その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム 作:超天才清楚系病弱魔法少女
問題2.「困っている人の心の声が聞こえる」魔法を扱うスノーホワイトに心を読ませずに、しかしスノーホワイトに心から信用してもらう手段を述べよ。ただし、信用してもらう相手は、理想のスノーホワイトではないものとする。
第2話 見て! 骸骨が踊っているよ。かわいいね
◇スイムスイム(憑依)
ボクがなぜか唐突にスイムスイムの体に憑依して、いきなりスノーホワイトとエンカウントしたあの1件から、4日の時が流れた。
太陽がだんだんやる気をなくし始める夕暮れ時。N市某所の裏山にて。ボクは手ごろな木の幹に座って、何となしにN市の街並みを眺めていた。ボクの姿は今も相変わらず魔法少女姿、つまり白スク姿である。変態かな? 変態だね。
魔法少女の体は常軌を逸している。そのことはアニメで既に知っていた情報だ。ただ、知識があるのと実際に体験するのとは違う。この3日間はその新鮮な体験の連続だった。人間の限界を軽く凌駕した身体能力、夜目のききっぷり、視力・聴力の強化っぷり。などなど。どれもこれもボクをワクワクさせるものばかりだった。
――とはいえ。
(お腹すいた……)
さすがに4日もロクに食事をしなかったらお腹がすっごく減るらしい。魔法少女の体に毒は通じないらしいので、ここ数日はその辺で摘み取った正体不明の雑草をモサモサ食べて空腹をごまかしてきたのだが、さすがに飽きてきた。雑草は味のバリエーションが少なく、面白みがない。
さて、まずどうしてボクが街並みを眺めているだけなのかを説明しよう。
4日前。ボクがスノーホワイトと突発エンカウントし、どうにかスノーホワイトに見逃してもらった時。ボクはどこまでもテンションが上がっていた。有頂天で、ウキウキだった。
ハイテンションのまま夜を明かして翌日を迎えてようやくボクは落ち着いた。
そして初めて、現状が相変わらずボクにとってよろしくないことに気づいたのだ。
まずスイムスイムには帰る場所がない。
ボクはスイムスイムの家の住所なんて知らないし、仮にご都合主義で住所を知っていたとしても、ボクは家には帰れない。スイムスイムは3年前に死んだことになっているのだから。
スイムスイムの家族はきっと、葬式をやって、お墓に遺骨を納めて。スイムスイムが死んだという悲しい事実に一区切りをつけているはずだ。そこにボクが意気揚々と現れたらどうなるか。それは想像に難くない。
スイムスイムの家族を無駄に怖がらせて怯えさせて混乱させて。あれやこれやの末に、なぜか生き返っている謎生物のスイムスイムがどっかしらの研究施設で実験動物として扱われるルートへ直行すること間違いなし。それくらい、死人が生き返ったという事象はこの現代科学社会にとって劇薬なのだ。
じゃあ家には帰らないとして。次にボクが考えたのは身寄りがない子供ルートだ。N市から遠く離れた場所で魔法少女の変身を解いて、記憶喪失した7歳児として付近をとぼとぼとさまよう。そうして、お巡りさんに見つけてもらって、保護してもらうルートだ。
だがそれはすぐに却下した。なぜかって? ボクに7歳児の演技をしろと? 幼女の語彙なんて知らないのに? 「ふぇぇ」くらいしか言えないのに? こんなザコ解像度の体たらくでお巡りさんと会ったところで、絶対ロクなことにならない。そうに決まってる。
それに仮にお巡りさんとグッドコミュニケーションを築けたとして、その先でボクを待ち受けているのは孤児院ルートだろう。そんなの嫌だ。今更小学生から人生をやり直すとか嫌すぎる! せっかく過酷な受験が終わって、これから楽しい楽しい大学生活だったはずなのに! もう受験したくないよ! 自由になりたいよ!
スイムスイムの家にも帰らない。孤児院にも入らない。そんな状態で生計を立てたいと願うのなら、魔法少女パワーを使ってその辺のコンビニで万引きでもすれば良いじゃんとでも言いたげなそこのあなた。
はい。スノーホワイト様が最後に残したお言葉を思い出してみましょう。
――もしも何か悪いことをやったなら、その時はわかるよね?
怖いにょおおおおおおおおおおおおおお!!
すげぇ怖いにょおおおおおおおおおおおおおお!!
無理だよ、犯罪なんて犯せるわけがない。やらかしたら最後、絶対にスノーホワイトが速攻で襲ってくる。あの無表情で襲ってくる。それはホラーすぎる。ボクはホラーは苦手なんだ。そんな恐怖展開、避けるに越したことはない。
そんなわけで。ボクは今、特に目的もなく公園の木の上に身を潜めて、街並みを眺めているわけなのだ。……はぁ、お腹すいたなぁ。
空をツバメが優雅に飛んでいる。もしもボクがカラミティ・メアリに憑依していたのなら、あのツバメを撃ち殺して喰らいつくせたのに。あるいはラ・ピュセルでも、リップルでも、トップスピードでも、ミナエルでも、ユナエルでも。あのツバメを殺せたのに。でもボクはスイムスイム。潜ることしか能がない魔法少女だ。スイムスイムの力では、あのツバメを食べられない。ボクは無力だ。非力な一般ピーポーだ。
「……ん」
特に何をするでもなく。魔法の端末を宙に放り投げて、亜空間にしまう。亜空間から魔法の端末を出現させて、手でキャッチする。単なる暇つぶしだ。こんなことならスノーホワイトに魔法少女の仕事を紹介してくれって頼めばよかった。
そもそもこの魔法の端末は何なのだろうか。どうしてボクは魔法の端末を持っているのだろう。死んだ魔法少女の魔法の端末を、魔法の国は回収しないものなのだろうか。
考えれば考えるほど疑問が増える。そもそもボクが変身を解いた時、なんで7歳児の姿だったのだろう。N市で勃発した魔法少女の殺し合い。当時スイムスイムは7歳だった。けれどスノーホワイト曰く、今はあの事件から3年が経過している。もしもスイムスイムが正当に復活したのなら、10歳児として復活するのが筋なのではないのか?
疑問が次々とボクの頭の中を巡る。しかし疑問が氷解することはない。ひたすら氷の塊としてボクの頭に積み重なるだけだ。とにかく重くてしょうがない。
(…………背に腹はかえられない。やっぱり万引きし――)
刹那。手のひらの魔法の端末からメールの着信音が響いた。
「――ッ!!?」
スイムスイムは3年前に死んだ魔法少女だ。現状、スイムスイムが生き返ったことを知っているのはスノーホワイトだけ。つまり、ボクの魔法の端末にメールを送ろうという発想に至れるのはスノーホワイトだけ。
(うわぁぁあああああああッ!? 違う違うよ違いますスノーホワイト様! ボクは一切、やましいことは考えてません! 誓ってボクは悪いことを企んでません! ちょっと魔が差しちゃっただけなんです! はい!)
ボクはプルプル震える手で魔法の端末を操作し、受信トレイからメールを開く。ボクの予想に反して、スイムスイム宛に届いたメールはスノーホワイトからのものではなかった。送信元は不明で、カラフルな文字で彩られた文面は、企業の広告メールを想起させる。当のメールはボクが何も操作していないにも関わらず、自動でスルスルと画面スクロールを始めていく。
『それではゲームをスタートします』
そして、メールの最後の一文が魔法の端末に表示された時、唐突に文字が七色の輝きを放つ。あまりに暴力的な輝きについボクは目を瞑った。
◇◇◇
◇スイムスイム(憑依)
魔法の端末からの光の暴力はすぐに止まった。ボクは恐る恐る目を開ける。すると、ボクの視界にはもう見飽きたN市の街並み――ではなく、広々とした荒野が映し出された。時折乾いた風が吹きすさび、ボクの桃髪を荒々しくなびかせる。
(え。ここどこ?)
いかにも西部劇でおなじみのタンブルウィードが似合う風景である。けれど、あの草は転がってこない。空気を読めない奴め。だからお前は『タンブルウィード』って名前を覚えてもらえないんだぞ。
『チュートリアルモードでは魔法少女育成計画の戦闘を実際に体験していただきます。敵を撃破してマジカルキャンディーを手に入れてください』
『スケルトン5体が現れました』
なんてどうでも良いことをツラツラと考えていると、魔法の端末に新たなメッセージが表示される。同時に。地を揺らしながら、ボコリボコリと音を立てて。見るからに学校の理科室にありがちなテンプレ外見の骸骨が5体、ボクの眼前に出現した。
骸骨たちは凄まじく緩慢な動きで、カタカタ乾いた音を鳴らしながらボクへと近寄ってくる。時折、膝から崩れ落ちそうになりながらも何とか体勢を立て直してボクまでどうにか迫ろうとする様子は、さながらダンスのようだった。
見て! 骸骨が踊っているよ。かわいいね。
「ん」
試しに顔を殴ってみた。骸骨Aの頭が首から外れてポーンと飛んでいった。
回し蹴りをしてみた。骸骨Bの胸骨が崩壊し、骸骨Bは倒れ伏した。
頭突きをしてみた。骸骨Cの顔の骨が粉々になった。
脛を蹴り抜いてみた。骸骨Dは足を失い動けなくなった。
膝カックンしてみた。骸骨Eはさすがに膝カックンでは倒れなかった。骸骨Eは心底不思議そうにボクを見つめてくる。今度はデコピンしてみた。骸骨Eは後頭部から地面にぶつかって砕けた。
結果、ダンシング骸骨アイドルグループは壊滅した。
「……」
みんなが骸骨を攻撃してばかりいるので、骸骨は踊るのをやめてしまいました。
お前のせいです。
あ〜あ。
ボクは頭の中でインターネットミームを詠唱することで骸骨たちへの供養を終える。そこで魔法の端末に新着メッセージが届く。
『チュートリアルが終了しました』
『あなたは5のマジカルキャンディーを手に入れました』
『街へ向かってください』
気になるワードはたくさんある。けれど今は街に向かうよりも優先すべきことがある。ボクは魔法の端末で、謎の荒野に転移する前に届いたメールを再度開く。今度はメールが勝手に画面スクロールすることはなかった。
メールを要約するとこうだ。
ここは魔法少女専用ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』の世界。参加者の目的は、16人の仲間と協力して冒険し、封印されたエリアを解放し、エリア最深部に潜む魔王を打ち倒すこと。そうして平和をつかみ取る過程を経て、参加者に魔法少女として大いに成長してもらう。そんな、教育・訓練用シミュレーターとしての側面も持つゲームの世界らしい。
また、メールの下部には、特に重要であろう内容が改めて箇条書きで記述されていた。わかりやすくてとても助かる。
・ゲームの目的……魔王を討伐する。
・クリア報酬……百億円。ただし魔王を倒したプレイヤーのみ。
・エリア開放報酬……百万円。ただしエリアを開放したプレイヤーのみ。
・参加賞……十万円。ゲームオーバーしても支払われる。
なるほど。これは、始まったな。魔法少女育成計画のアニメしか視聴していないボクがまだ知らない、アニメ最終話のその先の物語が。いきなりゲームの世界に放り込まれるという、この異常事態はきっとそういうことだ。そうとしか思えない。つまりこれから再び、なんやかんやで魔法少女同士の壮絶な殺し合いが幕を開けるわけだ。
この殺し合いの舞台で、ボクの存在は完全にイレギュラーだ。スイムスイムは本来、死んだままで、生き返ったりなんてしないはずだから。となると、ボクはこの舞台で、やろうと思えば何でもできる。望めば自由に動くことができる。原作では死んでしまう魔法少女を救うこともできるし、原作では生き残る魔法少女を殺すこともできる。できてしまう。
舞台に上がってしまった以上は、ボクのスタンスを決めなければならない。ボクの目的を決めなければいけない。無策のままのほほんと過ごしていては、ボクが殺されてしまうだけなのだから。
(……あ)
ここでボクはとある重要なことに気づいた。
この状況。3年前のN市の殺し合いと似た状況。これでこれから多くの魔法少女が死んでいくとして。ボクが上手いこと立ち回って殺し合いを生き残ったとして。スノーホワイト目線でこの事件はどう映る?
またスイムスイムがやりやがったと誤認されるのでは?
またスイムスイムが魔法少女を5人くらい殺したと勘違いされるのでは?
スノーホワイトがボクの下に急行してくるのでは?? 何ならスイムスイムキルマシーンのリップルも一緒に連れてくるのでは??
いくらボクが誤解だと主張しても、スノーホワイトがボクを信じてくれるとは限らない。スノーホワイトはなぜかボクの心の声を聞けないのだから。
――もしも何か悪いことをやったなら、その時はわかるよね?
――わかるよね?
「…………」
よっしゃあ! みんな救ったるで!
原作死亡キャラを救済してやる! ボクに任せな!
いや、さすがに原作で死ぬ魔法少女を全員救うのは無理だとしても。何人かは救うべきだ。そうやって、聖人ムーブを重ねて、スイムスイムは悪い魔法少女じゃないことを行動で証明しないといけない。必要になった時に、ボクが救った魔法少女たちに、ボクが悪者じゃないと弁護してもらえるように善行を積まないといけない。
くっそー。こんなことになるのなら、まほいく全シリーズ読破しときゃ良かったなぁ。そうすれば上手に立ち回って、華麗に原作死亡キャラを救えただろうに。くそぅ! くそぅ!
後悔していても始まらない。
具体的な作戦は何もないけど、やるしかない。
†† ボクの完全行き当たりばったりな生存戦略が今、始まる―― ††
だれかたすけて(参謀キャラ急募)
◇◇◇
◇ペチカ
魔法少女ペチカにとって今日は、幸せの絶頂から不幸のどん底に叩き落された、落差の激しい1日だった。
ペチカには想いを寄せる人がいる。二宮君だ。二宮君はペチカと同じ中学に通う野球部の男の子だ。エースで四番であり、実力は折り紙付きで、時折プロ野球のスカウトが周囲を徘徊しているらしい。二宮君はとんでもなく野球が上手なのだ。
二宮君にはファンが多い。野球部の練習や試合が終わると、学内・学外問わず、女性ファンが二宮君に差し入れを持ってくる。というのが野球部の常となっていた。
ペチカも二宮君のファンの1人だった。ペチカも二宮君ともっとお近づきになりたかった。けれど今までペチカは一度も二宮君と接触しなかった。ペチカが魔法少女に変身していない時の、建原智香の容姿に自信がなかったからだ。二宮君とまるで釣り合わない普段の姿で二宮君に近づいたら最後、思い上がりブスと嗤われ、中学校で己の居場所がなくなると確信していたからだ。
しかし、今日。ペチカはついに覚悟を決めた。
智香から魔法少女ペチカに変身し。魔法少女の華美な服装から純白のワンピースに着替えて。二宮君の前に姿を現し。ペチカの『とても美味しい料理を作れる』魔法で作ったお弁当を押しつけて帰ったのだ。
やってやったぞという達成感。せっかく憧れの二宮君の前に姿を現したのに、ロクに話さず、顔を合わせず、お弁当だけ渡した己のやらかしへの恥ずかしさ。
暴れる感情をそのままに自宅のベッドで悶えていたまでがペチカの幸せの絶頂フェイズだった。そこで唐突に謎の荒野にたった1人、放り出されてしまってからがペチカの不幸のどん底フェイズの始まりだった。
わけのわからないことの連続だった。いきなり骸骨が襲ってきた。骸骨に攻撃されそうになった時に侍風の風貌の魔法少女が助けてくれた。侍風の魔法少女にお礼を告げたら、左手でペチカの首をつかみ上げられて、右手の刀をペチカの首に添えられた。
「またあれをやらされるのか。もう終わったのではなかったのか。なぁ音楽家」
「し……知りません。私も、私もよくわかんなくて。気がついたらここに」
何かを、何かを話さなければ。このままではきっとペチカは殺される。ペチカは震える声で必死に己の窮状を訴える。侍風の魔法少女の敵ではないことを主張する。
これが魔法を悪用した罰なのだろうか。私利私欲で魔法を、魔法少女の美しい姿を使った罰。魔法の国は魔法少女の活動を監視していて、それで私に罰を……?
「音楽家?」
ペチカの知らない声が響いた。すると、侍風の魔法少女の左手の力が弱まる。予期せぬタイミングで自由の身となったペチカは受け身を取れずにその場に「あう!?」と尻もちをついてしまう。
ペチカは新たな声の主を見上げる。魅惑的な体つきに白いスクール水着を着用した魔法少女、なのだろうか。ペチカと同様に綺麗でかわいい容姿をしているので魔法少女なのだろうが、コスチュームを見るとただの水泳選手にしか見えない。荒野に水着姿の少女、という珍妙な構図がペチカの混乱に拍車をかける。
侍風の魔法少女の注目がペチカから水着の魔法少女に移った。今ならペチカは逃げられるかもしれない。けれどペチカはすっかり腰が抜けていて、すぐには立てそうにない。
「私はスイムスイム。あなたは?」
「音楽家」
「よろしく。オン・ガクカ」
「音楽家はどこだ?」
「自分探しをしているの? 意識高いね」
わけがわからない。本当にこの2人は日本語を話しているのだろうか。日本語によく似た、ペチカの知らない外国語を話しているのではないか。そう錯覚してしまうほどに、2人の会話は支離滅裂だ。
「音楽家はどこだ?」
「ん、と。森の音楽家のこと?」
「音楽家はどこだ?」
「音楽家は死んだ」
「そんなわけがない」
「でも、たまが殺した」
「たま……犬……?」
「忠犬だよ」
頭が痛い。『音楽家』という言葉を耳にする度にペチカの頭がズキズキと痛む。何本もの針で頭を刺されているかのようだ。頭をいじくり返されているかのようだ。これ以上、2人の会話を聞きたくない。けれどペチカは恐怖のあまり、両手で耳を塞ぐこともできない。
「音楽家は生きている」
「音楽家は死んだよ?」
「死んだなら、これはなんだ? またあれをやらされる。ここはその舞台だろう?」
「音楽家はもういない。この舞台は別の人が作っている」
「ウソを吐くな」
「あなたの仇はもういない」
「音楽家はどこだ?」
あぁ夢なら早くさめてほしい。おじいちゃん、お父さん、お母さん、智樹*1。誰でもいいから、何でもするから、早くペチカを叩き起こしてほしい。
「……音楽家を見つけたとして、あなたに音楽家を殺せるの?」
「殺せる」
「殺せないからまた巻き込まれた。違う?」
「殺せる、殺す、殺してみせる」
「気持ちの問題で解決できる相手じゃない。強い言葉を使っていれば勝てる相手じゃない。あなたは痛いほど知ってるはず」
「……それでも」
「わかった。私についてきて。音楽家の殺し方を教える。とっておきの方法がある」
「音楽家ァ」
ペチカの夢は終ぞさめなかった。しかしペチカの願いが通じたのか、侍と水着の魔法少女は2人してその場を後にしてくれた。ペチカはどんどん小さくなっていく2人の魔法少女の背中を凝視する。2人の姿が完全にペチカの視界外になってようやく、ペチカは息を吐いた。久しぶりに呼吸をしたかのような気分だ。
「ひぅぅ……!」
こんな荒野のど真ん中で座り込んでいては、いつあの2人のような話の通じない危険な魔法少女がペチカの前に姿を現してもおかしくはない。ペチカは言語化できない悲鳴を零しながら。震える足を叱咤しながらよろよろと立ち上がり。流れる涙をぬぐう時間すら惜しいとばかりに、2人が立ち去った方向とは完全に逆方向へと走り出した。
次回 第3話
『お前がたまになるんだよ!』