなものは誤差に過ぎない。

「なら、私も大丈夫、ですから……」

「その生まれたての子鹿みたいな足で言われてもな」

「うる、さいです……いい、から、私を乗せて、ください……」

「どうしてだ?治療のためだけなら後から医療班の車が来るしそっちに乗れよ」

 突き放すように黒薙は云う。ただでさえ事故に巻き込んでいるのに、これ以上の迷惑はかけられない、とも言わんばかりに。

「私には、記憶がありません」

「へぇ、それで?」

「それでも一つだけ、記憶ではないどこかで覚えているものがあるんです」

 少女は紡ぐ。まるで世界の真理を説くかのように。

「あのような怪物を倒すこと。それが私に与えられた使命だということだけ……それだけは、覚えているんです」

「随分とまぁ、信憑性に欠ける物言いだこと」

「ですよね、自分でも何を言っているのかと笑いたくなります」

 しかし、少女は真っ直ぐな瞳で黒薙を見据え、

「ですが、私は自分の思いは正しいと確信を持っています。正しい気がするだけで、特に根拠はありませんけど」

「それで僕ら風紀委員を動かせるとでも?」

「えぇ、あなたは間違いなく折れて私に協力する。というよりはむしろ、せざるを得ないんですよ」

 口角を上げ、空色の少女は言った

「先輩、先程私をバイクで轢きましたよね?アレを公言されたくなければ私のワガママに付き合ってください」

「……チッ。わーかったよ、お前には勝てない。協力してやる」

 ただし、と黒薙。

「お前が危なくなったら力づくで下がらせる、それが最低条件だ。留意できないのならお前に力を貸すことはできない」

「……ありがとうございます、先輩」

 その言葉を聞き届けると、黒薙は装甲車の扉を開けながら言った。

「急いで乗れ、これ以上の時間のロスはキツい!」

 


 

「先程私たちが接触した怪人のホルスデータの解析が終わったようです。正体は明星学園3年、高坂(こうさか)操糸(そうし)。どこで手に入れた力かは知りませんが、誘宵学区の学生がこんなものに手を出すなどあってはならない」

 装甲車に乗っている最中、遠山が送った怪人の残したホルスの情報。その解析が、黒薙らが本部に到着すると同時に終わったらしく、その事実に遠山は顔を歪めていた。

「反応ありましたっす〜、高坂操糸のヤロウ、7区のショッピングモール近くにいるみたいっすよ〜」

 コンピュータと向き合っていた風紀委員の一人が、やる気のなさそうな声を上げて報告した。

「おやおや〜、ショッピングモールに入っていくみたいっすね〜、黒薙せんぱ〜い、行かなくていいんすか〜??」

「チッ、いくぞレーツェルちゃん!」

「装備が整い次第、私たちも向かわせてもらいます。黒薙くん、3分だけ時間を稼いできてくださいね」

「はいよっ!」

 少々をサイドカーに乗せ、エンジンをかける。

 風紀委員の本部から7区のショッピングモールまではそう遠くない。5分と経たないうちに黒薙たちは目標地点に到達した。

「どこに逃げやがった、野郎……」

『ほう?自分に用があるとでも言いたげだなぁ?』

「……ッ!?」

 背後に現る黒い影。その正体は、もはや顔を見るまでもなく黒薙の脳裏に浮かんだ。

「高坂、操糸……ッ!」

『驚いた、あの短時間で私の正体まで突き止めたか。だが』

 重いフックが繰り出される。

『自分を止められなければその行動に意味はない』

 その放たれたフックを間一髪で躱し、右手をかざす。

「『第二懲罰術:衝撃(ツヴァイジャッジスキル:インパクト)』ッ!」

『ぐ……ッ!』

 放たれた衝撃波は、高坂に僅かではあるがダメージを与えられたようだ。

『だが、この程度で自分を……』

「喋る暇があれば手を動かしたらどう、です、かッ!?」

 高坂の言葉を遮るように、近未来的な銃を放つレーツェル。

 2人の攻撃は、確かに先ほどと比べれば高坂に通用しているようだった。だが、

『小賢しい、チマチマと小技ばかり……!』

 やがて、それらは封じられる。棍状の武器が振るわれ、光弾も衝撃波も全てが霧散した。

『終わりだ、今度こそ加減はしない!』

「今だレーツェルちゃん!」

「はいッ!」

 高坂が武器を振り下ろすとほぼ同時に、少女が動いた。

「この距離なら、守れないでしょう……!リミッター解除、レベル6……ッ!」

 至近距離で、強化された光弾を放つ。反動で後方に大きく突き飛ばされた少女を、黒薙が抱きとめる。

「馬鹿が、もっと自分のことを……ッ!」

「馬鹿は先輩の方です、先輩を信用していたからこそあんな無茶ができたんですよ」

「いや、だからってお前な……」

「なんですか、不服ですか?」

「いや不服ってわけでもないけどな、そういう問題じゃないだろ……」

「じゃあどういう問題なんですか?先輩♡」

「どういうってお前……」

 


 

 このとき、黒薙たちは失念していた。

 高坂操糸が、この攻撃を受けてなお立ち上がる可能性を。

「危ないです、先輩ッ!」

「え?」

 爆炎の中から、鋭い一突きが飛来する。

 黒薙を突き飛ばして黒薙のダメージは抑えられたが……

「レーツェルちゃんッ!」

『ふん、貴様ら、自分を少し侮りすぎてはいないか?』

「て、めェ……ッ!」

 炎を払って現れた高坂の姿は、先程とは違う形に変化していた。

『だが褒めてやろう、貴様らのお陰で自分は進化することができた、道具としては優秀だったよ、そこの小娘も』

「てめェェェェェェッ!」

『Immaturely OO……』

 黒薙は懐からバックルを取り出し、即座に変身して高坂に襲いかかった。

『遅いぞ』

 しかし、黒薙の拳は跳ね除けられ、腹部に掌底を叩き込まれ、為すすべなく変身が解除される。

「が、ァッ……」

『ほう?喜べ黒薙颯斗、これから貴様の死を目の当たりにする傍観者たちの到着だ』

 視線を上げると、多くの執行衛兵が並び、高坂を睨みつけていた。

『見ろ、この無様な男を。貴様らもこのようになりたくなければ、大人しく武器を捨て投降しろ』

「誰がそのような条件を飲むものですか!私たちは執行衛兵!誘宵学区を守る聖なる騎士です!」

『そうか、ならば……死ね』

 執行衛兵が束ねて高坂に飛びかかった。──次の瞬間、あろうことか執行衛兵同士が戦いを始めてしまった。

「一体何をしているのですか!私たちの任務は……」

『無駄だよ遠山叶絵、奴らは自分の能力下にあるのだからな』

「ま、さか……!?」

『そのまさかだよ。「木偶人形(マリオネッター)」。糸に触れたものを自在に操る能力だ』

 瞬く間に戦闘可能な執行衛兵はその数を減らし、やがて皆が地に伏した。

『どうする遠山叶絵。貴様一人で自分と相対するか?』

「もちろんです……!仲間を傷つけられて、私が退くとでもお思いですか……!?」

『ならば貴様も殺してやろう』

 高坂に決死の覚悟で飛びかかるも、軽くいなされ、反撃を受ける。

「っ、づゥ……ッ!?」

『これが力だよ遠山叶絵、貴様が求めた末に手に入れられなかったものだ』

 高坂の足が伏した遠山の後頭部を踏みつける。

『さぁ、これから一人ずつ処刑していく。最後まで己の無力を呪いながら死んで逝け』

(クソッ、僕にもっと力があれば……!)

 黒薙は唇を噛み締めた。そしてその想いは、閃光となって黒薙と少女の手に現れる。

「ッ、これ、は……?」

 少女はその閃光を見て、口を開く。

「今、思い出しました……私の使命は、この世界が滅ばぬよう、魔物を斃すこと。そして、そのためには……」

「レーツェル、ちゃん……?」

「そのために、先輩、力を貸してください。あの魔に呑まれた怪物を救うために、これを」

 そして差し出された光は、鍵を模して形を成した。

「それをベルトに差し込めば、先輩は誰にも負けることのない強大な力を得ることができる」

「……わかった。詳しいことは知らねぇが、今はお前の言うことを信じるしかなさそうだしな」

 微かに残る力を振り絞り、黒薙は立ち上がる。

『なんだ、まだ生きていたのか死に損ない』

「これ以上、余計な真似させてたまるかよ……ッ!」

 少女に差し出された鍵のヘッドを回し、バックルに挿入する。

『余計な真似を繰り返しているのは貴様も同じだろう』

「……変身ッ!」

 ドアノブのようなレバーを倒すと、バックル中央の扉が開き、真っ赤なリングが黒薙の身体を通り抜けた。

『Open ! Reclaim Lost Time!Time-OO!』

 音声が鳴り響くとともに、黒薙は黒を基調としたスーツに赤黒いアーマーを纏った戦士、OOに変身した。

「……失われた時間の力、見せてやる」

 


 

『多少装備が増えたところで状況は変わらぬと思うがな?』

「それはここからのお楽しみってやつだろ」

 吐き捨てると、OOは虚空から剣を取り出して高坂に立ち向かう。

 高坂は棍を振り上げOOを退かそうとするが、間一髪のところをジャンプして躱された。

「言っておくが、ナメたままかかると後で泣いても知らねぇぞ」

 OOの振るう剣が、高坂の頭部の角を片方持ち去った。

『貴様……ッ!』

 後ろに跳び退き、態勢を立て直そうとする高坂を見ると、OOは剣を銃へと変形させ、それを放ちながら徐々に距離を詰める。

 両者の距離が縮まると、銃を投げ捨て、回し蹴りを高坂の腹部に叩き込む。

「痛いか?お前のやったことをそのまま返してやったぞクソ野郎が」

『調子に、乗るなァッ!』

 高坂が振るった拳を受け止めると、そのまま捻り上げ、宙に投げ飛ばした。

「そろそろ、終わりにするか……!」

 OOがベルトのレバーを倒すと、胸部のディスクが高速で回転し、鈍い光を放つ。

『Material Finish!』

 光はOOの右腕と左足に収束する。そのまま飛び上がる。

『Oblivion Time Strike!』

「オッラァァァァァァァァァ!!!」

 リングが高坂の身体を追うように現れる。そのリングを踏み抜いて、未だ浮いたままの高坂に蹴りを放った。

 直後に爆発が起こった。だが、そこに高坂の姿はない。

「チッ、あの野郎、逃げやがったか……無駄にしぶとい野郎だ」

 吐き捨てるとともに、黒薙の中にある疑念が生まれた。

「(それにしても、どうしてあそこまで戦い方がわかったんだ……?そもそも、何も知らないのになぜ武器を取り出せたんだ……)」

 執行衛兵の仲間たちを起こしながら、黒薙は呟いた。

「あぁ、また面倒なことになりやがった……」

 

 その頃、風紀委員本部に置いていかれた赤萩亜矢は黒薙に想いを馳せながらこう呟いた。

「あのバカ……私が心配してることも知らないで」

 

 また時を同じくして、ある場所には3人の男が集っていた。

「なるほど、OOがついに変身して、あなたはまんまと逃げ帰ってきたわけですか」

「ギャハハ!まぁ別に勝てとは言ってねぇしな!!」

 胸元を大きく開いた男が嗤う。

「しっかし、まさか本当に現れるとはな……OO、お前は俺が責任を持って潰してやるよ」




今回は、OOの初めての戦いが描かれました。ここから、Oの物語は始まっていきます。
ラストに登場した謎の男たちの目的や、明らかに黒薙にほの字の亜矢さんの行く末など、謎だらけではありますが、今後のストーリーにご期待ください。
感想などございましたら、是非ともコメントしていただけますと幸いです。次回もよろしくお願いします。墓脇でした。
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