その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム   作:超天才清楚系病弱魔法少女

28 / 48

問28.気性が荒く言葉遣いが悪いマナとのファーストコンタクトで、マナに気に入ってもらうための作戦を提示せよ。ただしこの時、マナにアルコールを摂取させて酔わせて、可愛らしく付き合いやすい隠れた性格を引き出してはならないものとする。



第28話 驕るなーー!! 

 

◇マナ(残り時間15時間30分)

 

 

(……何が、一体何が起きた?) 

 

 頭がクラクラとしている。全身が痛みを訴えている。

 どうやら意識を飛ばしていたようだ。

 

 体に重圧がのしかかっている。瓦礫だろうか。

 体が悲鳴を上げている。このまま無抵抗でいれば無惨に潰されて死ぬだけだ。

 

 魔法少女であれば、瓦礫を蹴飛ばして自由を得られただろう。

 が、マナは魔法使いだ。力任せの解決策は選べない。

 

 何かマナの窮地を脱するための方法はないか。わずかに動く右手で周囲を探っていると、なじみのある感触が右手に伝わる。

 

 これは魔法の袋だ。マナがB市の暗殺犯を捕まえるために必要だと思って、事前に用意した魔法の道具をこれでもかと詰め込んだ袋だ。どれだけ物を詰め込んでも、魔法の袋は持ち運びしやすいサイズのまま変わらない。普段からマナが重宝しているアイテムだ。

 

 

(私の命運はまだ尽きていなかったか)

 

 マナは魔法の袋から注射器とアンプルを取り出す。アンプルから濃緑色の液体を注射器に抽出し、マナの首筋に注射針を刺して液体を注入する。

 

 マナが体に取り込んだのは、『魔法少女のような身体能力、魔法少女のような精神の強さを得るための薬』だ。大量に摂取すれば副作用や後遺症を引き起こしかねないが、アンプル1本程度なら問題ない。

 

 マナの体に力がみなぎる。全身を駆け巡る力を振り絞って、振り絞って――マナはようやく己の体に積みあがっていた瓦礫を蹴り飛ばすことに成功した。

 

 

 あたかも困難を打破したマナを祝福するかのように月の光が、街灯の光がマナを迎えてくる。とりあえず、マナは外にいたらしい。とてもまぶしい。こんなささやかな光でも、今のマナには暴力も同然だった。

 

 マナはゆっくりと立ち上がる。

 背後を見ると、外壁が派手に壊れたコンクリートビルがあった。

 

 ふらついて倒れそうになり、右手で頭を押さえる。液体の感覚が手のひらを伝播する。見れば、マナの手は真っ赤に染まっていた。血を流している。

 

 

 だんだん状況を思い出せるようになってきた。

 捜査班(+スイムスイム)で集まって、脱獄犯一派を捕まえる、あるいは殺すための作戦会議を行っていた。その折、スイムスイムが「私たち、フレデリカに見られてる」と口にして、その直後に空中にソニア・ビーンが現れた。

 

 ピティ・フレデリカの『対象の髪の毛があれば、対象に監視・接触できる』魔法で、ソニア・ビーンという名の爆弾を投下してきたのだ。

 

 ソニアが登場してまもなく、魔王パムが動いた。ソニア・ビーンが展開した『触れるものを朽ちさせる』魔法からマナたちを逃がすために、突風を生み出した。結果、マナたちはソニア・ビーンの魔法で即死しない代わりに派手に吹っ飛ばされた。

 

 魔法少女と違い、魔法使いは体の耐久性が心もとない。魔法使いのマナは魔王パムの突風で盛大に吹き飛ばされた結果、どことも知れぬビルの壁に勢いよくぶつかり、気絶した。そんなマナに追い打ちをかけるように、ビルの外壁の一部が瓦礫となってマナへと降り注いだ。それが事の顛末のようだ。

 

 

「コフッ」

 

 マナは不意に咳き込み、吐血する。が、思考は止めない。口元の血をローブで拭う。

 捜査班の班長として、捜査班メンバーに犠牲者を出さないために。トコのせいで魔法少女にさせられて戦いに巻き込まれた被害者たちを死なせないために。

 

 マナは状況の精査へと思考を沈める。

 己がこれから何をするべきかを見定めるために。

 

 

(まさか、すでにフレデリカに髪の毛を盗られた魔法少女がいるとはな)

 

 油断は、あった。トコが大量に生み出した新米魔法少女に紛れた暗殺者を魔王パムが捕まえてくれて。新米たちと一触即発の状況になったところをスイムスイムが仲裁してくれたことで、新米たちと戦う理由がなくなって。加えて、マナたちが対処しないといけない脱獄犯は、魔王パムが一度撃退した実績のある相手で。

 

 これらの要素が合わさったことで、大なり小なり、マナは安心していた。脱獄犯一派に髪の毛を取られている可能性を考慮はすれど、濃厚だとは考えなかった。その結果がこの有様だ。ふがいないことこの上ない。

 

 

(だが、それでもおかしい)

 

 魔王パムともあろう者が、ソニア・ビーンから我々を逃がすための突風の出力調整に失敗して、マナに深手を負わせてしまうとは考えにくい。スイムスイムが事前にフレデリカの監視の件を魔王パムに伝えたのだから、なおさらおかしい。

 

 

「…………」

 

 いや、本当はわかっている。

 魔王パムは突風の出力調整に失敗したのではなく、妨害された。結果、突風の出力を抑えられなかったのだ。

 

 では一体、誰が、どうして魔王パムを妨害したのか。少し考えれば答えにたどり着くのはそう難解なことではない。が、その答えを否定したがるマナが存在するのも事実だった。

 

 

「班長!」

 

 マナの鼓膜に聞きなじみのある声が響く。兎耳と着物姿が特徴的な魔法少女:下克上羽菜だ。羽菜が慌ててマナへと駆け寄ってくる。

 

 

「良かった、無事だったんですね!」

「これが無事に見えるのか?」

「そういう返しができるくらいには元気そうで安心しました。すぐに応急手当しますから、班長は自分に回復魔法を使ってください」

「言われずともわかっているさ」

 

 羽菜がコスチュームの着物をちぎって、マナの傷の応急処置を開始する。マナは魔法の袋からメモを取り出し、メモを確認しながら床に回復用の魔法陣を描く。

 

 それから魔法の袋から注射器&アンプルを2本ずつ、それと『ねじくれた杖』を取り出す。アンプル2本分の薬を自身に注入しつつ、杖を右手に構えて己に回復魔法を――唱えるふりをして杖を羽菜へと振り下ろした。

 

 

「――鋭いですね、さすがです」

 

 羽菜の蹴りでマナの右手が弾かれる。マナの手から杖が零れ落ちる。羽菜はマナの首をつかんで背後のビルに叩きつけた。

 

 

「ぐぅッ!?」

 

 やはりか。やっぱりそうなのか。

 プキンの『斬った相手に錯覚を与える』魔法は、対象に接近しなければ使用できない。プキンが操れる可能性があったのは、プキンが逃がすまいと追いかけていた新米魔法少女たちと、下克上羽菜・スイムスイム・リップルくらいだった。

 

 ピティ・フレデリカがソニア・ビーンを投下し、ソニアが即死魔法を行使した、あの一瞬。あの一瞬で魔王パムほどの強者を新米魔法少女ごときが妨害できるわけがない。

 

 スイムスイムが操られているなら、わざわざフレデリカの監視をマナたちに伝える必要がない。

 

 リップルは『手裏剣を投げれば百発百中』の魔法の特性上、主な攻撃方法は投擲だ。誰にも目撃されずにこっそり魔王パムを妨害することはできない。

 

 

 確定だ。羽菜はプキンに操られている。だから、己の髪がフレデリカに盗られている(あるいは渡している)ことをマナたちに報告しなかったし、ソニアの襲撃時に『感覚をものすごく鋭くできる』魔法で魔王パムの五感を狂わせたのだ。

 

 羽菜が助力すれば、たとえスイムスイムがフレデリカの監視を告発しようとも、それでもソニアにマナたちを全員殺させることができる。羽菜はそう判断して、潜伏をやめて妨害行為に踏み切ったのだ。

 

 

「お前、やっぱりプキンに操られて――」

「――プキン将軍閣下でしょう?」

「あぐッ!?」

 

 羽菜に強く首を絞められたマナは、言葉を紡げない。

 事前に薬を投与していなければ、今ので首が折れていた。

 

 

「まったく、どいつもこいつも無礼者ばかりでムカつきますね。あのお方は魔法の世界の大先輩なんだから我々若輩者は敬意を持ってその名を呼ぶのが筋でしょうに、みんなしてあのお方を呼び捨てしちゃって。将軍閣下を愚弄する者どもに囲まれながら作戦会議に参加し続けるのも大変でしたよ」

 

 羽菜は深々とため息を吐いた後、マナへと向き直る。

 

 

「すべては将軍閣下の自由のために」

 

 羽菜がマナの首をつかむ反対の手で拳を作る。プキンの目的を阻害しかねない魔法関係者の1人たるマナをここで殺すつもりなのだろう。

 

 

(だれかたすけて)

 

 ……なんて、願ってみただけだ。この詰んだ状況がひっくり返るとは思っていない。

 もはやマナは助かりようもない。

 

 

(羽菜お姉ちゃん……)

 

 願わくば、羽菜が生き残って。プキンの洗脳が解けて。その時に、羽菜がマナを殺した事実を責めませんように。だって、仕方のないことなのだから。

 

 羽菜の拳がマナの頭に迫る。

 マナは目を瞑ろうとして――。

 

 

 

 

 海賊衣装の魔法少女が羽菜の顔を殴り飛ばした。

 完全な不意打ちに、羽菜が派手に吹っ飛ばされていく。羽菜の首絞めから解放されたマナの体を浮遊感が包む。マナは地面に着地し、バランスを崩して尻もちをついた。

 

 

「お前……」

 

 キャプテン・グレースだ。

 キャプテン・グレースがマナの命を救ってくれた。マナはグレースにお礼を言おうとして、言葉を失った。グレースは明らかにキレている。

 

 

「あの時」

「あの時だ」

「一瞬でもあんたを好敵手(とも)だと信じて、船に乗せたあたしがバカだった」

「あんた、敵よね? そこのデコチビ女を殺そうとしたってことは、そういうことだよね?」

「暗殺者だの、トコに騙されているだの、脱獄犯だの。あーだのこーだの」

「てめぇら勝手に人の故郷で何しくさってんの?」

「どいつもこいつも人の街で好き放題しやがって!」

「さぞ楽しそうだな? なぁ!!」

 

 グレースの激昂が周囲をビリビリと震わせる。グレースはマジシャン姿の魔法少女を、ファニートリックを抱きかかえていた。ファニートリックはピクリとも動かない。

 

 

「……ねぇ。この子のこと、少し見てて」

 

 グレースはファニートリックをマナの傍らに横たえる。ファニートリックは両目と半身が腐り落ちている。魔王パムの突風が間に合わず、ソニアの魔法を喰らってしまったのだろう。なるほど、グレースの心境はあらかた把握した。だが、これは――。

 

 

「敵は皆殺しよ」

「待て!!」

 

 グレースは羽菜へと突き進んでいく。その背中をマナは呼び止めた。グレースはぴたりと立ち止まる。理性が残ってくれているようで助かった。

 

 

「キャプテン・グレース。ファニートリックの命は私が繋ぐ」

 

 マナの一言にグレースが目を見開いた。

 マナは己の体を叱咤して、どうにか立ち上がる。

 

 

「…………佳代、生きてるの?」

「あぁ」

「だって佳代、あたしを庇って、あの黒い奴喰らって、こんなに酷い姿になって……」

「見た目が酷いだけだ。まだ生きている。そして私には回復魔法の心得がある。完治は専門の病院でなければ無理だが、命に別条がない程度に治療することはできる」

「本当に?」

「あぁ。だが、私は魔法使いだ。魔法少女と違い、魔法使いは道具と儀式で魔法を使う。当然、時間がかかる。お前が羽菜に負ければ、後はわかるな?」

「りょーかい!」

 

 グレースの瞳に光が宿る。明確な希望の光だ。

 マナは己の望みをグレースに告げるべきか迷った後、口に出した。

 

 

「……あと、できればでいいが……羽菜を殺さないでやってくれないか? 羽菜は悪い奴じゃない。羽菜はただ敵に、脱獄犯に操られているだけだ」

「はぁ? あんたなに言ってんの??」

「……そうだな。すまない、今のは忘れて――」

「――あたしは波山中学2年生、芝原海。欲しい未来はいつも手中に収めてきた。それは魔法少女:キャプテン・グレースになった今も変わらない。あんたの望みも叶えてみせる。そこでおとなしく待ってなさい」

「グレース、お前……」

「……あたしの大切な相棒なの。くれぐれも佳代のこと、頼んだわよ」

 

 グレースは勝気な笑みを携えて、羽菜を殴り飛ばした方へと歩を進めていく。

 新米魔法少女のはずなのに、マナはグレースをとてつもなく頼もしく感じた。

 

 

「……はぁ。勝手に信じられて、勝手に失望されても反応に困るんですよね」

 

 と、ここで。グレースが見つめる方向から羽菜のため息が聞こえてくる。

 

 

「ところで、あなた。さっき『敵は皆殺し』とか言ってませんでしたか?」

「言ったけど?」

「あなたごときがプキン将軍閣下を倒せるとお思いで?」

「余裕でしょ? そんな布巾っぽい名前の奴、ソッコーでボロ雑巾にして、床に零した牛乳を拭くのに使ってやるわよ」

「驕るなーー!!」

 

 グレースの挑発に、プキン至上主義モードの羽菜が乗ったことで、グレースと羽菜との戦闘が開始される。

 

 

 もしもマナに魔王パムレベルの力があったなら。いや、魔王パムほどの実力はなくとも、魔法少女の力があったなら。グレースにすべてを任せず、自らの力で羽菜に対抗した。

 

 けれど、マナは非力だ。

 魔法少女のような身体能力を得る薬はまだ残っている。が、薬の効果は既に切れている。それに合計アンプル3本分の薬を立て続けに摂取したマナの体はもうボロボロだ。キャプテン・グレースに加勢することはできない。

 

 およそ半日前に魔法少女になったばかりの新人:キャプテン・グレース。

 彼女に未来を託すしかない。

 

 普通に考えれば、グレースの勝率はゼロだ。

 片や新人、片や歴戦の魔法少女だ。年季が違う。プキンが大事すぎるあまり、煽りに弱くなっているようだが、それでも羽菜は強い。

 

 魔法の世界は実力社会だ。早々奇跡は起こらない。

 それでもキャプテン・グレースが、プキンの手駒になってしまった下克上羽菜を倒す、そんなご都合主義なジャイアントキリングを願わずにはいられない。

 

 

「頼むぞ、キャプテン・グレース……!」

 

 マナはファニートリックに回復魔法を行使し始めた。

 

 

 ◇◇◇

 

◇スイムスイム(憑依)(残り時間15時間30分)

 

 

 ボクがピティ・フレデリカの監視をみんなに伝えた直後、フレデリカはボクたちの上空にソニア・ビーンを放り込んできた。

 

 ボクは、隣にいた7753(ななこさん)に抱きついてそのまま地中に潜り、ソニアの『触れるものを朽ちさせる』モザイク魔法から逃れるだけで精一杯だった。

 

 みんなは無事だろうか。

 心配だったが、ボクは地中をひたすら泳ぎ進めた。ソニアが今もボクの水着に執着しているのなら、ボク一点狙いで追ってくるかもしれなかったからだ。

 

 ボクがソニアに優先的に狙われる可能性があるのなら、7753を巻き込んで地中に潜るべきじゃなかったのではと言いたげなそこのあなた。

 

 ……はい、その通りです。返す言葉もありません。

 けれど、体が動いてしまったのだから仕方ないじゃない。

 

 

 結局、ソニアはボクを追ってこなかったようだ。

 ボクは人気のない路地裏を選んで、7753と一緒に地上へと姿を現した。ボクの腕の中で7753が「ぷはっ!」と息を吐く。苦しかったらしい。申し訳ないことをした。

 

 

「ごめんなさい」

「い、いえ! 謝らないでください。スイムスイムさんのおかげで命拾いしたんですから。ありがとうございます」

 

 ボクが7753に頭を下げると、7753は慌てて何度もボクに頭を下げて感謝を表明してくる。うっかりボクに窒息死させられる展開もあり得たのに7753にボクを責める気配がない。つくづく優しい人だ。

 

 

「これからどうしましょうか?」

「みんなと合流する」

 

 ボクが7753を伴って地中に潜る直前、魔王パムが何かをやろうとしていた。ソニアの迎撃か、みんなの避難か。少なくとも悲劇を防ぐために何らかの対処をしようとしていた。ならば、少なくともボクと7753以外が全滅している最悪の事態は考えなくていいだろう。

 

 フレデリカがソニアという名の爆弾を投入してきたのは、ボクたちが1か所に集まっている状況が都合が悪かったからだ。だからソニアを使ってボクたちを分断し、各個撃破しようとしている。だからこそ、みんなと合流するべきだ。

 

 

「……もしも合流するまでに脱獄犯と出会ったらどうしますか?」

「臨機応変に動く。……ところで、7753は戦える?」

「てんでダメです。魔法少女としての身体能力も最低限ですし、魔法も戦闘向きではありませんから」

「じゃあ、私が守る」

「重ね重ねありがとうございます。……我ながら情けないですね。私は大人なのに、子供のスイムスイムさんに守ってもらわないといけないだなんて」

「困った時はお互いさま」

 

 7753が非戦闘員である以上、みんなと合流する前に脱獄犯と出くわす事態は避けたい。慎重に動かなければならない。

 

 

 などと考えていると、唐突に前方から名状しがたい漆黒の物体が飛来してきた。漆黒の物体はスイムスイムの目の前で飛行を止めて、空中で静止する。それから幾ばくか振動した後、口っぽい器官を生成した。

 

 

『力が欲しいか?』

 

 キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!

 なんだこいつぅぅうううううう!?

 

 

『我は力の体現者』

「ちからのたいげんしゃ」

『選択の時だ、スイムスイム』

「せんたくのとき」

『力が欲しいか?』

「ちから……」

 

 漆黒の物体は物語の導入でありがちなセリフをいくつか並べた後、物体のセリフを復唱することしかできないボクへの問いかけを最後にジッと静止する。

 

 え、なにこの厨二展開。

 いや、ボクもごく一般的な18歳男子だから過去にはこういうシーンを夢想したことはあるけれども。いざこの手の場面に出くわすとどうすりゃいいのかまるでわからないんですけど!? これどうすればいいの!? てか、なんで名前知られてるの??

 

 

 だれかたすけて!(答えは沈黙……?)

 

 

「警戒しなくて大丈夫ですよ、スイムスイムさん」

 

 ボクが困惑していると背後から7753に声をかけられる。確信のある声色だ。

 

 

(知っているのか、7753!?)

「ゴーグルで調べました。これは魔王パムさんの羽です。パムさんはスイムスイムさんの働きに期待して、羽を1枚貸し出すことにしたようです」

「力が欲しいって言えばいいの?」

「はい。羽がスイムスイムさんに質問しているのは『パムさんが与えようとしている力がかえってスイムスイムさんの邪魔にならないか、己の行いが余計なお世話じゃないか』を念のため確認するためです。なので、スイムスイムさんが力を必要だと宣言すれば、羽は応じてくれます。スイムスイムさんの望む形に変化します」

 

 いともたやすくプキンを退けることのできる魔王パム。

 魔王パムを魔王たらしめる力の一端を借り受けることができるとは、非常にツイている。どうして魔王パムからそんなに期待されているかはわからないが、魔王様が良かれと思ってボクに与えてくれた加護をあえて拒否する理由はない。応じよう。

 

 

「力が欲しい。あなたの力を貸して」

『よかろう。我、汝の望む姿となり、力となろう』

 

 ボクが羽の質問にうなずくと、羽は淡い光に包まれる。

 光の中で羽はぐにゃぐにゃと粘土のように形を変えて、まもなくボクが望んだ武器へと変化した。オーダー通りだ。ボクはそれを右手で握った。

 

 

 >>>ボクは最強の剣を手に入れた!!<<<

 

 

 

「……あの、スイムスイムさん」

「なに?」

「それ、何ですか?」

「剣」

「……あぁ。剣、それ剣だったんですね。……えっと、剣を望むのは良いのですが。その、せめて違う剣に変えませんか? もっとちゃんとした剣にしないとスイムスイムさんの身を滅ぼしかねないですよ?」

「これが良い。これが欲しかった」

「えぇぇぇぇ」

 

 7753がドン引きしつつも、羽を別の形に変更すべきではないかと提案してくる。7753の気持ちは理解する。けど、ボクは冗談で羽をこの剣に変化させたわけではない。ボクは本気だ。

 

 

「行こう」

「大丈夫かなぁ……」

 

 これさえあれば、負ける気がしない。

 ボクは7753を伴って、みんなと合流するべく動き出した。

 

 




次回 第29話
『宴の始まりだ!』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。