その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム   作:超天才清楚系病弱魔法少女

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問15.『どんな動物とも仲良くなれる』御世方那子が「アンタをお友達にするのだけはちょっと……ないネー」と拒否しそうな動物を挙げよ。ただし、あくまで御世方那子の魔法が通じる動物でなければならないものとする。



第15話 頼れる仲間はみんな目が死んでる②

 

御世方那子(みよかたのなこ)

 

 ゲームの世界で死ねば現実世界で死ぬ。

 ゲームが始まってしばらくしてから、いきなりそんな事実を知らされれば、普通の人間なら誰だって憤る。ゲームに自ら参加したわけではなく、ゲームマスターの手で無理やりゲームを強制させられたのだからなおさらだ。那子だってそうだ。

 

 ゲームのモンスターがすごくレベルアップした。

 この唐突なゲームの仕様変更だって、普通の人間なら誰だって憤る。何なら絶望する。ゲームで死ねば現実でも死ぬとわかった状態で、難易度を跳ね上げられるなんてたまったものではないだろう。普通ならそうだ。しかし那子は違う。

 

 那子には『どんな動物とも仲良くなれる』魔法がある。

 すごくレベルアップしたモンスターの中には那子の魔法を封じてくる、つれないモンスターもいた。だが、那子と友達になることを受け入れてくれる、付き合いの良いモンスターもいた。

 

 すごく強くなった那子の友達(モンスター)は非常に頼もしく、それゆえ那子のパーティーはすごくレベルアップしたモンスターがひしめく現環境でも何ら問題なくゲームを攻略できていた。

 

 モンスターのレベルを上げるだけならどんどんやってくれていい。

 ゲームマスターの殺意がそのまま那子の友達の戦力増強に直結するからだ。

 

 友達が活躍してくれると那子は嬉しい。

 それにペチカを守ってあげられるし、クランテイルの心労を和らげてあげられるし、いけ好かないリオネッタにマウントを取れる。良いこと尽くめだ。そう思っていた。

 

 

 けれど、那子は己の考えを撤回せざるを得なくなった。

 ゲームの世界に4回目のログインを果たした時、謎の重圧に襲われて、地面に叩きつけられてしまったからだ。

 

 重圧から逃れようにも指一本すら動かせず、心の底から死ぬかと思った。

 実際、ラピス・ラズリーヌが救助してくれなければ那子は絶対死んでいただろう。

 

 

「びえええええぇぇぇん!」

 

 那子は号泣した。謎の重圧が襲ってこない荒野の街で、人目を気にせず涙と鼻水を垂れ流して感情を爆発させた。ラピス・ラズリーヌに救助されたリオネッタが今の情けない那子を目撃しているかもしれない、などと考える余裕すらなかった。

 

 那子より先にラピス・ラズリーヌに救助されていたらしいプフレから、現状に欠片も希望を見出せない旨を宣告されたこともあり、もはや那子は強がってなんていられなかった。

 

 

 家族に会いたい。

 たまちゃんに会いたい。 

 

 那子は死に瀕して家族を渇望するも、現実世界に戻るには、ゲームの世界で3日間過ごさないといけない。その事実がますます那子を悲しみの渦に落とし込んだ。

 

 泣いて、泣いて。泣き続けて。

 どれほどの時が経っただろうか。

 

 

「攻撃がやんだっす!」

 

 那子の命の恩人:ラピス・ラズリーヌの声が荒野の街に響きわたる。那子は泣きはらした顔を上げる。気づけば、多くの魔法少女が荒野の街に集まっていた。

 

 人数は――16人。どうやら那子がただただ泣いている間も、ラピス・ラズリーヌは懸命な救助活動を続けており、みんなを生きたまま救出できたらしい。

 

 

「どういうことですの?」

「だから攻撃がやんだっす! 今なら荒野エリアを自由に動けるっすよ!」

「何を言うかと思えば……そんなわけありませんわ。ゲームマスターが本腰を入れて私たちを殺そうとしているこの状況で、私たちへの攻撃を緩める必要がありまして?」

「でも本当に攻撃がやんだっすよ! ほら、騙されたと思ってみんな1回街から出てみるっす!」

 

 リオネッタからの怪訝な眼差しを受けつつ、ラピス・ラズリーヌは那子たちを荒野エリアの外へ誘導しようとする。が、誰も動こうとしない。リオネッタの発言がそのまま、魔法少女たちが動かない理由だった。つまりラピス・ラズリーヌの話を信じていない。

 

 

「……」

 

 でも、那子はリオネッタとは違う。命の恩人の発言を軽率に疑ったりしない。那子はふらふらと立ち上がり、荒野の街の外へと足を踏み出し――確かに、重圧を感じない。

 

 

「ぉぉぉおおおおおおお! 本当ネー!」

 

 一瞬にして、那子から悲しみの感情が消え失せた。

 どうして荒野エリア一帯を襲っていた重圧が消えたのかはわからない。けれど、状況が好転したのならそれに越したことはない。

 

 那子のリアクションで、ラピス・ラズリーヌの話す内容に信憑性が増したことで、塞ぎ込んでいた魔法少女たちが1人、また1人と顔を上げる。

 

 

「……そうか。まだ我々はあがけるようだね」

 

 魔法の絨毯に座ってぷかぷか浮いている魔法少女も、現状に希望を見出した1人のようだった。彼女の名は確か、プフレ。これまでゲーム攻略に必要な情報を共有するために、何度か対話した魔法少女だ。

 

 

「この千載一遇のチャンスをドブに捨てる理由はない。今こそ魔王討伐の時だ」

「それは、本気なのか? たとえ魔王を倒したってゲームマスターは……」

「我々への殺意が高いゲームマスターが我々を解放してくれるわけがない、だろう? わかっているさ、わかっているとも。しかしゲームをクリアしなければ、ゲームマスターの心変わりにすら期待できない。それに何もできず、何も為せずに死ぬのは私の矜持に反するのでね。……皆に魔王討伐を強制するつもりはない。だが私は行く」

 

 クランテイルに対し、己の心情を吐露したプフレは那子の横を通り過ぎて1人、荒野の街を出ていった。そんな彼女の背を、他の魔法少女たちが追い始める。

 

 

「そうね。悪者がいるのに立ち向かわないようじゃ正義が廃るもの」

「うん、行こう」

「魔王が弱いと良いんですけどね……」

 

 アメコミヒーローガールが。

 スイムウェアガールが。

 ブラックナースガールが。

 

 

「ま、やらない後悔よりやる後悔ってね」

「元より覚悟はできている」

「魔王のビジュアルがどんなものか楽しみっすね」

 

 ディテクティブガールが。

 サムライガールが。

 テレポーターガールが。

 

 

 次々と魔法少女たちがプフレを追って、荒野の街を後にする。

 たとえどれだけ絶望的な状況下でも、魔王討伐の先にあるかもしれない希望をつかみ取るべく、確かな足取りで駆けだしていく。

 

 

 彼女たちの背中があまりに眩しくて。カッコよくて。

 那子はしばらく、彼女たちの後ろ姿をただ眺めていた。

 

 この背中に続けないようじゃ魔法少女じゃない。

 那子は荒野の街に戻り、パーティーメンバーの前に立つ。

 

 

「ワタシも行くネー。みんなは?」

 

 那子が問いかけると、クランテイル・リオネッタ・ペチカが互いに顔を見合わせて視線で会話をする。クランテイルたちだって那子と同じように、魔王討伐に向かう魔法少女たちの勇姿を見ていたはずで。那子と同様の気持ちを抱えているはずだ。

 

 

「腹をくくるか」

「あなたなんかに追従するなんて嫌なのですけど、仕方ありませんわね」

「……わ、私も行きます、戦います! みんなと、一緒に生きたいから」

 

 那子が思ったとおり、3人とも魔王討伐への意志を顕わにする。今までゲームの世界で戦ったことのないペチカさえも、絶対に己の宣言を撤回するまいと、震える両手をギュッと握っている。

 

 パーティーで方針が一致した。

 あとは、魔王討伐組に合流するだけだ。

 

 

「では出発デース! ヨーソロー!」

「ここは海ではないですわよ」

 

 那子は3人を先導するように、意気揚々と荒野の街から飛び出す。直後、リオネッタが那子のテンションに水を差す発言を放ってきたが、リオネッタが魔王を討伐しに行くことを拒否しなかったことに免じて、今だけは聞き流してやることにした。

 

 

 ◇◇◇

 

◇スイムスイム(憑依)

 

 

 先日のオフ会はとても有意義だった。

 お嬢様なプフレの豪邸の一角にあるシャドウゲールの私室で、ボクが変則型の『遅延戦術』を語ったことで端を発したオフ会は、紆余曲折を経て、新たな作戦を生み出すに至った。すべては、ゲーム世界に囚われたボクたち魔法少女を死なせないようにするためだ。

 

 今のところ、作戦は順調だ。

 プフレに続いて荒野の街を出ていったボクたちの後を追うように、次々と魔法少女たちが駆け寄ってきているのが、作戦が上手くハマっている証だ。

 

 

 ゲーム世界にログインして早速、マスクド・ワンダーが『いろんなものの重さを変えられる』魔法で荒野の街を除く、荒野エリア全体の空気を重くして、魔法少女たちの動きを封じた。透明な敵に余計なことをさせないためだ。

 

 同時に、マスクド・ワンダーは地図アプリでパーティーメンバーの現在位置を確認しながら、プフレとシャドウゲールの周辺の空気だけは軽くして、2人の自由行動を許した。

 

 シャドウゲールは廃ビルの陰に隠れて仕込みをした。魔王城エリアのショップで購入した『シールド+10』と『火炎放射器』を魔法の端末から取り出し『機械を改造してパワーアップできる』魔法で魔改造を施した。

 

 数時間かけて十分に魔改造しきったアイテムは荒野エリアに穴を掘って隠してから、マスクド・ワンダーに合図のメールを送り、シャドウゲールの周囲の空気も重くしてもらった。その後、ラピス・ラズリーヌが助けてくれるまで待ち続けた。

 

 

 一方、プフレはあえて荒野の街の近くまで移動してからマスクド・ワンダーに許可のメールを送り、プフレの周囲の空気も重くさせた。結果、荒野の街が安全だと知ったラピス・ラズリーヌに、プフレを一番最初に救助させた。

 

 その後。プフレはラピス・ラズリーヌが助けた魔法少女1人1人に、ゲームマスターの殺意がどれほどのものかや、現状がいかに詰んでいるかを語ってやり、魔法少女たちを一度、絶望へと叩き込んだ。

 

 ラピス・ラズリーヌが全員を救助し終えたら、頃合いを見計らってマスクド・ワンダーに魔法を解除してもらい、プフレは『チャンスは今しかない』として、魔法少女たちを魔王討伐へと誘導した。

 

 荒野エリア全体を襲った強烈な重力攻撃で死の恐怖を経験させることで、魔王を討伐すれば死の恐怖から逃れられるかもしれないという希望にすがりつきやすくさせる。結果として、パーティーの垣根を越えて全員で協力する構図を作る。

 

 『最終的に皆が生き残れるのであれば、過程がどれだけ悲惨だろうと些事さ』とはプフレの言だ。ホント、プフレには恐れ入る。

 

 けれど作戦は始まったばかりだ。

 作戦の神髄は、魔王の正体を明らかにした時だ。

 シャドウゲールの仕込みはその時を迎えた際に光る。

 

 

 よって、まずはこのゲームの最終エリア:魔王城エリアを攻略しきらないといけない。ボク、マスクド・ワンダー、シャドウゲールの3人は、プフレの背を追って、荒野エリア→山岳エリア→図書館エリア→魔王城エリアへと進んでいく。

 

 マスクド・ワンダーが解除した罠が、一旦ゲームからログアウトした後も復活していないことを確認しつつ、ボクたちは魔王城エリアのショップまで歩を進める。そこでプフレと合流し、他のみんなの到着を待つ。

 

 ショップには程なくして魔法少女が集結した。

 マジカルデイジーを除く、16名の魔法少女たちだ。

 

 ショップで各自がアイテムを補充し終えた折、プフレが口を開く。

 

 

「皆、来てくれたようだね。ありがとう。ああは言ったが、さすがに私も1人で魔王と戦って勝てるのか不安だったからね」

 

 プフレは安堵のため息を零しつつ、ショップの奥の通路に視線を移す。

 

 

「さて、ショップの先は未踏破だ。というのも、ここから先には幾多もの罠が仕掛けられていてね。罠は特定の床を踏むと発動するが、一見しただけでは罠を見破ることは難しい。結果、我々のパーティーは足止めを余儀なくされたのさ」

「そうっすか? 見れば誰でもわかるっすよ?」

 

 ボクにはわからなかったんですけど?

 罠に引っかかった時、死ぬかと思ったんですけど??

 

 

「皆が君レベルの実力者ではないのだよ、ラピス・ラズリーヌ。よってまずは罠を安全に解除する方法を募集する。ぜひとも忌憚のない意見を期待するよ」

 

 荒野エリアを襲った謎の重圧がマスクド・ワンダーの魔法ではなくゲームマスター側の殺意の現れだと誤認させるためにも、マスクド・ワンダーに罠を解除してもらうわけにはいかない。マスクド・ワンダーの魔法をみんなの前で大々的に披露するわけにはいかない。ゆえに今、プフレは罠の解除方法を募集している。

 

 

「はいはーい、質問! 罠ってどんな感じかわかってる?」

「爆発・電撃・正体不明のガス・槍衾等々……バリエーション豊かとのことだよ」

「オッケー。そんじゃ夢ノ島ジェノサイ子にお任せあれ!」

 

 プフレの回答を聞くや否や、夢ノ島ジェノサイ子は通路へと飛び込んでいった。刹那、雷撃がジェノサイ子に襲いかかるも、当の本人はケロッとしている。

 

 

「何たって、私にはこの無敵のスーツがあるからね。でも罠の位置はわかんないから教えてくれぃ」

「そのお願い……戦場に舞う青い煌き、ラピス・ラズリーヌが請け負ったっす!」

 

 ジェノサイ子はラピス・ラズリーヌに罠の位置を教えてもらいながら1つ1つ罠を発動させていく。魔法少女であっても直撃すればただでは済まない威力の罠をどれほど喰らっても、ジェノサイ子の体には傷一つつかない。

 

 

 その無敵のスーツ、マジチートやん。

 もうチートや、チーターやろそんなん!

 ……良いなぁ。ボクもあれほしい。無敵だし、露出も控えられるし最高じゃん。

 

 

 ジェノサイ子がすべての罠を解除し終えてから、ボクたちは通路を突き進む。いつどこから何が襲ってきても対処できるように、きちんと隊列を編成して先へ先へと歩みを進める。

 

 そんなボクたちの進軍は、視界の先に映る木製の扉によって止められた。魔法の端末で地図を確認すると、ボクたちの現在地が魔王城エリアの最深部であることがわかる。

 

 しかし、魔王がいるにしてはあまりにしょぼい扉だ。だったらありそうなのは、前哨戦か。中ボスないし、四天王ないし、その手の存在との戦闘が待ち受けているのだろう。

 

 

「ラズリーヌ」

「罠はかかってないっすね。開けるっすよ?」

「あぁ、よろしく頼む」

 

 ラピス・ラズリーヌがプフレの許可を得てから、ゆっくりと扉を開ける。扉の先は、広々とした空間だった。ボクが想定したような敵はどこにもいない。

 

 ボクたちは困惑しつつも、扉の中に入る。大部屋の奥にはさらに扉が備え付けられている。今度は苦悶する人の顔が幾通りも刻まれた、漆黒の金属製の扉だ。

 

 

 間違いない。

 あの扉の先に魔王がいる。

 魔王を倒せれば、ゲームは終わる。

 

 皆が引き寄せられるようにして金属製の扉へと向かう。刹那、背後からガシャンという金属音。振り返ると、木製の扉の前に堅牢な檻が降りている。

 

 退路を塞がれたことにボクたちが気づくと同時に、大広間の四隅から鎧を着た騎士と小型のロボットが次々と召喚される。彼らは一斉にボクたちへと飛びかかってくる。

 

 ここはモンスターハウスだったらしい。ボクは魔法の端末を操作して『武器+7』を装備する。ボクの武器は薙刀(ルーラ)だ。

 

 当然ながらボクは薙刀の使い方なんてわからないので、ノリと勢いで戦うしかない。

 でも大丈夫、ここには頼れる仲間がたくさんいる。みんながモンスターを倒してくれるまでの間、ボクは自衛さえできればいい。

 

 ボクは頼もしい仲間たちの顔を見やって、硬直した。

 

 

(み、みんな目が死んでるぅぅうううう!? え、なんで???)

 

 わけがわからない。さっきまで魔王討伐に意欲を見せていたはずの仲間たちが全員、目が死んでいる。思いっきり絶望している。

 

 あれか? 強者によくある、オーラで相手の実力がわかる的なやつか?

 それでみんなモンスターとの実力差がわかって絶望してる感じなのか!?

 ボクは中身が一般人だからそういうの全然わからないんだけども!?

 

 ロボットが空を浮遊しながらミサイルを飛ばしてくる。

 ミサイルの発射先には、アカネ。

 

 

「アカネ!」

 

 ボクは慌ててミサイルとアカネの間に割って入り、魔法の端末から『シールド+7』を取り出して構える。直後、激しい衝撃。ボクはアカネ諸共後方に吹っ飛ばされる。

 

 

「スイムスイム……」

「アカネ、しっかりして」

「ごめんなさい、私は何もできなかった」

「まだ何も終わってない、諦めないで」

「ごめんなさい……」

 

 アカネが尻もちをついたままうずくまって、頭を抱える。アカネの背後で騎士が剣を振り上げている。ボクは『シールド+7』を両手で構えながら騎士に突撃する。ボクの体重を込めたシールドバッシュで、騎士から振り下ろされる剣を何とか受け止める。

 

 ちらりと周囲を見やる。アカネを含む数名が戦意喪失している。他の魔法少女はモンスターに応戦こそしているが、防戦一方のようだった。とにかく、みんなの戦い方がぎこちない。つたない。いやホントどういうことさ? モンスターにレベルドレインでもされた??

 

 大広間の四隅からは、さらに騎士とロボットが追加召喚されている。対するボクたちは攻撃を凌ぐことしかできていない。体に生傷が増えるばかりで、騎士とロボットの数を減らせていない。このままだと物量に押しつぶされて全滅する。

 

 まさに絶体絶命だ。

 どうしてみんながおかしくなったのかはわからずじまいだが、ボクだけが平気な以上、ボクがこの状況を火急速やかに打開しないといけない。

 

 

 だれかたすけて!(いつもの)

 

 

 ボクはアカネに『シールド+7』を無理やり握らせると、アカネから離れる。夢ノ島ジェノサイ子に一直線に近づき、彼女の体をボクの頭の上に持ち上げる。

 

 

「はぇっ!?」

(そぉぉおおおおおい!)

 

 そして、ジェノサイ子を迫りくる騎士の集団へと投げつけた。

 

 

 ジェノサイ子をモンスター軍団にシュゥゥゥーッ!!

 超! エキサイティン!!

 

 

「ちょっと!?」

 

 ボクのバトルフェイズはまだ終了していない。ジェノサイ子の両足をつかんでぶんぶん振り回す。一回転目で騎士をなぎ倒し、二回転目で空を舞うロボットをなぎ倒し、三回転目でジェノサイ子の足を離して再び騎士の集団にジェノサイ子を放り投げる。

 

 

「いきなり何すんのさ!? ふざけてんの!?」

 

 ようやくボクから解放されたジェノサイ子が憤怒の眼差しをボクにぶつけてくる。

 ボクは周囲を一瞥する。モンスターの動きが止まっている。ボクの動きが想定外すぎて、AIの処理が追いついていないのだろうか。これはチャンスだ。

 

 

「みんなが強い敵を怖がるのはわかる。でもあなたが怖がるのはわからない。自分の魔法を信じてないの?」

 

 ボクはジェノサイ子をまっすぐ見つめ返した。

 

 

「……そうだ、そうじゃん。私には無敵のスーツがある。強い敵がなんぼのもんじゃい!」

 

 ジェノサイ子の瞳に光が戻る。ジェノサイ子は華麗にジャンプして空飛ぶロボットに肉薄する。ロボットがジェノサイ子にミサイルを直撃させるも、ジェノサイ子は知ったことかとロボットを殴り飛ばした。

 

 ジェノサイ子の奮起をきっかけに、他の魔法少女たちの目にも戦意の光が宿る。レベルドレイン状態(?)の時とは見違えた動きでモンスターと互角以上にわたりあっていく。

 

 モンスターの増援発生スピードよりも、ボクたちがモンスターを倒すスピードの方が早い。これならモンスターハウスを乗り切れる。

 

 

「アカネ」

「ごめん、もう大丈夫。どうかしてた」

 

 アカネから『シールド+7』を返してもらったボクはモンスターの攻撃を盾で防ぎ、隙を見ては薙刀を振るってモンスターを退ける。そうしてボクが時間稼ぎをしている間にも、ボクよりはるかに強い魔法少女たちが着実にモンスターを殲滅していく。

 

 大広間にモンスターが召喚されなくなるまでの3分間、ボクたちは戦い続けた。

 傷を負った者は多かった。しかし死者はいない。ボクたちは難局を突破したのだ。

 

 戦闘を終えた魔法少女たちは回復薬で傷を癒した後、装備を確認する。先の戦闘で武器や盾を壊してしまった者に、他の者が予備の装備を与えて準備を整える。それから前方の金属製の扉にも罠がないことを確認し、背後の木製の扉を塞ぐ檻を壊して退路を確保する。

 

 

「我々の勝利条件はただ1つ。誰1人欠けることなく魔王を討伐し、その先の未来で我々が笑いあっていることだ。……さぁ行こうか、最後の戦いだ!」

 

 プフレの号令に魔法少女たちは1つうなずく。ラピス・ラズリーヌが金属製の扉を開けて、魔法少女たちが次々と入室する。

 

 そこは、飾り気のない部屋だった。

 真っ白な大理石の部屋の中にぽつんと玉座が置かれている。魔王はいない。

 

 

 やっぱりか。

 魔王というモンスターは存在しない。

 魔法少女の中に魔王が潜伏している。

 

 ボクはプフレに視線を送る。

 プフレがボクの視線に軽く首肯する。

 

 ついにこの時が来た。

 正直怖い。凄く怖い。でもやるしかない。

 

 

 ボクはあえて足音を鳴らしながら、魔王の間の中心へと向かう。

 何事かと魔法少女たちの視線がボクに注がれる。彼女たちの視線を一身に受けながら、ボクは玉座の前でクルリと振り返って。

 

 

 

 

「――私が魔王だよ」

 

 ボクは魔王を騙った。

 

 




次回 第16話
『魔王、それは君がみた光』
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