その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム 作:超天才清楚系病弱魔法少女
問題1.魔法少女育成計画のアニメ3期(limited)が放送されるのは何年後かを述べよ。ただし、3期はいつか必ず放送されるものとする。
第1話 今からでも入れる保険があるんですか?
◇とある男性
時は、満月と幾多もの星が都会の照明に邪魔されることなく思いのままに光を放つ夜。
場所は、多大な水を放流し続けて騒音をまき散らすダムが良く目立つ、全く見覚えのない郊外。
(考えれば考えるほどやべぇ状況だよねー、これ)
そんなシチュエーションでボクは、水たまりを見下ろしながら脳内で呟いていた。
水たまりに映るボクの姿は、今までのボクとは全く違う姿に変わり果てていた。
無事に受験をクリアして大学生活を謳歌するはずだった18歳男子のボクは今、まず性別が女になっていた。しかも、ピンク色のミディアムヘアを巻き髪にしていて。白いスクール水着を着ていて。水泳用ゴーグルとヘッドホンという泳ぎたいのか泳ぎたくないのかよくわからない物を身に着けていて。ボクはそんなヘンテコ女の見た目になってしまっていた。
なぜかはわからない。ふとした瞬間、なぜか女性になってしまっていた。なぜか全く知らない場所に転移していた。
ちなみにボクはこの見た目をした人物を知っている。『
なぜヤバいか。理由は主に2点ある。
ヤバい理由の1点目は、魔法少女育成計画という作品がとにかく、魔法少女の命が軽い作品だからだ。いくら魔法少女を題材にしたデスゲーム物にしたって、この作品ではいともたやすく魔法少女が死んでいく。みんなの想像する3倍は魔法少女たちが次々と死んでいく。そんな世界で、魔法少女のスイムスイムの姿になってしまっている。要するに、どこにいても、何をやっても死亡フラグを立ててしまいかねないということだ。
ヤバい理由の2点目は、スイムスイムがまほいくで他の魔法少女を殺しまくったキルリーダーだからだ。スイムスイムはルーラを殺し、ヴェス・ウィンタープリズンを殺し、トップスピードを殺し、ハードゴア・アリスを殺し、たまを殺した。そしてトップスピードの仇討ちで、リップルにスイムスイムは殺された。そんなスイムスイムの姿になってしまっている。これがもうヤバすぎる。
(とにかく現状把握しないとだ。少なくともスイムスイムが既にやらかしちゃってるか否かは絶対に知りたい。スイムスイムがまだ魔法少女を殺していないのなら、デスゲームがまだ始まっていないということ。それなら今すぐ外国にでも逃げなきゃいけない。デスゲームは鑑賞するから楽しいんであって、当事者になるなんてとんでもない! いや正直、まほいくはまだアニメしか見ていないから外国に逃げたらもっとヤバい展開に巻き込まれるのかもしれないけど、やらない後悔よりやる後悔の方がまだマシっしょ。うんうん)
(もしもスイムスイムがやらかした後だとするなら。スイムスイムはリップルに殺されたはずだ。実は生きていたのか、誰かに蘇生させられたのか。そもそもなんでボクがスイムスイムの体でここにいるのかもわからないけど、とにかく他の魔法少女に姿を見られたらもうアウトだ。スイムスイムがノリノリで何人もの魔法少女を殺したヤベーロリっ娘だってことはきっと他の魔法少女に広く知れ渡っているだろうから、もし見つかったら最低でも魔法の国に投獄、もしくは殺され――)
刹那。ボクの首筋に冷たい金属の感触。ツラツラと思考を繰り広げまくっていたボクの意識が、強制的に現実世界へと引き戻される。ボクは目線だけを動かして、冷たい金属の正体を見る。薙刀の刃だ。
「どうして」
その声は、ボクの前方から届いた。淡々としているようで、どこか動揺を含んでいるかのような。可憐な声だ。ボクは声の元へと視線を動かす。
そこには1人の少女の姿があった。
白のセーラー服っぽい服を身にまとい、髪も、瞳も、花の髪飾りも、ピンク色でそろえた少女の姿。ここまでピンクピンクな正統派魔法少女系ファッションを使いこなす少女のことをボクは知っている。スノーホワイト。まほいくの主要人物だ。
「どうしてあなたが生きているの? スイムスイム」
そんなスノーホワイトは無表情のまま、ボクの首筋に薙刀の刃を添えて、問いかけてくる。その質問でボクは完全に理解した。これはスイムスイムがやらかした後の時系列だ。だからこそスノーホワイトのスイムスイムへのヘイトが高く、いきなりボクが絶体絶命の状況に陥ってしまっているわけだ。
「……」
さて、状況はとことん最悪です。
ボクの返答内容でスノーホワイトの地雷を踏んだらボクは終わり。けど、何を話しても地雷を踏んでしまう気しかしない。ボクってばよく人から「お前空気読めないよな!」って言われるし。かといって、黙秘してもボクは終わり。うーん、これは詰んだかな??
だれかたすけて(救援要請)
◇◇◇
◇スノーホワイト
「どうしてあなたが生きているの? スイムスイム」
スノーホワイトは目の前の魔法少女スイムスイムに薙刀を突きつけて問いかける。スノーホワイトはスイムスイムに情報を与えてしまわないように、普段より努めて無表情を保っている。視線に感情を乗せないようにしている。
スノーホワイトの胸中は今、激しく揺れ動いている。スイムスイムの魔法は『どんなものにも水みたいに潜れる』魔法だ。この魔法の強さは、自分の体を物質透過できることだ。だから、スノーホワイトがこのまま薙刀を振るっても、スイムスイムの首は落とせない。薙刀がスイムスイムの首をすり抜けるだけだ。それでもスノーホワイトはつい薙刀でスイムスイムを脅して回答を引き出そうとしている。己が酷く動揺している何よりの証左だった。
スイムスイム。
3年前のN市にて、森の音楽家クラムベリーが電子妖精ファヴと結託して、N市の魔法少女16名の殺し合いの構図を作り出した時に、最も多くの魔法少女を殺した危険人物だ。
元をたどれば、スイムスイムは、スノーホワイトと同じく、森の音楽家クラムベリーとファヴの被害者だ。しかし同時にスイムスイムは、スノーホワイトを慕ってくれていたハードゴア・アリスを殺した加害者であり、つまりスノーホワイトの仇だ。
そんなスイムスイムはあの時、リップルに殺されたはずだ。
リップルがスイムスイムを殺す瞬間をこの目で目撃したわけではないが、スイムスイムの遺体はスノーホワイトもきちんと確認していた。スイムスイムはあの日、確かに死んだはずだ。
リップルがスイムスイムを殺して。
リップルが電子妖精ファヴを壊して。
それでN市の悲劇は幕を閉じた。16人もいたはずの魔法少女がたった2人しか生き残らない。そんな凄惨な結果に終わった。
そのはずなのに。どうして。
今日、久しぶりに故郷のN市に戻って。偶然スイムスイムの姿を目撃した時は、肝が冷えた。魔法少女として戦闘経験を重ねた今のスノーホワイトなら、スイムスイムに問題なく勝てる。それでも、スイムスイムへの恐怖は今なお消えていないようだ。
「…………」
スイムスイムはスノーホワイトの質問に回答しない。ぼおっとした眼でスノーホワイトを見つめ返すだけだ。スノーホワイトの質問が聞こえなかったのか、質問の意図がわからないのか、返答内容を考えているのか、質問に答えるつもりがないのか。スイムスイムの真意は定かではない。
そう、スイムスイムの心の声がまったく聞こえないのだ。スイムスイムにとって、スノーホワイトに得物を突きつけられている状況は多少なりとも『困った状況』のはずなのに、スノーホワイトの『困っている人の心の声が聞こえる』魔法が、なぜかスイムスイムに発動していないのだ。スノーホワイトはスイムスイムへの警戒心をさらに一段階上げる。
「わからないの?」
スイムスイムから質問に質問を返される。
その声色は、間違いなくスイムスイム本人のものだ。
「あなたには私の心の声が聞こえるはず」
スイムスイムに己の読心魔法が通じていないことをバラすか否か、スノーホワイトは一瞬だけ逡巡した。
「今のあなたからは心の声が聞こえない」
けれど正直に話すことにした。そうしなければスノーホワイトは、自分の心の声を聞かれている前提のスイムスイムから話を引き出すことができないからだ。それに、この程度のディスアドバンテージを課したところで、スイムスイムに対する勝算は揺るがない。
「聞こえない。……それは困った。私の心を聞いてもらって、敵意がないことをアピールするつもりだったのに」
「……」
「私も、どうして私が生きているのかわからない。気づけばここにいた」
「……」
「あなたはこれから私を殺すつもり?」
「もしもそうだとしたら、あなたはどうするの?」
「逃げる」
「え?」
「死にたくないから、逃げる。すごく逃げる」
「……」
何だろう、今のスイムスイムの発言1つ1つが、聞いていて一々気が抜ける。これは作戦なのだろうか。スノーホワイトが油断する瞬間を、今か今かと狡猾に狙っているのだろうか。しかしそれにしては、目の前のスイムスイムはあまりに無防備で、あまりに素人だ。
スノーホワイトは、スイムスイムへの処遇を迷い始めていた。最初はスイムスイムを捕まえるつもりだった。悪の魔法少女を許さない、魔法少女狩りのスノーホワイトにとって、何人もの魔法少女を平然と殺した凶悪犯を放置する選択肢なんて存在しなかったからだ。まずはとりあえずスイムスイムを捕まえて。それから魔法の国を巻き込んで、どうしてスイムスイムが生き返っているかを調査するつもりだった。
「ルーラが言ってた。まともに戦って勝てないなら、まともに戦わなければいい」
けれど、目の前のスイムスイムからは害意を感じない。脅威を感じない。ならば、魔法の国視点では既に死亡扱いの魔法少女を性急に捕まえるのではなく、泳がせた方が良いのではないか。
「どうしてあなたはあの時、魔法少女を殺したの?」
スイムスイムを捕まえるか、泳がせるか。スノーホワイトは判断材料として加えるべく、スイムスイムに追加の質問を投じた。それはスノーホワイト自身、ずっと気になっていたことだった。結局、スイムスイムの動機は何だったのか。どんな動機があって、積極的に魔法少女を殺すことになったのか。
「……お姫様になりたかった」
「え?」
スイムスイムの答えは、スノーホワイトの予想のはるか彼方だった。ついスノーホワイトの無表情が崩れ、困惑の声を零してしまう。この手のミスは今ので2度目だ。つくづくスノーホワイトらしくない。それもこれも一々スノーホワイトの想定を飛び越えていく眼前の奇妙なスイムスイムのせいだ。調子を著しく崩されている。
「ルーラみたいな、お姫様になりたかった。可愛くて、かっこいい、お姫様。……最初はただ、憧れていただけ。でも、ねむりんが言ってくれた。『女の子は誰しもお姫様候補だ』って」
(ねむりんが……?)
スイムスイムの口から放たれた、不意打ち極まりない魔法少女の名前に、スノーホワイトは今度こそは無表情を保ちつつ、内心で驚く。スイムスイムを凶行に走らせたのは、ねむりんがきっかけだった? スノーホワイトの思考がまとまらない。スイムスイムの発言が嘘であるという可能性を考慮してなお、スノーホワイトは狼狽する己を律することに失敗している。
「凄く、衝撃的だった。あの言葉が、私の世界を変えた。そこから私は始まった」
「まずはルーラを消して、私がルーラになった」
「ルーラがいると、私はお姫様になれないから」
「そこからは、ルーラならどうするか、ずっと考えて、行動した」
「ルーラは戦うお姫様。戦って、戦って、華麗に相手を倒す、素敵なお姫様」
「だから私も戦った。ピーキーエンジェルズを、たまを率いて戦った」
「ヴェス・ウィンタープリズンを殺した」
「トップスピードを殺した」
「ハードゴア・アリスを殺した」
「森の音楽家クラムベリーを狙って、返り討ちにあった」
「クラムベリーを殺してくれたたまを殺した。変身前の姿を見られたから」
「リップルに殺された」
スイムスイムは堰を切ったように己の動機を語り始める。3年前の悲劇を、スイムスイム目線で端的に話を連ねていく。
「ルーラならもっとうまくできた」
「私だからうまくできなかった」
「結局、私はルーラにはなれない。お姫様失格。そう、思い知った」
「もう、お姫様になろうとは思わない」
「今はただ、どうして死んだはずの私が、ここにいるのか」
「それを知りたい。死んだ人は普通、よみがえらないはずだから」
「お墓参りもしないと。私が望んだばかりに、殺してしまったルーラに。私が率いたばかりに、死なせてしまった仲間に。私が殺した魔法少女に。謝らないと」
スイムスイムは「……話しすぎた」との言葉を最後に、口を閉ざした。スイムスイムはスノーホワイトをジッと見つめている。スノーホワイトの沙汰を待っているようだった。
スノーホワイトは決めた。スイムスイムを捕まえず、泳がせると決めた。
なぜか心の声が聞こえてこないスイムスイムのことを完全に信じたわけではない。けれど、今のスイムスイムはまるで別人だ。スノーホワイトの役目は、悪い魔法少女を倒して捕まえること。今のスイムスイムは、その悪い魔法少女にまるで該当しない。これまで幾多もの悪い魔法少女と相対し、戦ってきた経験が、そのように断じている。
それに今はスイムスイム本人よりも、スイムスイムが生き返った原因の方が非常に気がかりだ。この世には数多の魔法少女が存在している。その中に例えば、『死んだ人間を生き返らせる』魔法を使える魔法少女がいても何もおかしくない。仮にそんな魔法少女Aがいたとして。魔法少女Aがスイムスイムを復活させた理由の追究を優先するべきだ。
たくさんの魔法少女を殺した実績を持つスイムスイムをわざわざ選んで復活させる魔法少女Aが、この世の安寧に対する不穏分子なのは間違いないのだから。
「スノーホワイト。結局、あなたは私をどうするの? 捕まえる? 殺す?」
「……殺人鬼だったスイムスイムは3年前に死んだ。そういうことにするよ」
「いいの?」
「今のあなたはまるで別人だもの」
「ありがとう」
「でも……もしも何か悪いことをやったなら、その時はわかるよね?」
「うん」
スノーホワイトはスイムスイムの首筋に添えていた薙刀を戻し、巾着型の四次元袋に薙刀をしまうと、スイムスイムの下から風のように飛び立った。
◇◇◇
◇スイムスイム(憑依)
【朗報】スイムスイム生存ルート確定【ここから入れる保険があったってコト!?】
ばんざーい! ばんざーい! ボクばんざーい!
スノーホワイトなんてちょろいちょろい。
くくく、まぁボクの話術にかかればね? このくらい朝飯前よ!
いやぁ、何とかなるもんだな! 人生クソチョロよ!
さーて、初手理不尽展開を無事切り抜けたことだし、こっからボクの生存戦略を始めちゃいますか。楽しくなってきたぜ! くひひひひひ!
なぜかスイムスイムに憑依してしまった18歳男子は、唐突に振りかかってきた脅威を自力で乗り越えたことにより、テンションが振り切っていた。理性のタガが外れ、全能感に満たされていた。
「……」
そんな18歳男子の狂喜っぷりを、しかしスイムスイムの体は一切反映しない。かくして、スイムスイムは無表情のまま、何事もなかったかのように、近場の街を目指してテクテクと歩み始めるのだった。
◇◇◇
◇キーク
「……は???」
その時、キークは目を疑った。現実を疑った。
カランと、キークのメガネが顔から離れて、乾いた音を立てて床に転がる。
キークは『電脳空間で自由自在に行動できる』魔法を使える魔法少女だ。その性質ゆえ、魔法の国のIT部門トップに君臨している。魔法の国だからといって、科学を軽視なんてしない。キークが重宝されるのは当然の帰結だった。
キークは義憤に燃える魔法少女でもあった。
森の音楽家クラムベリーの違法な試験によって選抜された魔法少女、通称『クラムベリーの子供達』。殺し合いに生き残った、ただ腕っぷしだけが強いだけの魔法少女は果たして正しい魔法少女と言えるのか。魔法少女はもっとこう、清く正しく美しくあらねばいけないのではないか。
キークはクラムベリーの子供達の存在に常に疑義を呈していた。
クラムベリーの子供達に改めて正式な試験を受けさせるべきだと事あるごとに提唱した。
しかし魔法の国の査問委員会は聞く耳を持たなかった。
クラムベリーの子供達をあくまで被害者として扱うスタンスを崩さなかった。
キークは激怒した。かの邪智暴虐のクラムベリーの子供達に再試験を課し、魔法少女の資質を査定しなければならぬと決意した。
そうして。正しい魔法少女と正しくない魔法少女とを裁定する舞台を、正しい魔法少女だけがちゃんと生き残って正しくない魔法少女は無惨に死ぬ舞台を、魔法少女専用ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』を作り上げた。
当初は独自に改造した電子妖精型マスコットキャラクター「ファル」とともに、二人三脚でゲームを作っていた。しかしデスマーチ極まるゲーム開発に、ファルが電子妖精のくせに心を病んでリタイアしてからは、キークが1人で根気強くゲーム開発を続けてきた。
いくら魔法少女の強靭な肉体と精神が備わっているとはいえ。もう何徹しているかもわからない。覚えていない。エネルギードリンクをひたすら山のように消費して、無駄にしつこい睡魔と常に熾烈な激闘を繰り広げながら。キークはどうにかソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』を形にした。完成、と宣言しても問題ない程度にゲームの体裁を整えることができた。
そんな折。キークが『電脳空間で自由自在に行動できる』魔法で、ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』の参加者の魔法の端末に仕込みを行っていた時。偶然、キークは見つけたのだ。死んだはずのクラムベリーの子供達の1人、スイムスイムの魔法の端末が、つい最近使用された形跡があると。そして知ったのだ。死んだはずのスイムスイムが生き返っているという衝撃の事実を。
「なんで? おかしいだろ、ふざけるなよ!? えぇ!? は、なんで生き返ってんの? なんで? なんでよりにもよってお前が?? バカだろ、こんなの! アホ!」
キークは怒鳴り散らす。どうして正しくない魔法少女筆頭が当然のように生き返っているのか。わけがわからず、床のメガネを勢いで踏み割った。
身近な物を派手に壊したことで、キークは少しだけ理性を取り戻す。そして思考する。思考の主題は、なぜか生き返っているらしいスイムスイムの処遇についてだ。
今回キークが作った魔法少女専用ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』は、『クラムベリーの子供達』の魔法少女の資質を確かめるための再試験用の舞台だ。『クラムベリーの子供達』はいくらでもいる。喫緊開催予定の再試験の参加者は合計16人だが、キークは第二回・第三回・第四回以降の再試験開催も目論んでいた。ゲームの参加者も粗方、選定し終えている。
これを言い換えると、このなぜか生き返っているスイムスイムはしばらくの間、ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』に参加しないということになる。複数の魔法少女を何の躊躇もなく殺した悪逆非道の魔法少女を無駄に泳がせてしまうことになる。
いっそ、第一回再試験の参加者にスイムスイムを含めてしまおうか、そんな考えがキークの脳裏をよぎる。しかし次の瞬間には、キークの脳裏に不安がよぎる。ここにきて、
ただでさえ、ここまでのゲーム作りは困難を極めた。
正しい魔法少女だけがちゃんと生き残って正しくない魔法少女は無惨に死ぬ舞台を用意するには、絶妙な難易度調整が必須だったからだ。
これまで何度、第一回再試験の参加予定の魔法少女たちのデータでシミュレートしただろうか。難易度調整を続けてきたことだろうか。
ここにスイムスイムを加えてしまえば最後、ゲームバランスが崩壊しかねない。ゲームが台無しになりかねない。ここまで精力的に続けてきた、デスマーチなゲーム開発が、徒労に終わりかねない。
「あぁぁああああああああああああああああもう!」
キークは理性をかなぐり捨てて、衝動のままに床を力いっぱい踏みつけた。何度も何度も床に足裏を叩きつけた。
「こいつも参加させる! クラムベリーの子供達がのうのうと生きてていいわけがない! 見つけた以上は強制参加! あたしの傑作ゲームでお前を裁いてやるんだから!」
もういつ寝たかすら覚えていないほどに、ゲーム開発のために徹夜を続けていたがゆえに。ロクな判断能力は残っておらず。キークは最終的に感情のままに判断した。己の判断の正しさを終ぞ疑わず、急遽ゲームを17人用に調整する作業に取り掛かった。
次回 第2話
『見て! 骸骨が踊っているよ。かわいいね』