その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム   作:超天才清楚系病弱魔法少女

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問題7.メルヴィルの訛りを完璧に翻訳する方法を述べよ。ただし、ラピス・ラズリーヌに頼ってはならないものとする。



第7話 マジカルキャンディーを1000個払えば無料で「R」を10連まわせるんだからほんと凄い

 

◇ペチカ

 

 ペチカにとって、ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』のテストプレイヤーに選ばれて、ゲームの世界に放り込まれたことは災難以外の何物でもなかった。

 

 モンスターは怖い。ペチカよりも背丈の大きい骸骨がペチカに敵意を抱いて、襲ってくるだけでもう背筋が凍る。ペチカは恐怖に支配されて動けなくなる。

 

 ゲームの世界で最初に出会った侍風の魔法少女。彼女も怖い。今も時折、彼女に首をつかまれ、持ち上げられ、首筋に刀を添えられた時の記憶がフラッシュバックする。

 

 ペチカが次に出会った水着姿の魔法少女。彼女も怖い。彼女自身というよりは、彼女と侍風の魔法少女との会話が怖かった。彼女たちの会話がふと脳裏をよぎるたび、ペチカは頭痛に襲われる。ペチカはいつの間に『音楽家』という概念を嫌いになっていたのか。わからない。わからないことは怖い。わからないことを強いてくる水着姿の魔法少女も怖い。

 

 あの時、ペチカが侍風の魔法少女に殺されかけた時、水着姿の魔法少女が間に入ってきて。謎の会話を繰り広げて。最終的に、水着姿の魔法少女は侍風の魔法少女を連れてどこかへと去っていった。ペチカは怖くて、ただ怖くて、もうあの2人に会いたくなくて、がむしゃらに荒野を走った。

 

 その先で偶然出くわしてしまった魔法少女たちも怖かった。

 

 『半分だけいろんな動物に変身できる』魔法を使えるクランテイルは、上半身の可憐な人間の姿とは裏腹に、下半身が馬になっていた。彼女は四足の蹄でのっしのっしと歩いていて、見た目が人外そのもので、怖かった。

 

 『人形を思い通りに操ることができる』魔法を使えるリオネッタは、彼女自身の見た目がもう人形そのもので、魔法少女のはずなのにまるで生気を感じられなくて怖かった。

 

 『どんな動物とも仲良くなれる』魔法を使える御世方那子(みよかたのなこ)は巫女服が似合う魔法少女だった。彼女は唯一怖くない見た目をしていたが、リオネッタからの売り言葉に買い言葉で返し、リオネッタと口論する様子が怖かった。

 

 当時のペチカは彼女たちとパーティーを組んだ。ペチカの意思ではない。怖くて、でもパーティー結成を拒否できなかったからだ。3人は戦える魔法少女で。ペチカは戦えない魔法少女で。リオネッタを筆頭に、お荷物なペチカに注がれる視線がとにかく痛くて、怖かった。

 

 ゲームの世界からログアウトして現実世界に帰った時、ペチカはゲームの世界に戻りたくない気持ちでいっぱいだった。

 

 

 けれど、彼女たちのことが怖かったのは今や過去の話だ。

 ペチカはパーティー内で市民権を得た。ゲームの世界への二度目のログイン後、ペチカはパーティーメンバーに己の魔法の料理をふるまった。ペチカの『とても美味しい料理を作れる』魔法は現実世界の二宮君を満足させるだけでなく、戦えない魔法少女の地位を大いに向上させてくれた。

 

 ゲームの世界で食欲を満たすには、ショップで販売している保存食しかない。保存食は美味しくないし、味も同じ。一方、ペチカは5分の調理時間でどんな料理だって作ることができる。保存食に飽きていたみんなが、ペチカの魔法の虜になるのは当然の結果だったのかもしれない。

 

 普段は事あるごとに口論を繰り広げるリオネッタと御世方那子の2人だって、ペチカの料理の前では態度を豹変させる。即座に争いをやめてペチカの料理を堪能してくれる。口々に褒めてくれる。クランテイルは口でこそ褒めはしないが、動物の下半身の尻尾を激しく揺らしてくれる。

 

 ゲームの世界は嫌だ。できることならゲームなんてやめてしまいたい。

 モンスターは怖い。ペチカの理解の及ばない、怖い魔法少女だっている。

 

 けれど、ペチカの魔法の料理のおかげで、パーティーのみんながペチカに好感を抱き、ペチカに優しくしてくれる。ペチカを守ってくれる。そのことにどこか居心地の良さを感じるペチカが存在するのもまた事実だった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

◇ペチカ

 

 各エリアのショップの品ぞろえの多くは、エリア固有のアイテムだ。けれど、どのエリアのショップにも共通して販売しているアイテムが2つある。

 

 1つは『通行証』。マジカルキャンディー5個で買える。通行証はエリア間を移動するために必要なアイテムだ。1日間しか使用できないため、毎日購入しないといけない。

 

 もう1つは『R』。マジカルキャンディー100個で買える。ランダムでアイテムを獲得できる、ギャンブル性の高いアイテムだ。ファル曰く、『R』は運が良ければとんでもなくレアなアイテムをゲットできるらしい。

 

 けれど。ペチカたちはこれまで『R』を十数個購入したが、内訳は『地図×12』『スコップ×1』『鍋×1』『食器セット×1』『スプーン4本セット×1』という有様だった。結果、地図と日用品しか入手できない『R』を買うのはマジカルキャンディーの無駄遣いだ、というのがパーティーの共通見解だ。

 

 

 ゲーム世界の夕暮れ時。荒野・草原・山岳に続く都市エリアの広場で、ペチカたちは食卓を囲んでいる。ゲームを攻略するうえで、『R』の利用価値は怪しい。けれどゲーム攻略に消極的なペチカにとっては、『R』でゲットできた食器類はありがたいアイテムだった。これでペチカはもっと色んな料理をパーティーメンバーにふるまえる。

 

 ペチカは魔法でクリームシチューを作った。みんなの反応は上々だ。

 みんなの喜んでいる顔を見ると、ペチカも嬉しい。心が温かくなる。

 

 

「もー! イライラするデース! アイムアングリー!」

 

 しかし。ここで御世方那子が怒りを表明した。実はクリームシチューが嫌いだったのだろうか。ペチカは恐る恐る那子の様子を見つめる。

 

 しかし、那子はペチカに怒りの矛先を向けたり、ペチカを睨みつけたりしてこない。ペチカとは関係のないことで、強烈な不満を抱いているようだった。那子が頭をくしゃくしゃにかきむしっている。

 

 

「西に行ったらビッグハムスターガールが狩場を通せんぼ! 東に行ったらサムライガールがモンスターを殲滅済! モンスターとエンカウントできないデース! 全然マジカルキャンディーをゲットできないデース! いったいどこ行きゃモンスターいるんデス!? むきゃあおおおおおおおお!!」

「あぁもううるさいですわね。騒音をまき散らさないでもらえますか? 迷惑でしてよ」

「誰の声がノイズ・ミュージックネー!」

「自分の声が音楽だなんて、思い上がりも甚だしいですわ」

 

 怒りを爆発させる御世方那子に対し、リオネッタが苛立ちを隠さずに吐き捨てる。ここから果てのない口論へ突き進むのがリオネッタと御世方那子の常だ。こんな時こそペチカの出番だ。

 

 

「あの、お二人とも、おかわりどうですか?」

「ヘイ、ペチカさん! ギブミーシチュー!」

「山盛りでお願いしますわ、ペチカさん」

「クランテイルさんもどうですか?」

「お願い」

 

 ペチカはクリームシチューのおかわりを3人のお皿に盛っていく。ペチカの料理はパーティーの争いを解消させる力がある。パーティーにうずまく負の感情を解消し、みんなの気分を上向きにできる力がある。ペチカは己の魔法に心底感謝していた。ペチカは己の魔法に誇りを抱き始めていた。

 

 

 ところで。御世方那子が頬を膨らませて不満を表明していた内容だが、ペチカとしてはありがたかった。これまで出くわしたモンスターは、頼もしい3人(クランテイル・リオネッタ・御世方那子)が倒してくれた。けれど、怖いものは怖い。モンスターは怖い。

 

 モンスターと出会わないことに越したことはない。巨大になれるらしい魔法少女と、侍風の魔法少女が率先してモンスターを倒してくれているのなら、ペチカは嬉しい。

 

 モンスターを倒して、マジカルキャンディーを稼いで、街のショップでアイテムをそろえて、ゲームを攻略して、魔王討伐の報酬を得たがっている3人の手前、言えないけれど。ペチカは現状が続くことを望んでいた。ペチカの存在を望まれて、脅威となるモンスターと出くわさない現状の継続を望んでいた。

 

 

「しっかし、さっきのスイムウェアガールの話はなんだったんでしょうネー?」

「あら、あの変態さんの話を信じておりますの? さすがの頭の軽さですわね。お見それしましたわ」

「ふーむむ……」

 

 クリームシチューをスプーンですくってはむはむほおばりながら、御世方那子が疑問を提示する。リオネッタがいつものごとく那子に喧嘩を吹っかけているが、今回は那子は応じずに考え込んでいた。ペチカも那子と同じ気持ちだ。いったいあの話は何だったのか。

 

 数時間前。ペチカたちは1人の魔法少女と出会った。

 白いスクール水着を着た魔法少女。以前ペチカが出会った、怖い魔法少女だ。

 

 

「この世界には二種類の敵がいる」

「目で見える敵と、目で見えない敵」

「そう、透明な敵がいる」

「この前、私は透明な敵に襲われた」

「敵は私に一撃を加えただけで追撃しなかった。きっと退却した」

「私は1人だったから襲われたのかも」

「単独行動はオススメしない。やむを得ない時は、気をつけて」

 

 各々自己紹介を終えた後、水着姿の魔法少女:スイムスイムはそう言い残して去っていった。

 今までのモンスターとは全然毛色の違う、透明な敵。想像するだけでゾッとする。

 

 

「安心してくださいまし、ペチカさん。あんなの嘘に決まっていますわ」

 

 ペチカの顔色の悪さに気づいたのだろう。リオネッタが微笑みかけてくれる。

 嘘なら嬉しいけれど、それはそれで怖い嘘を平然と言い放つスイムスイムのことがますます怖く感じてしまう。

 

 

「どうして嘘だと断言できるネー? ……ハハーン? まさかリアルドールもゴースト怖いデス? ゴーストなんていないって信じたいだけデース? リアルドールにもキュートなとこあって安心ネー!」

「少し考えれば誰でも嘘だとわかりますわ。……あら、貴女はわかりませんの? かわいそうに」

「やっぱりかわいくないデス! シット!」

「単独行動をオススメしないと忠告しておきながら、彼女自身は単独行動をしていますわ。それに加え、透明な敵と戦った彼女は、敵の詳細を『モンスター図鑑』で知っているはずなのに、私達に敵の詳細データを教えませんでしたわ。つまり、嘘でしかありえませんの。まったく、私のペチカさんをこんなにも怖がらせて……あの変態さんは万死に値しますわね」

「リ、リオネッタさん。落ち着いて……私は大丈夫だから」

 

 クリームシチューのお皿を持つリオネッタの手がカタカタと震えている。明らかに怒っている。ペチカはリオネッタが平静を取り戻すことを願って慌てて声をかけた。

 

 

「スイムスイムの言う『透明な敵』が本当か嘘かは定かではない。けれど、新しいエリアの敵が少しずつ強くなっているのは確かだ。その内『透明な敵』も現れるかもしれない。これからも気をつけてゲームを攻略しよう」

 

 クリームシチューを無言で平らげたクランテイルが、『スイムスイムの話が本当なのか嘘なのか』という話題に対し、結論を下さずにシャットダウンする。

 

 刹那。ペチカたちの魔法の端末が一斉に着信音を鳴らす。

 

 

『これよりイベントが発生します。5分後に全てのプレイヤーを『荒野の街』の広場に強制移動します』

 

 前回同様に、荒野の街の広場に強制転移させられる時間がやってきたようだ。

 ペチカは驚いた。もうゲームの世界で3日間を過ごし終えようとしていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

◇ペチカ

 

「今回もまた、前ログアウト時と同じくランダムに特別イベントが発生しますぽん。今回のイベントは……アンラッキーなイベントですぽん。今から15分後、最もマジカルキャンディー所持数の少ないプレイヤーが1人、ゲームオーバーしますぽん」

 

 広場に17人の魔法少女が集結した後、魔法の端末から姿を投影させたマスコットキャラクター『ファル』が、今回のイベントを告知する。

 

 周囲からざわめきが響く。前回の【目的地にたどり着いた先着1名にレアアイテム『ミラクルコイン』をプレゼントする】というイベントとまるで種類の異なるイベントだからかもしれない。確実に1人、ゲームから脱落させる理不尽なイベントだからかもしれない。

 

 周りの魔法少女たちは付近の人たちと何やら真剣に会話をしている。ゲームオーバーになりたくないからだろう。もっとお金を手に入れたい。もっとゲームを楽しみたい。そんな気持ちがあるのだと思う。

 

 

(ゲームオーバー。ゲームオーバー? それって、ゲームをやめられるってこと?)

 

 でも、ペチカは違った。だって、ゲームの世界は怖い。モンスターも怖いし、怖い魔法少女もいる。怖い世界から離れられるのなら、元通りの日常に戻れるのなら。ゲームオーバーはとても魅力的だ。

 

 ペチカはゲームをやめたい。

 みんなはゲームを続けたい。

 

 ペチカは、『私がゲームオーバーします』と立候補しようかと思った。

 けれど、ペチカの脳裏にパーティーメンバーの姿が浮かぶ。彼女たちがペチカの魔法の料理を幸せそうに食べている姿が思い浮かぶ。

 

 

「……」

 

 ゲームを降りる。

 ゲームをやめる。

 

 たったその一言を、ペチカは紡げずにいた。

 

 

「ファル。キャンディー所持数の少ないプレイヤーが1人、ということだが。複数いた場合はどうなる? ランダムに1人が選定される? それとも複数人が一斉に脱落するのか?」

「所持数の少ないプレイヤーが複数いた場合は、該当者なしでイベントを終了させていただきますぽん」

 

 ペチカがぐずぐずしている間に、車椅子に座った魔法少女:プフレがファルにイベントの詳細を質問していた。ファルの回答はつまり、今回のイベントは誰か1人が必ず脱落せずに済む手段が残されているということだった。

 

 ペチカは、立候補する機会を逸してしまった。

 

 

 全員がゲームを継続できる方法はわかった。ではどうしようか。魔法少女たちが話し合いを始める中、ふらりと魔法少女たちの輪から抜け出す者がいた。ペチカを殺そうとした侍風の魔法少女だ。

 

 

「たまはどこだ?」

 

 彼女は謎の言葉を呟きながら幽鬼のような足取りで、ショップへ向かった。おぼつかない指の動きで魔法の端末を操作している。何かを買おうとしているようだ。あの人も、ペチカと同じでゲームオーバーしたくて、それで買い物を始めたのだろうか?

 

 

「犬耳はどこだ?」

「おいおいエセ侍。いきなり何をするかと思えば、『R』を大量購入してんじゃん。マジカルキャンディー1000個払って無料で10連回してるモードじゃん。人のモンスターを横取りしてゲットしたキャンディーで回すガチャは楽しいかぁー?」

 

 そんな侍風の魔法少女の下に、ヒーロースーツ姿の魔法少女*1が詰め寄って、煽っている。多分、彼女たちのパーティーも、ペチカたちと同様に、マジカルキャンディー集めを侍風の魔法少女に妨害されているのだろう。あの侍の魔法少女相手によく喧嘩腰で話しかけられるものだと、ペチカは戦々恐々としていた。

 

 

「犬尻尾はどこだ?」

「え、ちょっ、いくらなんでも買いすぎじゃね? マジカルキャンディー0個になっちゃうけどいいの? ゲームやめたいってこと? ……おー、マジでキャンディー0個にするじゃん。『R』に全ブッパとか勇者だなぁ」

 

 どうやら持っているマジカルキャンディーを全部使って『R』を買い込んだ侍風の魔法少女は、『R』で入手したアイテムを確認し始める。ヒーロースーツ姿の魔法少女は興味津々で侍風の魔法少女の魔法の端末をのぞき込んでいる。対する侍風の魔法少女も、のぞき見を止める気はないようだ。

 

 

「……」

 

 一体、彼女が『R』で何を手に入れたのか。ペチカは気になった。この場のみんなも同じ心境だったのか、みんなして侍風の魔法少女の魔法の端末をのぞき込んだ。

 

 

『地図×55』

『フォーク4本セット×1』

 

 

(あ……)

 

 酷い結果だった。

 

 

「……いつかいいことあるって」

 

 あまりに不憫に思ったのか。ヒーロースーツ姿の魔法少女が侍風の魔法少女に憐憫の眼差しを注ぎ、ぽんぽんと背中を撫でる。

 

 

「そのフォーク4本セット、マジカルキャンディー100個で譲ってくれないか?」

 

 クランテイルが侍風の魔法少女に取引を申し出る。フォーク4本セットは、他のパーティーにとっては不要でも、ペチカたちのパーティーにおいては価値になる。

 

 クランテイルがペチカに熱い眼差しを向けてくる。ペチカがふるまう料理のバリエーションが増えることを期待する眼差しだった。

 

 今さらだけど、ペチカは自らゲームオーバーをしないと決めた。

 ゲームの世界は怖いことがいっぱいある。でも、パーティーのみんながペチカを必要としてくれる限り、ペチカはこの世界に残ろう。

 そして、もしも侍風の魔法少女がクランテイルの取引に応じてくれたなら。次はパスタ料理をふるまおう。ペチカは心に誓った。

 

 

 

「たまはどこだ……」

 

 侍風の魔法少女はクランテイルとの取引に応じてくれた。マジカルキャンディー100個とフォーク4本セットを交換し、もう一度『R』を購入した。『R』で入手したアイテムを確認すると、ふらふらと街から去っていく。きっと地図だったのだろう。その背中には哀愁が漂っていた。

 

 

「イベントのことですが」

 

 コホンと軽く咳払いをして、リオネッタが口を開く。

 侍風の魔法少女の不憫っぷりの影響で弛緩していた空気が引き締まる。

 

 

「私たちは何もしなくても良いのではなくて? あの方が勝手にゲームオーバーになっておしまいでしょうし。人のモンスターを横取りする、マナーのなっていないプレイヤーには脱落してもらって、良識を持った方々だけでゲーム攻略を続ければ良い。そうではありませんか?」

「リアルドールは薄情デスネー! きっとあの人はペットの『たま』を溺愛するあまり、ゲームの世界で『たま』と会えない悲しみでクレイジーになってるだけデース! ワタシはあの人をゲームオーバーにさせたくないデス! ペットに『たま』と名付ける人にヴィランはいないデース! ワタシのたまちゃんもベリベリキュート! この前、伊勢海老ヘッドをカジカジしていた時なんかワンダフルでしたネー!」

「貴女は一体何を言っていますの……? 常々頭がクルクルパーだとは思っていましたが、まさかそこまで深刻な症状だったなんて。ごめんなさい。私、知らなくて」

「何をー!」

 

 リオネッタと御世方那子がいがみ合い始める。ペチカは何度も見た光景だが、他の魔法少女たちは違う。ギョッとした眼差しで2人の様子を眺めている。

 

 

「私は御世方那子の意見に賛成だよ」

 

 ペチカがどうにか仲裁するべきか。そう考え始めたところで、プフレが声を発する。どうしてか、彼女の言葉には耳を傾けたくなる何かがある。注目せざるを得ない何かがある。

 

 

「このゲームの全貌は未だ明らかにされていない。この先、侍の彼女の魔法が必要になる時が来るかもしれない。ゲームオーバーさせずに済むのなら、それに越したことはないよ」

「では、貴女はどうするつもりでして? まさかあの侍と同じように全員マジカルキャンディーを浪費しろとでもおっしゃいますの? 私は嫌ですわよ」

 

 プフレの主張にすぐさまリオネッタが突っかかる。リオネッタが睨みつけるも、プフレは涼しい顔を崩さない。

 

 

「……」

 

 と、ここで。単独で動き始めた者がいた。スイムスイムだ。彼女は荒野の街のショップで『R』をいくつか購入して、保存食と通行証を購入した。その後、スイムスイムはプフレへ歩み寄り、魔法の端末の画面を見せる。

 

 

「これで良い?」

 

 ペチカも運良く端末の画面を視界に収めることができた。

 スイムスイムのマジカルキャンディーの数は0個になっていた。

 

 

「協力、感謝するよ。あとは侍の彼女がモンスターを倒してマジカルキャンディーを獲得しないように足止めしないといけない。そうすることで、キャンディーの所持数の少ない者が2人となり、誰1人ゲームオーバーさせずにイベントを終えられる。……我こそはという者はいるか?」

「ハイ! ワタシやりマース! あの人と『たまちゃんトーク』してきマース!」

 

 プフレが周囲を一瞥すると、御世方那子が元気よく挙手をして、侍風の魔法少女の去った方へと全速力で駆け抜けていった。

 

 それから数分後。

 

 

「マジカルキャンディーの所持数が一番少ないプレイヤーはいなかったですぽん!」

 

 ファルがどことなく陽気な口調で宣言して、アンラッキーなイベントは平和的に幕を閉じた。

 

*1
夢ノ島ジェノサイ子




次回 第8話
『お嬢っていつもそうですね…!』


 ~おまけ(足止めの詳細)~

御世方那子「ヘイ! 同志、サムライガール!」
アカネ「……たまはどこだ?」
御世方那子「ワタシと『たまちゃんトーク』しなサーイ!」
アカネ「? たまは良いぞ?」
御世方那子「イエス!」
アカネ「私はたまになる」
御世方那子「イェア! ワタシもたまちゃんになってみたいデース! たまちゃんが見ている世界、気になりマース!」
アカネ「私はたまだ」
御世方那子「ワタシもたまちゃんでーす!」
アカネ「……」
御世方那子「……」
アカネ(どうしよう。会話の通じなさそうな厄介な人に絡まれてしまった。できることならこの人から離れたいんだけど、でもスイムスイムの指示で狂人のフリをしているのにいきなり常人っぽい行動をとるわけにはいかないし……)
御世方那子(アンビリーバボー! こんなに会話の続け方に悩む人は初めてデース! でもスイムウェアガールをゲームオーバーさせないためにはサムライガールの足止め必須! 
FOOOOOOOOOOO! 今こそワタシの会話デッキフルオープンの時!)
アカネ(だれかたすけて)
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