【夢と腐の民】最新VRMMO! 男アバターで水の神攻略RTA編【全員集合!】   作:二匹狼

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見切り発車しないといつまでも停止したままなので……。


案件配信で暴走するタイプの配信者

「どうも~☆ ドリームろってぃんぐですぅ♡」

 

 :無理すんなオバさん

 :こん^^! 28歳無職独身実家暮らし女性

 :吐きそう

 :ドリちゃん、生きてたの!?

 :久しぶりに女子大生ドリちゃん復活か

 :もう5年前か~

 

「初案件だぞ初仕事だぞ。取り繕わなきゃダメだろ。

 素の姿を見せて得することなんか仕事に無いわ」

 

 :うわ急に冷静になるな

 :今何オクターブ下がったんだ?

 :社畜ドリちゃん…

 :なんかごめんね

 :生きててえらい

 :ドリちゃん早く歌みた出せ

 :だから無理すんなってオバさん

 

「っと、茶番はこれぐらいにして本題いきますか。

 まあタイトル通りですけどね。詳しくは概要欄をチェック!」

 

 :本当に茶番か?

 :演技派って言うには真に迫ってたような

 :ドリのハスキーボイスマジ寝れる、神声帯。

 :タイトルが混沌としてて分からん

 :まーた嫌な匂いしますね

 :知らんけど、普通案件でやる内容ではないだろう。

 

「まずこの動画を黙って見てろ。水の神にガチ恋した私の気持ちを理解しろ」

 

 :結局いつものノリね

 :数少ない夢女子要素助かる

 :これ実質職場恋愛なのでは?

 

「黙れっつってんだろ!

 気が散るからコメントは出来ないようにします!」

 

 :待て待て待て

 :そんな殺生な!

 :ノ ル マ 達 成

 :案件でもそれやるのか……

 

 「では『【PV】水の神と木の図書館【Planet・Gods・World】』をぽちっとな!」

 

 ◇

 

 木々が溢れる、林になりかけているその場所には小さな図書館が建っていた。

 狩人の様な格好をした若い男は、その傍に設置された古ぼけた金属製のベンチに座っている。

 

「『好き。そんな独りよがりな言葉は出せずに去っていく背中を見送る。

 大丈夫、これは憧れだから。僕はなんとも思わないんだ』」

 

 木漏れ日によって、文章は虫食いのように光と影が出来ていた。

 そんな読みにくい状況にも関わらず、彼はまるで暗記しているかのようにスラスラと読み上げていく。

 

「『好きだ。たまらなく好き。

 だから、ほら、早く行ってよ。――僕が引き止める前に』」

 

 優しげなテノールの声は鼓膜に甘く響き、たまに切なげな声を混じらせ、読み進めていく。

 まるで失恋した男性の、情けない独り言かのように。

 そばにいてあげられるのならば、手を今すぐにでも差し伸べたくなるような。

 それほどに悲しげな雰囲気を纏っていた。

 

「……次、行くか」

 

 彼は最後のページをめくらず、本を閉じた。

 その本を手に持ち、彼はガタガタになっている金属製の長椅子を傾かせて、立ち上がる。

 すぐ隣にある幅の広い階段に登っていき、錆び付いた扉の向こう側に消えた。

 

 その数刻後、彼は扉の向こうから姿を現した。

 彼の長い脚を動かして階段を降り、錆び付いた長椅子に脚を組んで座り背もたれに体を預ける。

 その反動か、背もたれの上部に止まっていた小鳥が飛び立ってしまう。

 小鳥はそのまま木々の間へと消えていってしまった。

 

 彼は飛び去っていく小鳥を視界端に収めながら、新たに取ってきた一冊の本に手をかける。

 本を開くと、また木漏れ日が文章に不規則な影を落とした。

 

「『俺は間違えた。あの時、飛び込んで助けていれば……』」

 

「『俺は合ってたんだ。あの時、見放して……』」

 

 彼はその時、視線の先の文字に枯葉が覆い被さった。

 ため息を付き、右手で払い除ける。

 その枯葉は緩やかな風に乗りながらも次第に地面に近付き、葉先が土に触れた。

 

 ――が、枯葉は跡形もなく崩れ去っていった。

 

「『見放して……良かったんだ』」

 

 朗読の最中、視線を枯葉を払い除けた方向へ向けていた。

 しかし、すぐさま本に視線を戻した。

 彼は本から目線を外していた為に、先程読んでいた場所を見失ってしまった。

 

 そして右手の指先で一文字ずつ文章を辿りながら、見覚えの無い単語を探し始める。

 

「『綺麗』『塔』『恋人』」

 

 彼は単語を探している間、無意識に薄桃色の唇を僅かに動かす。

 

「『崖』……これ、か?」

 

 覚えの無い単語を見つけると、前後の文章の確認もせずに視線を下に滑らせる。

 

「『俺は突き落としていないんだ。彼女が勝手に落ちた。

 ただ、それだけ』」

 

 図書館の時計塔の鐘が鳴った。

 塔に留まっていた灰色の鳥たちは羽ばたき、長針と短針が綺麗に重なる。

 時計の針は太陽に向いており、時折雲に遮られながらも短針は太陽の動きに合わせ、回っていく。

 

 数刻ほど経った時、彼は久しぶりに顔を上げた。

 今度はゆっくりと腰を上げて、スムーズに階段を登り、錆び付いた扉に向かう。

 しかし彼はあることに気付き、階段の中腹で足を止めた。

 

 階段の最上部、扉の目の前には猫が鎮座していた。

 灯りのない階段内の闇に溶け込む真っ黒な毛並みに、ゆらゆらと揺れ動く尻尾。

 だが一番目立っていたのは、彼を真っ直ぐ見つめる琥珀色の瞳。

 

「みゃ」

 

 猫は彼の視線から逃れるように、ゆったりとした動きで体勢を変える。

 流れるような動作で、錆び付いた扉に向こうへとすり抜けた。

 

 一連の動きを見て、彼はニヤリと口角を上げる。

 

「『黒猫とは、魔術の才がある者を導く存在である』か」

 

 錆び付いた扉を開け、彼は暗闇へと消えていった。

 

 ◇

 

「はい最高~~!

 マーキュリー、すぐ迎えに行くから待っててね♡」

 

 :ガチ恋してる時だけは可愛いのなんで

 :この男、受けだな

 :推しを呼び捨てにするタイプか?

 :珍しく夢要素多いな、腐要素死んじゃった?

 :他PV見た感じ水×火っぽいけど

 :おっ常駐腐女子が湧いてきたぞ^^

 

「解釈違い言わないで。

 リーさんは主人公の男とカプになるから。

 左か右かなんて、まだ分からないよ」

 

 :いや俺とだろ

 :私の方が美しいからそんなカプは存在しない。

 :もう皆の男ってことで良くない?

 :火の神マーズ君の女だからダメです

 :マキュたんは皆の女だよ

 :勝手にあだ名で呼ぶタイプか…

 

「うっさいなあ……。

 今から満場一致でリーさんのカプ相手作るから見ときな!」

 

 :作るなら黒髪短髪でおなしゃす

 :金髪碧眼の王子系じゃない?

 :銀髪の吸血鬼風攻め様だろ

 :ショタも良いと思います

 

「マジでうっさい!

 コメント欄もう一回消します!

 指咥えて仮想リーさんでも舐めときな!」

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