仮面ライダーO   作:墓脇理世

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ROAD TO CUBIC「『不朽』の焔は逆巻きて」後編

『ほー。菱杖透流の遺した力ねー。……ゴミがカスと組んだらどーなるんだ?』

「滅茶苦茶強くなるんじゃねえか?──ま、そんなに知りたきゃてめぇで試してみな」

 目を光らせて独り言ちたグラスホッパーの懐深くまで一瞬で潜り込み、フレイマーは言う。

『上等じゃねーか、それでこそ殺し甲斐があるってもんだよなーッ!!』

 グラスホッパーも、同様に猟奇的な笑みでフレイマーと向かい合った。音を裂くほどの速度で、その脚が振るわれる。だが、今のフレイマーにとって、もはやそれは先程までと同じだけの脅威ではない。

「どうした?さっきまでと比べて随分と遅えが」

 グラスホッパーの蹴りを軽々と避け、逆にその腹を蹴り上げ、フレイマーは笑う。

『オイオイ……今まで一番の本気だったってのに、ひでーこと言うじゃねーか……ッ!!』

「いや悪りいな。こっちも随分と速くなっちまったもんで、てめぇの動きが遅く見えちまうんだわ」

『ハッ、そーかよ……ッ!!』

 グラスホッパーは両足に全力を込め、地面を蹴った。僅かに油断の色を見せたフレイマーでは、それを完全に見切ることはできない。

『ブッ飛びなッ!!』

 二発のキックが炸裂し、フレイマーの身体が宙を舞う。

「チッ、クソが……やっぱ気い抜くモンじゃねえな。悪りい、ちょっとでも自分(てめぇ)に有利にコトが運ぶと調子乗んのが俺の悪癖ってよく言われてんのによ」

『なんならそのまま調子乗っててくれてても構わねーよ?そっちの方が俺もお前を殺しやすい』

「言うねえ強敵。……そんじゃ、こっからは手加減一切ナシでかますぞ。覚悟しな」

 フレイマーは両頬を叩き、油断を全て削ぎ落として、グラスホッパーと向き合う。二人が、同時に地面を蹴った。

『おせーんだよ、マヌケッ!!』

 先手を取ったのはグラスホッパー。ホルスを纏った右足を振り下ろし、フレイマーの頭蓋に押し当てる。

「ハッ。てめぇの方は速くても弱えみてえだがな?」

 だが、それはフレイマーにとって決定打とは程遠いものだった。足首を掴み、遠心力を用いて大きく投げ飛ばす。

「オラ、さっさと体勢直さねえと死ぬぞ!!」

 窓ガラスを破り抜いて放り出されたグラスホッパーの腹部に、フレイマーの飛び蹴りが撃ち込まれた。吹き飛ぶ勢いが、さらに増していく。

『が……ッ、やるじゃ、ねーか……ッ!!』

 グラスホッパーは、ぶつかる寸前に校庭の金網を蹴り、フレイマーへと飛びかかる。

「胴体がガラ空きだ、クソボケ野郎」

 フレイマーの拳が、グラスホッパーの胴体に伸びる。しかし、直撃の一瞬前、グラスホッパーの左足が地面に触れた。逸らされた胴が、拳の軌道から外れる。

『残念だったな……そのまま消し飛べ、クソ野郎』

 銃口が押し当てられ、回避の間も無く引き金が引かれる。チャージされた光弾が、フレイマーを吹き飛ばす。

『まだだ、まだ死なせてはやらねーぞ。さー、イナゴに食い荒らされてみな!!』

 さらに、グラスホッパーは銃口にホルスを集中させる。次の瞬間、バッタを模した無数の光弾が、フレイマーへと伸びた。

《陽希、マテリアキーをおれに挿せ!!》

《……なんかちょっと意味深だよなその台詞》

《んなアホなこと言ってる場合か!!》

 ベネットが赤萩の精神に語りかける。フレイマーはその指示のままにドライバーからマテリアキーを抜き、フェニックスプファイルに装填した。

『Material Attack! Phoenix Burn Fire!!』

 炎の矢が、七つと言わず無数に分かたれると、それらは真正面から光弾を貫いた。それでもなお止まらない弓矢は、グラスホッパーの四肢を焼く。

『ほー、そー来なくっちゃ……なー!!』

 痛みに耐えつつ、グラスホッパーは再びフレイマーに飛びかかる。今度は、その腕にホルスを集中させている。

「そっちがそう来るなら……こっちも、本気でキメさせてもらうぜ」

《おい待て陽希おれを投げるな!!って聞けよぉ!!》

 対するフレイマーも、フェニックスプファイルを投げ捨て、右手にホルスを集める。

 互いの拳が同時に敵にぶつかり、両者ともに大きく吹き飛ばされる。

「『……ッ!!』」

 立ち上がった二人は、自分の体に限界が来ていることをなんとなく察した。相手の大技を食らえば、間違いなくこの変身は解けるのだろう。だから、最後に全力をぶつける。

『Fairial Attack. Grasshopper Drive.』

『Pteranodon Dagger Tuning Break!』

 二人は飛び上がり、全力を込めた蹴りを放った。ホルスが力場を形成し、ぶつかり合う。両者、力は拮抗している。だから、互いに、ダメ押しで更なる力を加える。

『Grasshopper Drive.』

『Immortal Burn Out!!』

 なんとなく、フレイマーがこれ以上力を出せないことを察したグラスホッパーが、もう一度力を高めようと銃口に触れようとした瞬間に、それでも保たれてきた拮抗は崩れることになる。

『バカな……この、俺が…………ッ!!』

 炎を纏った一撃が、グラスホッパーの装甲を全て奪い去った。爆発とともに、玉虫が倒れ伏す。

「てめぇがどんな境遇にあるかなんざ知らねえ。だが……それで無関係なやつに手え出そうとした時点でてめぇは負けてんだよ。昔の俺と同じでな」

 変身を解き、赤萩は玉虫に肩を貸して起き上がらせる。

「なんの、真似だ……」

「ま、その俺もこうして善人ぶってヒーローとやらをやってるわけだし、てめぇもまだやり直せる。懲罰房出たら俺んとこ来いよ」

「ハッ……こっちから願い下げだっての、クソが」

 


 

『たとえあなたが変身しても……不完全なホルスしか持たないあなたと、何倍にも増幅されたホルスを持つ私と、果たして勝負になるとお思いでしょうか?』

「「そうですけど、それが何か?あなたでは僕たちに勝つことはできない。それを今から証明してみせます」」

 挑発するジブラに、カルナシアは淡々と答える。声色こそ冷淡なものだが、彼の本心は、燃え盛るほどの怒りに包まれている。

『Wands of Ouroboros……』

 カルナシアの腕が空を切った瞬間、かつてウロボロス・シャトランとして使用していた武器──魔杖ウロボロスがその手に現れた。もちろん、あの時のそれそのものであるはずはない。そもそもアレは統括理事長に接収されたと報告にあったはずで、それを持ち出すのはいくら遠山叶絵の力でも……と、ジブラは思案する。

『……設計図を牧瀬玲王に横流しさせたというわけですか』

「「さぁ?僕は知りません。わかるのは、あなたの勝つ未来はどの輪廻にも存在しないことだけなんで」」

 カルナシアは魔杖を高く掲げた。すると、胸のディスクが回転し、生成されたホルスが、先端の蛇の眼を光らせる。

「「吹き飛べ」」

 そのホルスは紫色の蛇に姿を変え、目にも止まらぬ速さでジブラへと襲いかかる。

『な……ッ!?』

「「一応、忠告しといてあげますけど……そっちにばっかり気を取られててもダメですよ。しっかり構えてください。……じゃないと、僕が人殺しになってしまいかねないので」」

 なんとかホルスの蛇を捌いたジブラの眼前に、カルナシアの拳が迫る。その一撃は回避を許さず、ジブラの顔に深く突き刺さった。

「「だから、構えてくださいって言ったじゃないですか。死にたいんですか?」」

『貴様ァ……ッ!!』

 ジブラは怒りを多分に含んだ声で言うと、全力で長剣を振り抜いた。しかし、カルナシアは軽快な動きでその一閃を躱すと、逆にその峰を持ち、ジブラを振り落とす。

「「わかりますか、相馬さん。僕は怒ってる。僕の場合は自業自得なので攻撃されたこと自体は別にそこまででもないですけど、記憶を無くしてた周子にまで危害を加えたあなたを、この手でぐちゃぐちゃにしてやりたいくらいに。まぁ、僕はあなたと違って理性的なのでそんな野蛮なことしませんけど」」

『あの事件で私情だけで怪人となったあなたに言われても説得力はありませんがねェ……ッ!!』

「「はは。そうかもしれないです。……でも」」

 一瞬だけ軽薄に笑い、カルナシアは声色を変えた。

「「……説得力があろうとなかろうと、僕が正義であろうとなかろうと、あなたが社会から見た『悪』であることに変わりはない」」

 奪い取った長剣を投げ捨て、カルナシアは冷たく言い放つ。

『成程、私が社会悪ですか。言ってくれるではありませんか。最悪の怪人の分際で』

「「そうですね。でも関係ない一般人巻き込んでる時点で、あなたも同じ穴の狢ですよ」」

 地面を蹴り、カルナシアはジブラへと迫る。

『先程から調子に乗ってくれて……大人がどれほど恐ろしいか、その身に教えて差し上げましょう』

 対するジブラは、体から煙を放出した。爆発的に増加したホルスが、霧となって部分的に漏れ出したのだ。

(これは私のスペックを限界以上に発揮するために必要なものではありますが……それだけに負担も大きい。ではどうするか。──一撃で朱鷺澤永治を沈めてみせましょう)

 白と黒、二色のホルスを纏った両の拳が叩き込まれ、カルナシアの体が宙を舞った。

『逝きましたか。ですが、撃破をこの目で確認するまでが戦闘ですし』

 勝ち誇ったようにほくそ笑むと、ジブラはゆっくりと朱鷺澤の方に歩みを進める。

《……えーじ。体はどう?》

《正直、ちょっと効いたかな。でも、倒れるほどじゃない》

《いいね。それでこそぼくのマスターだ》

 そんな風に、心の中で周子と言葉を交わし、朱鷺澤は起き上がる。

『……成程。あの一撃を耐えますか。やりますねぇ』

「「その程度で感心しないでください。まぁ、さっきまでと比べたら効きましたけど……本気であれなら、薬に毒でも盛った方がまだ僕を殺せますよ」」

『………………ほう?』

 ピキリ。嘲るようなカルナシアの言葉に、ジブラは仮面の奥の額に青筋を立てた。

『…………いいでしょう。そんなに死にたければお望み通りブチ殺して差し上げますよ』

『Fairial Attack. Zebra Drive』

 極太の光線状の光弾が放たれる。しかし、カルナシアは、もはや怯えることすらしない。

《行こうえーじ。あいつの高いはなをへしおっちゃおう》

 周子がそう囁きかける。カルナシアはマテリアピースを抜き、魔杖に装填した。

「「──輪廻。途絶えろ」」

『Ouroboros-Sacrifice.』

 放たれたホルスの波動が、光弾を丸ごと消失させる。驚くジブラの視界に、すでにカルナシアはいない。

「「──転生。目覚めろ」」

 分解され、ただのホルスに変換された光弾を両足に纏わせ、飛び上がったカルナシアはドライバーのグリップを引く。

『Material Finish! Samsara Linkage Break!!』

 赤と金の混ざったホルスの軌道がジブラの胸を撃ち抜くと、爆発が起こった。振るわれた魔杖が煙を払うと、そこには、気を失った相馬が倒れていた。

「「──僕の勝ち、だね。ま、軽い筋トレ程度にはなったかな?」」

 軽薄に言って、カルナシアは変身を解除した。同時に、その体から周子が分離される。次の瞬間、周子の胸からロベリアのボールが飛び出し、周子は気を失った。

「周子ッ!……息はあるし、気絶してるだけか。まったく……心配かけないでほしいよ…………」

 朱鷺澤は苦笑し、携帯を操作した。

「朱鷺澤です。全部終わりました。──はい。相馬さんの車と別に護送車をお願いします」

 


 

「二人とも、無事に意識を取り戻したようね。まぁ、目立った外傷もないし、当然と言えば当然かもしれないけど。というか、問題は私たちの方よ」

 二日後、執行衛兵本部にて、包帯で腕を固定した遠山が言った。

「僕たち以外割とみんな重傷ですもんね……」

「俺とお前も別に軽傷じゃねえけどな」

 擦り傷まみれの朱鷺澤の言葉に、同じく擦り傷まみれの赤萩が答える。

「なんだっけ?草壁とか切られた挙句ドライバー壊されたんだっけか。ウケる」

「いや、何もウケはしないが」

「あ、悪りいお前いたのか。なんかミイラがいるなとは思ってたんだが」

 顔以外の全身を包帯で包まれた草壁が感情を押し殺した声で言った。

「まぁそう言うな赤萩。私が蒼哉の側にいたらこんなことにはなっていなかっただろうし、責めるなら私を責めてほしいな」

「その擁護には流石に無理があると思わなかったんすか神蔵さん」

 比較的軽傷だった神蔵はなんとか草壁を庇おうとするが、これは流石に無理がある。

「……それで、僕もう行っていいですか?周子とか希望の様子見に行きたいし」

「ん?あぁ、別に構いません。玉虫皇樹や相馬高顯があそこまでした理由、別に興味ないでしょう?」

「あるかないかなら比較的ある寄りですけど……」

 そう答えた朱鷺澤に、遠山は少しばかり驚いたような素振りを見せる。

「……意外ね。そういうのは興味ないと思ってたわ」

「……そりゃあ、怪人の関係者まで狙うってなるほどのことがあったってことですからね。でも早くしたいのでできるだけ早く済ませてください」

「随分とわがままな男ね……」

 ため息を吐き、遠山は鞄から資料を取り出す。

「手短に言えば、玉虫皇樹・相馬高顯ともに、怪人事件に巻き込まれて家族を失っているようね。彼らのしたことは正義とは程遠い八つ当たりにすぎないとは言え、少し同情してしまうわね」

 そして、簡潔に言った。

「……なるほど。彼らの気持ちを考えると、そうなってしまうのも理解できないことではないですね」

「そうだな。自分に置き換えて考えてみれば、確実に俺はそうなるだろうから、そこに関して俺にとやかく言うことはできねえよ」

 それを聞き、朱鷺澤と赤萩は呟く。

「……でも、それとこれとは話は別です。彼らがどんな境遇であろうと、仮に彼らが反省しようと、周子や他の大勢を傷つけた彼らを許す気は毛頭ありません。……それじゃ、失礼します」

 そして、そう続けて、朱鷺澤は退室した。

「感じ悪い子だなぁ……言っていることには概ね賛成だけどね」

「彼の言っていることは正しいですしね。どんな境遇であったとしても、それを他人を害する道具として利用してはならない。人間として守るべき最低限の常識です。聞いてる赤萩くん?」

「嫌味ったらしいクソ女だなてめぇも。……ま、それに関しちゃ否定はしねえよ。それじゃ、俺も帰らせてもらうわ」

 そして、赤萩も、執行衛兵本部を後にした。

 


 

「……とりあえず、今回の事件は終わったよ」

 墓前で、赤萩はかつて共に戦った相棒に語りかけていた。

「なんつーか……一から十まで俺と似たような境遇の奴らが相手だったからよ。勝ってもあんまり勝った気はしねえけどな」

 乾いた笑みを浮かべ、赤萩は言う。

「それに、気に食わねえ奴が遺した力を借りて勝ったわけだからさ、なんか釈然としねえわけよ。……でも、お前だったらこう言うだろ?『戦場で重要なのは利害関係だ、それは四面楚歌の状況を打開する鍵にもなりうる』とかってよ」

 そして、花を差し替えて、墓に背を向け、

「それじゃ、また来るわ。……じゃあな、日向」

 

 

「ごめんなさい瑠璃ちゃん、あなたのことを守ってあげられなくて……」

 水削は、瑠璃の病室で頭を下げていた。

「いいんです、謝らないでください。……何はともあれ、こうして無事に戻ってこれたことですし」

 瑠璃は人差し指で頬を掻きながら言う。

「それに……わたしのために水削さんが頑張ってくれたってことが、少し申し訳ないですけど、それ以上に嬉しいんです」

「それに関して、礼はわたしにではなく、直接戦ってくれたひとたちに言ってもらいたいですけど……」

「その人たちにも、もちろんお礼を言うつもりです。でも、何よりも、あなたがわたしのことを想ってくれてたことが嬉しくって……」

 少しだけ頬を染めて、瑠璃は言う。

「わたしを助けるために、兄さんは怪人になったんですよね?そして、赤萩さんに負けて、死んじゃったって。……その、水削さんの様子が変だったの、わたしのせいで兄さんが死んじゃったからかなって思ってたんです。でも、違ったんですよね?」

「それは、まぁ、そうですけど……」

「よかった。これで違わないって言われてたら立ち直れそうにありませんでした」

 瑠璃は少しはにかみながら続ける。

「あの、水削さん……その、できればでいいんですけど…………これから、水削さんのおうちに住ませてもらうことって、できませんか?生活費なら出しますので……」

「……本気で言ってるんですか?いや、あの、いいですか?わたしも瑠璃ちゃんが前に退院する時に同じこと言おうとしてたんです。でも迷惑かなって思って言えなくて……なので、一緒に住むことに問題はありませんよ?」

 生活費とかも払わなくていいです、と水削は付け足した。

「その……色々と大変だろうけど、わたしなんかと一緒でいいなら……これから、よろしくお願いしますね、瑠璃ちゃん」

「ありがとうございます、水削さん。その……これからは、姉さんって呼んでもいいですか……?」

「姉さ……っ!?でっ、でしたらわたしも瑠璃と呼んでも!?」

「う、うん……なんか、ちょっとテンションおかしくない姉さん……?」

 

 

「周子、具合はどう?」

「……うん。はじめはちょっとつらかったけど、今はだいじょうぶだよ」

「そう。よかった……何か、変わったこととかある?」

 朱鷺澤は、周子の病室を訪れていた。どうやら、ロベリアのボールが抜けたことで、周子の口調が元の幼さが濃く現れたものに戻るということはなかったようだ。

「とくにないけど……そうだな。ゆめの中に、前のぼくが出てきたんだ。全くはんせいしてなかったよ」

「そうなんだ……ロベリア、うちの周子になにしてるんだよ……それで、何か変なこと言ってたりしなかった?」

 朱鷺澤は頭を抱えながら周子に問う。

「うーん……なんか、えーじをささえてってたのまれた」

 周子は、夢の中のロベリアの言葉を回想する。

『君が、僕の抜け殻かい?驚いた、随分とうら若き少女じゃないか』

『僕かい?僕はロベリア=ローゼンロード。君の前任者というか君の完全体というか』

『あぁ、僕を責める気かい?別に構わないよ。反省する気もないけどね。今でも僕は間違ったことをしたとは思ってない』

『ただ、ボールを通して君の姿を見ていて、一つ気付いたことがあるんだ』

『永治は、もう守られるだけの存在じゃないってこと』

『これには素直に驚いたよ。もう、彼に『僕』は必要ないらしい』

『まぁ、必要だったとしてももう僕は消えるしかない存在なんだけど』

『僕はあの時、君に全ての力を分け与えた』

『君は器として未成熟だし、その全部を常に持っておくことはできないから、終わったらボールは君から出たみたいだけど、あそこにもう僕の意識はないよ』

『これは僕が最後の力を振り絞って君に語りかけているだけ』

『──周子。君は、永治を支えてあげてほしい』

『僕に果たせなかった夢を、全て君に託す』

『さようなら、愛しき僕の娘』

 そして、回想が終わった。

「そうなんだ。あいつ、どこまでも勝手なやつだなぁ……」

 ロベリアの言葉を伝えられ、朱鷺澤はため息を吐く。

「まぁ、でも、せっかくだし、たまにはロベリアの言うことも聞いてあげないとね。あいつの遺言みたいだし」

「そう言ってもらえて、多分ロベリアもよろこんでるよ」

「別にあいつに喜んでもらうつもりはないけどね。それじゃ、これからもよろしくね、周子」

 朱鷺澤は、右の手を差し出して言った。周子は、その掌を握り返す。

「……それで、えーじ。今からのぞみのところ行くんでしょ?ぼくはここでまってた方がいいよね?」

「はは……バレちゃってたか。そうだね。それじゃ、また後で」

 そう言い残して、朱鷺澤は周子の病室を後にした。

 


 

「あ……永治。ごめんね、今回はキミの足を引っ張ってばっかで」

 それから、朱鷺澤は、久城の病室を訪れていた。

「大丈夫だよ、希望。君がいたから、あぁして周子も助かったんだし」

「……そう言ってもらえて嬉しいよ。気休め程度にはなるね」

「気休めでもなんでもないよ。本気で言ってるだけだから」

 朱鷺澤は、久城の隣の椅子に座る。

「料理とか、服とか、色々と周子の面倒見てくれて、本当にありがとう。僕一人だったら、あそこまで手は回ってなかったと思うから」

「最初に彼女を殺そうとしたのもボクだからさ。せめてイメージアップに努めないとって思ってさ。少しは貢献できたみたいで何よりだよ」

 久城は少し照れながら言う。だが、朱鷺澤の顔は、当の久城よりも赤い。

「……どうしたんだい永治?熱でもあるのかな?」

「ないよ……ねぇ、希望」

 朱鷺澤は、真っ赤な顔で必死に言葉を紡ぐ。

「ここしばらく、君と過ごしてて……その、なんていうか、今までに感じたことないような感覚がずっと胸に引っかかってたんだ。それは、周子がどうとかとは関係なく、別次元のものなんだろうけど」

 久城は、黙ってそれを聞いていた。

「君といると、どんなことでも面白く、楽しくなるってわかったんだ」

 この胸に生まれた感情の正体を、朱鷺澤はもう知っている。だから、もう迷わない。

「僕は、未来永劫、君と同じ道を歩みたい。──希望。君さえよければですけど……僕と、付き合ってくれませんか?」

 言った。顔が熱い。胸も今までにないほど高鳴っている。こんな感覚を、あの日の黒薙や亜矢は味わったというのか。久城が口を開くまでの時間が、一瞬のことであるにもかかわらず、無限のことのように感じられた。

「……ボクも、ずっとキミのことが好きだったよ。言葉にするのは恥ずかしかったから、さりげなくアピールしてたつもりだったんだけど、全くキミがその素振りも見せないから、脈ないのかなってずっと思ってた」

 久城は、朱鷺澤に負けないくらいに頬を紅色に染め、思いを吐く。

「でも、違った。……ありがとう、永治。やっと、ボクのこと見てくれたんだね」

「……ごめん。君はこんなに素敵な女性(ひと)だっていうのに、ずっとその魅力に気付けなくて」

「……いいよ。だって、今こうして気付いてくれたじゃないか」

 久城は、喜びをなんとか隠そうと、必死で余裕を装うが、その余裕の盾で覆い隠せるほど、彼女の歓喜は小さなものではない。

「……ボクも、キミのことが好きだ、永治。これから、何があっても、キミの側で笑っていたい。──だから、その告白、喜んでお受けします」

 だから、久城はそう答えると、朱鷺澤の唇に自らのそれを重ねた。

「ごめん希望、流石にいきなりキスしてくるとは思ってなかったよ……その、めちゃくちゃ胸がドキッてするから、次からはちゃんと前もって言ってくれると嬉しいかな……?」

「ふふっ、これくらいで照れるんじゃないよ永治。──どうせ、これからも何度でもすることになるんだから、さ」

 そうして、二人は笑い合った。長年に渡る『幼馴染』の関係性は、ついに『恋人』へと昇華したのだ。これから、二人でどんな道を歩むことになるのか、それはまだ誰も知らない。けれど、その道には、いくつもの苦痛と、それを上回るだけの幸福が待ち受けているのだろう。だから、二人は、この道を歩み始めた。その絆は、きっと途切れることなく、終わりの日まで紡がれていく。




 仮面ライダーO、ついに完結‼️‼️‼️‼️‼️(終わってない)

 はい、というわけで墓脇です。ひとまずOの話は全部終わりました。最終回での匂わせとか予告とかもは毛色の違った話になってしまったのは反省していま…………せん。オリライのみんなも瞬間瞬間を必死に生きてるんだ‼️‼️‼️それをムチャクチャとか言うな‼️‼️‼️‼️

 まず、この話の真の主人公は朱鷺澤です。予告で赤萩がうんたら言ってたのは完全なブラフ。まぁ扱い的には赤萩も主人公枠なんですけども。ついでに言えば水削も主人公のつもりで書いてました。赤萩については本編や『Fang』の延長線上に近いですが、あとの二人は新しい結論を出してこれまでとはまるで違う未来へ歩んでいくことになります。

 今回の話を語る上で欠かせないのは、やはり朱鷺澤にとって『守るべきもの』となる周子でしょう。書いてる時は全く気づきませんでしたが、終わってみるとTRYの惨華みたいなキャラだったなと反省。
 彼女は無垢な少女でありながら、ロベリアの生まれ変わりとも呼べるようなキャラクターになっています。そのせいで身に覚えのない因縁つけられたり色々と可哀想ですね。
 彼女が覚醒して罪を償うという方向性に行ったのは間違いなく黒薙の言葉が影響してるんだろうと思います。化身特有の記憶共有能力ですね。
 ちなみに彼女の名前の由来は輪廻を意味するmetempsychosisから来ています。守子とはなんも関係ないよ。

 赤萩の「死んだ仲間」は日向でした。まぁあいつだけ今まで本編出てませんでしたしね。『Fang』読んでもらえると日向がどんなやつかわかると思うのでぜひ読んでください。

 水削は、この話においては「不器用な大人」というイメージで書きました。瑠璃の方から言わせるなんて大人として恥ずかしくないんですかね?

 そして朱鷺澤。本編での汚名を返上するかのごとく主人公をやってくれました。ライダーに変身して、敵のボス倒して、彼女も作って、やっと黒薙と同じステージに立てた感じがしますね。
 彼が変身したカルナシアも、周子同様に輪廻を意味する言葉から引きました。reencarnaciónですね。
 カルナシアが魔杖を召喚できたのは、裏で遠山が牧瀬に設計図横流しさせた結果です。多分あの後帰ってきてから牧瀬は鬼のように怒られてる。
 ちなみにあれはいつでも変身できるわけではないので、今後は重要な場面でしか出てこないと思います。条件とか特に考えてないけど。

 玉虫と相馬に関しては見てわかる通りそれぞれ蝗と縞馬から名前をとりました。ボスのくせに出オチネーミングすぎる……。

 さて、次からはついにOの第二部がスタートします。チャンネルはそのまま。今後もご期待ください。墓脇でした。
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