その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム   作:超天才清楚系病弱魔法少女

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⚠️CAUTION⚠️

 この作品の次回予告は絶対ではありません。
 時には次回予告と異なる展開が襲いかかることもあります。
 『ふっとばされたメルヴィルさん』なんていなかった、いいね?

⚠️CAUTION⚠️



問13.スイムスイム(憑依)がコスチュームを変更できる権利を得られた時にオススメしたいコスチューム案を挙げよ。ただし、R18レベルの過激なコスチュームは厳禁とする。



第13話 もう大丈夫! 何故って!? 私が来た!

 

◇スイムスイム(憑依)

 

 

 ボクは今、高く険しい壁にぶち当たっている。

 決して誇張ではない。顕然たる事実だ。

 

 モンスターが超強化された今、ゲーム世界で単独行動するのは非常に危険だ。

 ゲームマスターが魔法少女が醜く争い合い殺し合う過程よりも、標的に選んだ魔法少女たちの死という結果を望んでいる以上、強くなったモンスターの中には、ゲーム参加者を確実に殺す手段を持つ輩が存在する可能性がある。

 

 そのため、変則型『遅延戦術』とは関係なしに、ボクもいい加減、ぼっちムーブをやめてどこかの魔法少女パーティーに加入する必要があるのだけど。

 

 

 …………うん。

 既にできあがっているコミュニティにボクが加わるって難しくないか?

 

 考えてみてほしい。

 あなたは魔法少女です。これまで魔法の国に言われるがままに慈善活動に精を出していたあなたはなぜかゲーム世界に放り込まれた後、なりゆきでパーティーを組んだ相手と紆余曲折を経てそれなりに仲良くなりました。

 

 あなたたちの3人パーティーは上手く回っています。これといって4人目を迎える理由はありません。加えて、このゲーム世界で死んだら現実世界で死ぬと判明した以上、パーティーメンバーとの信頼関係はより重要になっています。

 

 そんなある時、白スク姿の謎めいた魔法少女が仲間になりたそうにあなたたちを見つめてきました。彼女は「シテ…ナカマニシテ…」と鳴いています。さぁ、あなたは何を思うでしょうか。

 

 そんなの決まっている。

 

 

「え??」

 

 まず、困惑するね?

 

 

「どうする? 仲間、にする?」

「でもあの人、水着姿で魔法少女だって押し通そうとしてる変態さんだよ?」

「うーん。仲間にしたら私達まで変態だって思われそうだよねぇ? それはちょっと……」

 

 次に、ひそひそと仲間内で相談するね??

 

 

「えっと、ごめんね? 他をあたってもらえるかな?」

 

 終いには、申し訳なさそうに苦笑いを浮かべてボクを拒否するね???

 ボクは涙を呑んで、あなたたちから離れるしかなくなるね????

 

 

 まぁつまりはそういうことである。

 ボク自身はもう単独行動したくないけれど、既にパーティーを作って快適な関係を構築している面々に新たなメンバーを、それも白スク変態魔法少女を仲間に加える動機がないのである。この白スクコスチューム変えたいんですけど!

 

 

(うぅぅ、どーしよこれぇ! うー!)

 

 そもそもボクは今までの人生で、意図して友達を作ったことがない。物心ついた頃からの友達はいるけれども、当時どうやって友諠を結んだかだなんて覚えてない。

 

 そんなコミュニケーション弱者が白スク姿の強制デバフ状態で、どう会話を展開させれば既存パーティーに新規メンバーとして加入させてもらえるのかなんてわかるわけがない。

 

 じゃあベル様のパーティーにボクも入ればいいじゃん、とはならない。確かに、さっきベル様から『ディティック・ベル、ラピス・ラズリーヌ、アカネでパーティーを再編成した』とのメールが届いた。ここに4人目としてボクが参加することはできる。これは簡単だ。

 

 でもそれはダメだ。ゲームに囚われた魔法少女を1人でも多く生存させることを目指す以上、大事なのは情報だ。ボク・アカネ・ベル様が1つのパーティーで固まれば、得られる情報が減るし、偏る。結果、防げるかもしれない悲劇を見逃しかねない。

 

 ベル様とは違うパーティーに入らないといけないわけで。でも顔見知り程度の魔法少女に真正面から『ボクをパーティーに入れて』とお願いしても断られる可能性が高いわけで。正攻法が通じないなら裏技を行使しなければならないわけで。

 

 

「グォルルル……」

 

 だからこれは、わざとだ。

 地底エリアで体長8メートル級のドラゴンに奇襲されて、咥えられて、飛翔されて、どことも知れぬ場所へ連れ去らわれているのは、決してボクがドジだからではない。

 

 これは作戦だ。

 正面から魔法少女とエンカウントしてお願いする手が通じないのなら、偶然の機会を装う必要があるわけで。モンスターに襲われてピンチになったボクを誰かに助けてもらって、これをきっかけにボクをパーティーに加えてもらう完璧なプランというだけだ。

 

 え? 他のパーティーは今、最新の図書館エリアにいるだろうから、地底エリアで偶然の機会を狙っても無駄だって? い、いや、もしかしたらボクみたいにあえて地底エリアで活動している魔法少女がいるかもしれないし。

 

 だって、各エリアの街のショップでは品ぞろえが全然違っている。

 草原エリアの『モンスター図鑑』然り、山岳エリアの古文書解読用のアプリ『翻訳くん』然り、ショップではゲーム攻略の大きな助けになるアイテムが販売されている。

 

 地底エリアのショップでしか売っていないアイテムを欲して、地底エリアを探索しているパーティーだっているはずだ。いるよね? さすがにね?

 

 そうじゃないとマズい。

 というのもこのドラゴン、ボクの『どんなものにも水みたいに潜れる』魔法が通じないのだ。さっきボクが触れていた、『ゲーム参加者を確実に殺す手段を持つ輩』という奴だ。

 

 なので、ドラゴンの口の中を潜って、ドラゴンの拘束から逃れることができない。

 誰かに助けてもらわないといけないのだ。ドラゴンの牙で体をがっちりホールドされているから、魔法の端末を操作して助けを呼べないのだけれども。

 

 

(どーしよこれぇ……)

 

 正直、ボクが生きているのは奇跡だ。

 もしもドラゴンがボクを速攻で殺す気だったらとっくに死んでいた。

 

 ボクが運良く生きているのは、皮肉にもモンスターが超強化されたからだ。

 この超強化、というのはモンスターの戦闘能力だけでなく、知能面も含まれているらしい。結果、ドラゴンはボクをただ殺すのではなく、捕まえて、どこかへ連れて行こうとしている。儀式の生贄にでもするつもりなのかな?

 

 そんなわけで、ドラゴンの思考能力が向上した結果、ボクは死ぬまでの幾ばくかの猶予をもらっている。

 

 

 結局、何だったんだろうね。この異世界憑依生活。

 どうしてボクは死んだはずのスイムスイムに憑依したのか。

 どうしてボクはライトノベルの世界に引きずり込まれてしまったのか。

 ボクがここで死んだらどうなるのか。元々の18歳男子の体に精神が戻る? それとも……ボクは終わる? 本当に死ぬ?

 

 

 やだなぁ。

 

 

「…………」

 

 だれかたすけて(止まるんじゃねぇぞ…)

 

 

 

 

「――もちろん助けるわ!」

「え」

 

 地底エリアに力強い声が響いた。声の響いた方へと目線を向けると、アメコミヒーロー的ないでたちをした金髪碧眼の魔法少女がボクを見上げていた。

 

 見覚えはある。ボクが『透明な敵』のことをゲーム参加者全員に周知していた時に、彼女ことマスクド・ワンダーとも自己紹介を交わしている。

 

 マスクド・ワンダーは「とうッ!」と華麗にジャンプしてドラゴンとの距離を詰めて、拳を強く握って、ドラゴンの顔を殴りつけて、ドラゴンをはるか彼方へと吹っ飛ばした。ドラゴンの口が緩み、ボクの体は宙に放り出される。が、直後。ボクの体はマスクド・ワンダーの両腕でキャッチされていた。

 

 

「しゅたッ!」

 

 マスクド・ワンダーは自前の効果音を奏でながら地面に着地すると、ボクを優しく降ろしてくれる。

 

 

「危ないところだったわね。でもこの私が来たからには心配いらないわ! 我が名はマスクド・ワンダー! 力ある正義の体現者――『魔法少女』!」

 

 マスクド・ワンダーは、右手を上にあげ、左手を胸の前で曲げ、足を大きく開くポーズを決めて、高らかに己の名を宣言した。

 

 

 か、かかかかっけぇええええええええ!!

 

 

「かっこいい」

「ふふん、そうでしょう?」

「助けてくれてありがとう」

「どういたしまして」

 

 マスクド・ワンダーは決めポーズを解いて、真剣な眼差しでボクを見つめてくる。

 

 

「ところであなた、パーティーのみんなはどうしたの?」

「いない」

「まさかずっと1人で行動していたの?」

「うん」

「それは良くないわ! モンスターはとっても強くなってる。あなたも実感したばかりでしょう? もしあなたさえ良ければ、私達のパーティーに入らない?」

「いいの?」

「当然! このスーパーヒロインが必ず、あなたのことを守ってみせるわ」

 

 やはりボクの作戦は完璧だった。

 ボクのピンチを救ってくれたパーティーの傘下になりゆきで入るという作戦が、まさかこうもばっちりハマるとはね。これボクちゃんと計算してたから。全部狙ってやったことだから。いいね?

 

 

「話がずいぶんと進んでいるようだね」

 

 ボクの背後から第三者の声が届く。振り向くと、ひよこの形をした眼帯で左目を隠した魔法少女:プフレが、黒いナース服姿の魔法少女:シャドウゲールにおんぶされた状態で微笑みを浮かべている。

 

 

「良いでしょう? この子、放っておけばいつか死んでしまうもの。助けられるはずの命をむざむざ放置して死なせるなんて、マスクド・ワンダーの矜持が許さないわ!」

「構わないよ。シャドウゲール、君もそう思うだろう?」

「……はい」

 

 マスクド・ワンダーに続き、プフレもボクのパーティー加入に賛意を示してくれたことで、ボクのぼっち生活は無事、終焉を迎えた。シャドウゲールが一瞬、「え、マジでこの水着の人をパーティーに引き込むの?」と言いたげな顔をしていたのは気にしない。

 

 ボクは魔法の端末を操作して、3人のパーティーに加わった。

 

 

「さて、我々は晴れて運命共同体(パーティー)になったんだ。親睦を深めるため、お互い腹を割って話そうじゃあないか」

 

 あれ、何だかプフレ……さんの笑顔が怖い。

 満面の笑みなのに怖い。これはやらかしたか?

 

 

「なにが聞きたいの?」

「まずはあの侍の魔法少女の名前を教えてもらおうか。名前がわからないと不便でね。かといって、彼女が目指しているという設定の『たま』と呼ぶのもはばかられる」

 

 あーなるほど。

 ボクがアカネの名前を知っている前提の質問。そして『設定』ときたか。

 ボクとアカネの関係も、アカネが狂人のフリをしていたのも見抜かれているわけね。

 とても優れた人物眼を持っているようだ。さては貴様、天才キャラか?

 

 

「アカネ」

「良い名前だね」

「私もそう思う」

 

 しかもこの雰囲気、良い感じに場を引っかき回しそうなタイプの天才キャラだ。

 

 

「では次だが、君がどんな魔法を使えるかを教えたまえ」

「……」

「秘匿するかい? 言っておくが、魔法の開示を強制するつもりはないよ。けれど、我々は君が話してくれた『透明な敵』を警戒しなければならない。せっかくできた新しい仲間に猜疑の目を向けないためにも、ぜひとも誠実な回答を期待するよ」

 

 さらには目的のために手段を選ばなさそうな気配がうかがえるタイプの天才キャラだ。

 これは絶対、人気あるでしょ。

 

 とはいえ、どうしようか。

 『透明な敵』がボクの殺害に失敗して以降、再度の襲撃を仕掛けてこないのは、ボクを殺せなかった理由がわからないからだ。よって、もしもこの3人の中に『透明な敵』本人や、『透明な敵』に与する協力者がいるなら、ここで正直に魔法を明かすとマズい。……んだけど。

 

 よし、決めた。話そう。

 そもそもマスクド・ワンダーが助けてくれなければ終わっていた命だ。

 命を救われた幸運ついでに、この場に『透明な敵』がいない幸運にも期待したっていいだろう。

 

 実際、正義ド直球の人(マスクド・ワンダー)の清々しい性格は、姿を隠して奇襲する『透明な敵』と結びつかないし。策謀を巡らせそうな人(プフレ)は単体だと怪しいのだが、苦労してそうな人(シャドウゲール)とセットにされるとあまり敵って感じがしないし。

 

 

「プフレ。私のお腹を殴ってみて」

「「え?」」

「ふむ」

 

 ボクの提案にマスクド・ワンダーとシャドウゲールが困惑の声を零す中、プフレは躊躇なくボクのお腹めがけて拳を突き出す。プフレの拳は、ボクのお腹を貫通して背中に飛び出した。ボクの体の周囲を水しぶきが舞う。

 

 

「なぁ!? お、おおおおおお嬢がついに人を……!?」

「『ついに』とは人聞きが悪いじゃないか。私ほど清廉潔白・品行方正・謹厳実直な人間は他にいないだろうに」

「なるほど、それがあなたの魔法なのね。興味深いわ」

「ん」

 

 ボクが一歩後退し、プフレの拳をお腹から抜くと、穴の開いたお腹がすぐに塞がる。

 

 

「私は『どんなものにも水みたいに潜れる』」

「どんなものにも、か」

「それならどうしてスイムスイムはドラゴンに捕まってたんですか? あなたの魔法ならいつでも逃げられたんじゃ?」

「逃げられなかった」

 

 そうだ、それは気になってた。

 シャドウゲールから疑問を投げかけられたボクは魔法の端末でモンスター図鑑を開く。そして先ほどのドラゴンを探して――見つけた。魔法の端末をプフレたちに見せる。

 

 

「ほう、特殊能力『魔法無効化』持ちのドラゴンか。改めて、ゲームマスターの殺意の高さがうかがえるね」

「死ぬかと思った」

 

 ボクが当時の正直な気持ちを述べると、シャドウゲールが疑いの目を向けてくる。

 いやホントだよ? マジで死ぬと思ったよ? マジだってマジ。

 

 

「さて、これが核心だ。君の目的は何かな?」

 

 アカネの名前、ボクの魔法に続き、プフレがボクの目的を質問する。

 ここまで話しておいて、目的だけを隠す理由はない。

 

 プフレに魔法少女を殺するつもりがないのなら、情報を与えた方が良い。

 ボクは所詮、ただの18歳男子だ。自分の限界をよく知っている。

 ボクに無理なことは、ボクより頭の良い人に託す。

 

 ボクの目的と作戦を話し、天才キャラを利用する。

 彼女ならボクの作戦をより完璧なものに仕上げてくれるはずだ。

 

 

「私の目的は、みんなを死なせないこと。そのために今まで動いてた」

「『みんな』の中には透明な敵も?」

「人が死なないに越したことはない」

「ファルからゲーム世界の死と現実世界の死がリンクすると通達される前から察して動いていたと?」

「嫌な予感がしたから。……でも、マジカルデイジーは死んだ。私じゃ力不足。――あなたたちの知恵と力を貸してほしい」

 

 ボクは3人に向けて頭を下げる。その後、そろそろ顔を上げて良いだろうかとゆっくり姿勢を戻すと、プフレがニコニコ笑っていた。プフレの笑顔を見る度、ゾッとしてしまうのはなぜなのか。

 

 

「正解だよスイムスイム。君は今、最適解を選んだ」

 

 これは絶対、人気あるでしょ!

 マスクド・ワンダーとは別方向で、プフレもかっこよすぎるんだけど!

 

 

「それで? みんなを死なせないために君はどんなプランを組み立てているのかな?」

「まだ話したくない」

「なぜ?」

「ここは箱庭だから」

「違いない。ならばみんなでオフ会をしようか。場所は私の家だ。住所は――」

 

 ボクはプフレから告げられた住所を魔法の端末にメモしていく。「みんなの素顔を見られるのね、ワクワクするわ!」とウキウキしているマスクド・ワンダーにボクも同意である。

 

 

「あの、オフ会をするのはいいんですが……今は何か対策しないんですか? ログアウトの日になるまでに『透明な敵』が他の魔法少女を殺すかもしれないですよね?」

「大丈夫だと思う」

「私もスイムスイムと同じ見解さ。敵がすごく強くなっている以上、『透明な敵』も最新エリアではうかつに暗躍できまい。それに次、状況が動くとするならそれは――」

 

 シャドウゲールの問いにボクが答えると、プフレが理由をつらつらと述べつつ、ボクに悪戯っ子のような視線を投げかけてくる。なるほど、やりたいことはわかった。

 

 

「魔王の正体が明らかになった時」

「魔王の正体が明らかになった時だからね」

 

 ボクとプフレはそろって発言し、シャドウゲールの問いへの回答を締めくくった。

 

 良かった、回答を合わせられて。ここで失敗したらプフレからの評価が落ちるところだった。危ない危ない。というかこれ、もうプフレも魔王の正体が魔法少女という線を考慮してるのか。ホント、メタ読みなしでよくたどり着けるよ。頼もしすぎる。

 

 

「なんでそんなに息ぴったりなんですか……」

「2人は良い友達になりそうね、微笑ましいわ」

 

 シャドウゲールがジト目でボクとプフレに視線を送り、マスクド・ワンダーは腕を組んでうんうんとうなずく。

 

 

「さぁ。話はこれくらいにして、ゲーム攻略を再開しようか」

 

 かくして。ボクはプフレたちのパーティーの一員として共に行動することとなった。

 

 

 ……あれ?

 そういえば、プフレはさっき『親睦を深めるため、お互い腹を割って話そうじゃあないか』って言ってたのに、ボクしか腹を割って話してなくない?

 

 

 ◇◇◇

 

◇シャドウゲール

 

 

 ファルからの緊急招集の後。

 最新の図書館エリアではなく地底エリアを探索する方針を掲げたのはプフレだった。

 

 プフレ曰く、目的は2つ。

 『ショップで販売しているアイテムの確認』と『ヒントメッセージの捜索』だ。

 

 マジカルデイジーが荒野エリアから地底エリア最奥へのショートカットを作ったことで、地底エリアは必ずしも探索しなくて良いエリアになっている。この地底エリアに、ゲームクリアに欠かせない情報が転がっている可能性を潰すのがプフレの狙いなのだろう。

 

 そうしてシャドウゲールたちが地底エリアを探索し始めた時、1人の魔法少女をパーティーに加えることになった。白い水着姿の魔法少女:スイムスイムだ。

 

 このゲームが死と隣り合わせだと明かされる前から、みんなを死なせないために暗躍していたらしい魔法少女。だが、本当にそうなのだろうか?

 

 ゲームマスター側だからこそ、最初から知っていただけではないのか? ドラゴンを操って己のピンチを演出して、マスクド・ワンダーに助けてもらって、上手いことシャドウゲールたちのパーティーに加わったのではないだろうか?

 

 

 あれからかれこれ2日間、スイムスイムと一緒に過ごしているが、シャドウゲールの疑念は晴れない。

 

 マスクド・ワンダーは、モンスターを倒す度に褒めてくれるスイムスイムを明らかに気に入っている。プフレもスイムスイムに好印象を抱いているようにみえる。

 

 だからだろうか。

 シャドウゲールだけは彼女を疑わなければ、警戒しなければ、という気持ちが心の片隅に存在している。

 

 地底エリアを探索して情報収集している時も。

 図書館エリアに戻って、他のパーティーが集めた情報を使って、プフレが次エリアを開放するための謎解きミッションを速攻でクリアした時も。

 他のパーティーに先んじて魔王城エリアに足を踏み入れた時も。

 魔王城エリアで、スイムスイムが踏んだ床をきっかけに罠が発動した際、マスクド・ワンダーがスイムスイムの腕を引っ張ったおかげで、電撃がスイムスイムに直撃しなかった時も。

 

 

「死ぬかと思った」

「今のは危なかったですね」

 

 シャドウゲールはスイムスイムを疑っていた。

 

 

「ありがとう、マスクド・ワンダー」

「どういたしまして」

 

 シャドウゲールという人間はここまで疑り深い人間だっただろうか、とは思う。

 けれど仕方ないとも思う。こんな状況に巻き込まれれば、普通は猜疑心が強くなるものだ。シャドウゲールは至って正常だ。おかしいのは、簡単にスイムスイムを受け入れてしまえるプフレとマスクド・ワンダーの方だ。

 

 

「しかし罠か。体重感知か体温感知といったところか、厄介だね」

「図書館エリアで人数分、魔法の絨毯を買って進む?」

 

 魔王城エリアの床に仕掛けられた罠をどう対処するか。目下の課題にスイムスイムが方策を提案する。確かに、魔法の絨毯に乗って空中を移動すれば罠を踏まずに済む。

 

 

「もっと良い方法があるわ」

 

 と、ここで。さっきスイムスイムが引っかかった罠を、マスクド・ワンダーがもう一度踏む。罠は発動しない。

 

 

「罠の発動は1回きり。それなら――」

 

 マスクド・ワンダーが進路へと手を伸ばす。刹那、前方の床が一斉に凹み、爆発・電撃・視認可能な色をしたガス・槍衾・謎の魔法陣等、罠が一斉に発動した。マスクド・ワンダーの『いろんなものの重さを変えられる』魔法で周囲一帯の空気を重くして、罠を無理やり作動させたようだ。

 

 

「これで安心して進めるわね」

「すごい」

「ふふん、この程度の罠で止められるようなマスクド・ワンダーではないのよ」

「もっと見たい。見せて?」

「良いわよ! 私の活躍をとくとその目に焼きつけるのよ、スイムスイム!」

 

 罠発動の余波が消え去るのを待ってから、マスクド・ワンダーがスイムスイムを連れ立って魔王城エリアを先行していく。

 

 

「スイムスイムのことが信じられないかい?」

 

 背後から差し込まれた声にハッと振り返ると、魔法の絨毯に座ってぷかぷか浮いているプフレがシャドウゲールを見つめている。またプフレに心を読まれている。

 

 

「むしろお嬢はスイムスイムを信じているんですか?」

「私がそんな純粋な人に見えるかい?」

「この前、自分で清廉潔白だの何だの言ってたじゃないですか」

「そうだったかな? 忘れてしまったよ」

「……」

「スイムスイムを信じているわけじゃない。だが表向きは利害が一致しているんだ。わざわざ険悪なムードを作ることはないだろう?」

「……だから、私もスイムスイムと仲良くしろって言いたいんですか?」

「それは違う。信じられないものを無理に信じようとすることはない。自分の心に従いたまえ。そんな護の視点が後々役立つこともあろう」

「……そういうものですかね?」

「そういうものだ」

 

 プフレはシャドウゲールとの会話が途切れたタイミングで、マスクド・ワンダーとスイムスイムの背中を追い始める。さすがに魔王城で1人にされたくはない。疑念ばかりが心を侵食する中、シャドウゲールも皆と合流するべく駆けだした。

 




次回 第14話
『頼れる仲間はみんな目が死んでる』
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