『ここまで愚かだといっそ笑えますねぇ!?ねぇ、赤萩くん!!』
見せつけるように、現実を叩きつけるように、ダガーは言った。
「颯斗アンタなにバカなことやっ、て…………あ、ぇっ……??」
飛び出して行った黒薙を諌めようと亜矢は口を開いたが、そこに転がっているものを見て、目を見開いた。
「ぅ、そ……あっ、あぁぁぁぁぁッ!!」
絶叫とともに、亜矢の変身が解ける。精神の揺らぎにより、変身が維持できなくなったのだ。
『フフッ、フッフフフフッ!!用済みになった黒薙くんと赤萩さんを消すつもりでしたが、まさかあそこまでのバカが引っかかるとは!!そうしたところでワタシが止まるワケはありませんが、ねェッ!!』
光を失った目で、滂沱の如く涙を流す亜矢に、ダガーが接近する。
『Tune Rocket Boost. Tune Burst Knuckle』
その手が伸ばされる寸前に、追加武装を身につけたプレデターがダガーの腹部を撃ち抜いた。
「何を呆けている白髪頭!!ソイツと妹を連れて逃げろ!!」
続け様に拳を打ちつけながら、プレデターは言う。
「君もだレーツェル、奴の狙いは黒薙と亜矢ちゃん……君と黒薙の関係は聞いている。だから逃げろ」
アルテも、グロリアスティックを掲げて言う。
「……ここは任せました。必ず生きてまた会いましょう」
ミストOOは高く飛び上がり、澪の手を強引に掴んだ。
「先輩。……逃げますよ。悔しいですけど、今の私たちじゃアレには勝てない」
「わかってる……わかってるんだよ……ッ!」
放心したままの亜矢を抱えて、OOは戦線を離脱した。仮面の奥のその表情には、苦悩と後悔の色が濃く現れていた。
「乗りなさい黒薙くん!!レーツェルちゃん!!」
それから数分後、全力で走る黒薙たちの横に、執行衛兵の装甲車が停まった。
「ありがとうございます、遠山先輩。……状況の説明は必要ですか?」
「念のためお願いするわ」
ミスティは今に至るまでの事情を一通り遠山に説明した。
「……そ、うですか。彼を喪ったのは痛いですが、今はそうも言っていられません。まずは黒薙くんたちを絶対安全な空間に連れていかなければ」
遠山はそう言って、運転席の剣持にスピードを上げるよう言った。直後、装甲車の後部に、何かがぶつかる音がした。激突点から、腕のようなものが現れ、それが、装甲車のコンテナ部分の扉を引き裂いた。
「チッ、まずい……ッ!武装限定解除、”右腕”ッ!!」
『Gravity Knuckle! Gravity Fist!!』
迫るダガーの胴体に、遠山と黒薙が全力の拳を叩き込む。衝撃がダガーの体を浮かせ、ダガーを道路へと叩き落とした。
「……ッ!千聖ちゃんと六花ちゃんは追ってこれないように足止めを!!奈菜々ちゃんは能力で穴を塞いで頂戴!!」
遠山はそれぞれに指示を出す。指示の通り、有栖川が無数の隕石を出現させ、双海はホルスシューターを何発も撃ち、奈菜々は能力で土の壁を作り、コンテナの穴を塞いだ。
『それでワタシから逃げられるとでも思いましたかァ!?甘いですねぇ!!』
しかし、ダガーは体勢を取り直し、装甲車へと向かって走り始める。そんなダガーの行く手は、真っ赤なシルエットに遮られた。
『貴方は……クラウン、ですか……ッ!!』
「正解。……オレがここに来た理由、もう分かってるよな?」
ダガーの胸のディスクに光弾を打ち込んだ少年──牧瀬は、レプリシューターにマテリアピースを装填して言う。
「オレは赤萩亜矢を巻き込むなと言ったし、もう一度同じ真似をすれば殺すとも言った。言ってなかったとしても……ここらのお前の行動は目に余る。だから……悪く思うなよ。解錠」
牧瀬の身体が、クラウン・シャトランの鎧に包まれた。
『いいでしょう……今のワタシがいかに強くなったか、貴方を殺して教えて差し上げましょうか!!』
ダガーの拳が、クラウンに向けて伸ばされる。クラウンは首を少し逸らし、それを回避する。
(一撃の重さもそうだが……何より恐ろしいのは拳が纏う冷気だな。マトモに喰らえば腕が丸ごと凍りかねねぇ)
ダガーの戦力を冷静に分析しながら、クラウンは立ち回る。
『おやおやァ、貴方ほどの方がワタシの一挙一動に目を見張りながら戦っているというのは優越感があってイイですねぇ!!』
『そうかよ、敵戦力の把握は戦場の定石だと思うがな?』
剣を出現させて、クラウンは言う。
『そうですか……そう強がらずとも、貴方はここで死にますがねぇ!?』
『ハッ、言ってろ。──命令する、ライダー ・菱杖透流の拳の冷気を解除せよ』
直後、ダガーの腕を覆っていた絶対零度が消え去った。その隙を突くように、クラウンの剣がダガーのディスクを切り裂いた。
『ほう……少しはやるようですが……甘い……ッ!!』
初めてダメージらしいダメージを負ったダガーは、声を荒げてクラウンに掌を向けた。その中心から、氷の波動が放たれる。
『命令する』
対するクラウンは、回避すらしようとせず、言葉を紡ぐ。
『眼前に迫る凍結波動を無力化せよ』
ダガーの一撃をかき消し、クラウンは再び剣を振るった。
『なんて……大人しく食らってあげると思いますか?』
しかし、今度はダガーにダメージはない。長い杖を出現させ、その一撃を受け流したからだ。
『今度は……こちらから行きましょうか……!』
ダガーの連撃が、クラウンを襲う。クラウンは剣を用いて巧みに受け流すが、それにも限度はあるもので。
『ほらほらぁ!先程までの威勢の良さはどうしました!?』
鋭い一撃が、クラウンの鳩尾を突いた。
『が……ッ!?』
しかし、クラウンは倒れない。その顔を覗き込もうもしたダガーの複眼にレプリシューターを突きつけ、躊躇せず引き金を引いた。
『ギャハッ、やっぱ面白ぇな、本気の戦いってのは!!』
反撃と言わんばかりに、ダガーの足がクラウンの腹に当たり、ノーバウンドで数メートル吹き飛ぶ。それすら気にせずに、クラウンは叫ぶ。
『オラッ、もっと愉しませろよクソ野郎!!』
血のように赤い眼光を煌めかせ、クラウンの握りしめた拳が、ダガーの頭蓋を揺らした。
『やってくれますねぇ……ッ!!』
首を逸らすことで衝撃を受け流して、ダガーは言う。返す刀の右の掌底がクラウンへと叩きつけられる。
『まだだろ、まだそんなモンじゃねぇだろ!?』
ダガーの手首を掴む。力任せに掴んだ腕を引き、ダガーの身体が浮き上がった瞬間。
『くたばれクソ野郎!!』
クラウンの爪先が、ダガーの鳩尾を貫いた。
『か……ッ、やるじゃないですか……ッ!!』
ズザザ、と、ダガーの足が地面を削る。
(なるほど、ねぇ。今のワタシの戦力とクラウンの戦力はほぼ互角といったところでしょうか……ここで遊びに付き合うのも構いませんが、そろそろこちらも消耗してきましたし)
ダガーの手が、ドライバーのレバーを倒した。それに対抗するように、クラウンもレプリシューターの銃口を押した。
『Reviving Dagger Strike』
『Crown Drive』
二つの高圧エネルギーが真っ向から衝突し、周囲の空間が歪む。キン──と甲高い音が響き、直後に、爆発があった。クラウンはその剣を振るい、爆煙を払う。しかし、
『……チッ、逃げやがったか』
ダガーの姿は、そこにはもうなかった。
「さて……あと一度変身できる程度のホルスは残っていますが……」
変身を解除した菱杖は、路地裏のドラム缶に腰掛けながら、空を見上げた。
「……馬鹿との交戦さえなければよかったのですが。これ以上の消耗は控えたいですし……せめて、声明だけでも出しておきましょうか」
立ち上がると、菱杖はレプリシューターを片手に、路地裏を歩きだした。
「解錠」
菱杖の身体が、クロージャーの鎧に包まれる。
「あ……?おい、あれ怪人じゃね?」
「ヤバ、アレ投稿したら俺ら一気に人気者じゃん!!」
クロージャーに、不躾な視線を送る者たちがいた。携帯のカメラで、物陰からジロジロと見られている。
(もともとその辺りの傷つけても心が痛まない生徒にワタシの声明を投稿させるつもりでしたが……ちょうど都合の良い者がいて助かります)
クロージャーは杖を振るい、無法不良たちが隠れていたコンテナを吹き飛ばした。
「ひッ、誰ッ……誰かッ!」
『あぁ、安心してください……言うことさえ聞けば命までは奪いませんから』
無法不良の足元が、水流に飲まれる。
「なッ、何をすッ!?」
『ワタシを撮ろうとしていたのでしょう?撮らせて差し上げますよ、ワタシが今から言う言葉だけを配信しなさい』
無法不良に命令し、生配信を行わせる。どうやら彼らはそこそこ有名な配信者だったらしく、開始するや否や、瞬く間に視聴数が集まっていった。
《なにこれ?ドラマの撮影?》
《さすがに撮影の盗撮はまずいでしょ》
そういったコメントが、画面を流れていく。しかし、恐怖に震える無法不良の目に、そのコメントは入らない。
『あぁ、こちらは撮影などではありませんのでご安心ください、皆さん』
クロージャーは、穏やかな声色で語る。
『ワタシは怪人のリーダー、クロージャー・シャトランと申します』
愉しげに、その手に握った杖で地を小突く。
『さて皆さん、皆さんは仮面ライダーをご存知ですか?テレビなどで放映されるヒーローとしてではなく、小説や漫画といった媒体の存在としてではなく、実際にワタシたちと戦っているとしての仮面ライダーです』
その放送はだんだんと拡散されていき、装甲車の中の奈菜々の目に入った。
「あのクソ野郎、わざわざ配信なんかして、何のつもりかにゃあ……ッ!」
奈菜々の携帯を覗き込む形で、黒薙もそれを見る。
『その仮面ライダーと、そのお仲間に少し、言いたいことがありましてねぇ?』
黒薙の表情に、焦りの色が増していく。
『……あぁ、直接名前を出させてもらいますが悪く思わないでくださいね』
画面の向こうに黒薙たちがいることを知ってか知らずか、クロージャーは言う。
『黒薙颯斗とミスティーク=レーツェル。赤萩亜矢と牧瀬玲王。一人ずつでいいので、ワタシに殺されにきてくれませんか?』
黒薙の額に、怒りを示す青筋が走る。
『あぁ、今すぐにとは言いませんよ!そうですねぇ……一週間後の十四時に、件のスタジアムまで来てください!!』
そして、狂気的な笑みを引っ提げて、クロージャーは言った。
『まぁ、もし来なければ十秒ごとに一人ずつ一般市民を殺しますから……絶対に来てくださいよ?』
「やってくれるじゃない、菱杖透流……ッ!!」
放送を見た遠山は、怒りのままに拳を壁に打ちつけた。
「やめておけ遠山。物に当たるのはエレガンスに欠ける」
その様子を横目で見て、運転席の剣持が言った。
「聞いた限りでは、ここ一週間は、手を出して、こなさそうですけど……アレの言葉を、信用するのは、ちょっと……」
「そうやな。……どうしますのん、遠山サン」
双海と下総が言う。
「……ひとまず、隠れ家的な場所へ向かってるわ。黒薙くんや亜矢ちゃんはそちらで保護する」
遠山は窓の外を眺めたまま、無愛想に言った。
「……一週間、か」
「どうしました、先輩?」
「……今のままじゃ、僕たちはアイツに勝てない。無茶だってのはわかってるが……なんとかならねぇか?」
黒薙がミスティに問う。
「……できないことはないです。今までで一番の出力を出せるものを作る程度なら、やろうと思えばできる範疇ですね」
ミスティは遠い目をしながら答える。
「……ですけど、それで菱杖透流に勝てるかと言ったら微妙なところです。私たちの力だけでは、絶対にアレを上回る力は得られない」
試してはみますが、期待はしないでください。ミスティはそう言った。装甲車が山奥の別荘地らしきところに到着したのは、その数秒後のことだった。
「着替え等はこちらで用意しておくわ。とりあえず、今は体を休めて頂戴」
到着するなり、遠山は言った。
「……それから、亜矢ちゃんのこと、見ていてあげて。あの子が目を覚ました時、せめてあなたがそばにいてあげないと……本当に、比喩でもなんでもなく、壊れてしまうから」
実感のこもった声だった。黒薙はその真意を探ろうとしたが、その前に遠山は地下の研究室へと向かって行ってしまった。
「……はぁ。まずは牧瀬に連絡してみるか」
黒薙は携帯を取り出し、悪友へと連絡を取った。
『よう、どうした黒薙?』
「……あの放送は見たか?」
『見たよ。……っつーか、その直前にアレと戦ってきたところだ』
牧瀬はきまりが悪そうに言葉を紡ぐ。
『まさかアレを倒しに行くつもりか?やめておいた方がいいと思うぜ?オレと同程度の力だったし、こっからいくら鍛えたところで……』
「そういう話をしてんじゃねぇんだよクソ野郎」
黒薙は怒りの意を声に込めて放った。
「……倒せる倒せないじゃねぇ。絶対にこの手で倒すんだ。だからテメェの手を貸せ」
『……話聞いてたか?アレはオレと互角の相手だって言ってんだろ、そんな面倒なヤツの相手なんざ、オレには何の得もないわけだ。わかるか?わかるよな??』
「……あぁ、テメェは菱杖と戦うのに協力しろっつったと思ってんのか。僕が言いたいのはそうじゃねぇ。あの腰抜け野郎のことだ、どうせ他にも怪人を連れてくる筈だ。……だから、そいつらの相手を頼みたい」
菱杖は僕がやる、と黒薙は言った。自暴自棄の要素も、その声色には含まれていた。
『……気が向いたらな。オレが愉しめると判断したら協力するが期待はするな。以上』
それから、十時間弱が経過した。日が落ちて暫く、日付が変わる、ほんの少し前のことだった。
「こ、こは……?」
「……目、覚ましたんだな、亜矢」
ベッドに寝かされていた亜矢が、目を覚ました。
「なんで私がこんなとこに……ッ!!あッ、あァァァァッ!!」
赤萩が撃破された後の情景を思い出して、亜矢は慟哭した。
「あ、あぁ。あぁっ、あっ……!!」
上体を起こした亜矢が、そのまま床に倒れ込む──寸前に、黒薙がその身体を支えた。
「大丈夫だ……ひとまず、落ち着け」
「ぁっ、ひぃっ……はぁっ、はぁっ……!!」
荒い呼吸を漏らす亜矢の背を撫で、黒薙は亜矢の状態が回復するのを待つ。
「は、やと…………」
「どうした?なんか必要なモンでもあったら取ってくるが……」
「……だめ。どこにも行かないで……ッ!!」
立ち上がった黒薙の服の裾を、亜矢の右手が掴む。
「わ、たし……私、怖いの……ッ!このままアンタが離れたら、あ、アンタまで……ッ!!」
「……わかったよ。わかったからそんな顔しないでくれ。せっかくの美人が台無しだぜ?」
亜矢の頬を伝う涙をその手で拭い、黒薙は優しく語りかけた。
「……うん」
亜矢が頷いた次の瞬間、くぅ、と音が鳴った。亜矢の腹から。
「……ま、あれからずっと寝てたもんな。もしまともに食べられる状況ならキッチン借りてなんか作るけど、どうする?」
「……お願い。作るとこ、見ててもいい……?」
「いいよ。僕の料理の腕前は抜群だ、うっかり見惚れるんじゃねぇぞ?」
黒薙は亜矢の手を引いて、台所に立った。
「おっと、エプロンはつけた方がいいか。……っつーか、なんでエプロンまであるんだよここ。用意周到すぎんだろ」
エプロンをつけ、バンダナを巻く。
「だいたいここなんでもあるし、なんか欲しいものとかあったら言ってくれ」
「……なんでもいいから、身体があったまるやつ、お願い」
黒薙の問いに、亜矢は虚な目で答えた。
「……よし、できた。僕としてはそれなりに美味しくできたつもりだし……まぁ、とりあえず飲んでみてくれよ」
それからしばらくして、スープが完成した。カップに注ぎ、席に座った亜矢へと渡す。
「……ありがと。いただきます」
ごくん。暖かな液体が亜矢の喉を通る。直後、亜矢の頬を一筋の涙が伝った。
「……ごめん颯斗。これが美味しいのはわかる。わかるんだけど……なんていうか、美味しいのはわかるはずなのに、全然味がしない……ごめん、アンタが私のために作ってくれたのに…………」
「……あぁ、いや、いいんだよ。こんな状況だし、むしろ喉を通るだけでもいい方だと思うよ」
黒薙は軽薄そうな笑みと共に言った。その目には、幾らかの悲しみが宿っていた。
「ごめん……本当にごめん……っ!!」
「大丈夫、本当に大丈夫だからそう気に病まないでくれ。むしろそんな顔された方が僕としては辛いからさ」
黒薙は、落胆の感情を押し殺して気丈に振る舞う。その優しさこそが、かえって亜矢を傷付けていたのだが。
「ねぇ、颯斗……その、シャワー浴びたいんだけど……」
「……言っとくが、いくら僕でもシャワーにまでは付き合わねぇからな?」
「わかってるわよ……」
それからしばらくして、恥じらいながら亜矢が言った。
「……その、勝手かもしれないけど、ドアの外で待っててもらっていい……?」
「そんなビクビクしながら言わなくてもそれくらいしてやるから安心しなさいな」
黒薙の言葉を聞き、亜矢は嬉しそうに着替えを手に取った。
「じゃあ、シャワー浴びてくるから……その、覗きたければ覗いていいけど、できるだけ……」
「覗きなんてしねぇよガキじゃねぇんだから」
黒薙の言葉に、亜矢はふふっと微笑んだ。
「……ねぇ、颯斗。今いいかしら」
「どうした?」
数分後、シャワーを浴びながら、亜矢は黒薙に語りかけた。
「……私、さ。澪ちゃんがアンタに傷ついて欲しくないから怪人になったって言ったとき、共感もしたけど、それ以上に、傲慢だなって思ったの」
黒薙は、無言で亜矢の言葉を聞く。
「でも、お兄ちゃんがアイツにやられて……私、思っちゃったのよね……その、こんなことアンタに言ったらダメだってわかってるんだけど……あそこに澪ちゃんがいなければ、お兄ちゃんは死ななかったのかな、って…………ッ!」
亜矢の涙が、シャワーとともに流されて消えていく。
「はは、こんな最低の女が、人のこと傲慢とか思ってたの、ほんとどの口が言うのよって感じね!」
「……なぁ亜矢。お前が泣いてるところは見たくないって言ったけどさ……そうして無理して笑ってるとこは、それ以上に見たくねぇんだよ」
顔は見えてねぇけど、お前が今どんな顔してるかくらいわかる。黒薙はそう言った。
「……だから、お前の本当の
黒薙は、真剣な声色で言った。
「…………ずるいよ。そんなこと言われたら、絶対言っちゃダメなことでも言いたくなっちゃうじゃん………………」
シャワーが止まり、亜矢の涙が、掠われることなく、自然のままに垂れ落ちる。
「…………お願い颯斗。菱杖を倒して、お兄ちゃんの仇を討って」
そして、真っ直ぐな『欲望』を、吐き出した。
「それがお前の
覚悟を決めた顔で、黒薙は言った。
『ギャハハ!!よう黒薙、決戦当日だな!?オレがお前に協力するかどうか決めてやるからなんか話せや!!』
一週間が経った。菱杖が指定した日の、指定した時間、その三時間前に、黒薙の携帯が鳴った。電波の送信者は牧瀬だった。
「……なんか話せ、つったってなぁ。今テメェと世間話するつもりもねぇし」
『ギャッハハ!!そこでなんとかするのがヒーローだぜ黒薙!!』
「……他称ならともかくソレを自称するつもりはねぇんだけどな。小っ恥ずかしいし」
黒薙は頭を掻きながら言った。
「……まぁ、全力でアイツをブッ潰すだけだよ」
『ウチの宿主に頼まれたからか?』
「それもある。そこまでは否定しねぇよ。……だが、一番は僕のココロだ。僕は、僕自身の私利私欲のために菱杖透流をブッ潰す」
黒薙の答えを聞き、滝瀬は声を弾ませた。
『キヒ。フッヒ、ギャッハハハハハッッ!!最ッッッ高だよ黒薙!!百点満点中の百万点だ!!これまでの綺麗事並べ立てるだけのお前のままだったらお前から潰す気だったが、気が変わった!!お前の望み通り、雑魚を蹴散らす程度はやってやろうじゃねぇか!!』
牧瀬からの通話が切れた。黒薙は安堵の息を吐いた。
「はい、先輩。完成しました。今できる範囲での最高傑作です」
それから数十分後、ミスティが、完成させたばかりの新たなデバイスを、黒薙に投げ渡した。
「……一応聞いとくが、これもマテリアブレイカーと併用するタイプのやつか?」
マテリアトリニティのことを思い出し、黒薙は確認を取る。
「いえ、そういうわけではなく。単体で過去最大級の出力を発揮できますよ。……ただ、一つ困った点があるんですね」
ミスティは、ばつが悪そうに言った。
「マテリアブレイカーに精神を蝕む毒があったように、こちらにもそれとは別ベクトルの毒がある。……それも、マテリアブレイカーなんかとは比べ物にならないくらい強い毒が」
頭を抱えながら言葉を紡ぐ。
「あれとは違って、本人の努力次第でその毒は克服できるんです。先輩が本気で覚悟キメて変身したなら、これは先輩を誰にも負けない、最強のライダーにしてくれます。してくれるんですけど……」
「けど、何だ?」
「……一瞬でも先輩の覚悟が緩んだ場合、先輩の体はこれの毒素に侵されて──心身ともに、恐ろしい『魔物』に成り果てるんです」
ミスティの目が、真っ直ぐに黒薙の目を見据える。
「それだけの力……先輩に、使いこなせますかね?」
「ハッ、余裕だな。あまり僕をナメるなよミスティ。愉快に爽快に理解しな、テメェの宿主は、一度決めた覚悟は絶対に折りやしねぇってな」
黒薙は、ニッと笑った。
「……ま、仕方ありませんね。信じてあげますよ、先輩。だから……あのクソ野郎の相手は、任せましたよ」
「うひゃー、大量に雑魚がいるじゃねぇか!!まぁ予想通りだがな!!」
菱杖が指定した時間の、二十分前。スタジアムへと繋がる道に、牧瀬は立っていた。今まで見たこともないような、無数の骨の怪人。それらを前に、牧瀬は野生的な笑みを剥き出しにする。
「スライムを一匹一匹プチプチ潰したところで得られるリザルトは大したことねぇだろうが……せいぜい、オレを愉しませてくれよ?」
襲いかかる怪人の拳を受け止めて、牧瀬は言った。
「あたしのせいで、赤萩先輩は……ッ!!」
牧瀬が鮎川と交戦していたのと同時、自分のせいで赤萩がやられたと思い詰めていた澪は、誰にも話さず、菱杖の下まで向かい、攻撃を仕掛けた。怒りのままに激流を振るった。だが、ダガーに変身した菱杖の反撃に敗れ、傷だらけで地に伏していた。
「ふっ、フッフフフッ!!まさかワタシを倒せると思ったんですかぁ?貴女ごときがワタシに勝とうなど、痴がましいにも程があるとは思いませんかねぇ!?」
澪の右肩を踏みつけながら、菱杖は微笑う。
「あッ、が、ァッ……!!」
ミシリ。骨が軋む音が聞こえる。怒りと苦痛に、澪の表情が歪む。
「あァァッッッ!!!!」
ゴキリ。骨が外れる音が響く。澪の絶叫も、同時に響いた。
「どれだけ叫んでも助けなどは現れませんがねぇ?そんなヒーローがいたなら、赤萩くんがワタシに始末されることもなかったはずなのですから!!」
菱杖の乾いた笑い声が、スタジアムに反響する。
「では、せっかくですし……ここで死んどきましょうか、ジェリーフィッシュ」
菱杖の手に握られたレプリシューターの銃口。それが、澪へと向けられる。その引き金に指が触れた瞬間のことだった。
「ごッ、あァァァァッ!!??」
突如として現れた黒いバイクが、菱杖の身体を撥ね飛ばした。
「ぁ、う、そ……?」
「嘘じゃねぇよ。……ったく。人に心配かけさせんなとか言っといて、やっぱりテメェは僕の妹じゃねぇか」
ヘルメットを取った黒薙が、パチン、と指を鳴らす。
「まったく、化身遣いの荒い先輩ですこと……澪ちゃんを保護すればいいんですよね、先輩?」
「あぁ。……オラ、立てよクソ野郎。その程度でくたばるほどヤワな体はしてねぇだろ?」
ミスティが澪を装甲車に乗せたのを見ると、黒薙は菱杖に向かって叫んだ。
「えぇ、えぇ。その通りですとも!!……しかし、あの包囲網をどう切り抜けたというのです?あそこはドーピングしたビークルとその兵士が塞いでいた筈ですが……」
菱杖は立ち上がると、疑問を言葉に表した。
「テメェが呼び出したのは僕かミスティ、それから亜矢か牧瀬。おかしいとは思わねぇのかクソ野郎。……ここに、僕が一人で現れたことを」
「ま、さか……ッ!!」
「今更驚いてんじゃねぇよ。……牧瀬はテメェらと敵対してる。敵の敵は何とやら。……さて、これで邪魔モンは誰もいなくなったか」
真っ直ぐに菱杖を睨み、黒薙はドライバーを装着した。
「しかし……貴方ではワタシには勝てないと思いますがねぇ?」
菱杖も同様にドライバーを装着して言う。
「あぁ……今までの僕だったらそうだったかもな。だが、今は違ぇよ」
「怒りでプッツンした程度でワタシに勝てるとでも思っているのですか?ワタシは、貴方や貴方の妹のような身の程知らずが大嫌いなのですがねぇ……変身」
ダガードライバーのレバーが倒された。菱杖の身体が無数の槍に貫かれ、ダガーへの変身を完了する。
「怒り……怒りか。確かに、単純に言えばそうかもしれねぇな。赤萩陽希は勝手に人を庇って死にやがるし、亜矢はワガママで僕を振り回すし、ミスティは相変わらず人を小馬鹿にしたような態度だし、牧瀬は上から目線でこっちを品定めしてきやがるし、草壁蒼哉や神蔵さんも関係ねぇ僕らのために無謀な戦いに挑みやがるし、澪は勝手に思い詰めて勝手に動きやがるし……それから、テメェに対しての怒りは言葉じゃ言い表せねぇほどだ」
黒薙は、段々と語気を強めていく。
「だがな。……もう、そんな怒りだとかの感情は超えちまったよ。今はただ……目の前のテメェという敵をこの手で殺すって『覚悟』しかねぇ」
黒薙の右手が、ミスティから受け取った新たなデバイスのボタンを押した。
『Existence of Glory!!』
放たれたホルスの波動が、ダガーに変身した菱杖を怯ませる。
『……なるほど。ですがそれだけ高圧のホルス、貴方ごときに耐えられるものでもないでしょう!!』
「どうだろうな?僕に倒されるのが怖いからってンなこと抜かすなよ諸悪の根源」
ダガーの挑発を受け流し、ドライバーにそれを挿入する。
『Transcend!!』
そのホルス波動が、黒薙の身体を蝕む。震える指先で、黒薙は再度ボタンを押した。
『Set!』
「変、身……ッ!!」
そして、レバーを倒す。いくつもの光のリングが、黒薙の身体を通過していく。
『Are You Ready To Fight? Never Look Back! Beat Up Your Enemy! With Your All Strength!』
黒薙の身体が薄黒いスーツに包まれる。その上に、純白のアーマーが装着されていく。
『Break Up! Transcending OO!! Excellent!! Amazing!! Awesome!!』
そして、それらを覆うように、真紅の鎧が現れる。新たなる姿・トランセンドフォームに変身した黒薙は、オブリビオンセイバーを片手に、言った。
「こっちは腹ァ括ったぞ。テメェも覚悟を決めやがれ。僕にブッ潰される覚悟をな。……行くぜクソ野郎。失われた時間の力、見せてやる」
『なんでもイイですが……いくら新たな力を手に入れたとしても、ワタシにはそう容易に勝てないと思いますがねぇ?』
「油断。驕り。テメェこそ新しい力にハシャいでんのかもしれねぇが……上から目線で調子ぶっこいてるだけじゃ、覚悟を決めた僕は倒せねぇぞ」
言い捨てると、OOはダガーへと切りかかった。
『……ッ!』
一瞬前まで余裕の表情を見せていたダガーが、仮面の裏の顔を焦燥に歪め、その一閃を避けるべく動いた。
「おいおい、さっきまで僕をナメてやがった割には必死こいて避けるじゃねぇか。こっちは本気を一つ見せたぞ。テメェもコッチに上がってこいよ。正面から叩き潰してやるからよォ!!」
斬撃の余波で、観客席が数メートルにわたって真一文字に切り裂かれる。驚くダガーを尻目に、OOは言った。
『えぇ、えぇ。ワタシは貴方を誤解していたようです!!確かに、今の貴方ならばワタシをも倒しうる!!』
ダガーの拳が、OOの仮面を捉えた。
『貴方のソレに乗ってあげようじゃありませんか、黒薙くんッ!!』
OOは左の掌でその拳を受け止める。が、そもそも必殺技一つ使わず五人のライダーと一人の怪人を圧倒した敵だ。いくら黒薙が強くなろうと、ノーダメージでダメージを殺せはしない。
「か、……ッ!ようやく、僕と同じ土俵まで上がってきてくれた、ってかァ!」
衝撃に骨が軋む音を聞きながら、OOは仮面の下で犬歯を剥く。
『ワタシとしては貴方のお遊びに付き合ってやるつもりはありませんからねぇ……そのまま、死んでもらいましょうか』
ダガーのドライバーから抜き取られた鍵──マテリアダガーが、レプリシューターに装填された。
『Replical Attack. Material Drive.』
銃口から、プテラノドンを模したエネルギー弾が放たれる。それは、意趣返しと言わんばかりに、空中で三叉に別れ、OOへと向かっていく。
ドン!!爆音が響いた。着弾点で爆発を起こし、土煙が巻き上がる。
『えぇ、ですが念には念を、ということですの、で……ッ!?』
追撃を仕掛けようとしたダガーであったが、煙の中の人影が立ち上がったのを見ると、一瞬の躊躇いを見せた。
「ナニ驚いてやがんだクソ野郎。……言ったろ、今の僕は強いって」
右腕に装着した盾を掲げ、OOは言う。
『Over Oblivion Shield!!』
その中心の赤いディスクが、鈍く輝きながら回転する。
『何をする気か知りませんが……その盾がいかに堅牢であろうとも、防げなければ何の意味もありませんがねぇッ!!』
再び、プテラノドンの光弾が打ち出される。
「眩しい努力だな。目が眩んじまいそうだよ。……ま、何しても無駄だと思うがな?」
続けて、二筋の氷の波動が、OOから逃げ場を奪うかのように放たれた。しかし、OOは回避すらしようとせず、ただその盾──オーバーオブリビオンシールドを構えるだけだった。
『愚かな真似をしますねぇ!!そんなことをしたところ、で……ッ!?』
だが、ダガーの言葉は途切れた。光弾と波動、併せて五つの即死級の一撃。その全てが、軌道を変えてOOの盾へと向かっていったからだ。
『Mate-Reading』
無機質な音が響く。次の瞬間、二本のマテリアキーが、盾のスロットに現れた。OOは、躊躇うことなくそれを装填した。
『Fire! Laser!』
「今度はこっちの番だ。……行くぞッ!!」
OOの足が、地面を踏みつける。その一歩一歩が、重々しく大地を揺らす。
『Fire! Laser! Twin Material Attack!!』
黒薙の両手が、炎に包まれる。
(まずい……あれを喰らうのはまずい!!何故かは知らないが、本能がそう告げている!!)
迫る拳を、後ろ向きのジャンプで躱す。だが、
『ぐッ……あァァァッ!!』
その後頭部に全力の打撃を受け、飛び退いたダガーは撃ち落とされる。
「ナニ呆けてやがる。もしかして、それで終わりなんて言うつもりはねぇよな?」
『えぇ……貴方だけはここで潰しておかなければならないッ!!ワタシの目的を果たす上での一番の障害は貴方だ!!認めましょう、貴方こそワタシの最大の敵であると!!』
「ハッ、そっくりそのまま返してやるよ淫行教師。テメェは僕の最大の敵、だから……テメェだけはここで潰すッ!!」
拳と拳が交差する。互いの拳が、互いの頭蓋を撃ち抜く。その衝撃で、双方が一歩ずつ退く。
続けて、OOの右脚がダガーの左肩を捉える。ダメージを避けるべく、ダガーはその脚を掴み、黒薙を投げ飛ばした。
『ハハッ!そのまま死んでもらいますよォ!』
そこに、全力のドロップキックを叩き込もうとする。
「甘ぇんだよ、クソ野郎が……ッ!!」
くるり、と身体を翻し、その一撃を受け流す。ダガーの身体が、情けなくも宙に舞った。
(チッ、あの一瞬でイっちまったか……ッ!!)
OOは、垂れ下がった自分の右腕を見ながら悪態をついた。受け流す際に、一瞬、ダガーの攻撃を受け、骨にまでその衝撃が伝わっていたのだ。
「ハァ……お互い、もうそう何度も殴る蹴るできるほどの体力は残ってねぇみてぇだな?」
『ですねぇ……ですから、ここらで幕引きにしましょうか!!』
二人の手が、それぞれドライバーのレバーを倒した。
『Reviving Dagger Strike』
『Transcending Oblivion Strike!』
同時に飛び上がり、キックとキックがぶつかり合う。その余波で、スタジアムの電光掲示板が音を立てて砕け散った。
「はァッ、ひィッ……かッ、はァ……ッ!!」
立ち込める砂埃の中、膝をついたのは菱杖だった。血を吐きながら、それでも立ち上がろうとする。
「……もうやめとけ。これ以上やったって後悔するだけだ。テメェはここで僕に捕まって裁判にかけられて法の裁きを受ける。まぁ十中八九死刑だろうが……テメェみてぇなクソ野郎が、簡単に楽になれると思うなよ」
OOは、銃口を突きつけながら言った。
「いえ、ワタシはまだ捕まるわけにはいかないんですよ……ッ!!」
「何言っても無駄だ。大人しくお縄にかかっ……」
「らせるわけにはいかないんだよね」
背後から聞こえてきた声に、OOは驚く。
「まったく……念のために僕を待機させておくなんて非道いことをしてくれるね、センセイ?僕には戦闘能力などないと言うのに……」
現れたのは、ロベリアと朱鷺澤だった。
「待て……ソイツはここで僕が……ッ!!」
「無理だよ。だって僕が逃がすから」
ロベリアの掌から、謎の煙が放出される。それに触れた途端、菱杖の身体が溶けるように消えていった。
「テ、メェ……何のためにソイツを……ッ!!」
「彼はあれでも僕たちの要だからね、君たち腐った街の奴隷に攫われるわけにはいかないんだよ」
その煙へと向かいながら、ロベリアは言った。
「ふ、ざけ、やがって。何が要だ……テメェの望みなんざ知らねぇが、無関係のアイツの命を奪ってまですることだってのか!?」
「うん。そうだね」
短い言葉だった。
「……朱鷺澤。テメェはそれで良いのか!?テメェは、テメェが惚れた女の兄貴を殺した野郎につくってのか!?」
縋るように、黒薙は叫ぶ。
「無駄だよ。永治に君の言葉は届かない。それに……届いたとしても、約束を反故にしてその『惚れた女』とやらを奪った君の言葉を、永治が素直に受け取るとでも思うのかい?」
しかし、朱鷺澤は答えない。ロベリアの言葉だけが、淡々と響いた。
「ふざけんじゃねぇ……テメェらもここでブッ潰してやる……ッ!!」
「無理だね。……それじゃ、また会おう黒薙颯斗くん。次に会う時は……もっと、面白いものが見れるかもよ」
OOの叫びも虚しく、二人は、煙の先へと消えていった。OOは追い縋るが、直後に霧が消え去り、その右手が空を切った。
何もない、誰もいない空間で、黒薙は立ち尽くしていた。
「……何やってんだろうな、僕。恋人の兄貴の仇も取れない。敵を捕まえることすらできない。友達を助けることもできない……ッ!!」
その紅い瞳から、無念の涙が溢れ出る。
「何がヒーローだ……誰も救えない、誰も守れない、そんな僕が、ヒーローになんてなれるわけねぇだろうが…………ッ!!」
地面を、握った拳で打ちつける。
「もっと……強くなりたい…………ッ!!誰にも負けないくらいに、誰も悲しませないくらいに…………ッ!!」
ついに第3章完結です。というわけで墓脇です。
さて、この章では、極力黒薙の活躍を大々的に描かないようにしてきました。8話ある中でまともに変身して戦ったのラスト2話だけですからね……。
澪を助けるという大仕事は流石に黒薙以外ではとてもできないので前回は変身してもらいましたが、本来ならこの35話までちゃんとした黒薙の戦闘シーンを書くつもりはありませんでした。これは最後の最後に覚悟を決めて戦場に立つシーンを際立たせるためです。
しかし、いくら覚悟を決めたところで、結果が伴うとは限らないのが残酷なものですね。結局、黒薙は赤萩の仇である菱杖を倒し、捕らえることもできませんでしたし、朱鷺澤を説得することもできませんでした。自らの無力さに打ちひしがれる黒薙ですが、果たしてどうなることやら……。
さて、現在の予定では、次回からの第4章13話でひとまず『仮面ライダーO』第一部完結を予定しています。とは言っても、劇場版的な話やVシネ的な話も書くつもりですのでまだしばらくは続きますが、その後の第二部では黒薙たちとは別軸の話を展開していきますので、しばらく黒薙たちとはお別れということになります。残り限られた時間の中で、黒薙たちがどんな結論を出すのか、ご期待ください。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。よろしければ、次回もまたここでお会いしましょう。墓脇でした。