もともと、うちの家系はちょっとズレた科学者とかオカルト方面の人とか、そういう人が多かったのは知ってるけど、父さんも母さんも、兄さんも、母親が違う兄さんも、みんなちょっと変わったところはあるけど、ただやさしい人だった。
きっとこのままずっと、家のことなんて関係なく、幸せな日々が続くんだと、そう思ってた。
ある日、母さんが突然いなくなった。何の手掛かりもなく、突然に姿を消した。それからだった。あたし達の人生が狂い始めたのは。
最愛の人を喪った父さんがおかしくなっていくのに、そう時間はかからなかった。もともとそういう血筋だったからか知らないけど、父さんはだんだんとオカルトに手を出すようになっていった。
世の中には、科学で説明できないことを起こすオカルトが本当に存在する。そんな神の奇跡にでも縋りたいって気持ちは、まだ幼かったあたしにも、痛いくらいにわかった。
父さんがオカルトに入れ込むにつれて、だんだんあたし達への当たりが強くなっていった。それでも、あたし達は耐えた。いつか母さんが戻ってきて、父さんも元に戻ってくれるって信じてたから。
でも、そんな希望はすぐに打ち砕かれた。兄さんとあたしにオカルトの才能も科学者としての才能もないってわかってから、父さんからの虐待はより酷くなっていった。腹違いの兄さんは、父さんの機嫌取りに必死で、あたし達のことなんて見てもくれなかった。
そんなある日、兄さんが言った。この家を出て、どこか遠くへ逃げよう、って。
兄さんが父さんからこっそり盗み続けてた数百万円。それだけを持って、あたし達はあの地獄のような家を捨てた。小四の冬のことだった。
そして、あたし達は誘宵学区に来た。ようやく落ち着いて暮らせると思った。でも、兄さんはあたしを守るとか言って、危ないことに手を染めていった。
嫌だった。傷付く必要がないはずの兄さんが、自分から危険に巻き込まれていくのが、許せなかった。
いや、違う。あたしが本当に許せないのは、兄さんに心配をかけさせてしまうあたし自身だった。
だから、怪人なんてものがメンバーを募っていると聞いた時、あたしは真っ先にこの身を投じた。
それから、あたしは体を鍛えた。兄さんに気付かれたら何か探られると知っていたから、ひっそりと。
そして、間違いなく兄さんを守れるだけの力を手に入れた。それが、兄さんがレーツェル先輩と和解したくらいの頃だった。
それから、あたしの中に二つの心が生まれた。
一つは、亜矢さんになら兄さんを任せてもいいかもしれないって気持ち。前からちょっとした交流はあって、そんな気はしてたけど、房総旅行の時に話しててその予感は確信に変わった。この人は、間違いなく兄さんが無茶をするのを止めたがっている。義兄を救うためと言って兄さんに縋ったけど、内心では兄さんが戦うことに疑問を抱いていたはず。
もう一つは、自分には戦える力があるのに、兄さんを戦いから遠ざけようとしない人への怒りの感情。これに関しては、あたしでも筋違いだってわかってるつもり。それでも、一度そう思ったら、もうその考えが頭から離れなくなる。なんで誰も兄さんのことを心配しないの?なんで誰も、罪もないのに戦いに巻き込まれる兄さんの身を案じてくれないの?その感情が募りに募って、いつからか、周りが見えなくなってた。
そんなあたしだから、クロージャーにまた捕まっちゃうのかな。自業自得だよね。それはわかってるんだ。誰よりも、わかってると思いたいんだ。
きっとまた、あたしは洗脳されるのだろう。兄さんを襲わせられるのだろう。嫌だな。喧嘩したまま終わりたくないな。でも、これがあたしの犯した罪の末路なんだ。
だから、願わくば、あたしが他の誰かをまた傷付ける前に、あたしを
「イイ雰囲気なところ悪いですが……仕事の一つもロクにこなせない、使えない部下の回収に来ましたよ」
菱杖は右手を開けて言った。
「さぁ、行きましょうかジェリーフィッシュ。裏切り者の言葉に心を動かされるような不出来な生徒は、しっかりと教育しておかないと」
下卑た笑みが、そのまま澪へと向けられる。
「さ、せるかよ……ッ!!」
以前、鮎川が使ったものと同じ能力で酸素を奪われ、地に伏していた黒薙だったが、『異能共鳴』の力で強引にそれをかき消すと、ドライバーを構えて菱杖の懐へと飛び込んだ。
「おや、黒薙くんですか。……ワタシの邪魔はしないでいただけると助かるんですがねぇ!?」
そうはさせるまいと、菱杖も走り出す。黒薙の右手に握られたマテリアトリニティを蹴落とし、その鳩尾に膝をたたき込んだ。
「が……ッ!?」
黒薙の肺から息が漏れる。その一瞬の隙を突くように、横薙ぎの蹴りが黒薙の側頭部を弾いた。
「ま、て……ッ!!」
澪に向けて、菱杖の手が伸ばされる。それを止めようと黒薙は立ち上がろうとするが、体が痺れてうまく動けない。
やがて、黒薙の意識が闇に消える。
時を同じくして、ミスティと神蔵は、ライブラリに追い詰められていた。先程首にかけたオブリビオンセイバーは強引に叩き砕かれ、本来の能力であるレーザーを全力で放たれた。神蔵はグロリアスティックでそれを弾こうと投げ飛ばしたそれに手を伸ばしたが、掴む寸前に全力の蹴りを腹に受けた。
『……もう思い残すことはないはず。あったとしても聞かないけど。だから……死、んで……?』
レプリシューターにマテリアピースが再度装填され、必殺の一撃が放たれようとした刹那、サクリと何かが突き刺さる音がした。
『がッ、あァァァァッ!!??』
次の瞬間、ライブラリの鎧を突き破ったソレから、赤黒いものが流れ出した。
「いッ、ァアッ……!?」
『驚いたな。あそこまでハイになっている状態でもここまでのたうち回るものなのか』
変身が解けた朱本の背から槍を抜き取り、高坂──ピエロ・シャトランは言う。
「ピ、えロ……ッ!!」
『クロージャーの忠告も聞かなかった自分が悪いと思えライブラリ。それに……“sister“を使ったな?それだけやっていればガタが来ることはわかっていただろうに、無駄に在庫を削りやがって』
反撃しようと、朱本が手を伸ばす。その手首を槍で貫きながら、ピエロは言った。
『どうせ生かしておいても戦力にならないんだ、ここで野垂れ死ぬがいい』
「待ちなさい高坂操糸……!!執行衛兵の前で二度も人を殺して見逃してもらえるとでも……」
『……耳障りだな。お前たちを攻撃していかないだけありがたいと思ってほしいのだがな??』
そう告げると、レプリシューターから煙を放ち、ピエロは姿を消した。
直後に、朱本の体が、光の粒子になって消え去った。
「……クソが、クソ野郎がッ!!どこに逃げやがった菱杖透流、今すぐ引きずり出してハラワタ抉り取ってブチ殺してやる……ッ!!」
「落ち着け黒薙、気持ちはわかるが抑えろ!……野郎、他人の能力を使いやがった。そんな真似、天地がひっくり返ってもできるモンじゃねぇ。どんなイカサマに手を出しやがった、アイツは……?」
それから数時間後、黒薙は執行衛兵本部の医務室で目を覚ました。
「……白髪頭の妹がクロージャーに攫われたということは、奴らはまだ彼女を利用したいというわけだ」
眼鏡をかけ直して、草壁は言う。
「……そういえば赤ハネ、月面博覧会についてお前の部隊が探っていたと聞いたが、あれから何か進展はあったか?」
「……あぁ。……博物館のスタッフが一人、遺体で発見された。不思議なことに、そのスタッフは今も博物館で作業に勤しんでるらしい」
赤萩の矛盾した発言に、黒薙は眉を潜める。
「あ?どういう……」
「化野幻歩がすでにそこまで入り込んでるってことだ。つまり、連中もあの展示に何かを見出したってことだろ」
缶コーラを飲みきって、赤萩は言った。
「……それが何かはさておき、土曜日に関係者向けの展示がある。そこに奴らが現れる可能性は高いだろうな。……恐らく、白髪頭の妹も」
そう言って、草壁は黒薙を睨んだ。
「そこまでに相手が仕掛けてくる可能性もあるが……あまり、勝手な動きはするなよ」
「……わかってる。そもそもどこがアイツらの本拠地かも分からねぇ以上、余計な動きはしねぇよ」
「わかっててもしないほうがいいと思うわよ……」
赤萩の隣で、亜矢が言った。
「……オレの言った通りになったな。黒薙が負ったダメージは大きい。ジェリーフィッシュはオレの言いつけを無視して好き勝手に暴れた」
その頃、牧瀬は建設中の建物の鉄骨に腰かけ、街を俯瞰していた。
「面白いと言や面白いが……そろそろ頃合いか。怪人のデータはもう十分に集まった。あとはアレを完成させてクライアントに渡すだけ。ピースは全てオレの手にある」
普段の軽薄な雰囲気とは異なる、どこかミステリアスな空気を纏う牧瀬は、携帯を操作すると、一つの画像を見つめた。
「……で、そこで盗み聞きしてる悪い子はどこのどいつだ?」
「おや、バレてしまったか。お初にお目にかかるよ元怪人のボス、あるいは『痛傷共生』版のご同類さん」
そして、背後を振り返る。そこには、ロベリアが優雅に佇んでいた。
「そういうお前は『輪廻共存』の化身か。朱鷺澤は元気か?」
「永治なら、元気に僕の渇きを充してくれているよ。……僕がそんな世間話のためにここに来たとは思っていないだろう?」
二人の視線が交錯する。
「その顔を見るに、僕が言いたいことは判っているようだね。誘宵学区統括理事長が君に依頼したものを……僕に譲ってもらおうか」
「そもそも未完成だし、完成してようが渡す気はねぇっつったら?」
「どうしようかな。それが僕たちに必要なものだからもらっておきたいんだけど……素直に引き下がるつもりはないよ」
牧瀬とロベリアは睨み合う。
「……ま、君と今やり合うつもりはないし、しばらくは君を泳がせておこうかな。僕は今は自分で戦う力も持っていないし、君とやって消耗するのは痛い」
ロベリアは観念したように肩の力を抜くと、やれやれと言わんばかりに言った。
「じゃあね『痛傷共生』。お互い生きてたらまた会おう」
そして、二十九日。月面博覧会の、関係者向けの展示が行われる日だ。遠山が上層部に話を通して、警備に黒薙たちが加わることとなった。
「……亜矢、本当に大丈夫なのか?あんまり無理すんなよ、危なくなったらすぐ逃げろ」
「大丈夫よお兄ちゃん。私だって引き際は分かってるつもり。……怪人になった経緯は違うとはいえ、私もお兄ちゃんも、あとついでに草壁先輩も、澪ちゃんのことは心配でしょ?だから私は行くわ」
亜矢は指をポキポキと鳴らしながら言った。
「藤子。……君も、無理にこれに参加する必要はなかったんだぞ」
「私の恋人は体が弱いくせに無茶をするからね。そばに置いておかないと何しでかすかわからない以上、一人お家で祈るだけなどできるわけもないだろ?」
草壁の言葉に、神蔵はふふっと笑う。
「……先輩。妹さんの相手は基本先輩一人に任せますからね。危なくなっても、もうどうしようもなくなるくらいまで粘ってください」
「お前に言われなくてもわかってるよミスティ。他の誰にもあいつの相手はさせねぇ。あいつを本当の意味で救えるとしたら、それは僕を置いて他にいねぇだろ」
黒薙は感情を押し殺した声で答える。
六人を二人ずつ、三箇所に配置し、どこから事を起こされても対処できるようにする。遠山の案で三手に分かれ、黒薙たちは菱杖たちを警戒していた。警戒に反して現れなかったとしたらそれでも構わないと、少なくとも黒薙は思っていたが。
ドン!!と爆音が響く。音源は博物館内だ。
「チッ、委員長!反応は!?」
『解析完了、音源からはゲノムス=リボー、高坂操糸に鮎川悠翔!!それとは別に黒薙くんたちの方に菱杖透流と……あの怪人の反応があるわ……あれの正体は黒薙澪のはず、にもかかわらず、黒薙澪のホルスと全く一致しないのは……??』
「了解……ッ!!」
黒薙はミスティの方を見て、ドライバーを構える。
「おやおや、やはり気付いていましたか黒薙くん!!ワタシたちの目論見を暴くとは、流石ですよ!!」
「黙れクソ野郎……ブチ殺されたくなければ今すぐ澪を解放しやがれ!!」
「すると思いますか?」
菱杖はパチンと指を弾き、澪に合図を出した。
「兄さん……あたしが兄さんを倒して、四肢を切り落とせば、兄さんが傷つくこともなくなるよね……?」
澪は光を失った目でそう言った。
「……ッ、ひ、しづえェェェッ!!許さねぇ、テメェだけは僕がブッ潰す!!!!」
「落ち着いてください先輩!!……先輩の仕事は妹さんを救うことです。だから……あのクソ野郎は、私がここで葬り去る」
その様子を見て激昂する黒薙を、ミスティが片手で制した。
「おっと、俺たちが来るってことはバレてたみたいだねぇ。ピエロの読みは当たってたわけだ」
「そうみてぇだな。……だから、俺たちがここでてめぇらを潰す。何考えてるか知らねぇが……その望みは、俺たちがここで潰してやるよ」
ゲノムスと赤萩が対峙する。
「亜矢……お前は化野を探してくれ。あいつらに何か狙いがあるとすれば、間違いなく潜入能力が高いあいつが動いてるはずだ」
「わかったわ。……健闘を祈るわね、お兄ちゃん」
兄に言われるがまま、亜矢は戦線を離脱した。
「言ってくれるね……それはそうと、また会ったねプレデター。あの約束……覚えてるかい?」
「次に会ったらまた闘り合う、だったか。……いいだろう、今度こそ君をブッ倒してやる」
挑発するように笑う鮎川に、草壁が中指を突き立てる。
「……お前に恨みはないが、自分たちの目的のためだ。悪く思うなよ」
「そうかい。私の方には、君たちには特大の恨みがあるんだけどね。……蒼哉を誑かしたクソ狐どもが。せいぜい私の手で狩り殺してやる」
高坂と向き合った神蔵は、怒りのままに言葉を吐き出す。
三人が、ドライバーを構える。それらは瞬く間にその腰に巻きつき、変身の準備を完了した。
「それじゃ……俺たちもいくかな」
ゲノムスの言葉を皮切りに、三人がレプリシューターを構え、マテリアピースを差し込んだ。
それは黒薙たちの方でも同じだった。
黒薙たちはドライバーを装着し、菱杖たちはレプリシューターを構える。
二つの場所で、同時に声が上がった。
「「「「「変身」」」」」
『Reclaim Lost Time! Time OO!』
『Evolute Mist Blade! ”Mist OO”』
『Fire! Fire! This is a Burning Flame!』
『Bite and Bark! That's a Greedy Beast!』
『Leaping Landscapes! It's a Ray of Laser!』
五人がそれぞれの鎧を纏う。それに対応するように、怪人たちも引き金を引いた。
「「「「「解錠」」」」」
『Bishop Charge……Open”Crosser”』
『Queen Charge……Open”Jellyfish”』
『Knight Charge……Open”Parasite”』
『Knight Charge……Open”Vehicle”』
『Knight Charge……Open”Pierrot”』
ライダーたちと、怪人が向かい合う。
「行くぞ澪……失われた時間の力、見せてやる」
「菱杖透流。私はあなたのようなクソ以下のカスを、絶対に許さない。始めましょう、限界のサリューを」
「てめぇらが目的とやらを果たせると本気で思ってやがるなら……そのくだらねぇ理想論、俺がこの手でぶち壊すッ!!」
「構えろビークル。ここからは戦争だ。今度こそ、君を倒して終戦といこうじゃないか」
「さぁ、テイスティングの時間だ。君たちの悪の味など、舌触りがいいとはとても言えないだろうけどね!」
『兄さん……抵抗しないで……あたしが、楽にしてあげるから…………』
ジェリーフィッシュの8本の触腕が迫る。
「ふざけんじゃねぇぞ澪……妹に負けてちゃハクがつかねぇだろうが!!」
オブリビオンセイバーを出現させ、襲い来る触腕を一本ずつ受け流しながら、黒薙は言う。
(澪の攻撃はこの触腕を使った殴打が多い。それは知ってる。その程度なら受け流すのは容易い)
黒薙は思案する。
「そこだ……隙だらけなんだよッ!!」
ようやく見つけた一瞬の隙。それを突くように、黒薙はオブリビオンセイバーを振るった。
『あーあ……あたしの腕切れちゃった。再生できるからいいけど。嬉しいな兄さん。さっきあたしが言ったことそのままシてくれたんだ。相思相愛だね、兄さん。愛してるよ。あたしは誰よりも兄さんを愛してる。たった一人の家族だから。だから兄さん。……あたしと一つになっちゃおうよ』
「チッ、僕はお前みたいなインモラルな妹を育てた覚えはねぇぞ……ッ!!」
再生させた触腕を槍のように鋭く尖らせ、澪は放った。
「か……ッ!?」
突き刺す痛みが、黒薙の思考を蝕む。
『忘れないでほしいんだけど、あたしはジェリーフィッシュ、つまりクラゲだよ?クラゲには毒がある。脳まで響く甘いシビれのお味はいかが?』
妖艶な声色で、澪は言う。
『……なんて言っても、もう聞こえてないか。もう少し強い毒にしておけば後遺症で体も動かせなくなっただろうけど、さすがに兄さん相手にそこまでするのもアレだし』
「……なぁ澪、お前は菱杖にアタマ弄られて忘れちまったのか?お前の兄さんは、詰めは甘ぇが準備だけは一丁前のチキン野郎だってこと」
勝ち誇ったような笑みを浮かべるジェリーフィッシュの後頭部に、銃口が突きつけられる。
『な、んで……あたしの毒を受けて立ってられるの!?』
「そう驚くなよ、お前も知っての通り、僕は一応はただの人間だ。毒物に対する耐性があるってわけじゃねぇ。だから、対策をしたんだ」
飛び退くジェリーフィッシュの触腕のひとつ、その根本を打ち抜いて、黒薙は続ける。
「お前はクラゲの怪人だろ。車の怪人がタイヤを使えたり、蜂の怪人が毒針を使えたりするんだ。だから、対策を取った」
触腕を先から少しずつ削るように、光弾を続け様に放つ。
「クラゲの毒は高温で死ぬ。だが、近くに赤萩陽希が居なけりゃその対処法は無理がある。だから僕は、そもそもの対策をとることにした。お前も覚えてるだろ?亜矢にやられた僕が、誰に救われたか」
『あの
「ご明察、毒のスペシャリスト毒島斯夜に頼んで、毒が強いクラゲの毒だいたいの抗体を作ったわけだ」
ジェリーフィッシュの懐まで転がり込むと、オブリビオンセイバーを振り上げ、その鎧を切り裂いた。
『おや……ジェリーフィッシュの性能では少なくともあの形態の黒薙くんには苦戦するはずもないのですがねぇ……ッ!?』
「赤萩先輩を倒した時もそうだったように、想いってやつはデータを凌駕するんですよ。ま、理詰めでしか動けない落第生にはわからないでしょうけど」
その様子を見て、クロージャーはそう漏らした。ミスティは嘲笑するような声で、ミスティカルレイピアを振るう。
『なるほど、面白い……ッ!!』
息を切らしながら、ミスティの攻撃を回避する。
『兄さん……あたしの邪魔をしないで!!あたしは兄さんを二度と危険な目に遭わせないようにあたしのもとに置いておきたいだけなの!!』
「そもそもの考えが間違ってるんだよテメェは!!兄貴は妹を守るためならどんな危険にだって屈しねぇ力を持ってんだよ!!」
『間違ってるのは兄さんの方でしょ!?妹は兄を心配する生き物なんだよ!?』
ジェリーフィッシュと黒薙の言葉が交差する。
直後、ドン、と鈍い音が続けて響いた。互いの顔を狙った、パンチとパンチの交錯。あるいはクロスカウンター。
「チッ、重い……ッ!」
その一撃で、黒薙の体が宙に舞う。
(だが……あと少しだ。あと少しで、勝てるッ!!)
ジェリーフィッシュの消耗を肌で感じ取った黒薙は、ズザザ、と足の裏で地面を削りながら、マテリアキーを差し替えた。
(これはお前が僕に渡した力。……いい加減戻ってきやがれ、澪ッッ!!!!)
『Intention Of Iron! Metal OO!』
グラビティナックルを右腕に装着し、黒薙は踏み込む。その左手に握られたマテリアブレイカーが、グラビティナックルへと差し込まれた。
『Material Attack!』
再び、二つの拳が向かい合う。
「いい加減に目を覚ませ……お前は、そんなトコにいていい人間じゃねぇッ!!」
『兄さんこそ、そんな危険な場所にいていい人間じゃないッ!!兄さんはあたしに護られてればいいの、それが兄さんの最高の幸せでしょ!?』
ジェリーフィッシュの拳が、先に黒薙の頭蓋を揺らす。
(が……ッ!こんなところで、終われるワケがねぇだろうが……ッ!!)
直後、黒薙の右腕が、ジェリーフィッシュの頭部を捉えた。
『Gravity Fist!』
真っ黒な一撃が、ジェリーフィッシュの装甲を、一瞬にして奪い去った。
「さて……こっちも、そろそろ終わりにしたいんで……歯ァ食いしばれよ菱杖透流」
黒薙と澪の決着がついたことを確認すると、レイピアを華麗に構えてミスティは言った。
『言ってくれますねぇ劣等生……生徒が教師を、あまりナメるモンじゃあない』
「ナメられたくなかったらそれなりの威厳を見せつけてくださいよ先生。できないってんなら向いてませんよ、教師やめちまえ」
『とっくに辞めてますが』
「じゃあそう名乗るんじゃねぇよ虫唾が走る」
吐き捨てるようにミスティは言う。
『ハハッ!!嫌われてしまっているようですねぇ!!それも仕方ありません、ワタシも貴女のような生意気なガキは大嫌いですから!!』
「へぇ、そうなんですか。どうでもよすぎて笑えてきますね」
ピキリ、と。クロージャーの額に青筋が走る音が響いた気がした。
『口先だけならいくらでも大きなことを言えます……さぁ、ワタシを倒してみなさい劣等生!!』
「では遠慮なく」
クロージャーの左手がレプリシューターの銃口を押した。ミスティも、マテリアキーをミスティカルレイピアに装填し、構える。
『Crosser Drive』
『Mystical Thrust!』
クロージャーが放ったエネルギー弾が、ミスティカルレイピアのひと突きで弾け飛んだ。
『あれだけハッキリと言い切った割にはその程度ですか!!いささか興醒めですねぇ!!』
「……さて、それはどうですかね」
油断しきったクロージャーの胸板に、オブリビオンセイバーの鋒が突きつけられる。
『Oblivion Mist Slash!』
蒼い一閃が、クロージャーのアーマーを切り裂いた。
『化野が君に負けたって聞いて警戒してたんだけど……その程度か。俺よりも戦いのセンスは抜群のアレを倒したっていうのに、今の俺と同程度じゃ少しつまらないなぁ』
「言うじゃねぇかクソ野郎が……ッ!」
パラサイトと交戦し、赤萩は舌打ちをする。以前に黒薙が撃破した相手ではあるが、その戦闘力は、その時とは比べものにならなかった。
『どうしたんだいプレデター、だいぶ息が上がってるように見えるけど?』
「ハァ……君の方こそ、肩の上下が激しいんじゃないか……?」
『……やるようだな。アルテだったか、お前のことはあの馬鹿女から報告を受けていたが、まさかここまでの強さとは』
「褒めても何も出ないよ?あぁいや、君たちをまとめてグチャグチャに潰すだけの必殺技なら出るかもしれないか」
それぞれが、互角の戦いを繰り広げていた。
『じゃあ……そろそろ、終わりにしようか』
パラサイトの言葉を合図にして、怪人たち三人が、それぞれのレプリシューターの引き金を引いた。
『Parasite Drive』
『Vehicle Drive』
『Pierrot Drive』
しかし、三人のライダーは、一切動じない。むしろ笑みすら浮かべながら、迎撃の構えをとる。
「そっちが本気出してくれんのを待ってたんだよ。……残念だったな?」
「騙し討ちのような形になってしまったことは謝るが……ここは戦場だ、その程度は許してくれるな?」
赤萩と草壁が、マテリアチューナーにキーを入れた。
『『Tune Reflect Barrier』』
二人の前に、緑色のエネルギーの壁が現れる。怪人が放った光弾がそれに触れた途端、それらは跳ね返り、放った怪人の方へと飛んでいった。
『チッ、面倒なことしてくれるね……ッ!』
パラサイトとビークルは、飛び上がってそれを回避する。
「君の今の一撃は良かったよ。コレで吸いきれないとは思っていなかった。……だから、今から返してあげよう」
同時に神蔵も、ピエロの必殺技をグロリアスティックで受け止めていた。吸収しきれなかった分のダメージは受け流したが、一部は神蔵がその身に受けることとなった。
「行くぞクソ野郎……これが、ヒーローの拳だ」
赤萩の拳が、パラサイトに迫る。
「これで終わりだビークル。せめて安らかに眠れ」
上空に飛び上がり、体に回転を加えながら草壁は言う。
「さっきのは少し効いた。今度は私の番だね」
グロリアスティックにマテリアキーを装填し、神蔵は笑う。
『Fire Charging Smash!』
『Beast Charging Strike!』
『Glorious Bright!』
炎の拳が、獣の脚力を得た蹴りが、幾重にも重なる光の束が、それぞれの敵を撃ち抜いた。
「澪、大丈夫か……澪!!」
「ぁ、にい、さ……?」
黒薙に撃破された澪が、目を覚ました。
「よかった……あいつの能力はもう解けてんだな……?」
「えっと……何か、あったの……ッ!?」
記憶を手繰り、自身の罪を自覚させられ、澪は目を剥く。
「……っご、ごめんなさい、兄さん…………っ!!あたっ、あたしっ、兄さんを……っ!!」
「……いいんだよ。お前の苦しみに気付いてやれなかった僕も僕だ。だから……そんな悲しそうな顔をしないでくれ」
ギュッと、澪の小さな躰を抱きしめ、黒薙は言う。
「でっ、でもっ……あたしっ、あんな酷いことをしたのに……っ!!」
「元はと言えば僕のせいだろ、だから泣くな。……ごめん澪、口先でだけ心配してるとか言って、お前の本当の苦しみがわかってなかった」
二人は、目に涙を浮かべて抱きしめ合った。
「さぁ、先輩は美しい兄妹愛ストーリーを繰り広げてる真っ最中ですし、ここは私が仕事しますか……覚悟はいいですか菱杖透流センセイ?大人しくお縄にかかってもらいます」
その様子を横目で見ながら、ミスティは冷徹に言った。
「ふっ、ふっふふふっ!!まさかワタシを捕らえられるとでも思っているんですかぁ!?甘いですねぇ執行衛兵!!ワタシが何のためにここに来たか、まだわかっていないのですかぁ!!」
「いくら負け惜しみを言っても無駄ですよ。あなたはここで……」
ミスティが菱杖に手錠をかけようとした瞬間。背後で、ドン!!と。爆ぜるような音が響いた。
「あっはは!!なになにーぃ、クロージャーもしかしてやられちゃったのーぅ?」
白衣を着た成人男性が、その外見に似合わぬ口調で菱杖に語りかける。
「ハァ、ハァ……化野ってどいつよ……怪しかったやつは全員捕まえておいたけどまだ何人か逃げてったし……」
怪人に変身した亜矢が、博物館の職員と思しき者を何人か引きずって現れた。
「ッ、亜矢先輩逃げてくださいッ!!」
職員と菱杖を取り巻く空気が濁ったものになったことを肌で感じ取ったミスティが叫ぶ。
「まさか化野ってそいつ……?だったら逃げられるわけないじゃない、私が頼まれた仕事なのよ!?」
「ンなこと言ってられる場合じゃねぇんですよ!!いいから逃げろ、亜矢ッ!!」
ミスティは吼える。しかし、職員によって離された菱杖の腕には、OOドライバーと同じ形のそれが、既に握られていた。
「いやいや、彼女を逃がされるのは困りますねぇ。本当に面白くなるのはこれからだと言うのに!!」
菱杖の貌が、狂気に歪む。
「では……場所を変えましょうかッ!!」
パチン、と指を鳴らした。次の瞬間、黒薙も、澪も、ミスティも、亜矢も、赤萩も草壁も神蔵も、その場にいた全てのライダーと、それに与する人物が、誘宵学区内の採石場へと移動していた。
「な、にを……何を、したんですか!?あなたの能力は……」
「『
草壁を指差しながら、菱杖は嗤う。
「つまり、先日のあれも……ビークルの能力をコピーしたというわけか。だとしたら疑問に思うところがあるのだが、一ついいかね?」
「何でしょうプレデター、今のワタシは機嫌がいいので答えてあげますよ」
「ランク9程度では、博物館全域から私たちを選んでここまで移動させることはできない。なら一体、貴様のそれは何だ?」
草壁の問いに、菱杖はさらに嗤った。
「ふ、ぷっくくく!!あーはっはっ!!まさかまだ気付いていないというのですかプレデター!!えぇ、答えてあげますとも!!今のワタシの能力はランク10相当!!そこのフレイマーと同等かそれ以上といったところです!!」
菱杖の下卑た笑みは、さらに腐敗したものへと変貌してゆく。
「……無理だ。いくら強化したところで、それは一時的なものでしかねぇ。ソレは恒常的な力が得られるモンじゃねぇぞ!」
「あぁ、貴方は失敗作しか知らないんでしたね。貴方たちが知らない間に、裏で密かに安定利用できる“sister”が完成していたというわけです!!」
尤も、まだ一つしか完成していませんが、と菱杖。
「て、めぇ……ッ!」
「そんなに怒らないでくださいよ負け犬くん、自分たちが止めようとしていたものが作られてしまって悔しいのはわかりますが」
嘲るようにして、菱杖は言う。
「……そこまで大口を叩くのは結構だが、その様子を見るにレーツェルに敗れたのだろう?ここで私たちに取り押さえられることは考えなかったのかな?」
神蔵がドライバーを構えて言った。
「えぇ、微塵も。それにほら、こちらには新たな力がありますから」
ドライバーの形をした石像を構えて、菱杖は言った。
「ロベリアさんが言うには、相当な力を持っているそうじゃないですか、コレ。そんなものがなぜ月面にあったかは知りませんが……そう。貴方たちなど全員まとめて相手できる程度には」
やめろ、と、ミスティと赤萩が飛びかかるが、菱杖が右手をかざすと、二人の体ははるか後方に消えていた。
「では、試してみましょう。これが本当に使えるかどうか……」
石像が、菱杖の腰にあてがわれる。光が石像を包み込むと、一部に、血のように紅い色がついた。ベルト部分に並んだ針が菱杖の腰に突き刺さり、さらに身体中に傷がつけられていく。
「ぐッ、あァァァァッ!!ひィッ……おォォォァァァアア!!」
痛みに喘ぎながらも、右手で鍵の形をしたアイテムのヘッドを回す。菱杖のホルスが流れ込み、刻まれた”P”の刻印が、これまた赤黒く染まった。
「はァ……変身……ッ!!」
菱杖の手が、ドライバーのレバーを倒す。
『Open』
ドライバーから現れた無数の槍が、絶えず菱杖の身体を突き刺す。
『Wings, Rostrates, Reviving the Pasts』
その槍は菱杖の肉を裂き、骨までも露出させる。
『ERA, ERA, Ignition. Flying Pteranodon Dagger』
菱杖の身体が、骨のようなアーマーに包まれたライダーへの変身を完遂した。
先程まで菱杖がいた場所には、菱杖でも、クロージャーでもない、禍々しい姿のライダーが佇んでいた。
『くッ……は、ハ。成功しましたよ。これがワタシの新たな力……なかなか、ですね。身体の奥から力が湧いてくるようです』
菱杖が変身したライダ──ダガーは、そう言って右手を無造作に振るった。そこを起点として、氷の波動が走った。
「……ッ、澪、どけッ!!」
澪へと向かうそれを見て、黒薙は叫ぶ。
「……づ、ゥッ!?」
身代わりとなる形で、その波動を黒薙が受けた。腰にドライバーを装着したまま、その右腕が凍りついていく。
「右腕、だけなら……ッ!」
『Oh! Trine OO! Excellent!!』
左手だけを用い、黒薙はトラインフォームへの変身を完了させた。凍りついた右手は、元に戻っていた。
「澪。お前は逃げろ。執行衛兵本部に通報すればすぐに助けが来るはずだ」
澪を逃がすと、黒薙はマテリアトリロエッジを出現させた。
「お前がどれだけの力を手に入れたか知らねぇが……ここでお前を倒せば、その御大層な野望とやらも終わるわけだろ」
澪を除く五人も変身し、臨戦態勢をとる。
『えぇ、そうですねぇ……それができるなら、の話ですがねェッ!!』
六人が、それぞれの武器を構えてダガーへと襲いかかる。
『えぇ、えぇ!!面白いですねぇ!!一人一人が決戦兵器級の敵が六人も並んでいるのに、不思議と敗北のビジョンが見えないのはなぜでしょう!!』
同時に振るわれた黒薙と神蔵の一撃を、それぞれ両手で受け止めながら、ダガーは言った。それらを難なく逸らし、ダガーは歩を進める。
『Axe Mode』
『Ignited Burning Flamer!!』
そこから体勢を取り直し、黒薙は武器を組み換え、ブルーフレイマーに変身した赤萩と共に斬りかかる。
『かつて敵対していたもの同士の共闘ですか、胸が熱くなりますねぇ!!』
しかし、ダガーはその二つの斬撃を手刀でかき消すと、そのままクリムゾンウォリアーを奪い取った。
「てめぇ、返しやがれ……ッ!!」
『そういうのはワタシが貸してあげたレプリシューター返してから言ってもらいましょうかねぇ!?』
ダガーが握った斧が、真っ直ぐに振り下ろされる。赤萩はレプリシューターの先に斧型のパーツを出現させ、なんとか受け流そうとするが、一瞬遅い。ダガーの純粋な”力”で吹き飛ばされたレプリシューターが空を舞う。ダガーはそれを掴もうと手を伸ばした。
「残念だったな……隙だらけだッ!!」
『Tune Breast Cannon』
胸部に巨きな大砲を出現させて、草壁が叫ぶ。その砲塔から放たれた極太の光線が、僅かにであるがダガーの動きを止めた。
「鈍間が。自分の武器を二度も奪われるような情けない姿を晒すなッ!」
「悪りぃ、恩に着る!!」
宙を舞ったレプリシューターを改めて手に取り、赤萩は言った。
「アンタがお兄ちゃんや私を利用したのは知ってる。そういう欲望を抱いたのが悪いって言われればそれまでだけど……悪いけど、ここで死んでもらえるかしら?」
「あなたを倒して、この街でこれから起こる悲劇を少しでも減らす。……悪く思うなよクソ野郎、テメェだけはここで消す」
そして、その一瞬の隙を突くように、亜矢とミスティが飛びかかった。
『Mystical Thrust!』
毒針と、ミスティカルレイピアを用いた必殺技。それがダガーへと突き刺さり、爆発を起こした。
「やった、と思っていいのかしら……?」
爆煙の先を見据えながら、亜矢は言った。その声色には、仄かに確信の色が色づいていたが──結論から言えば、その確信は、次の瞬間には塗り替えされる。
『クッ、フッフフフッ!!面白いじゃないですか!!これはこれでいい経験値になりそうです!!』
爆煙を振り払うようにして、無傷のダガーが現れたのだ。
『どうしました?そんなにぼうっと呆けて、およそ高校生とは思えない間抜け面ですねぇ!!』
嘲笑うように、ダガーは言う。
『とはいえ、このまま様子見を続けていてもこちらが保ちませんし……終わりにしますか』
ダガーが、その腕を地面に叩きつける。その瞬間、全員の時間が、数秒間だけ奪い去られた。
『さて、まずは……まともに仕事もできない、情に絆されたハッピー女からやりましょうか』
ダガーは指を鳴らす。すると、先程逃げて行ったはずの澪が、ダガーの前に連れ戻された。草壁の能力を強化したものだ。
「あっ……や、だ……っ!!」
『死んでくださいジェリーフィッシュ。いえ、そんな状態になった貴女をそう呼ぶのは相応しくありませんか』
ダガーの腕が、ドライバーのレバーへと触れた。
『Time Master!』
「さ、せるかよ……ッ!!」
それを防ごうと、黒薙は澪の前に立った。だが、ダガーの手がレバーを倒すのを見ると、黒薙の顔からは僅かな余裕すら消え去った。
(ま、ず……ッ!このままじゃ死──ッ!?)
『Over ERA, Pteranodon, Reviving Dagger Strike』
赤黒い回し蹴りが、黒薙に迫る。それが炸裂する寸前のことだった。青白い影が、黒薙と澪を庇うようにして立ち塞がった。
ミスティではない。であるとすれば、黒薙たちを守ったそれは、いったい誰だったか。
その人物を中心として、大爆発が起こる。
『ッフ、フッフフ!!あぁ、何と愚かな生徒なのでしょう!!家族ならともかく、赤の他人を庇うとは!!ここまで愚かだといっそ笑えますねぇ!?ねぇ、赤萩くん!!』
高笑いとともに、菱杖は右腕を振るった。爆煙は消え、そこには──赤萩の服の切れ端と、赤萩が身につけていたドライバーだけが転がっていた。