その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム   作:超天才清楚系病弱魔法少女

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問題3.ペチカに抵抗されずに、ペチカの頰をペチペチするための方法を述べよ。ただし、ペチカが想いを寄せている、野球部のエースで4番の二宮君を利用してはならないものとする。



第3話 お前がたまになるんだよ!

 

◇スイムスイム(憑依)

 

 ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』の荒野エリアの一角にて。ボクは改めて、侍風の魔法少女との対話を試みる。

 

 

「改めて。私の名前はスイムスイム」

「音楽家」

「あなたの名前は?」

「音楽家ァ」

「……」

「音楽家、許さない」

「わかる(達観)」

「殺す。音楽家、奴だけは絶対に」

「わかる(天下無双)」

 

 けれど、やっぱり諦めた。口を開けば音楽家への殺害意思があふれだすばかりで。こいつとまともなコミュニケーションは成立しない。

 

 せめて名前くらいは知っておきたい。仕方なく彼女の袴をまさぐり、魔法の端末を取り出す。それを操作することでボクはようやく、眼前のキマった魔法少女の名が『アカネ』であることを知った。

 

 

 今現在、ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』に強制召集されているであろう十数名の魔法少女たち。彼女たちの殺し合いをなるべく防いでスノーホワイトの心証を良くする。そのような原作キャラ救済ルートの方針を打ち立てたボクが先ほど、偶然アカネを目撃して、まず最初に抱いた感想は『こいつヤバい』だった。

 

 当然だ。戦意の欠片もないコック姿の魔法少女の首を片手でつかみあげて、日本刀を首に添える輩がヤバくないわけがない。目も死んでるし。

 

 こいつを放っておけば間違いなく死者が発生する。魔法少女が死ねば死ぬほど、ボクがスノーホワイトにアウト判定される可能性が高まる。

 

 だからこそあの時、2人の世界に割り込んだ。テキトーなことを話してアカネを言いくるめて、アカネをコック姿の魔法少女から引きはがしたのだ。いやぁ、ボクってばナイス機転。まさしく天才の所業(ファインプレー)。つくづく冴えてるなぁ。

 

 

「音楽家ァ」

 

 それにしても不思議だ。とにかくアカネは森の音楽家クラムベリーへの殺意が強い。さっきコック姿の魔法少女を音楽家と勘違いして殺そうとしたくらいには殺意が強い。けれど、アカネはボクにはまるで殺意を向けてこない。さっきアカネの服をぺたぺた触って魔法の端末を探すまでしたのに、アカネは日本刀をボクに振り下ろしてこない。なぜなのか。

 

 

(……まさかボクが白スク姿だから? コック姿のクラムベリーはありえるから、アカネはコックの魔法少女を殺そうとした。けれど、白スク姿のクラムベリーはアカネの解釈違いだから、ボクはアカネに殺意を向けられていない……?)

 

 もしもそれがアカネがボクを襲わない理由なのだとしたら、非常に複雑な気分だ。好きでこんな変態な恰好をしているわけじゃないのに、スクール水着(白)がボクの助けになってしまっている。

 

 

「音楽家ァ」

 

 さて、アカネがSAN値直葬状態で暴走している理由はお察しだ。森の音楽家クラムベリーが過去に開催した魔法少女試験で殺し合いを強要され、深いトラウマを背負っているのだろう。

 

 ボクは精神科医でもカウンセラーでもない。今すぐアカネを正気に戻すのは容易ではない。さりとてアカネを放置もできない。それなら一旦、アカネを他の魔法少女にとって無害な方向性で暴走させるように誘導する。これこそが殺し合いを防ぐ第一歩であろう。

 

 さて、始めようか。

 

 

「アカネ。音楽家を殺す方法はただ1つ。たまになること」

「……」

 

 アカネは終始表情が変わらない。ずっと目がイッている。けれどなぜだろう。今のボクにはアカネの表情が宇宙猫に見える。なんかかわいいな?

 

 

「音楽家はとても強い」

「今のアカネじゃ音楽家は殺せない」

「たまじゃないと音楽家は殺せない」

「だから、あなたはたまにならないといけない」

「たまになるには、形から入るのが一番」

「たまの装備は4つある。犬耳、犬尻尾、フード付きのケープ、肉球グローブ」

「全部必要。全部手に入れないといけない」

「アカネ、モンスターを倒すことだけ考えて」

「モンスターを倒してドロップアイテムを、たまの装備を手に入れることだけ考えて」

「それが、アカネがたまになるための、音楽家を殺すための唯一の方法」

 

 おそらくこのゲームではまず入手できないたまの装備にアカネを執着させてしまえば、アカネを延々とモンスターを斬り殺すだけのマシーンにすることができる。それは他の魔法少女の安全に大いに寄与するはずだ。

 

 ゆえにボクは、アカネの殺意の矛先を魔法少女からモンスターへと固定させるべく、たたみかけるようにアカネに語りかける。とはいえ、さすがに理論武装がメチャクチャすぎただろうか。アカネに疑われないといいのだけど。

 

 

「尻尾、モンスター、たま、音楽家ァ……」

 

 ボクの発言が終わると、アカネはボクに背を向けて幽鬼のような足取りで歩を進める。少し心配になったボクがアカネの後を追うと、アカネは修羅の形相で、地面から這い出てきた骸骨を次々と斬り殺していた。アカネは骸骨から離れた場所で日本刀を振っているだけだが、アカネの日本刀の振り下ろしと同時に骸骨が木っ端みじんになっている。

 

 アカネの魔法は、斬撃を飛ばす魔法。ないし、どれだけ距離が離れていても斬撃をゼロ距離で繰り出せる魔法だろうか。シンプルだけど強力な魔法だ。

 

 まぁとにかくあの様子なら大丈夫だろう。

 無事、アカネの誘導に成功したようだ。洗脳成功、やったぜ。

 これぞまさしく『何でも言うことを聞いてくれるアカネちゃん』である。このままいい感じに天下無双していてくれるとボクも助かる。

 

 さて、当座の危機はしのぐことができた。けれど、安心するには早すぎる。魔法少女の犠牲を防ぐための次の手を考えないといけない。

 

 今、ボクに最も必要なのは情報だ。情報不足だと、ロクな作戦1つ立てられなくなってしまう。情報を増やすには、まずは魔法の端末に表示されている『街へ向かってください』というメッセージに従っておくべきだ。

 

 ボクは魔法少女の身体能力で、荒野に突き刺さる荒廃したビルの屋上へと駆け上がり、魔法少女の超強化された視力で付近を注意深く観察する。そして、街っぽい建造物を視認できた方へと一直線に駆け出した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

◇マジカルデイジー

 

 魔法少女マジカルデイジーがこうも気分が高揚しているのはいつぶりだっただろうか。

ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』の世界に有無を言わさず無理やり転移させられたマジカルデイジーだったが、今のマジカルデイジーはゲームの開発者に割と感謝していた。 

 

 

 マジカルデイジーは中学生の時に魔法少女となった。それからマジカルデイジーは華々しい活躍を重ねた。魔法の国が魔法少女の宣伝のために、マジカルデイジーの活躍をおおむね忠実に再現したアニメ『マジカルデイジー』を放映し。魔法の国の思惑どおりに全国の子供たちがマジカルデイジーの活躍に沸くくらいには、魔法少女らしい活躍を重ねてきた。

 

 戦える魔法少女が活躍するには『悪党』が必要なのだと悟ったのはいつのことだったか。マジカルデイジーは世のため人のために一生懸命、世の秩序を乱す『悪党』と戦ってきた。しかしその悪党こそが、マジカルデイジーの存在に貢献していたことに気づいたのはいつのことだったか。

 

 気づけばマジカルデイジーは大学生になっていた。マジカルデイジーが担当していた大きな事案はとっくにすべて解決していて。マジカルデイジーを取り巻く世界は平和になった。それは良いことだ。素晴らしいことだ。世界は確かに良くなった。けれどマジカルデイジーは1人、世界に置き去りにされた。

 

 マジカルデイジーはそこそこレベルの大学に入学した。魔法少女活動を優先したせいで、受験勉強に時間を割けなかったからだ。中学・高校時代の友達とは疎遠になった。大学の友達はいない。魔法少女活動を優先したせいで、友達付き合いができなかったからだ。

 

 このままで良いのか。このまま魔法少女だけの人生で終わらせて良いのか。最近のマジカルデイジーは隙あらば憂鬱なことばかり考えていた。魔法少女として光り輝いていた過去と、くすんだ現在とを見比べて、鬱屈とした想いを悶々と抱え込んでいた。

 

 そんな折、マジカルデイジーはソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』の世界に放り込まれた。

 

 

 マジカルデイジーは骸骨モンスターと出会った。現実世界では滅多なことでは使えなかった『必殺のデイジービームを撃てる』魔法で骸骨を消し飛ばせた時はとても爽快だった。

 

 マジカルデイジーは魔法少女:のっこちゃんと出会った。メイド服姿をした彼女は、目を輝かせながらマジカルデイジーに駆け寄り、アニメ『マジカルデイジー』の再放送を視聴した時の感想を熱く語ってくれた。

 

 マジカルデイジーは魔法少女:夢ノ島ジェノサイ子と出会った。地球防衛軍めいた姿をした彼女は、ギュッと握りこぶしを作って、アニメの登場人物:マジカルデイジーが実在していたことに心から歓喜してくれた。

 

 マジカルデイジーは魔法少女:@娘々(あっとまーくにゃんにゃん)と出会った。チャイナ服姿の彼女は、マジカルデイジーのことを知らなかった。けれど、のっこちゃんや夢ノ島ジェノサイ子経由でマジカルデイジーが有名人だと知り、敬意の眼差しを向けてきてくれた。

 

 それから、マジカルデイジーは成り行きで、のっこちゃん・夢ノ島ジェノサイ子・@娘々とパーティーを組んで、ゲーム攻略に乗り出すことになった。

 

 

 マジカルデイジーはソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』の世界で、とても充実した時間を過ごせていた。きっと己が自覚する以上にテンションが上がっていた。もっとみんなにかっこかわいいところを見せなければ。ファンサービスをしなければ。

 

 マジカルデイジーははやる気持ちに導かれるまま、のっこちゃんたちを引き連れて、荒野エリアから草原エリアへと足を踏み入れた。いつの間にやら他の魔法少女が固定ミッションをクリアして解放したらしい草原エリアを歩き進めると、マジカルデイジーたちを歓迎するかのように赤い骸骨たちが出迎えてきた。

 

 

「あーらら。色変えただけで容量削減しようとか、魔法のゲームにしちゃ意外とせせこましいねぇ」

「新しいエリアだから敵も強くなってるかもしれない。見た目で判断しないで全力で戦うよ」

 

 荒野エリアの白い骸骨とただ色が違うだけのモンスター。ジェノサイ子と同様に、マジカルデイジーもまた『赤い骸骨も歯ごたえのない敵なんだろうな』とこっそり落胆しつつ、しかし慎重に戦闘を進めるべく指示を出す。

 

 まず『どんな攻撃も平気な魔法のスーツ』を着ているジェノサイ子が先陣を切って赤い骸骨と戦い、赤い骸骨の情報を集める。赤い骸骨が白い骸骨と同程度の強さであるとの情報をジェノサイ子から得てから、マジカルデイジー・のっこちゃん・@娘々も戦線に加わる。結果、至極順調に、10体ほどの赤い骸骨の群れを残り1体まで減らすことができた。

 

 

「決めるよ、必殺技!」

 

 ゆえに、マジカルデイジーは最後の1体をデイジービームで倒そうとする。マジカルデイジーファンののっこちゃんとジェノサイ子がキャッキャと喜んでくれる未来が容易に想像できる。

 

 

「デイジービィームッ!」

 

 マジカルデイジーはお決まりのポーズを決めて、両手を組み、人差し指をピンと立てて、指先に光を収束させ、赤い骸骨へと解き放った。放たれた黄色の光線は赤い骸骨に直撃――しなかった。

 

 突如として赤い骸骨がバラバラに崩れ落ちたのだ。粉砕された赤い骸骨の真上をデイジービームが突き抜けていく。

 

 

「あれ?」

 

 一瞬の困惑を挟み、しかしマジカルデイジーは即座に周囲の気配を探り始める。現状、このゲームの世界では魔法少女とモンスターとしか会っていない。赤い骸骨の不可解な崩壊は、他の魔法少女による介入の可能性が高い。

 

 下手人はすぐに見つかった。胸にサラシを巻き、袴を着込んでいて、日本刀をだらりと提げている、侍風の魔法少女。彼我の距離は軽く1キロあったが、付近に彼女以外の魔法少女はいない。間違いなく彼女が最後の赤い骸骨を倒したはずだ。

 

 

「ちょっと! あの骸骨は私たちの獲物だったんだけど!」

「そうアル! スケルトンマークⅡが最後の1体になったタイミングで獲物をかすめ取るなんて、卑怯アルよ! それでも魔法少女アルか!?」

「……」

 

 下手人に気づいたのはマジカルデイジーだけではなかった。ジェノサイ子と@娘々が侍風の魔法少女に詰め寄り、ぷんぷんと怒りを表明している。一方の侍風の魔法少女は詰め寄ってきた2人を見ているようで、目の焦点がまったく合っていない。

 

 マズい。魔法少女マジカルデイジーとしての勘が告げている。これ以上、下手に侍風の魔法少女を刺激すると、お互いに無傷では済まなくなる。

 

 

「せっかくマジカルデイジーの有名シーンを肉眼で堪能できるところだったのに! どうしてくれるのさ!?」

「――私はたまになる。私がたまだ」

「ぅん???」

「犬耳はどこだ?」

 

 マジカルデイジーがジェノサイ子と@娘々を止めようとした矢先。侍風の魔法少女は突如としてジェノサイ子を見つめると、謎の言葉をいくつか発して、困惑するジェノサイ子を放置してその場から走り去った。

 

 

「何なんアルか、あいつ」

「はー、ありえねぇ。侍の恰好してるくせに人のモンスターをハイエナしやがって。侍魂をどこに投げ捨てやがったって話だよ。萎えるってこんなん」

「お、おふたりとも落ち着いてください……」

 

 @娘々が深々とため息を吐く。ジェノサイ子が足元の石を蹴り飛ばして不満を態度で顕わにする。のっこちゃんはおろおろとしている。

 

 せっかくの活躍シーンに横やりを入れられたのだ。マジカルデイジーとて不満はある。だが今のマジカルデイジーは、誰に言われるでなく、自然とこのパーティーのリーダーポジションに収まっている身分だ。ぶつくさ文句を言って、パーティー内の空気を悪化させるようではリーダー失格だろう。

 

 

「2人ともそこまで! いつまでもここに滞在しててもしょうがないし、街へ行こう」

 

 マジカルデイジーは両手をパンと叩いて3人の注目を集めて、パーティーとしての方針を提示した。

 

 

 ◇◇◇

 

 

◇マジカルデイジー

 

 数時間後、マジカルデイジーたちは草原の街のショップで、荒野の街のショップには売っていなかった新規アイテム:モンスター図鑑を購入した。モンスター図鑑には、赤い骸骨(スケルトンパワード)の特殊能力『長距離攻撃反射』についての記述があった。

 

 もしも赤い骸骨に放ったデイジービームが命中していたら。

 侍風の魔法少女がマジカルデイジーたちのモンスターを横取りしていなかったら。

 赤い骸骨の特殊能力『長距離攻撃反射』が発動し、マジカルデイジー自身が必殺のデイジービームを喰らって消し飛んでいたのではないか。

 

 

「……」

 

 マジカルデイジーの顔から血の気が引いた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

◇スイムスイム(憑依)

 

 ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』の世界に放り込まれてから数日が経過した。これで現実世界では全然時間が経過していないというのだから、魔法というのはつくづく規格外だ。驚きを通り越して感心するばかりだ。

 

 

 ゲーム参加初日に荒野エリアの街に到着したボクは、早速魔法の端末を確認した。すると、『街へ向かってください』というメッセージは消えており。代わりに『サポート』コマンドを使用できるようになっていた。

 

 すぐにでもサポートコマンドを押したかったが、付近に他の魔法少女たちの気配があったため、彼女たちに見つからないよう細心の注意を払って街を離れた。何が悲しくて他の魔法少女たちに白スク姿をさらさないといけないのか。

 

 荒野エリアの廃ビルに身を潜めて。サポートコマンドを押すと、魔法の端末から魔法少女育成計画のマスコットキャラクターこと『ファル』の立体映像が投影された。

 

 またファヴかよ。

 死んでなかったのかよこの腐れ外道マスコット。

 電子妖精だからデータ複製されてよみがえりでもしたんか?

 

 ファルの第一印象はファヴの影響で最悪だったが、ゲームについてファルと質疑応答を繰り返す内、ボクの中の悪印象は払拭されていた。語尾の『ぽん』がたまにムカつくくらいで、ファル自体は割と誠実だと理解できたからだ。見た目も口調もファヴそっくりだというのにこうも印象が違うなんて、不思議なものだ。

 

 

(はぁぁ保存食うまいなぁ。体に染み渡る味だ。雑草とは大違い。雑草の100倍はうめぇ。食事が保障されてるとかホント神ゲーだよこれ。それに比べて現実世界ときたら。現実(リアル)なんてクソゲーだ、間違いない)

 

 そうして、ファルからひとしきり情報を入手し終えたボクは今。すっかり定住スポットとなっている廃ビル内で、ショップでマジカルキャンディーを払って購入した保存食をもそもそとほおばりながら、今後の方針を整理していた。

 

 まず、ファルからもたらされた主な情報は以下のとおりだ。

 

・この世界で過ごす時間は、現実世界の一瞬にも満たないこと。

・ゲームをクリアするまで、つまり『魔王を討伐する』まで。ゲームの世界で3日間、現実世界で3日間をループさせられること。

・この世界では『マジカルキャンディー=お金』であること。

・各エリアの街にはショップがあり、買い物できること。

・ショップの品ぞろえは、各エリアごとに異なること。

・一度倒したモンスターは基本、翌日にならないと再登場しないこと。

・魔法少女同士でパーティーを結成すると一部アイテムの効果の共有などが行えて便利であること。

・最大4人までのパーティーを結成できること。

・魔法少女のゲーム参加者は合計17人いること。

・この世界でダメージを負ってゲームオーバーになっても現実世界の自分はノーダメージであること。などなど。

 

 まぁゲームオーバー云々の件は間違いなく嘘だ。そうじゃないと魔法少女同士の殺し合いが成立しなくなる。ファル自体は誠実そうな印象だったが、印象に反して、平然と嘘をつけるらしい。あるいはファル自体も知らないのか。とにかく、ゲームの運営側が嘘を吐くタイプだという情報を得られたのは大きい。

 

 ファル発信の情報を踏まえ、ボクは大まかな方針を打ち立てた。

 不安はある。ボクはしょせん、その辺によくいる普通の18歳男子だ。そんなボクがたった数日で考えた方針ごときで、殺し合いを切望する切れ者な悪の魔法少女たちを出し抜けると考えるのはいくらなんでも楽観的だ。さすがにそこまではボクも調子に乗れない。

 

 

「ん」

 

 心にうずまく不安を押し殺すべく追加の保存食にかぶりつく。超うまい。さらにもう1本、保存食を平らげる。このパサパサな食感が癖になる。せっかくだ、もう1本くらい――

 

 と、ここで。魔法の端末がピカピカと通知の光を点滅させていることに気づいた。魔法の端末を手に取り、画面を確認する。メッセージは5分前に届いていたようだ。

 

 

『これよりイベントが発生します。5分後に全てのプレイヤーを『荒野の街』の広場に強制移動します』

(え……?)

 

 刹那。一瞬で景色が変化した。見慣れた廃ビルから荒野の街へとボクの視界が切り替わる。凄まじく嫌な予感がする。ボクが視線を上げると、そこにはパッと見で10人以上の魔法少女が勢ぞろいしていた。

 

 最悪の事態だ。ボクはピシリと固まった。

 魔法少女たちは強制移動に困惑しつつも周囲の景色を見やり、状況を把握しようとしている。その視線がスイムスイムへと向かった時、魔法少女たちの視線が一瞬止まった。

 

 

 !!ああっと!! ゲームに参加中の魔法少女集合イベントが発生だ! あれれー? おっかしいぞー!? 魔法少女の集まりなのに水着姿の奴がいるんだけどー? 場違いもいいところじゃん。いやぁ誰だろうねぇ? わからないねぇ!

 

 ボクはがんばって現実逃避を試みてみたが、無理だった。ボクに向けられる多くの視線。まるで「いや、その水着姿で魔法少女は無理でしょ」とでも言いたげな視線の数々。

 

 

(わァ…………ァ…)

 

 ボクは泣いた。

 スイムスイムの体は無表情を崩さないので、心の中でこっそり涙した。

 

 こうなるってわかってたから他の魔法少女になるべく会わないようにしてたのに! ボクだって好きでこんな恰好してるんじゃねえからぁ! 痴女じゃねぇからぁ! だから、だからそんな目でボクを見るなぁ!!

 

 

 だれかたすけて!(ぐるぐるおめめ)

 

 




次回 第4話
『7歳なのに草しか食べてない…妙だな…』
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