その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム 作:超天才清楚系病弱魔法少女
問26.魔法少女姿のテプセケメイに制服を着せて、中学1年生として波山中学に転入させた時に、中学卒業までテプセケメイの正体がバレない確率を述べよ。
ただしテプセケメイは気分次第で空中浮遊するし、ランプの中に入り込むし、クラスメイトに哲学的な問いを投げかけるものとする。
◇ピティ・フレデリカ(残り時間17時間03分)
もしもこの世に神様とやらが実在するならば。
なんて残酷な世界を作ったものだと嘆かずにいられない。
それくらいこの世界には理不尽がはびこっている。
しかし、それでもピティ・フレデリカは。もしも己が神様と対面する機会に恵まれれば、心の底から感謝を表明する自信があった。
神様が世界に、魔法少女が生まれる可能性を設けてくれた。残してくれた。そして実際に魔法の国の働きかけで魔法少女が生み出された。それだけで、世界に蔓延するあらゆる悲劇と天秤にかけてもお釣りがくるというものだ。
ピティ・フレデリカは魔法少女が好きだ。
きらびやかな容姿、華やかなコスチューム、各々が抱く信念、彼女たちが歩んだ人生を如実に映し出す頭髪。魔法少女を構成する何もかもが大好きだ。愛おしくてたまらない。
そんなフレデリカが正式な魔法少女になれたのは僥倖だった。
魔法の国の人事部門所属となったフレデリカは長年にわたって魔法少女の育成に携わり、数多くの弟子を輩出してきた。
フレデリカは『理想の魔法少女』を欲していた。
愛しい魔法少女を実験動物程度にしか考えていない魔法の国を派手にぶっ壊してくれる劇薬を求めていた。性根が腐っているフレデリカにはできないことを叶えてくれるスーパーな魔法少女を求めていた。
だからフレデリカは
フレデリカの最後の弟子:スノーホワイトは、フレデリカの『理想の魔法少女』に至る可能性を秘めた稀有な少女だった。
N市で森の音楽家クラムベリーが開催した、正式な魔法少女を選抜するための試験。総勢16名の魔法少女が殺し合った凄惨な一件の当事者だったスノーホワイトは、クラムベリーのような、己の益のために周りに被害をまき散らす悪い魔法少女を止めるための比類なき力を欲していた。
N市の悲劇の渦中にいながら何もできなかったことを悔やみ。同じ過ちを繰り返すまいと、魔法少女による悪しき行為を止めるために力を渇望するその純粋でいじらしい姿は、この上なくフレデリカを惹きつけた。
フレデリカはスノーホワイトと接触してからというもの、彼女に『理想の魔法少女』へと至ってもらうための育成計画に着手した。が、フレデリカの試みは志半ばで中断された。フレデリカのミスでスノーホワイトと直接対面してしまい、彼女の『困っている人の心の声が聞こえる』魔法でフレデリカの秘密を知られてしまったからだ。
フレデリカは目的のためには手段を選ばない。好奇心のままに何だってやってのける。森の音楽家クラムベリーの行いに興味を抱いて、フレデリカ自身も魔法少女同士に殺し合ってもらう試験を主催したこともあった。
フレデリカの理想とする魔法少女は正義の中にある。そして正義はいつだって邪悪を必要としている。理想の魔法少女を作るためには邪悪への理解が欠かせなかった。だから森の音楽家クラムベリーの試験をフレデリカも模倣して、クラムベリーの胸中に迫ろうとした。
その悪行をスノーホワイトの魔法で看破された。フレデリカはスノーホワイトとリップルとの戦いを余儀なくされた。
フレデリカは理想の魔法少女を欲していたが、一番大事なのは己自身だった。そのためフレデリカはスノーホワイトとリップルを殺すつもりで戦い、結局返り討ちに遭った。2人の鮮やかな連携プレーの前に敗北し、捕まった。
そして魔法の国で最も重い刑罰:封印刑に処された。
およそ3年前のことだ。
フレデリカの命運は尽きたはずだった。
永遠に続く刑罰に服するしかないはずだった。
しかしフレデリカは終わっていなかった。つい半日前、フレデリカの弟子の1人:トットポップがフレデリカの封印を解除してくれたからだ。
丹精込めて育てていた弟子に捨てられたフレデリカは、これまた心血を注いで育てていた弟子に救われた。これぞフレデリカの日頃の行いの賜物だと言えよう。
トットポップは魔法の国の反体制派に所属している。彼女は組織から与えられた役目を拝命して魔法少女部隊を率い、フレデリカを封印刑から解放した。
反体制派はフレデリカに自由を与える対価として、フレデリカにB市に潜む暗殺犯の捕縛を要求した。魔法の国のとある部門が飼っているとうわさの暗殺犯の身柄を確保した上で、大々的に告発する。そうして魔法の国の権威を、信用を失墜させる目的らしい。
が、律儀に反体制派の要求を叶えれば自由を得られると考えるほど、フレデリカは性善説の信者でも楽観主義者でもないし、お花畑の脳みその持ち主でもない。
反体制派の望みどおりに暗殺者を捕まえて反体制派に献上した時に、反体制派が「だまして悪いが」等と言って手のひらを返すかもしれない。約束を反故にして、フレデリカから自由を取り上げて再び封印しようとするかもしれない。その時への備えをフレデリカは欲した。
その備えこそが、暗殺者を捕まえる任務を完遂するための過剰戦力を入手すること――つまりフレデリカと同じ監獄で封印されていたプキンとソニア・ビーンを一緒に脱獄させて、自由をエサに、暗殺者を捕まえる任務に巻き込むことだった。
表向きは、任務を確実に達成するために盤石な体制を敷くため。
裏向きは、反体制派が不穏な動きを、フレデリカに不利益を被る動きを匂わせてきた時に、こちらもプキンとソニアをちらつかせて脅すためだ。
すべてはフレデリカが何者にも侵されない自由を取り戻すためだ。
封印刑だけは二度とごめんだ。自己の認識があいまいになっていて、時間の経過だけはやけにはっきり認識できて、恐ろしい何者かに追われているような、漠然とした焦りだけがただただ募る。あんな辛い思いはもうこりごりだ。
プキンとソニア・ビーンという強烈な戦力を得た以上、トットポップが率いる魔法少女部隊は邪魔になる。魔法少女部隊の軽率な言動が、プキンとソニアの逆鱗に触れかねないからだ。ゆえにフレデリカはトットポップ、プキン、ソニアの少数精鋭でB市に乗り込んだ。
フレデリカは『水晶玉で好きな相手を映し出せる』魔法を行使できる。生きている人間の髪の毛を指に結ぶことで、当人の姿を魔法の水晶玉に投影できる魔法だ。
この魔法の長所の1つとして、水晶玉に投影した場所に介入できる点がある。水晶玉に投影した場所に手を突っ込んで欲しい物を手元に引き寄せることもできるし、手元の物を水晶玉の映す世界に放り込むこともできる。
よって、魔法の国の外交部門が形成した、あらゆる魔法的な要素を通さない結界がB市全域を覆っていようと、B市の住民の髪の毛さえあれば、フレデリカの魔法の前では無力だ。これこそが、魔法の国の反体制派がB市に逃げ込んだ暗殺者を捕らえるためにフレデリカを封印刑から解放した理由だった。
フレデリカはトットポップからB市住民の髪の毛をもらって己の魔法を行使した。そうしてB市の土を踏んだフレデリカは適宜、トットポップと協力して、プキンとソニアのご機嫌を取りながら、暗殺犯を捕まえるべく動き始めた。これが数時間前のことだ。
当初、フレデリカはプキンとソニアによる蹂躙劇が始まる未来を想定していた。暗殺者がどれほど手練れだろうと、捜査班の面子がどれほど優秀だろうと。プキンとソニアが繰り出す、過激極まりない暴力の前では誰しも等しくひれ伏すしかない。そのように推測していた。
実際、暗殺者を捕まえるという任務に、プキンとソニアを投入するのは明らかに過剰戦力だったはずだ。アリを潰すだけの仕事に戦車を持ち込むレベルの暴挙だったはずだ。なのに。フレデリカがプキン&ソニアと再び合流した時、プキンもソニアも酷く傷だらけだった。
プキンの火傷は仕方ない。いくらなんでも相手が悪すぎる。
なにせ、魔王パムだ。魔王パムと他の魔法少女との間には隔絶した力の差がある。それはプキンやソニアであっても例外ではない。もしも魔王パムがB市の街や人への被害を致し方なしとする性分だったならば、今頃プキンは魔王パムの爆撃でB市もろとも消し炭になっていた。尤も、そのことは口が裂けてもプキンには言えないけれど。
が、ソニアの怪我は想定外極まる事態だった。
ソニアが標的にした白スクの魔法少女の実力はたかが知れていた。それが白スクの魔法少女を観察したフレデリカたちの共通認識だった。
万に一つも白スクの魔法少女がソニアに敵う可能性はなかった。だからこそ。プキンを筆頭に、フレデリカたちはソニアが単身で白スクの魔法少女を襲うことを認めた。それなのに、再びソニアと再会した時、彼女は裂傷でズタボロだった。
白スクの魔法少女の実力を見誤ったか。
魔法少女マニアを自認するピティ・フレデリカにしては珍しい。
ソニアの単独行動を認めたフレデリカの過失を認識した時、フレデリカの中には歓喜の感情が湧き上がっていた。白スクの魔法少女はフレデリカの想定をたやすく超えてみせた。白スクの魔法少女には何かがある。これだから魔法少女はたまらない。
魔王パムの介入により海賊船に乗船していた魔法少女たちを取り逃してしまったフレデリカたちは、ソニアと合流した後、個人経営のレストランへと押し入っていた。
プキンとソニアが肉を食べたいと思った時、ちょうどすぐ近くにレストランがあった。ならばレストランが閉店時間だろうと構わずに強引にレストランに突入する。プキンとソニアはそういう人種だ。
なお、唐突に店内へと入り込んだフレデリカたち不審者一派に困惑しつつも追い出そうとした店主はすでに冥府に旅立っている。『プキン&ソニア』という名の災害に巻き込まれた店主の運の悪さたるや。せめて来世では幸せな生涯を全うしてほしいものだ。
「ふむ、悪くない肉だな」
「ほいしいね、ふふ!」
「ソニア、焦らずとも食事は逃げない。食べながら喋るでない」
「ふい!」
「我輩たちに辛酸をなめさせた無礼者には相応の報いを受けさせなければならない。が、今はその時ではない。次の機会を逃さぬよう、傷ついた体を回復する時間だ。わかるか、ソニア? わかったならちゃんとよく噛んで食べるのだ」
「うん!」
プキンとソニアはダイニングチェアに座って、食事を堪能している。店主亡き今、料理担当はトットポップだ。トットポップは料理にも精通しており、プキンとソニアの舌を満足させられるレベルの料理をキッチンで次々と生み出しては、急ぎ足でプキンとソニアへ提供する作業をひたすら高速で繰り返していた。
プキンとソニアは100年以上前に台頭した旧式の魔法少女だ。現代魔法少女に比べて旧式魔法少女は燃費が悪い。活動を維持するために必要とする食事量が非常に多く、『健啖家』という表現すら生ぬるい。イナゴのように食料を喰い尽くす。
また、魔法少女には体を美しく保とうとする機構がある。意図して体の傷を残そうとするような変わり者の魔法少女でもない限り、怪我はいずれ治る。コスチュームすら元通りになる。プキンやソニアのような強い魔法少女であればなおさら傷の治りは早く、2人は食事でエネルギーを得ることでみるみるうちに傷を治癒していた。衣装も元通りになっている。
プキンとソニアはトットポップの料理に夢中になっている。
今はフレデリカがプキンとソニアに気を遣わなくていい貴重なタイミングだ。
「さて」
フレデリカはレストランの別室に移動し、懐紙から取り出したとある髪の毛を指に結び、水晶玉を左手に持ち、魔法を行使する。水晶玉に映し出された光景、その一部始終をフレデリカは観測する。
B市某所の路地裏にて。
虹をまとった魔法少女が魔王パムに拘束された。郵便屋の魔法少女が叫び散らし、魔王パムが郵便屋に痛烈なビンタを浴びせて、辛辣に対応した。白スクの魔法少女は世を憂うように虚空を見上げている。
そう、フレデリカは屋上で魔法少女たちと接敵した際にこっそり、とある魔法少女の髪の毛を回収していた。ついでにその魔法少女はすでにプキンのレイピアで傷をつけられている。つまり、プキンが『魔法の剣で刺した相手の考えを変えさせる』魔法を行使しており、当の彼女は今やプキンの操り人形だ。
プキンは操っている魔法少女に『決して目立たぬように、怪しまれないように魔法少女の集団に紛れ込む』ように指示を出している。プキンがひたすら海賊船を追っていたのは、まだプキンの魔法で誰も操っていないと逃亡者たちに誤認させるためのポーズだった。プキンのことを知っている者が魔法少女の集団にいることを見越しての動きだ。
尤も、そのポーズをプキンがノリノリで臨んだ結果、魔王パムの奇襲を引き寄せてしまったのは彼女の不運だったとしか言えない。が、プキンがあれだけ迫真の演技をしたのだ。『相手の能力がわかる魔法のゴーグル』を装備している7753も早々、身内にプキンの操り人形がいることを疑ってゴーグルを操作はしまい。
なお、フレデリカの水晶玉からは対象を目で見ることはできても耳で聞くことはできない。けれど、それでも十分に察することはできる。
魔王パムの羽で頭から足の先までぐるぐる巻きにされた、あの虹をまとった魔法少女。彼女こそがフレデリカたちの標的の暗殺者なのだろう。アレを手に入れてB市から脱出し、反体制派に引き渡せばフレデリカの目的は達成だ。
(……それにしても、興味深いことがたくさんありますね)
水晶玉にはフレデリカの知らない魔法少女が映し出されている。海賊、ステージマジシャン、花嫁、バレリーナ、郵便屋、踊り子。誰も彼も所作が初々しい。フレデリカが疾うの昔に失ってしまった、正当な魔法少女らしさを彼女たちは抱えている。
それから、リップル。3年前と比べて、精悍さが増している。それに今の彼女は復讐を終えた引退兵ではない。現役戦士の雰囲気を取り戻している。嬉しい変化だ。
そして、リップルにより良い変化を与えたであろう当事者、白スクの魔法少女:スイムスイム。3年前、森の音楽家クラムベリーが開催した試験で暴れに暴れ、試験中にリップルの相棒:トップスピードを殺した魔法少女。
フレデリカはようやくスイムスイムのことを思い出した。まさか死人がよみがえっているとは思わず、そのせいで魔法少女マニアを自認しておきながら、白スクの魔法少女の正体に気づくのが遅れてしまった。
どうして死んだはずのスイムスイムがよみがえっているかはわからない。
が、今のスイムスイムは非常に面白い。
これまで幾多の魔法少女を育ててきた経験ゆえに、フレデリカは理解した。アレは、誰かが手塩にかけて育てている魔法少女だ。崇高、至高、究極のその果て、極致のさらにその先にある理想のために、丹精込めて育成している魔法少女だ。
誰が? 何のために?
どうしてわざわざスイムスイムを選んで育てている?
わからない、わからない……が。
スイムスイム育成計画の立案者とは気が合いそうだ。
だって、もしかしたらその人はフレデリカと同類かもしれない。魔法少女を愛し、恋し、理想の魔法少女の誕生を待ち焦がれている同志かもしれない。だって、スイムスイムをこんなにも魅力的に育てようとしているのだから。
「
気づけば、トットポップがフレデリカの様子をのぞき込んできていた。
「おや、私としたことが」
「師匠は相変わらずなのね」
「褒め言葉として受け取っておきます」
トットポップにジッと見つめられるご褒美を堪能しながら、フレデリカは占い師コスチュームの袖でよだれを拭う。隣の部屋にはプキンとソニアがいるのに、すっかり気を緩めてしまっていた。そこは反省しないといけない。
でも、あくまでフレデリカに落ち度はない。悪いのはスイムスイムだ。あんな蠱惑的な肢体を、桃色の髪の輝きを見せつけてきたあの魔法少女だ。彼女が誘ってくるのが悪い。
「トットポップ」
「なーに?」
「少しこの場を離れます。私の不在を大先輩方が気になさらないよう、これまで以上に素敵な料理をふるまいなさい」
「師匠の頼みとあらばお任せあれね!」
「頼もしいですね。さすがは我が愛弟子、期待していますよ」
「むふー」
まずはトットポップの喉元を軽く撫でてやる。それからトットポップの髪を撫でて、彼女の匂いをたっぷり吸い込んで堪能してから、フレデリカはレストランを後にする。
さてさて。
ここまではやられっぱなしの我々ですが、反撃の時間です。
少々仕掛けさせてもらいますよ。
◇◇◇
◇スイムスイム(憑依)(残り時間16時間30分)
妖精トコにより魔法少女の力を与えられた面々。妖精トコとタッグを組んでいたらしい暗殺者:レイン・ポゥ。そんな彼女を捕縛した、魔王パムを始めとした捜査班一派。
レイン・ポゥが魔法の国に連行されれば重罰が科される。最悪、永遠に封印される。そのことを知ったポスタリィがレイン・ポゥを解放するべく、魔王パムに突撃し、返り討ちに遭い、気を失った。
浪山中学校組が沈鬱な表情を浮かべながらポスタリィへと集まり、介抱したり様子を見たりしている。今の彼女たちには捜査班からもたらされた衝撃の情報の数々を整理し、心を落ち着ける時間が必要だった。
捜査班の班長マナは、トコによって勝手に魔法少女にさせられた面々を脱獄犯の対処に利用しない方針を選んだ。それゆえ捜査班は、浪山中学校組から少し離れた場所で脱獄犯一派への対策を協議し始めている。
人気のない路地裏に集結した、色とりどりな魔法少女たち。
しかし、今の総勢13名が織りなす空気はとにかく重苦しかった。
「お前は空を飛ばないのか? 飛べるのになぜ飛ぼうとしない?」
そんな折。『風と同化してどこへでも行ける』魔法で空中をふわふわ浮いているテプセケメイから唐突に想定外極まりない質問を投げかけられたボクは、思わず目を丸くした。
「…………飛ぶ?」
「いけるだろう? お前なら。メイにはわかる。メイと同じように飛べるはず」
「……私が?」
「空は嫌いか? 空は良いぞ。何者にも囚われない。メイがメイの思うようにできる。ヘンタイもきっと気に入る。やってみればわかる」
マジで??(歓喜)
スイムスイムの『どんなものにも水みたいに潜れる』魔法って空飛べるの??
アニメでスイムスイムが『紅葉狩りだ』って嘘をついて、トップスピードの『猛スピードで空を飛ぶ魔法の箒』に乗せてもらって目的地に向かったエピソードが印象的だったから、スイムスイムは空を飛べないものだと思い込んでいた。
でも、そっか。
本来、船は海上で使うものだ。けれど、さっきキャプテン・グレースは『すごくかっこいい魔法の海賊船を出せる』魔法を陸上で使い、船を走らせていた。
そうか、まほいくワールドでは常識に囚われてはいけなかったんだ!(*`・∀・´*)
ボクが心から望めば、願えば、きっと。魔法は応えてくれる。大事なのは信じる気持ちだったということか。
スイムスイムの魔法は『どんなものにも水みたいに潜れる』魔法だ。つまり、この『どんなものにも』って、マジで『どんなものにも』ってことなの??
……ちょっと試してみたいな。
まずはホントに空を飛べるか、場所を移して挑戦してみたい。決してこの場の地獄の雰囲気から逃げたいからではない。
浪山中学校組と捜査班とを引き合わせて情報共有をする。
当初、ボクが思い描いた構図は成就した。
ここまでたどり着ければ、あとは大丈夫だろう。
あとは捜査班のフルメンバーが対処してくれる。迫りくるプキンを難なく排除できるほどの実力を持っているらしい魔王パムが何とかしてくれる。リップルから逃げてたボクに強烈な光をぶつけて気絶させたのも多分、魔王パムなんだろうし。
そう。B市を舞台にした第3部における、ボクの役目は終わったのだ。これからボクが何かアクションを起こさずとも、きっと悲劇は起きない。
というか、もう戦いたくない。ソニアには殺されかけたし、プキンは隙あらば超天才のボクに英語マウント取ってくるし。どうせピティ・フレデリカもトットポップもやべぇ奴らなんだろうし、戦わずに済むに越したことはない。現場のプロに全部お任せしてしまいたい。
捜査班のマナ、下克上羽菜、魔王パム、7753、リップル。
ほら、あの5名の面構えたるや。安心感が違いますよ。よってボクが己の魔法の研究のために一旦、この場を離脱しても何も問題ない。
「テプセケメイもそう思うよね?」
「??」
ほら。テプセケメイも、そうだそうだと言っている。
そうと決まれば行動あるのみだ。
くぅ~疲れましたw これにて第3部完です。
ではボクはこれで失礼します。
「おい待て、お前どこに行こうとしている?」
立ち去ろうとする僕の背中にマナから鋭い声が投げかけられる。
「お前とリップルは休戦したんだろう? だったらお前が我々捜査班と行動を別にする理由はない。こっちに来い。まずはソニア・ビーンと戦った時の話をもっと詳しく聞かせろ。そこから作戦を立てる。……7753の提案にうなずいたのはお前なんだ。今さら降りるなんて認めないからな」
マナはボクの手を掴んで強引に捜査班の下へと連れていく。
とてもこの場を立ち去ることを許してくれる雰囲気ではない。
マジで??(絶望)
いや、情報提供は良いのだけども。
捜査班に協力するって宣言したのは確かだけども。
……マナの雰囲気的に、ボクも捜査班と一緒に、またあのやべぇ連中と戦わないといけない感じだったりします?
……。
………………。
だれかたすけて!(い…嫌じゃ…脱獄犯など戦いとうない…)
次回 第27話
『プロの暗殺者がこんな情けない声で鳴くんですね』